借金の弁済の担保と窃盗罪
借金の弁済の担保と窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
AさんはVさんに30万円を貸しており、返済を迫っていました。
しかしVさんがなかなか返済をしないため、Aさんは業を煮やし京都市東山区にあるVさんのマンションに忍び込み「金を返すまでパソコンは預かる」と机の上に書置きし、Vさんのパソコンを持ち帰って自宅の物置にしまっておきました。
その後Vさんは京都府東山警察署に被害届を出したため、Aさんは京都府東山警察署で窃盗罪と住居侵入罪で話を聞かれることになりました。
(フィクションです)
借金の弁済の担保としてパソコンを盗む行為について
AさんはVさんのパソコンを売り払おうとか自分で使おうと思っていたわけではありません。
借金の弁済の担保として自宅で保管していたのですが、窃盗罪にあたるのでしょうか。
売り払ったり自分で使おうとしなくても窃盗罪になるのですか?
それでは窃盗罪とはどのような罪なのか詳しく見ていきましょう。
条文は
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(刑法第235条)
です。
詳しく見ていきましょう。
・窃盗罪の意味
他人が占有する財物を窃取する行為は、窃盗罪となります。
・窃盗罪の保護法益
事実上の占有権が窃盗罪の保護法益とされています。
・窃盗罪の故意について
窃盗罪が成立するためには、①他人の占有を排除し、財物を自己または第三者の占有に移す意思②不法領得の意思が必要です。
「不法領得の意思」とは、他人の物を経済的用法に従い自分の物のように利用または処分する意思のことで、その物を利用する意思は一時的なものでも構いません。
※「経済的用法」とは、その物の本来の用法に従って利用することです。(例:自転車ならば、乗って利用する)
「他人の占有を排除する(侵害する)」行為は、それをどのような目的によって行っているかによって成立する罪名が違います。
・不法領得の意思をもって他人の占有を侵害する→窃盗罪
・隠匿・廃棄の意思のみで他人の占有を侵害する→器物損壊罪
となります。
住居侵入罪について
条文は
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。(刑法第130条)
です。
つまり、他人の家(住居)又はマンションやアパートなどの共同住宅に無断で侵入した場合は住居侵入罪に問われますということです。
※借金の弁済の担保を手に入れるため、というのは正当な理由にはなりません。
刑事事件例について
Aさんは自己の直接的な利益(借金の弁済の担保とすること)のために、Vさん(所有者)の意思に反して占有を侵害する意思があり、それは不法領得の意思と同一とされますので、Aさんには窃盗罪と、Vさん宅に正当な理由もなく侵入したので住居侵入罪が成立する可能性が高いと思われます。
Aさんに対する弁護活動について
いくら借金を返してもらえないからといって、人の家に忍び込んで勝手に担保として金品を持っていくのは窃盗罪と住居侵入罪にあたります。
Aさんはまず、弁護士を通じて被害者Vさんへの被害弁償及び示談交渉を行うことが大切になるでしょう。
窃盗罪、住居侵入罪の被害届が提出される前に、被害者に対して被害を弁償して示談を成立させることができれば、警察未介入のまま事件を解決できる可能性があります。
窃盗罪、住居侵入罪としてすでに警察が介入している場合であっても、被害者との間で被害弁償及び示談を成立させることで、逮捕や勾留を回避して早期に職場復帰や社会復帰の可能性を高めることができます。
窃盗罪は被害金額が大きくなく同じような前科がなければ、被害者との示談成立により起訴猶予による不起訴処分を目指すことも可能です。
起訴猶予による不起訴処分は前科とはなりません。
ぜひ早期に、刑事事件に強い弁護士に相談をしてください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件に特化した法律事務所です。
窃盗罪や住居侵入罪を取り扱った弁護士も在籍しております。
ご家族やご自身が窃盗罪や住居侵入罪で話を聞かれることになった、逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。