下着泥棒で逮捕~事後強盗罪の可能性

2019-10-12

下着泥棒で逮捕~事後強盗罪の可能性

下着泥棒事件逮捕事後強盗罪の可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

A(大学4年生)は,以前から好意を寄せていた同級生のVが京都府京田辺市で一人暮らしの下宿生活をしていることを知った。
Aは,Vの留守中を狙ってベランダに干してあったVの下着を盗んだ。
Vから下着泥棒の被害届を受けた京都府田辺警察署の警察官は,捜査の結果,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件はフィクションです。)

~下着泥棒と窃盗罪の成否~

本件でAは,以前から好意を抱いていたVの自宅のベランダに干してあった下着を,Vの留守中に奪取しています。
窃盗罪を規定する刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪」とすると定めています。
ここにいう「他人の財物」とは,他人の(所有し)占有する財物だとされており,これを「他人」であるVの意思に反してその占有を移転させていることから,Aの行為は「窃取」に当たることになるでしょう。
上記の客観的要件に加えて,「罪を犯す意思」(刑38条本文)すなわち故意も認められるでしょう。

ここで注意が必要なのが,窃盗罪を含む領得罪(窃盗罪・強盗罪・詐欺罪・恐喝罪・横領罪)では,主観的要件として,故意の他に「不法領得の意思」が必要とされることです。
判例・実務上,不法領得の意思とは,「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用・処分する意思」をいうとされています。

本件でAがVの下着を窃取する行為は,その利用可能性を侵害し,権利者の利用を排除するものとして,権利者排除意思が認められることは明らかといえます。
では,上記定義における,後者の利用処分意思は認められるでしょうか。

不法領得の意思」における利用処分意思とは,「経済的用法に従い利用・処分する意思」を指す旨は上述のとおりです。
しかし,これに形式的に下着の窃盗行為を当てはめた場合,AがVの下着を好事家等に売る等の意思がない場合(つまり自己の性的満足のために盗んだような場合)には,不法領得の意思は認められず,窃盗罪は成立しないという結論になってしまいます。

もっとも,実務・判例においては,実質的にこの利用処分意思は「財物から何らかの効用を享受する意思」を意味すると考えられています。
そうすると,先程と異なり,Aの下着の窃盗行為は,下着それ自体から何らかの効用を得る意思があったのは明白であり,利用処分意思が認められることになります。
メディアなどを通してよく目にする下着泥棒にも,窃盗罪を成立させるためには,やや技巧的な解釈論が必要となってくるのです。

~事後強盗罪(刑238条)の成立可能性~

仮に,Aが下着を窃盗した後に,V等に見つかってしまい,その際に,財物を取り返されることを防ぐためや,逮捕を免れるため等に,暴行又は脅迫を行ってしまった場合,Aは「強盗として」処罰されることになります。

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり,長期は10年ですが,短期は1ヵ月(刑12条1項参照)になります。
これに対し,(事後)強盗罪は「5年以上の有期懲役に処する」としており,短期が5年とその法定刑には極めて大きな差があります。
したがって,弁護士としては,状況にもよることはもちろんですが,仮に財物奪取後の暴行・脅迫があったとしても(事後)強盗罪は成立せず,窃盗と暴行(傷害)・脅迫にとどまることなどを主張することが考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪は,わが国においてもっともポピュラーな犯罪でありながら,横領罪や器物損壊罪,あるいは詐欺罪などとも区別が非常に微妙な犯罪です。
窃盗罪を含む財産罪の成否の判断に関しては,専門性を持った弁護士の助言が不可欠です。
ご家族が窃盗事件で逮捕されてしまったという方は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に お問い合わせください。

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