(東京都目黒区)窃盗罪と横領罪

2019-02-19

(東京都目黒区)窃盗罪と横領罪

(1)事例

東京都目黒区にあるコンビニのアルバイト店員Aは,勤務中の深夜2時ごろ,レジから現金30万円を抜き取った。
後日,店長Ⅴがレジの金銭が合わないことに気づき,監視カメラを調査したところ,Aがレジから金銭を抜き取るところが映っていたため,Aによる犯行であることが発覚した。
Ⅴが警察に通報し,Aは警視庁目黒警察署にて取調べを受けた。
なお,事件当夜,Aは一人勤務であり店長も店には不在であった。
(フィクションです。)

(2)窃盗罪

まず,Aに成立する犯罪として,窃盗罪が考えられます。
まず,窃盗とは他人の財物を「窃取」することをいいます。
そして,「窃取」とは,他人の占有する財物を,占有者の意思に反して,自己又は第三者の占有に移転させることです。
なお,窃盗罪の罰則は刑法235条に規定されており,「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされています。

(3)横領罪

次にこうした事例でイメージされやすい犯罪である横領罪について見てみましょう。
横領とは,他人からの委託に基づいて他人の物を占有している者がその物を委託の趣旨に背いて自己の物として利用処分することをいいます。
そして,横領罪には単純横領罪,業務上横領罪,遺失物横領罪の3類型が存在します。
業務上横領罪は,「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合に成立し,遺失物横領罪は「遺失物,漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した」場合に成立します。
なお,単純横領罪の罰則は「5年以下の懲役」,業務上横領罪は「10年以下の懲役」,遺失物横領罪は「1年以下の懲役若しくは10万円以下の罰金又は科料」とされています。

(4)窃盗罪と業務上横領罪

今回の事例についてみると,Aは店長Ⅴが保管するレジ内の現金30万円を勝手に自分の占有下に移転させているため,窃盗罪の成立が考えられます。
しかし,Aがコンビニ店員であることからすれば,Aは店長から夜勤を任されており,レジの管理についても委託されていると考えて,業務上横領罪が成立するのではないかとも思えます。
では,今回の場合,窃盗罪と業務上横領罪,どちらが成立すると考えればよいのでしょうか。

窃盗罪と横領罪の決定的な違いは対象となる財物に対し,占有があるか否かです。
なぜなら,窃盗罪は他人の占有を侵害する犯罪であるのに対し,横領罪は他人の占有を侵害する犯罪ではないからです。
つまり,今回の事例でいえば,レジ内の現金30万円に対し,アルバイト店員Aに占有がない場合には窃盗罪,占有がある場合には業務上横領罪が成立することになります。

(5)窃盗罪と業務上横領罪の区別

では,Aに現金30万円に対する占有があるか否かについてどのように判断すればよいでしょうか。
判例上,雇用関係等に基づき上下関係がある場合,下位者が財物を握持していても,上位者が占有者であり,下位者は占有補助者に過ぎないとされています。
つまり,今回の事例でいえば,店長Ⅴとアルバイト店員Aの場合,仮にAが夜間の一人勤務中で店の現金などを管理していたとしても,AはⅤの占有補助者に過ぎず,占有自体は店長Ⅴにあるため,Aに窃盗罪が成立することになります。
一方で,支店の支配人(支店長)のように,使用主(会社)との間に高度の信頼関係が存在し,ある程度の処分権が委ねられている場合には業務上横領罪が成立することがあります。

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