窃盗の共犯事件

2021-06-17

窃盗共犯事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
福岡県若松警察署は、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、知人のBさん、Cさんと共謀し、市内の事務所に深夜侵入し、現金やパソコンなどを盗んだと疑われています。
Aさんは、「BやCが事務所に入って盗んだのであって、自分は車で待機して見張るように言われていただけだ。」と供述しています。
(フィクションです。)

共犯とは

共犯とは、広義には、2人以上が協力して犯罪を実現する場合のことをいいます。
共犯は、法律上、単独犯として規定されている犯罪を2人以上の者が協力して行う場合を任意的共犯といい、刑法などの規定上、本来的に2人以上の者の共同の行為が必要とされている場合を必要的共犯といいます。
窃盗犯は、任意的共犯であり、それは更に、共同正犯、教唆犯、幇助犯に分類されます。

共同正犯

共同正犯は、2人以上の者が、1個の犯罪を共同して実現する意思の連絡のもとに、各人が実行行為の一部を分担して犯罪を実行した場合のことです。
共同正犯は、他人と犯罪を共同実行した者は、各自がそれぞれ惹起した結果だけでなく、他の共同者が惹起した結果についても責任を問われるという点に特徴があります。
それは、2人以上の者が共同して犯罪を遂行するという合意に達し、その共同実行の意思のもとに、相互に他人の行為を利用して補充し合って犯罪を実現した場合、それぞれの関与者の行為は一体となって犯罪の遂行に結び付いたと認められるからです。
共同正犯の成立には、①共同実行の事実、及び、②共同実行の意思、が必要となります。

②共同実行の意思
共同正犯の成立に必要な主観的要素である「共同実行の意思」とは、2人以上共同して、ある構成要件に該当する事実を実現しようとして通じ合う意思のことです。
窃盗であれば、犯罪を行うに際して、他の実行者との間で、相互に他人の行為を利用し補充し合って、「他人の財物を不法領得の意思に基づいて窃取する」ということを実現させる意思を共有していなければなりません。
単に他人の行為を傍観したり認識しているだけでは、共同実行の意思があるとは認められません。

①共同実行の事実
共同実行の事実とは、2人以上の者が共同して実行行為を行うことをいいます。
「共同して」というのは、共同者全員が相互に他人の行為を利用し補充し合って犯罪を実現することを意味します。
共同実行の事実には、共同者全員が実行行為を分担しあって犯罪を実現する場合(「実行共同正犯」)と、複数人が特定の犯罪を行うため、共同実行の意思のもとに相一体となって、互いに他人の行為を利用し各自の意思を実行に移す謀議をなし、これら共謀者のうちのある者が共同の意思に基づいて実行した場合(「共謀共同正犯」)との2つの態様があります。
共謀共同正犯の場合、直接的には実行行為に及ばなかった者でも、謀議により共同正犯の責任を負うことになります。

共謀共同正犯は、2人以上の者がある犯罪の実行を共謀し、共謀者のうちある者が共謀に係る犯罪を実行したときは、現実には実行行為を行わなかった他の共謀者もまた共同正犯として処罰されるものです。
共謀共同正犯も共同正犯の1種であるため、その成立要件も基本的には共同正犯の成立要件と同じです。
ただ、共謀共同正犯の特性を鑑み、通常は、①2人以上の者が、ある犯罪の実現について共謀したこと、②その共謀者の中の一部の者がそれを実行したこと、③共謀者が正犯意思を持つこと、の3つが成立要件とされています。
①の要件については、「2人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする協議をなし」たことであると解されています。(最決昭43・3・21)
③の要件については、共謀者が、たとえ一部の者に実行させるにしても、それが自己の犯罪であると認識していること、つまり、自らが正犯であるとの意思を持つことが必要となります。
正犯意思については、動機、共謀者と実行行為者との関係、共謀者自身の関与の態様、共謀者の果たした役割の重要性、犯行前後の状況、犯罪の性質や内容等を考慮して判断されます。
以上の要件を充たす場合には、実際に実行行為を行っていなくても正犯として処罰されることになるのです。

上記事例のように、窃盗事件の見張り行為をどのように評価するかは、昔から争いがあります。
判例は、被告人が事前に共謀して見張り行為を分担するような場合には共同正犯としているものが多くあります。
ただ、共同正犯として認められるには、単に見張りをしたということだけではなく、見張り行為の役割の重要性、共犯者に与えた安心感、見張りによる窃取行為の円滑性などの効果について検討し、見張り行為が窃取行為に匹敵する犯罪的価値のある行為であると評価されることが重要となります。

事案によっては、幇助にとどまるとされることもありますので、窃盗の共同正犯が疑われている場合には、弁護士に相談し、その後の対応について適切なアドバイスをもらう必要があるでしょう。

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