窃盗事件:盗品を返却した場合

2020-12-31

窃盗事件で盗品返却した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
ある日、大阪府大阪市生野区にあるスーパー銭湯の従業員は、休憩スペースに置いてあったある漫画本が全巻なくなっていることに気が付きました。
上司にも報告し、大阪府生野警察署に相談することも検討していたところ、1週間後のある日、他の従業員が、休憩スペースで持参したカバンから漫画本を大量に出している不審な客を見つけました。
従業員がその客に尋ねたところ、「盗んだのではなく、読んだら返そうと思って借りただけ。」と回答し、あくまで借りただけであると主張しています。
店側は、以前から何度も漫画本がなくなることがあったため、この件について警察に相談することにしました。
(フィクションです)

窃盗罪

人の物を勝手に持ち帰る行為は、窃盗罪に当たるように思われますが、まずは、窃盗罪はどのような場合に成立するのかについて考えてみましょう。

窃盗罪については、刑法235条で以下のように規定されています。

「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

1.客観的要件

まず、窃盗罪が成立するための客観的な要件としては、①他人が占有する、②他人所有の財物を、③窃取する、ことがあげられます。
①の「占有」というのは、人が財物を事実上支配し、管理する状態のことをいい、占有は、占有の事実及び占有の意思の2要素で構成されています。
つまり、占有者が財物を事実上支配している状態があり、かつ、占有者が財物を事実上支配する意欲・意思を有している場合に、占有が認められます。
スーパー銭湯の休憩スペースに置いてある漫画本は、店が占有する店所有の財物と言えます。
休憩スペースで客に漫画本が提供され、それを一時的に読むなどして客が占有することがあっても、そのことで、店の漫画本に対する占有が失われることにはなりません。
③の「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。

2.主観的要件

次に、主観的な要件として、他人が占有する他人所有の財物を窃取するという認識(窃盗の故意)の他に、「不法領得の意思」というものが必要であると考えられています。
窃盗罪は故意犯であり、自らが遂行する実行行為を認識・認容していることが必要となります。
窃盗の故意の内容は、財物に対する他人の占有を排除して、自己又は第三者の占有に移すことについての認識・認容です。
「不法領得の意思」については、主観的要件として刑法で特段規定されているわけではありませんが、判例上、故意に加えて、主観的要素として「不法領得の意思」が必要であると考えられています。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し処分する意思のことです。
権利者を排除する意思があるか否かは、財物の一時使用の場合に窃盗に該当するか否かを判断する上で重要であり、経済的用法に従い利用処分する意思があるか否かは、窃盗と毀棄隠匿とを区別するために重要です。

盗品を返却した場合

盗んだ物を持ち主に返したことをもって、窃盗罪の成立を妨げることにはなりません。
盗品返却したとしても、窃盗罪が成立するための要件を充たしているのであれば、窃盗罪は成立することになります。
ただ、盗品返却したという事実が、被疑者・被告人に有利な事情となり、検察官が起訴・不起訴を判断する際や裁判官が言い渡す刑を考える際に考慮される材料とはなるでしょう。

さて、問題なのは、犯人とされる者が「最初から返すつもりだった」と主張する場合です。

先にも述べたように、窃盗罪が成立するためには、主観的要素である「不法領得の意思」がなければなりません。
権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し処分する意思がなければ、窃盗罪は成立しません。
そのため、他人の物を利用し、利用後は元に戻す意思で物を持ち去って利用するような一時使用行為においては、権利者を排除する意思が認められるかが問題となるのです。
権利者を排除する意思が認められるか否かについては、利用により価値の減少や消耗が生じたり、その危険性が大きい場合には、権利者でなければできない利用である点で権利者を排除する意思が認められます。
また、利用の妨害の程度が大きければ、権利者を排除する意思が認められます。

上の事例について考えてみましょう。
店の利用客は、店に置いてある漫画本全巻を持ち帰っていました。
この客は、「返すつもりで持って帰った」と述べており、自分の行為は一時使用行為であると主張しています。
そして、この客は、実際に持ち去った漫画本を返しています。
漫画本自体は、消耗品ではないため、本に傷や汚れ等がなければ本としての価値は減少しないでしょう。
しかしながら、持ち去ってから返却されるまでの期間は、少なくとも1週間です。
この点を考えると、ある漫画本全巻が1週間持ち去られたことにより、その期間中、他の客が当該漫画本を利用することができないという事態が生じるわけですので、店としても利用の妨害が生じたと考えることもできるでしょう。
そのため、上の事例において、「不法領得の意思」が認められ、窃盗罪が成立する可能性はあるでしょう。

そもそも、施設の休憩スペースに置いてある漫画本は、その場で利用することが想定されていますので、施設外に漫画本を持ち去っておきながら、「返すつもりだった」という弁解を通すのは難しいでしょう。

窃盗事件のような被害者がいる事件では、被害者への対応、具体的には被害弁償や示談を成立させることが最終的な処分に大きく影響します。

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