窃盗幇助犯で逮捕②

2019-05-25

窃盗幇助犯で逮捕②

~前回からの流れ~
神奈川県茅ケ崎市内に住むAさんは,神奈川県茅ケ崎市内にある本,CD,DVD,BLの販売,レンタル業を営むお店の店長を勤めていました。
そして,ある日,Aさんは知人Bさんから「DVD,BL観たいんだけど,お金がない」「お前の力で何とかしてくれないだろうか」と言われました。
AさんはBさんの言わんとしていることを察し,かつてBさんから金銭的に助けられた借りがあったことから,今度は自分が力になろうと思い,「分かった」「お店の鍵を持っているから,閉店後に裏口のドアの鍵を開けておく」「そこは防犯ブザーなどないから安心だよ」と言いました。
その後,Bさんは,Aさんに言われたとおり無施錠のお店の裏口から店内に侵入し,DVD3枚,BL3枚を盗って再び裏口から外に出たところ警備員に見つかり逮捕建造物侵入罪窃盗罪)されてしまいました。
Aさんは,建造物侵入罪窃盗罪幇助犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

前回の「窃盗幇助犯逮捕①」では,「幇助犯の意義」,「成立要件」,「幇助犯の刑の重さ」について解説いたしました。
そして,幇助犯については,「正犯の刑が減軽される」ことを最後にご紹介したと思います。
そこで,今回は,刑事事件について刑の重さがどのように決められるのか解説した上で,本件の場合の刑の種別,重さの見込みについてご紹介したいと思います。

~ 刑の種別,重さ(量刑)が決められる過程 ~

裁判で「有罪」と認定された場合,刑の種別,重さ(量刑)が言渡されます。
量刑確定まで過程は以下のとおりです。

成立する犯罪の確定→犯罪の「法定刑」を確認→成立する「罪数」を確定→「処断刑」を確定→(併合罪の場合,併合罪の加重)→裁判官が「情状」を考慮→量刑確定

では,本件の法定刑をみていきましょう。

= 法定刑 =
法定刑とは,法令上定められている刑の種別,重さの範囲のことをいいます。
建造物侵入罪の法定刑は,刑法130条前段によると,「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
また,窃盗罪の法定刑は刑法235条によると「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

= 罪数 =
次に罪数を決めます。
罪数とは成立した犯罪の個数のことで,量刑を決める上で大きな意味を持ちます。
罪数は大きく「併合罪とそれ以外(一罪)」の場合とに分けられますが,併合罪の場合は,「その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1(つまり刑の長期の1.5倍)を加えたものを長期とする(刑法47条前段)」とされており,量刑の基礎が重くなるからです。

では,本件の場合,どうでしょうか?
本件の場合,お店に入る行為が「手段(建造物侵入罪)」,物(DVD等)を盗るという行為が「結果(窃盗罪)」にあたります。
このように,犯罪の「手段」若しくは「結果」である行為が他の罪名に触れる場合を「牽連犯」と呼び,牽連犯の場合,「最も重い刑により処断する(刑法54条1項後段)」とされています。
つまり,本件の場合,最も重い窃盗罪の「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」を基準に処断するということになります。

= 処断刑 =
「法定刑」に加重・減軽事由を考慮して決められた刑のことを「処断刑」といいます。
加重事由については説明を省略します。

減軽事由は「法律上の減軽事由」と「裁判上の減軽事由」に分かれますが,前回の「窃盗幇助犯逮捕①」でご紹介した刑法63条(従犯の刑は,減軽する)は「法律上の減軽事由」で,しかも,「減軽することができる」ではなく「減軽する」となっていますから,「必ず減軽される」ことになります。
必ず減軽される事由としては刑法63条の場合以外にも,心神耗弱の場合(刑法39条2項)などがあります。

* 減軽の方法 *
減軽の方法については刑法68条以下に定められてます。
刑法68条3号によると,懲役刑を減軽する場合は「その長期及び短期の2分の1を減ずる」とされています。
また,罰金刑を減軽する場合は「その多額又は寡額の2分の1を減ずる」とされています。
したがって,本件の「法定刑」を減軽した場合,「5年以下の懲役又は25万円以下の罰金」が「処断刑」ということになります(酌量減軽(刑法66条)が認められない場合)。

= 裁判官が「情状」を考慮 =
最後に,裁判官が裁判に現れた証拠を基に,被告人にとって有利な情状,不利な情状を考慮し,上で確定した刑(5年以下の懲役又は25万円以下の罰金)の範囲内で刑の種別,重さ(量刑)を決めます。

情状にもよりますが,Aさんは懲役であれば最高で5年,罰金であれば25万円の刑を科される可能性はありますが,いずれにしても正犯のAさんよりかは刑が軽くなることがお分かりいただけたと思います。

~ おわりに ~

以上,刑事事件における量刑の決め方,本件の場合の刑の種別,重さの見込みについてお分かりいただけましたでしょうか?
実際の裁判では,最後にご説明した「情状」の部分が量刑を決める上で大きく影響します。
そのため,少しでも軽い量刑をお望みの方は,裁判で的確に情状を主張,立証していく必要があります。

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