窃盗事件で職務質問

2021-03-18

職務質問について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府泉北郡忠岡町を警ら中の大阪府泉大津警察署の警察官は、窃盗事件の容疑者の特徴によく似た男を発見しました。
警察官は、男に職務質問をしようと声を掛けましたが、男は隙を見てその場から逃げようとしました。
警察官は男を追跡し、背後から男の腕を掴んで停止させようとしました。
男は、警察署での取調べで警察官による職務質問は違法だと主張しています。
(フィクションです。)

警察が犯罪の発生を認知することから当該犯罪の捜査が開始されます。
刑事訴訟法189条2項は、
 司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。
と規定しています。
「犯罪があると思料するとき」、つまり、捜査の端緒が得られた時には、現行犯人の発見、変死体の検視、告訴・告発、自首、被害者・第三者による被害の申告、職務質問などがあります。

職務質問を端緒として犯罪が発覚することは少なくありません。
警察官職務執行法2条1項は、
 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。
と規定しており、警察官は、異常な挙動をしている者等に対して質問をすることができることになっています。

職務質問が許されるための要件としては、
①異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者である。
②既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者である。
いずれかに当てはまる場合でなければなりません。
例えば、不自然な動作や季節に合わない服装をしている、深夜であるといった場合や、犯人と思われる人物と似ている場合などにおいては、警察官は職務質問を行います。
この職務質問は、行政警察活動としての手段であって、刑事訴訟法上の司法警察活動としての捜査ではありません。

以上のような要件が満たされている場合に警察官は職務質問を行うことになりますが、警察官職務執行法2条3項は、
 前2項に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身柄を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。
としており、あくまで任意的手段によるものとされています。
そのため、相手が職務質問に応じないときは、警察官は粘り強く応じるよう説得することになるのですが、相手がその場を立ち去ろうとする場合には、相手を停止させるためにどの程度の実力行使までが適法となるのでしょうか。

これについては、次のような裁判例があります。

警ら中の警察官が、夜間道路上で被告人に職務質問をし、駐在所に任意同行して所持品等について質問中、隙を見て被告人が逃げ出したことから、更に質問を続けるために約130メートル追跡し、背後から腕に手をかけた際に被告人から暴行を受けて怪我をしたという事件について、質問を続けるために追跡して背後から腕に手をかけて停止させる行為は、正当な職務質問の範囲内であるという判断を示したものがあります。(最高裁決定昭和29年7月15日)

明らかに建造物侵入が疑われるような不審な行動に出ていた被告人に対して、巡査が再三質問を繰り返し、やがて、段ボール箱からカメラなどを入れた紙袋を左手に持って出てきた被告人と50㎝くらいの間隔で相対峙し、被告人が階段に向かい逃げようとするのをその前面に立ちふさがって2,3m移動し、質問を引き続き繰り返したという事案について、当該巡査の行為は適法な職務質問であったと判断したものもあります。(広島高裁判決昭和51年4月1日)

犯罪の嫌疑が強まっている状況においては、多少の実力行使はやむを得ないものとされ適法な職務質問の範囲内と判断されるでしょう。
しかし、実力行使の内容が任意の許容限度を超えたと判断されれば、職務質問の違法性が認められることになります。

職務質問をはじめ捜査機関による捜査の適法性に問題があると疑問をもたれていらっしゃる方は、一度弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

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