盗品を積極的に使う目的がない場合も窃盗?

2020-06-04

盗品積極的に使う目的がない場合に窃盗が成立し得るのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、かつて交際していた女性Vさんに対する嫌がらせの目的で、Vさんの自転車を駐輪場から持ち去り、Aさんの住むマンションの駐輪場にその自転車を置いていました。
Vさんは、マンションの管理人に自転車が見当たらないことを相談したところ、駐輪場付近の防犯カメラの映像を見せてもらうことになりました。
すると、防犯カメラの映像には、Aさんと思われる男性が自転車を持ち去っている様子が映っていました。
Vさんは、大阪府羽曳野警察署に相談しました。
Aさんは、大阪府羽曳野警察署から自転車の件で話が聞きたいと言われていますが、出頭する前に刑事事件に強い弁護士に事件について相談することにしました。
(フィクションです。)

他人の物を勝手に持ち去る行為は、窃盗の「窃取」に該当する他に、持ち去って物を使用できなくさせていることから、事実上、その物の効用を害しており、器物損壊の「損壊」にも該当することになります。

まずは、窃盗罪が成立する場合について説明します。

窃盗罪について

窃盗罪は、他人の財物を窃取する罪です。(刑法第235条)

◇犯行の対象◇

窃盗罪の客体は、「他人の財物」です。
「他人の財物」とは、「他人が占有する財物」のことをいいます。
窃盗における「占有」は、人が実力的に物を支配する関係と理解されており、物を客観的に支配している場合はもちろん、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含みます。

◇行為◇

窃盗罪の実行行為である「窃取」は、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことです。

◇不法領得の意思◇

不法領得の意思は、条文にはありませんが、判例上認められた要件です。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことをいいます。

◇故意◇

窃盗罪の故意(=犯意)は、他人の財物を窃取すること、つまり、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことについての認識・認容です。
先述した不法領得の意思とは別の要件となります。

それでは、上の事例について、Aさんの行った行為が「窃盗」の構成要件を満たしているのかについて考えてみましょう。

Aさんは、Vさんの自転車を駐輪場から勝手に持ち去り、自宅マンションの駐輪場に放置していました。
Vさんの意思に反して、自転車の占有を侵害し、自己の占有に移しているので、Aさんの行為は「窃取」に当たるものと考えられます。
しかし、その目的は、Vさんへの嫌がらせであり、Aさんは盗んだ自転車を使用するつもりも、実際に使用してもいませんでした。
この場合にも、窃盗罪は成立するのでしょうか。

窃盗罪が成立するポイントとしては、行為時に、不法領得の意思があるか否かです。
先述しましたが、他人の主有する者を勝手に持ち去る行為は、窃盗の「窃取」に該当するほか、持ち去って物を使用できなくさせている点で、事実上、効用を害しているため、器物損壊の「損壊」にも該当することになります。
窃盗か器物損壊か、いづれの罪が成立し得るのかという問題が生じますが、それを判断するポイントが不法領得の意思なのです。
不法領得の意思は、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思」です。
窃盗も器物損壊も、権利者を排除する点で同じです。
違いは、持ち去った物を経済的用法に従って利用し、又は処分する意思があるか否か、という点です。
経済的用法に従って利用・処分する意思は、経済的に利益を受ける意思はもちろんのこと、その物の用途にかなった使用をする意思や、財物から生じる何らかの効用を受ける意思で足ります。
この点、Aさんは自転車を持ち去った時に、それを使用するつもりはなく、あくまでもVさんへの嫌がらせのためであり、実際に持ち去った自転車を使用しておらず、ずっと自宅マンションの駐輪場に置きっぱなしにしていたのであれば、Aさんは、持ち去った自転車を経済的用法に従って利用・処分する意思がなく、何らの効用を受けておらず、不法領得の意思を欠いており、窃盗は成立しないことになります。
ただし、Vさんの自転車を持ち去ったことにより、Vさんは自分の自転車を使用することが出来なかったため、本来の効用を害しており、器物損壊が成立する可能性があるでしょう。

窃盗ではなく器物損壊が成立する場合、器物損壊罪は親告罪ですので、告訴がなければ公訴を提起することができません。
そのため、被害者との示談を成立させることにより、起訴を免れることができます。
被害者との示談交渉は、刑事事件に強い示談交渉に豊富な経験を有する弁護士に任せましょう。

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