セルフコーヒーで窃盗
セルフコーヒーで窃盗が成立する場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都町田警察署は、東京都町田市のコンビニで、コーヒーのレギュラーサイズを購入したのに、カフェラテのラージサイズの量を注ぎ盗んだ疑いで、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
コンビニで手軽に本格コーヒーを飲むことができると人気があるセルフコーヒーですが、中にはそのサービスを悪用する人も少なくないようです。
コンビニのセルフコーヒーに関連した事件がニュースなどでたびたび取り上げられますが、それらのほとんどは、値段が一番安いコーヒーを注文し、実際にはより値段の高い他の種類のコーヒーや量を増やして購入したカップに注ぐといった犯行態様です。
このような場合、「窃盗罪」の罪責に問われることが多くなっています。
詐欺罪ではないの?
「安いコーヒーを買うと思わせて、実際はもっと高いコーヒーを入れてるんだから、詐欺じゃないの?」と思われる方も多いと思います。
(1)詐欺罪
詐欺罪は、
①人を欺いて財物を交付させた場合、及び
②人を欺いて、財産上不法な利益を得、又は他人にこれを得させた場合
に成立する罪です。
詐欺罪の成立で重要なのは、「人を欺いて錯誤を生じさせ、その錯誤に基づいて財物・財産上の利益を交付させる」という点です。
つまり、「欺罔行為」→「錯誤」→「交付行為」→「物・利益の移転」という因果関係がなければなりません。
上の事例について考えてみましょう。
Aさんが、「カフェラテのラージサイズを注いでやろう。」と思ってレジでコーヒーのレギュラーサイズを注文したのであれば、Aさんの欺罔行為により、店員がそれを信じてコーヒーのレギュラーサイズのカップを渡し、Aさんはそのカップにカフェラテのラージサイズ分を注ぎ込んだのであれば、詐欺罪は成立するものと考えられます。
しかしながら、実際にレジで注文する時点で店員を騙してやろうと思っていたかどうかという、人の内心について明らかにすることはそう簡単ではありません。
「最初は注文したものを注ぐつもりだったのだけど、その後に心変わりして…。」と主張するケースも少なくありません。
(2)窃盗罪
窃盗罪は、「他人の財産を窃取した」場合に成立する罪で、他人の所有する財物の占有を移転し、それを取得した場合に成立するものです。
簡単に言えば、人の物を勝手に自分のものにすることです。
ただ、この罪の成立には、条文にはありませんが、「不法領得の意思」がなければならないとされています。
「不法領得の意思」というのは、「権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的法用法に従い利用、処分する意思」のことです。
そのため、一時的に使用して後で返すつもりだった場合や嫌がらせのために隠した場合には、不法領得の意思が認められず窃盗罪は成立しないことになります。
さて、コンビニのセルフコーヒーの話に戻りましょう。
Aさんは最初から騙すつもりではなかったのであっても、途中で心変わりしてカフェラテのラージサイズが欲しくなり、実際にカフェラテのラージサイズのボタンを押したのだとしましょう。
Aさんはコーヒーのレギュラーサイズ分の料金は支払っているもののカフェラテのラージサイズ分の料金は支払っておらず、カフェラテのラージサイズの商品についてはコンビニの管理者(店長)の所有下にあるままです。
それにもかかわらず、自分の物にしようと購入したカップに商品を注ぎ入れたのであれば、他人の所有する財物の占有を移転し取得したと言えるでしょう。
また、カップに注ぎ入れたコーヒーを後で返すつもりだったとか嫌がらせのために隠すつもりだったということも普通は考えられませんから、自分で消費するつもりだったとして不法領得の意思も認められ、窃盗罪が成立することになるでしょう。
このように、事例においてどのような罪が成立するかは、レジで注文する際に行為者がどのようなことを思っていたかによって異なります。
人の心の内ですので、立証することはそう簡単ではありませんが、例えば、何度も同じ行為を繰り返しているような場合には、最初から騙すつもりだったと認められる可能性もあります。
詐欺罪と窃盗罪とは、その法定刑も異なり、成立する罪によって最終的な処分も違ってくることもありますので、弁護士に相談し、きちんと対応することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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