窃盗罪か器物損壊罪か

2020-01-05

窃盗罪か器物損壊罪か

窃盗罪器物損壊罪かの違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

兵庫県宝塚市の会社に勤める会社員のAさんは、同僚Ⅴさんに会社内での営業ノルマの競争に負けた腹いせに、Ⅴさんの机上にあった財布を手に取り持ち去りました。
Aさんはトイレの個室内で中身を確認すると5000円札が2枚入っていたことから、そのうち1枚を手に取り、財布は自身の更衣室のロッカーに入れて保管していました。
その後、Aさんの部署内ではVさんの財布がなくなったことで騒動となりましたが犯人や財布の在りかは特定されずに1か月ほど経ちました。
ところが、ある日、Aさんは部長室に呼ばれ、部長から「あなたがVさんの財布を盗ったと兵庫県宝塚警察署から疑いをかけられているようだ。」「盗んだのであれば正直にいいなさい。」と言われました。
Aさんは言い逃れはできないと思い、部長に「自分がやりました。」と認めました。
その後、Aさんは兵庫県宝塚警察署窃盗罪の被疑者として呼び出しを受け、取調べを受けました。
今後のことが不安になったAさんは弁護士に相談すると、弁護士から「それは窃盗罪ではなく刑の軽い器物損壊罪に当たるかもしれない。」と言われました。
(フィクションです。)

~ 窃盗罪と器物損壊罪 ~

窃盗罪器物損壊罪の規定から確認します。
窃盗罪は刑法235条に規定されています。

刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

器物損壊罪は刑法261条に規定されています。

刑法261条(器物損壊罪)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

~ 弁護士が器物損壊罪を検討する理由 ~

まず、上の規定を見てお分かりいただけるように、両者の法定刑(刑の重さ)には大きな差があります。
窃盗罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」なのに対し、器物損壊罪は「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」です。
また、器物損壊罪は親告罪、つまり被害者の告訴がなければ起訴されない罪です。他方で、窃盗罪は親告罪ではありません。
仮に、本件で窃盗罪ではなく器物損壊罪が成立するとなった場合、その時点で告訴状がない、あるいは告訴状が提出された場合でも示談で告訴が取り消された場合は起訴されません(不起訴)。
つまり、告訴がなければ起訴されないという点では、窃盗罪よりも器物損壊罪の方が不起訴になる可能性は高いと考えます。
この点でも窃盗罪器物損壊罪には大きな差があります。

告訴状の提出を阻止したり、被害者に告訴を取り消してもらうには、まずは被害者に謝罪し、速やかに示談交渉に移る必要があるでしょう。
しかし、当事者間での示談交渉は感情のもつれなどもあって非常に困難を伴いますから、被害者との示談交渉は弁護士に依頼することをお勧めいたします。
弁護士であれば適切な形式、内容で示談を成立させることが可能です。

~ 窃盗罪と器物損壊罪との分水嶺は不法領得の意思の有無 ~

窃盗罪器物損壊罪との適用を分ける要素は「不法領得の意思の有無」です。
不法領得の意思があると認められる場合は窃盗罪、ないと認められる場合は器物損壊罪です。
判例は、不法領得の意思を「権利者を排除して他人の物を自己の所有物をして(権利者排除意思)、その経済的用法に従ってこれを利用若しくは処分する意思(利用処分意思)」と解しています。

本件では、Aさんは嫌がらせ目的でVさんの財布を持ち去っています。
この点だけ見れば、Aさんに財布(及びその中身のお金)の「利用処分意思」がなく、不法領得の意思が認められず器物損壊罪が適用されそうです。
しかし、Aさんは持ち去った後、財布から5000円札を抜き取り、それを何らかの用途に使ったものと思われます。
そうすると「利用処分意思」があり、不法領得の意思が認められ窃盗罪が適用されるようにも思えます。
これはあくまで事例上での判断で、実際の事案ではもっと複雑な事実が絡み合い、不法領得の意思の有無の判断も難しいと思われます。
お困りの際は弁護士にご相談ください。

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