他人の車の無断使用と窃盗罪の成否

2019-12-31

他人の車の無断使用と窃盗罪の成否

他人の車の無断使用窃盗罪の成否について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

AとVは,顔見知り程度の関係であったが,大阪府豊中市にあるA宅で友人数人と飲食を共にした。
酒を飲んだVは,今日は電車で帰り後日車を取りに来る旨告げて,A宅の近くに自車を残していった。
Vは,車の鍵等をA宅に置き忘れており,これをいいことにAはVが車を引き上げに来るまでの間,置き忘れた鍵を使ってV車を無断で乗り回していた。
後日,車を引き上げたVは上記事実に気づき,大阪府豊中警察署に相談した。
相談を受けた大阪府豊中警察署の警察官は,Aを窃盗罪の疑いで取り調べることにした。
Aは,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~他人の車を勝手に乗り回すのは窃盗罪?~

他人の自動車を勝手に乗り回したくらいでは,刑事事件になるとまでは思わないのが通常の感覚かもしれません。
しかし,本件のようなケースにおいては窃盗罪が十分に成立し得るのです。
以下,まずは条文に沿って解説いたします。

刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とすることを定めています。
この点,Aが勝手にVの車を乗り回す行為は,Vの車という「他人の財物」を,占有者であるVの意思に反してその占有をAに移転させるという「窃取」行為であることは明らかでしょう。
もっとも,上記の明文の要件を満たしただけでは窃盗罪は成立しないことに注意が必要です。
本件のようなケースにおいて問題となるのは,条文に書かれていない要件である「不法領得の意思」があるかどうかなのです。

窃盗罪のような財産犯においては,犯罪にあたる行為の認識(故意)の他に,判例上も,「①権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様に②その経済的用法に従いこれを利用しまたは処分しようとする意思」が必要だとされています。
本件では②が認められることは比較的明らかですが,①の権利者排除意思が認められるかがポイントとなります。
この点Aは,後日Vが車を引き上げに来ることを認識しており,Vの車を自分のものにしようとしたわけではありませんし,VはA宅近くに自車を置いたままにしておりその利用可能性は高いとはいえません。

しかし,AがV車を数日乗り回せば,ガソリンを費消し,タイヤ等の部品も摩耗します。
また,自転車などと異なり,自動車は経済的にも価値が高いと考えられることから,Vの自動車を勝手に使用する行為にはVという権利者を排除する意思が認められ,(不可罰である使用窃盗にはならず)窃盗罪が成立する可能性が認められると考えられます。

~窃盗罪と弁護士による示談活動~

窃盗罪を定める刑法235条は,刑罰として「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処すことができる旨を規定しています。
本件で懲役刑が下されるとは考えにくいところですが,罰金でも懲役刑と同様に前科となることに注意が必要です。
特に本件のようなケースに,さらに交通法規違反などが絡む場合には事態は深刻化する可能性もあります。

まず,何よりも窃盗罪の弁護活動において重要なのが,被害者との示談を成立させることです。
被害弁償等による示談によっては,軽微な窃盗罪は十分に起訴猶予等の不起訴処分を得ることが可能です。
逮捕等を伴わない在宅捜査だからといって,事件を放置することは避けるべきであり,いち早く弁護士に相談することが重要です。

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窃盗事件で警察の取り調べ等を受けられた方は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に まずはお電話ください。
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