万引き事件:窃盗と事後強盗

2020-06-11

万引き事件で窃盗又は事後強盗となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

兵庫県姫路市にあるスーパーマーケットで商品5点を万引きしたAさんは、店外へ出ようとした際に警備員に呼び止められました。
慌てたAさんは、警備員の制止を振り切り、逃亡を図りました。
その際に、Aさんを警備員を押し倒しており、警備員は腕などに軽傷を負っています。
結局、Aさんは兵庫県飾磨警察署に逮捕されてしまいました。
逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、警察から事後強盗という言葉を聞き驚いています。
このまま刑務所に入れられてしまうのではないかと不安に駆られたAさんの母親は、すぐに対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

万引きは、通常、窃盗で処理されます。
しかし、店の人や警備員等に見つかった際に突き飛ばすなどの行為をすると、事後強盗に問われることがあります。

1.窃盗罪

窃盗罪は、①他人の財物を、②不法領得の意思で、③窃取する罪です。

①他人の財物
窃盗罪の客体は、他人の占有する他人の財物です。
自分の財物といえども、他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものは他人の財物とみなされます。
「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態のことをいいます。
スーパーマーケットで販売されている商品は、店長が管理していますので、他人の財物にあたります。

②不法領得の意思
窃盗罪の主観的要件として、故意の他に、不法領得の意思があります。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことをいいます。
万引きは、通常、店の商品を自分の物にして処分しようと思って商品を盗むので、不法領得の意思も認められることが多いです。

③窃取
窃取とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
占有を取得したときに既遂(実行行為が完了した)となります。
占有を取得したか否かの判断は、財物の性質、形状、財物に対するそれまでの占有状況、窃取行為の態様等を考慮して行われます。
スーパーマーケットでの万引きの場合、商品がポケットやカバンに入る大きさのものが多いことや、それらを店外に持ちだすことは容易であることなどから、ポケットやカバンに商品を入れた時点で占有を取得したと言えるでしょう。
判例でも、商品を万引きしようと商品である靴下を懐中に納めたときは、店外に出なくても既遂となると窃盗の成立を認めています。(大判大12・4・9)

このように、通常の万引きであれば、窃盗罪が成立する可能性があります。

2.事後強盗罪

事後強盗罪は、①窃盗が、②財物を得てこれを取り返されるのを防ぎ、逮捕を免れ、または罪責を隠滅するために、③暴行または脅迫をする罪です。

①窃盗
窃盗は、窃盗犯人のことです。

②目的
「財物を得てこれを取り返させることを防ぐ目的」とは、他人の占有を侵奪して事実上自己の占有下にある財物を被害者側に取り返されるのを阻止しようとする意図をいいます。
「逮捕を免れる目的」は、窃盗未遂または既遂の行為者が被害者などから取り押さえされて身柄を拘束されるのを阻止しようとする意図のことです。
「罪責を隠滅する目的」とは、窃盗犯人が後日窃盗犯人として捜査官に検挙され、処罰されることとなると認められる罪責を無にしようとする意図のことをいいます。
Aさんは、呼び止められた警備員の制止を振り切って逃亡を図っており、上の目的のいずれかを有していたと考えられるでしょう。

③暴行・脅迫
暴行・脅迫は、相手方に対する有形力の不法な行使、害悪の告知であり、その程度は、相手方の反抗を抑圧するにたりるものであることを要します。
また、暴行・脅迫は、窃盗の現場ないし窃盗の機会になされていることが必要です。

通常の万引きであれば、窃盗罪に問われ、有罪となれば、その法定刑(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)の範囲内で刑罰が科されることになりますが、事後強盗で有罪となれば、5年以上の有期懲役が科されることになります。
事後強盗罪に該当するかは、暴行・脅迫の程度にもよりますので、早期に弁護士に相談し、適切に対応することが求められるでしょう。

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