窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪②

2019-09-17

窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪②

京都市伏見区に住むAさんは、パチンコ等のギャンブルにお金を使っては消費者金融に借金をすることを繰り返し、借金額を合計200万円くらいまで膨らませてしまいました。
そこで、何とかこの事態を打開したいと考え、Aさんは日頃から目を付けていたVさん(85歳)方に盗みに入ることに決めました。
Aさんは、ホームセンターで侵入のための工具(マイナスドライバー、軍手等)を購入し、Vさんが不在のときを見計らってVさん方に入ろうと思い、Vさん方付近に張り込んでVさんの行動を確認していました。
そして、Aさんは、Vさんが自宅を出たと確認した後、購入した侵入工具を使うなどしてVさん方に入り、タンスの引出しを開けるなどの物色を始めました。
ところが、Aさんは、数十分経っても金目の物を見つけることができませんでした(後日、Vさんは用心のため、自宅にはお金の物を置いていなかったことが判明)。
そこで、AさんはVさん方を出ようとしたところ、ちょうどVさんを訪ねてきたVさんの息子であるWさん(60歳)と鉢合わせになりました。
Aさんは、Wさんから声をかけられ捕まられそうになったため、Wさんの顔を持ってきていたバールで1回殴打してその場から逃走しました。
しかし、Aさんは、京都府伏見警察署住居侵入罪事後強盗未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

前回の「窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪①」では、窃盗罪の成立過程やAさんに窃盗未遂罪が成立し得ることをご説明いたしました。
今回は、なぜ、Aさんが事後強盗未遂罪に問われているのかご説明いたします。

~事後強盗罪とは?~

事後強盗罪とは、窃盗犯人が、財物の取返しを防いだり、逮捕を免れるなどするため、相手方に暴行、脅迫を加えた場合に成立し得る犯罪で、刑法238条に規定されています。

刑法238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

本来の強盗罪(刑法236条)とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫→財物奪取(強取)という流れが本来の姿です。
しかし、窃盗の場面では、窃盗犯人が財物を取り返しにきたり、窃盗犯人を逮捕しようとする被害者等に暴行を加えるという場面はしばしばあるところです。
しかも、暴行・脅迫行為は事後的に行われているものの、それを手段として財物を奪ったという点では本来の強盗罪と変わりはありません。

そこで、事後強盗罪も強盗罪の一種としています。
事後強盗罪の「事後」とは、窃盗の後に暴行、脅迫が行われたという意味に過ぎず、本質は本来の強盗罪と同じです。

~誰が事後強盗罪に問われるのか?~

刑法238条は「窃盗が」としています。
この「窃盗」とは、窃盗の実行に着手した者、つまり、窃盗未遂犯も含まれます。
窃盗罪の実行に着手していない者は事後強盗罪に問われることはありません。
したがって、窃盗の目的で他人の家に侵入したところ、まだ物色行為を開始する前に家人に気づかれたため、その家人に暴行を加え傷害を負わせたという場合は、事後強盗罪ではなく傷害罪(と住居侵入罪)が成立するにとどまります。

~事後強盗罪の暴行・脅迫の相手方は誰?~

事後強盗罪の暴行・脅迫の相手方は、必ずしも窃盗の被害者本人(本件ではVさん)に加えられる必要がありません。
追跡してくる目撃者(Wさん)や逮捕しようとする警察官に対してなされたものであってもよいとされています。
なお、事後強盗罪は強盗罪の一種ですから、暴行・脅迫は「窃盗の機会」になされたと認められる時点で加えられることが必要です。

~事後強盗罪の既遂、未遂の判断は?~

事後強盗罪の既遂時期に関しては、窃盗の既遂・未遂を問わず、犯人が所定の目的で暴行・脅迫を加えた時点で既遂に達すると解する見解もありますが、通説・判例は、本罪は財産犯であることから、「先行行為である窃盗の既遂、未遂」で、事後強盗罪の既遂、未遂を判断しています。

以上から、本件のAさんは、窃盗未遂犯人であることから事後強盗未遂罪(強盗未遂罪)に問われているわけです。

~相手方に怪我を負わせたり、死亡させた場合は?~

強盗の機会に相手方に怪我を負わせたり、死亡させた場合は強盗致傷罪6年以上の懲役)、強盗致死罪死刑又は無期懲役)に問われます。
そして、両罪は、窃盗の既遂、未遂に関係なく成立するとされています。
本件のAさんも、仮に、Wさんに怪我を負わせていれば、強盗致傷罪に問われていたかもしれません。

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