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盗品等に関する罪で逮捕

2021-07-29

盗品等に関する罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
大阪府大阪市天王寺区で古物商を営んでいたAさんは、盗品だと知って買い取ったとして、大阪府天王寺警察署盗品等有償譲受けの疑いで逮捕されました。
Aさんは、買い取った商品が盗品であることを知らなかったと故意を否認しています。
Aさんは、家族の依頼で接見にやってきた刑事事件専門弁護士に、取調べ対応についてのどのように対応すべきか聞いています。
(フィクションです。)

盗品等に関する罪とは

盗品等に関する罪は、窃盗罪のような財産領得罪を前提として、その取得した財産の処分に関する犯罪です。
盗品等に関する罪は、刑法第256条において、次のように規定されています。

1 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
2 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

■客体■

本罪の客体は、「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」です。
これは、窃盗などの罪の被害者が法律上追及し得るものです。

「財産に対する罪」とは、個人の財産を保護法益とする犯罪のことをいいます。
そのため、財産犯ではない、例えば墳墓発掘罪や漁業法違反などにより得た物は本罪の客体とはなりません。
また、「財産に対する罪に当たる行為」とあるため、犯罪として成立していることまで必要とされず、構成要件に該当する違法な行為であればたりるとされています。
そのため、無責任能力者の行為であってもよく、親族相盗例により刑を免除される場合であっても、被害者の追求権が存在している以上は本罪の客体となります。

財産罪によって「領得された物」というためには、本犯が財物の領得について既遂に達していなければなりません。
それは、領得がなければ財産罪の被害者の追求権が生じないからです。
本罪の客体は、財産罪によって領得された「物」ですので、財物でなければならず、権利や財産上の利益は含まれません。
そして、「領得された」というのは、財産罪によって直接領得されたことを意味します。
つまり、本犯の客体と本罪の客体とは同一でなければならず、複製品は対象となりません。
よって、会社の機密情報を持ち出し、それをコピーし、原本は返却して、コピーを第三者に売却したとしても、コピーの売却行為については、機密情報のコピーが「財産罪によって直接領得された」とは言えないため、本罪は成立しません。

先にも述べましたが、本罪の客体は、本犯の被害者が法律上追及できる(返還を請求することができる)ものに限定されます。
この本犯の被害者が有する追求権が、本罪の保護法益となります。

■行為■

盗品等に関する罪の行為類型としては、無償譲受け、運搬、保管、有償譲受け、有償処分あっせん、とがあります。

①無償譲受け
無償で盗品等の交付を受け、それを自己の物として取得することを「無償譲受け」といいます。

②運搬
運搬とは、委託を受けて盗品等を場所的に移転させることをいいます。
運搬については、無償・有償、移転の距離の遠近を問いません。

③保管
保管とは、委託を受けて盗品等の保管をすることをいい、有償・無償を問いません。
本罪の成立には、単なる保管の約束だけでは足りず、盗品等を現実に受け取ることが必要となります。

④有償譲受け
有償で盗品等の交付を受け、その処分権を取得することを「有償譲受け」といいます。
本罪の成立には、単に契約が成立したことだけでは足りず、実際に盗品等の引渡しが必要となります。

⑤有償処分のあっせん
有償処分のあっせんとは、盗品等の売買、質入れなどの処分を仲介・周旋することをいいます。
あっせん行為自体は、無償・有償を問いません。

■故意■

本罪は故意犯ですので、客体が盗品等であることの認識が必要となります。
この認識は未必的なものでも構いません。
何らかの財産罪にあたる行為によって領得された物であることの認識があればよく、前提となる犯罪(財産罪)がどの犯罪なのか、被害者が誰で犯人が誰であるかを特定することまで必要とされません。
無償譲受け、有償譲受け、有償処分のあっせんについては、譲受け、あっせん行為の時点で盗品性の認識がなければなりません。

盗品等に関する罪の成立においては、この故意の有無について問題となることが多く、被疑者も、「盗品とは知らなかった。」と述べ、故意を否認することが少なくありません。
その場合には、取調べで故意を認めるような内容の供述調書がとられないようにする必要があります。
そのためにも、早期に刑事事件に精通した弁護士に相談・依頼し、適切な取調べ対応についてのアドバイスをもらうことが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし逮捕されて対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

