他人のキャッシュカードで現金引き出し

2021-03-04

他人キャッシュカード現金引き出した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
他人キャッシュカード現金引き出したとして、千葉県鴨川警察署は、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、被害者の方に謝罪と被害弁償を行いたいと考えています。
(フィクションです。)

窃盗罪の構成要件

刑法235条は、
 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
と規定しています。

1)客観的構成要件

窃盗罪の客観的構成要件は、
他人が占有する
他人所有の財物を
③窃取する
ことです。

①占有
刑法上の「占有」とは、財物に対する事実上の支配を意味するとされており、客観的要素としての財物に対する支配という事実と、主観的要素としての支配の意思から成るものと理解されています。

③窃取
「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、これを奪取することをいいます。
相手方が了解しているような場合であれば、それは任意の交付に当たり「窃取」には該当しません。
また、相手方の反抗を抑圧したり、畏怖させたりして奪う行為は「窃取」には含まれず、強盗罪や恐喝罪が成立することになります。

2)主観的構成要件

窃盗罪の主観的構成要件は、
①客観的構成要件を満たす行為に及んでいるという窃盗の故意
②不法領得の意思
の2つです。

①故意
窃盗は故意犯です。
窃盗罪の成立には、自らが遂行する実行行為の認識、認容が必要です。
つまり、財物に対する他人の占有を排除して、自己又は第三者の占有に移すことについての認識、認容がなければなりません。

②不法領得の意思
条文上明記されてはいませんが、「不法領得の意思」も判例上窃盗罪の主観的構成要件とされています。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し処分する意思のことをいいます。

他人のキャッシュカードで現金を引き出した場合

他人キャッシュカードを何らかの方法で入手し、そのキャッシュカードを使用してATMで現金引き出した場合には、どうなるのでしょうか。

まず、他人キャッシュカードを入手した点について、その行為自体が先に述べた窃盗罪の構成要件に該当する場合であれば、他人キャッシュカードを窃取したとして、当該キャッシュカードの持ち主である、当該預金口座名義人を被害者とする窃盗罪が成立することになります。

次に、他人キャッシュカードを使ってATMから現金引き出す行為についてはどうでしょうか。
これについても当該預金口座名義人が被害者となるのでしょうか。
この点、銀行の預貯金口座に預けられている金員は、いったい誰が占有していると考えられるのかが問題となります。

銀行と預金者との間で結んだ契約は、銀行が預金者が預け入れた現金については銀行が自由に消費することができ、銀行は、預金者が預け入れた現金と同額の現金を預金の引出しという形で預金者に返還することとしています。
つまり、預金者が預け入れた現金は、銀行がすでに消費してしまっており、これについて預金者が占有しているとは言えず、預金者は預金残高に相当する金員の返還請求権を有しているだけとなります。
しかしながら、返還請求権を有する預金者は、いつでも預貯金口座から金員を引き出す権限を持っており、実際いつでも自由に金員を引き出すことができるため、口座にある金員を占有していると理解することができます。
ただ、そのように考えた場合であっても、預金口座の残高に相当する金員については、銀行が保有している資金の一部として占有していることになるので、銀行の当該金員に対する現実的な占有が認められます。
そのため、他人キャッシュカードを使用してATMから現金引出した場合、ATM内に現金を保管・管理している銀行の現実的な占有を侵害したものとして、銀行を被害者とする窃盗罪が成立するものと考えられます。

以上、上の事例では、使用したキャッシュカードの名義人だけでなく現金を引出したATMを管理する銀行に対する窃盗罪が成立する可能性があります。
窃盗罪は財産犯であり、被害の回復の有無が最終的な処分にも大きく影響することになります。

窃盗事件で被疑者・被告人となり対応にお困りの方は、早い段階から刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

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