窃盗と親族相盗例

2021-02-25

窃盗親族相盗例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aは、趣味のギャンブルのため生活費が底をついて困っていました。
Aは、息子の義父Vが会社を経営していることを思い出しました。
そこで、息子が工場長を務めるVの会社の工場に侵入し、金庫から現金50万円を盗みました。
後日、Aは窃盗と建造物侵入の容疑で埼玉県草加警察署に逮捕されました。
(フィクションです。)

親族相盗例とは

刑法は、窃盗罪における親族相盗例を認めています。
刑法244条1項は、
配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
と規定しています。
これが「親族相盗例」と呼ばれるものです。

親族間の窃盗であれば刑が免除されることになっているのですが、これは、「法律は家庭に入らない。」とする刑事政策的思想に基づくものであって、家庭内の窃盗などの一定の財産犯罪については、国の刑罰権の行使を差し控え、家庭内の自律に委ねようという考えがあってのものです。

この親族相盗例が認められる要件としては、
①配偶者
②直系血族
③同居の親族
との間で窃盗を犯したこととなります。

①配偶者には、内縁関係にある者は含まれません。
②直系血族とは、直系の関係にある血族のことをいいますが、具体的には、自分の祖父母、両親、子、孫を指します。
③同居の親族に関して、まず、「親族」とは、民法725条の規定によれば、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を意味します。
刑法244条1項では、①配偶者、②直系血族がすでに規定されているので、③同居の親族については、6親等内の傍系血族及び3親等内の姻族を指すものといえるでしょう。
それらの親族のうち「同居している」ものに限られますが、同居しているといえるためには、同一家計の下に居を定めて日常生活を共にしていなければなりません。
そのため、同じ家で暮らしていたとしても、生計を全く別にしている場合には「同居の親族」とは言えません。

そして、窃盗犯人が所有者以外の者の占有する財物を窃取した場合においては、親族相盗例が適用されるためには、窃盗犯人と、財物の所有者及び占有者とのいずれとの間においても、刑法244条1項に規定される親族関係が存在していなければなりません。
そのため、上記事例のように、盗んだ現金の所有者である会社社長とAとの間には何ら求められる親族関係がない場合には、親族相盗例が適用されず、Aに対する窃盗罪が成立することになります。

仮に親族相盗例が適用された場合でも、窃盗罪が成立することには変わりありません。
ただ、その効果として刑が免除されるため、窃盗で起訴され有罪となっても、「被告人に対し刑を免除する。」と言い渡されることになります。

窃盗のような財産犯では、損害が回復されたかどうか、つまり、盗んだ物を返したり、金銭的に賠償したかどうかが最終的な処分に大きく影響します。
そのため、窃盗事件においては、被害者への被害弁償や示談を成立することができるよう、早期に弁護士を介して被害者対応をきちんと行うことが重要です。

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