則竹弁護士が取材を受けコメントが東京新聞に掲載されました

2021-07-29

密漁について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の代表弁護士則竹理宇が取材を受け、コメントが7月15日発行の東京新聞に掲載されました。

潮干狩り感覚の密漁で摘発されるケースが多発

これからの季節、海でのレジャーに出かける方も多いかと思いますが、海に生息する魚介類をむやみに採って持ち帰ると「密漁」となり、漁業法や、各都道府県が定める漁業調整規則に違反する可能性があるので注意が必要です。
中には、潮干狩り感覚で罪の意識がないままに禁止場所で貝類を採ってしまい、密漁として摘発を受けている方もいるようなので十分にお気をつけください。
また実際に各地でこういった事件の摘発が多発しており、海上保安庁等に検挙されると、管轄の検察庁に書類送検されて、刑事罰が科せられる可能性もあります
新聞記事には、こういった「密漁」に関して、漁業協同組合への取材内容や、専門家の意見を掲載し注意を呼び掛けています。

則竹弁護士のコメント

こういった密漁事件に巻き込まれないためにどうすればいいのかについて、則竹弁護士は「管轄の漁協に確認を取ってもらうのが確実だが、それが難しければ、人がいない場所では特に採取や立ち入りを禁止した看板などがないかチェックする。潮干狩り場以外では採ることを避けるのが賢明だ。」とコメントしています。

東京新聞(7月15日発行)の記事

窃盗で保護観察付執行猶予

2021-07-22

保護観察付執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
1年前に窃盗執行猶予付き判決が言い渡されたAさんは、千葉県市原市のドラッグストアで商品を万引きするという窃盗事件を起こしました。
Aさんは、千葉県市原警察署窃盗の容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、執行猶予期間中の再犯であることから、今回は実刑となるのではないかと心配しています。
(フィクションです。)

執行猶予期間中の再犯

万引きなどの比較的軽微な窃盗犯であっても、執行猶予期間中に再び罪を犯してしまうと、基本的には、刑の執行猶予が取消され、実刑判決が言い渡されることになります。

刑の執行猶予というのは、判決で刑を言い渡すにあたり、被告の犯情を考慮して、一定の期間法令の定めるところにより刑事事件を起こさずに無事に経過したときは刑罰権を消滅させる制度のことです。
執行猶予が付けば、すぐに刑務所に入ることありませんし、執行猶予期間中に罪を犯すことがなければ、刑は執行されることはありません。
すべての場合に執行猶予を付けることができるわけではなく、次の要件を満たす場合に、裁判官が刑の全部の執行を猶予することができます。

■刑の全部の執行猶予の要件■

①(a)前に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと、又は、
 (b)前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがないこと。
②3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言渡しをする場合。
執行猶予を相当とするに足りる情状があること。

これらの要件を満たす場合に、裁判官は刑の全部の執行を猶予することができます。

執行猶予付き判決が言い渡され、実刑を回避することができた場合であっても、執行猶予が取消されることがあります。

必ず執行猶予が取消される(必要的取消事由)のは次の場合です。
①猶予期間内に更に罪を犯して禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
②猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
③刑に処せられてから5年を経た者および刑に処せられた執行を猶予された者を除き、猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

また、裁量的に執行猶予の言渡しの取消しができる(裁量的取消事由)のは次の場合です。
①猶予期間内に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
②刑法第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
③猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。

執行猶予が取消しになる事例のほとんどが執行猶予期間中の再犯です。
しかし、執行猶予が取消されるには、単に執行猶予期間中に執行猶予に付さない自由刑に相当する罪を犯しただけでは足りず、さらに執行猶予期間中に執行猶予に付さない自由刑が確定した上で、執行猶予期間の満期までに執行猶予取消決定の効力が生じることが必要です。

さて、上の事例のように、窃盗の罪を犯し、執行猶予付き判決が言い渡された者が、執行猶予期間中に再び窃盗の罪を犯した場合には、基本的には今回の窃盗事件について執行猶予なしの判決(実刑判決)が言い渡されることになります。
ただし、この場合であっても、再び執行猶予付きの判決が言い渡される可能性があります。

再度の執行猶予は、
①前に禁固以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること。
②1年以下の懲役または禁錮を言い渡す場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。
の要件を満たす場合には、裁判官は刑の全部を執行することができます。
ただし、刑法第25条の2第1項により、刑の執行猶予保護観察に付され、その保護観察期間内に更に罪を犯した場合には、執行を猶予することは許されません。

