窃盗と責任能力

2021-02-18

窃盗責任能力について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
神奈川県平塚市のコンビニで、商品を万引きしたとして、市内に住むAさんが窃盗の容疑で現行犯逮捕されました。
Aさんは、これまでも万引きで前科前歴があり、直近では昨年平塚簡易裁判所から罰金の略式命令が言い渡されていました。
神奈川県平塚警察署から逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、精神疾患が万引きに影響しているのではないかと弁護士に相談しています。
(フィクションです。)

犯罪の成立

犯罪とは、「構成要件に該当する、違法で有責な行為」であると一般的に理解されています。
つまり、ある行為が犯罪であると言うためには、
①構成要件に該当すること、
②違法であること、
③責任があること
という3つの要件をすべて備えていなければならないのです。

①構成要件該当性
「構成要件」というのは、法律により犯罪として定められた行為の類型のことです。
窃盗罪についていえば、「他人の財物を窃取」するということが構成要件となります。

②違法性
そして、犯罪であるというためには、構成要件に該当する行為が「違法」でなければなりません。
法律に犯罪であると定められた以上、その行為は「違法」であるといえますが、法律は、その違法性を例外的に阻却する場合についても定めています。
例えば、人を殺したことは事実であるけれども、自分の身を守るためだった場合には、正当防衛として違法性が阻却され犯罪が成立しないことがあります。

③有責性
犯罪であるというためには、構成要件に該当し、違法である行為が行為者により有責に行われたのでなければなりません。
換言すれば、構成要件に該当し違法な行為であったとしても、それを行ったことについて責任が認められなければ犯罪は成立しないのです。
「責任がある」といえるためには、行為者が「ダメだと分かっているのにあえて自らの意思でやった」といえなければなりません。
つまり、行為者が「行為の是非を弁別し、かつ、これに従って行動を統制できる能力」(=責任能力)がなければ、当該行為者が構成要件に該当する違法な行為を行ったとしても、それは有責に行われたとは言えないのです。
刑法は、心神喪失者について、責任能力が欠けるため責任阻却を認めています。
「心神喪失」とは、精神の障害により、行為の違法性を弁識し、その弁識に従って行動を抑制する能力を欠く状態をいいます。
一方、「心神耗弱」とは、精神の障害により、行為の違法性を弁識し、その弁識に従って行動を抑制する能力が著しく限定されている状態をいいます。
心神耗弱者の場合については、責任能力は存在するものの、著しく限定されているため、責任減少を認め、その刑は減軽されます。
また、刑事未成年者についても、責任能力を否定しています。

窃盗と責任能力

窃盗の場合も、人の物を盗んだのであれば、通常、犯罪が成立するものと考えられますが、責任能力がないと判断されれば、犯罪の成立は肯定されないことになります。
窃盗犯が犯行時に何らかの精神病を患っていたのであれば、その精神障害がどの程度影響したのかが問題となります。
これには、医師の精神鑑定、犯行時や犯行後の言動など総合的に考慮して、犯行時に精神障害がどの程度影響していたのか、つまり、精神障害により、行為の違法性を弁識し、その弁識に従って行動を抑制する能力を欠いていたのか否かが検討されるのです。
犯行当時、精神障害により、行為の違法性を弁識し、その弁識に従って行動を抑制する能力を欠いていたのではないかという疑いを払拭することができないと裁判官が考えるのであれば、裁判では無罪が言い渡されることになります。

ただ、責任能力を欠いている、責任能力が著しく限定されていると刑事裁判で認められるのは、相当程度重度の精神疾患がある場合などであり、そう多くはありません。
そのため、責任能力を争いたい方や責任能力について疑問を呈されている方は、早期に刑事事件に強い弁護士に相談し、しっかりと裁判に向けて準備をされるのがよいでしょう。

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