ひったくりは窃盗罪?強盗罪?
ひったくりは窃盗罪?強盗罪?
大阪府池田市に住むAさんは、窃盗の意思で夜間人通りのない場所を通行中の女性Vさんに原付バイクで背後から接近し、そのハンドバッグをひったくろうとしましたが、Vさんが奪われまいとして離さなかったため、バッグの下げひもをつかんだまま原付バイクを進行させ、Vさんをバッグもろとも引きずって転倒させるなどしました。
Aさんは路上にバックが落ちていたことからこれを拾って現場から逃走しました。
このひったくりによってVさんは加療2か月間を要する大けがを負いました。
ところが、その後、AさんはVさんから被害届を受けた大阪府池田警察署によって強盗致傷罪で逮捕されてしまいました。
Aさんとしては「ひったくり=窃盗罪」と考えていたことから、強盗致傷罪で逮捕されたことに驚きを隠せないでいます。
(フィクションです。)
~ひったくりは窃盗罪?強盗罪?~
ひったくりは、物を持ち歩いている歩行者や、前カゴに荷物を入れている自転車に近づき、すれ違ったり追い抜いたりする瞬間にその物を奪って(ひったくって)逃げる行為をいいます。
「万引き」「すり」「置引き」などと同様、窃盗の手段、態様を表す言葉です。
ひったくりは主に窃盗罪(刑法235条)あるいは強盗罪(刑法236条)に当たる可能性があります。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
窃盗罪は、他人の占有する財物(本件の場合Vさんのバック)を、不法領得の意思(権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法にしたがってこれを利用し処分する意思)をもって、窃取した場合に成立します。
「窃取」とは、暴行・脅迫によることなく、占有者(Vさん)の意思に反してその占有を排除し、目的物(バック)を自己(Aさん)又は第三者の占有に移すことをいうとされています。
したがって、まず、ひったくり行為は窃盗罪に当たる可能性が高いといえます。
~強盗罪とは?窃盗罪との区別は?~
強盗罪は、暴行・脅迫を財物奪取の直接的な手段として用いて他人の財物を強取した場合に成立する罪です。
強盗罪における「暴行」とは「反抗を抑圧するに足りる程度の暴行」、つまり、単なる不法な有形力の行使ではなく、それを超える程度の強度な暴行であることが必要とされています。
そして、財物奪取の手段として「この暴行・脅迫を用いるか否か」が窃盗罪とを区別するポイントとなります。
しかしながら、ひったくりの場合、それが強盗罪における暴行が否か簡単に見極めることが難しい場合もあります。
一番単純な例としては、被害者の何らの抵抗も受けることなくバックをひったくったという場合です。
この場合は、強盗罪の暴行・脅迫がありませんから窃盗罪が成立することは明らかです。
次に、バックをひったくろうとバックに手をかけたところ、被害者がこれを掴んで離さなかったため、バックを無理矢理引っ張って奪いとったという場合はどうでしょうか?
この場合、バックを無理矢理引っ張るという行為は強盗罪の暴行というよりかは窃盗手段の一態様と考えられますから、やはり窃盗罪が成立するものと思われます。
要は、強盗罪の暴行か否かは「被害者の生命・身体に及ぼす危険性が高いものかどうか」が一番重要なポイントとなりそうです。
事例では、原付バイクからVさんを引きずって転倒させるなどして、被害者の身体・生命に重大な危険をもたらす可能性がある暴行が執拗に行われています。
このような場合は強盗罪が成立する可能性が高いでしょう。
~強盗致死傷罪の可能性も?~
強盗によって被害者に怪我をさせたり、被害者を死亡させた場合は強盗致死傷罪が成立する可能性があります。
怪我をさせた場合の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」、死亡させた場合は「死刑又は無期懲役」です。
被害者によほどの落ち度がない限り適用される可能性が高いですから注意が必要です。
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