犯人性の否認

2019-12-21

犯人性の否認

犯人性否認について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

神奈川県秦野市にあるV宅において、深夜2時頃Vの所有するカメラが何者かによって窃取されるという事件が発生した。
Vの供述によると、事件の日、Vは友人であるAと自宅で深夜まで飲酒しており、酔いつぶれたVが朝目覚めると、Aは既にいなくなっており、カメラが無くなっていたとのことだった。
神奈川県秦野警察署は、事件から3日後に令状を取得してAの自宅を捜索したところ、A宅からVの所有していたものと同じ型番のカメラが発見されたことから、後日Aを窃盗罪の容疑で逮捕した。
Aは神奈川県秦野警察署の取調べに対し一貫して犯行を否認しており、「事件の日にV宅を出たのは次の日の仕事が早かったからだ。自宅にあったカメラは友人から貰ったものでV宅から盗んだものではない。カメラをくれた友人の名前はいいたくない」と供述している。
(上記の事例はフィクションです)

~犯人性について~

被疑者が自分の犯行を認めていない場合などには、当該事件おける被疑者が実際に犯行を行ったといえるかという問題が生じます。
このような当該事件の真犯人と被疑者の同一性のことを「犯人性」といい、この犯人性が認められなければ当然ですが被疑者が処罰されることはありません。

犯人性については、被害者や目撃者の供述などの被疑者の犯人性を直接認定し得る直接証拠から認定する場合と、指紋や盗品の所持などの犯人性を間接的に認定し得る間接証拠から認定する場合とがあります。

直接証拠については、それだけで犯人性を認定することが出来る強い証拠ですが、事件によっては直接証拠の存在しないものもあり、そのような場合には間接証拠から被疑者の犯人性を推認させる事実(間接事実)を認定していく必要があります。

上記の事例においては、Aは、VとV宅で深夜まで飲酒しており、そのままVが酔いつぶれて寝てしまっていたことから、Vのカメラを窃取することが容易かつ可能な状況にあったという事実も間接事実として機能することになるといえます。

~近接所持の法理について~

窃盗罪などの財産犯における犯人性を立証する方法として、近接所持の法理があります。
近接所持の法理とは、窃盗の犯行時点と近接した時点において盗品を所持していた者については、その物の入手経路について合理的な説明が出来ない限り、窃盗犯人であると認定することができるという法理をいいます。
これは、窃盗犯人以外の者が、犯行から近接した時点で盗品を取得することは通常考えられないという経験則から導かれる法理です。

上記の事例では、A宅からVの所有していたものと同じ型番のカメラが発見されています。
仮に名前や附属品や傷跡などから、発見されたカメラがV宅から盗まれたカメラと同じものであるといえれば、Aは盗品であるVのカメラを犯行のわずか3日後に所持していたことになります。

また、Aは「自宅にあったカメラは友人から貰ったものだ」と主張していますが、その友人の名前等の具体的な事情の説明をしていない以上、入手経路についての合理的な説明があったとはいえません。
そのため、Aについて盗品の近接時所持が成立しAの犯人性を基礎づける間接事実として機能することが考えられます。
こうした場合にどういった方針で主張をしていくのかは、刑事事件に詳しい弁護士のサポートを受けながら決めることが望ましいでしょう。

もっとも、仮にAがVのカメラを所持していたのが犯行から1ヶ月後であった場合、必ずしも犯行時点と盗品の所持時点が近接しているとはいえず、近接所持の法理の適用が難しくなります。
このような場合には、Aの弁護士としては、Aが盗品であるカメラを他人から譲り受けたという事実を主張してAの無罪を主張することも考えられます。

このように窃盗事件の弁護にあたっては、刑事事件に関する専門知識が不可欠です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件に強い刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗事件で逮捕された方のご家族は、フリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。

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