窃盗と事後強盗

2021-06-24

窃盗事後強盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは、東京都杉並区のスーパーマーケットで買い物をしていました。
所持金は1万円以上あったものの、段々とお金を払うことが惜しくなったAさんは、未精算の商品数点をマイバッグに入れ、精算済みのように装って、かごに入れた商品については通常通りセルフレジで精算しました。
スーパーマーケットを出ようとしたところで店員に声をかけられたAさんは、頭が真っ白になり、店員の身体を力いっぱい押してしまいました。
すると、店員は倒れ、倒れた際に怪我をしてしまいました。
Aさんは、通報を受けた駆け付けた警視庁荻窪警察署の警察官に、事後強盗の容疑で逮捕されました。
Aさんは、調べに対して、「万引きが見つかって慌てた。相手に怪我を負わせるつもりはなかった。」と話しています。
(フィクションです。)

万引きを行った場合、通常は、窃盗罪が適用されます。
しかし、万引きが店員などに見つかり、逃げようとして店員などを殴ったり押したりすると、窃盗ではなく事後強盗の罪に問われる可能性があります。

事後強盗とは

刑法第238条は、

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

と規定しています。
つまり、本条は、窃盗犯人が、ある条件のもとで暴行・脅迫を行う行為を強盗とするとしています。

■主体■

事後強盗の主体は、「窃盗」です。
ここでいう「窃盗」は、窃盗犯人のことです。
窃盗犯人ですので、詐欺罪や強盗罪といった罪の犯人はこれに含まれません。
また、窃盗罪の実行に着手した者であればよく、窃盗自体の既遂・未遂は問いません。

■行為■

事後強盗罪の実行行為は、「暴行・脅迫」です。
事後強盗罪は強盗として論じられるものであるため、暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度で、財物の取返しや逮捕の行為を抑圧するに足りる程度のものであることが必要となります。
暴行・脅迫は、窃盗の被害者に対して行われたものである必要はなく、身柄を確保しようとした第三者に対するものでも構いません。

また、問題となる暴行・脅迫は、窃盗の機会に行われていなければなりません。
換言すると、窃盗と暴行・脅迫との間に、状況的なつながりが求められます。
窃盗の機会に行われた暴行・脅迫であるかどうかの判断は、窃盗と暴行・脅迫との間の時間的・場所的近接性、関連性を考慮して行われます。
場所的接近性については、暴行・脅迫のなされた場所が、窃盗の犯行現場又はこれに接着した場所であること、時間的接近性に関しては、暴行・脅迫をした時点が少なくとも窃盗に着手した以後であって、遅くとも窃盗の犯行終了後間もないことが考慮される要素となります。
関連性については、時間的、場所的に離れている場合でも、被害者に追跡され続けている場合のように、暴行・脅迫したことと、窃盗の事実との間に関連があることが考慮されます。

■目的■

事後強盗罪の成立には、暴行・脅迫が「財物を得てこれを取り返されることを防ぐ」、「逮捕を免れる」、あるいは、「罪跡を隠滅する」ために行われることが必要となります。
被害者が実際に財物を取り戻す行為や逮捕する行為をしていない場合でも構いません。

Aさんは、万引きが発覚して慌てて相手を押し倒したのですが、逮捕を免れるために咄嗟に暴行を加えたと認められる可能性があります。

事後強盗は、強盗として論じられるため、その法定刑も強盗罪と同様の5年以上の有期懲役です。
また、相手方に怪我を負わせた場合には、強盗致傷となる可能性があり、その場合の法定刑は無期又は6年以上の懲役と、刑が加重されます。

万引きであっても、その後の態様により事後強盗や強盗致傷となることもあります。
強盗致傷罪は、法定刑も重く、裁判員裁判対象事件ですから、事案を十分に分析し、場合によっては、窃盗罪と傷害罪とに認定落ちする形で事実認定するよう、検察官に働きかける必要が出てくることもあります。
また、窃盗も強盗も財産犯ですので、何よりも被害者に対して被害弁償をし、示談をする必要があります。
犯行の際に、被害者に対して暴行・脅迫を行っていることから、被害者感情が強く、示談交渉がスムーズに進まないことが予想されますが、弁護士は、被害者の気持ちに寄り添いながら粘り強い示談交渉を行うことが期待されます。

事後強盗罪は重い罪ですが、できる限り寛大な処分となるよう早期に弁護士に相談し、弁護を依頼されるのがよいでしょう。

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