窃盗事件で無罪主張

2021-02-04

窃盗事件で無罪主張を行う場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都練馬区のスーパーマーケットで、千円ほどの食料品を万引きしたとしてAさんは警視庁石神井警察署窃盗の容疑で逮捕されました。
その日は、Aさんの家族が警察署に迎えに来て、Aさんは自宅に戻ることができました。
Aさんは、精神科に通院しており、事件当時のことは記憶にありません。
過去にも万引きの前科・前歴があり、その後、東京地方検察庁はAさんを窃盗罪で起訴しました。
東京地方裁判所から、起訴状と弁護人の選任についての問い合わせの書面がAさんの元に届きました。
(フィクションです)

あなたが窃盗罪で起訴されたとしましょう。
起訴前に検察官からの取調べの際に、「起訴しますので、弁護士を探しておいてください。」と言われたり、裁判所から起訴状が郵送されて弁護人の選任についてどうするかの問い合わせがあって、弁護士を探される方も少なくありません。

弁護士は、裁判において、被告人の権利及び利益を擁護するため、被告人の防御権の十分な実現を図るため最善の弁護活動を行います。
まずは、裁判でどのような主張をするのかについて被告人と十分に相談した上で決めます。
どのような主張を行うかということを決める前提として、起訴状に記載されている事実について認めるか、認めないか、ということが問題となります。
起訴状に記載されている事実の通りに事件を起こしたことを認める場合であっても、無罪主張する場合もあります。

起訴状に記載されている事実を認める場合、通常は犯罪が成立し、有罪となります。
しかし、犯罪が成立するためには、起訴状に記載されている事実が認められるだけではなく、他に違法性と責任能力という2つの要件が必要となります。

違法性

違法性というのは、例えば正当防衛のように、自らの身を守るような例外的な事態のために、あえて犯罪を行ったような場合に、行為が違法ではないとされて無罪となります。
違法性がなくなるとされる理由は、刑法で定められています。(正当行為、正当防衛、緊急避難)

責任

罪を犯したときに処罰されるのは、「悪いことなのに、それをした」という「非難」がなされるからです。
そのため、例えば5歳の子供が万引きをした場合、子供なので自分のやったことの意味が分かっておらず、非難することができないと考えられているため処罰されないことになります。
これと同じように、刑法は、「心神喪失者の行為は、罰しない」(刑法第39条1項)、「心身耗弱者の行為は、その刑を減軽する」(同乗2項)としています。
「心神喪失」というのは、①精神の障害により、事物の理非善悪を弁識する能力がなく、又は②この弁識に従って行動する能力のない状態、のことです。
①は、精神の障害により、物事の善悪が判断できない状態になっていることで、②は、物事の善悪が判断できてはいるけれども、行為を思いとどまることができない状態であることを指します。
この①又は②の要素を満たすかどうかの判断は、何らかの病気が診断されていたとしても、好不調の波や、犯罪の程度、実際の行為の内容や目的の一貫性等を考慮して、心神喪失に当たるかどうか判断されます。
「心神耗弱」は、心神喪失と異なり、①又は②の能力が全く失われているのではなく、これらの能力が著しく減退した状態を指します。
なお、心身耗弱者に当たる場合には、その刑を減軽すると定めているだけですので、処罰を受けることに変わりはなく、無罪判決を得られるものではありません。

上記事例のように、精神病の影響が万引き行為に大きく働いたと考えられる場合には、責任能力がない、もしくは責任能力が著しく乏しい状態であったとして、無罪あるいは情状弁護をしていくという選択肢も考えられるでしょう。

ご家族が万引きで逮捕されて対応にお困りであれば、弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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