保護観察付執行猶予

刑の執行が猶予される場合、合わせて保護観察に付されることがあります。
裁判官は、初度の場合の執行猶予を付す際に、猶予の期間中に保護観察に付することができ、再度の場合の執行猶予については、猶予期間中に保護観察に付さなければなりません。
保護観察は、罪を犯した人が、社会の中で更生できるように、保護観察官および保護司による指導と支援を行う制度です。
保護観察対象者には、守らなければならない約束事があり、それを破ってしまうと、刑の執行猶予の言渡しが取消されてしまうことになります。

執行猶予期間中の再犯の場合にも、再度の執行猶予となる可能性はあります。
ただし、先の執行猶予保護観察が付されている場合には、再度の執行猶予の要件を満たさず、再度の執行猶予となることできません。
また、再度の執行猶予となった場合には、必ず保護観察に付されることになりますので、その期間中に再び罪を犯せば、実刑判決が言い渡されることになります。

執行猶予期間中の再犯は基本的には実刑となる可能性が高いのですが、ケースによっては再度の執行猶予が見込める場合もありますので、まずは刑事事件に詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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万引きで実刑!?

2021-07-15

万引き実刑となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
埼玉県大宮警察署は、スーパーマーケットで万引きをしたとして、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、身元引受人として家族が迎えに来て釈放となりましたが、Aさんはこれまでにも万引きの前科・前歴があり、今度ばかりは実刑となるのではないかと心配しています。
釈放された翌日、Aさんと家族は、刑事事件に強い弁護士に法律相談の予約を入れました。
(フィクションです。)

万引きが犯罪であることは、みなさんご存じであることと思いますが、犯罪は犯罪でも軽微な犯罪であることから、万引きをしたからといって、刑務所に入るようなことにはならないと、万引きを軽く考えておられる方も少なくないのではないでしょうか。

確かに、万引き行為それ自体は、窃盗罪に当たるものの、侵入盗や自動車等といった被害額が高額になる窃盗と比べて、窃盗の中でも軽いと部類に当たります。
初めて万引きで検挙された場合であれば、被害額もそれほど高くなく、被害弁償も済んでいるのであれば、微罪処分で処理されることが多くなっています。
微罪処分とは、犯罪事実が極めて軽微で、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについて、事件を検察官に送致せず、警察で事件を処理する処分のことです。
警察での取調べを1度だけ受けて、それ以降、警察や検察官に呼ばれることなく事件が終わった場合は、微罪処分で処理されているケースです。
万引きでの検挙も2回目となれば、微罪処分とはならず、検察官に事件が送られます。
検察官に事件が送致されると、今度は検察官から呼び出しを受けて、検察官からの取調べを受けます。
被害額や被害弁償の有無等により、被疑者が被疑事実を認めている場合であっても、検察官は、起訴猶予として起訴しない旨の決定をする可能性が高いです。
起訴されなければ、有罪判決を受けることはありませんので、前科は付きません。
ただ、微罪処分でも不起訴処分でも、被疑者として捜査の対象となったという前歴は残ります。
万引きといえども、何度も何度も繰り返している者に対して、軽い処分が下されるわけではありません。
被害額が少なくても、再犯の回数が増えれば、その分思い処分が下されます。
おおよそですが、2~3回目の万引きで検挙された場合は、起訴猶予となる可能性がありますが、それ以上となれば、起訴される可能性が高くなります。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですので、検察官が起訴する場合であっても、略式起訴とすることができます。
略式起訴は、法廷での裁判を開くことなく書面での審理で罰金刑とするよう求めるものです。
簡略化された手続であるため、被告人が公開の法廷に立って審理されることはなく、言い渡される罰金刑の罰金を納付すれば刑事手続は終了します。
手続が簡略されていても、言い渡されるのは有罪判決なので、前科が付くことに変わりありません。
そして、前科がある万引き犯の場合であれば、検察官は、略式起訴ではなく公判請求をする可能性が高くなります。
今度は、公開の法廷で審理を受けることになります。
万引きのケースでは、公判請求されたからといって、いきなり実刑が言い渡されるわけではありません。
ほとんどのケースで執行猶予が付きます。
では、万引き事件で実刑となる可能性が高いのは、どのようなケースかと言いますと、執行猶予期間中の再犯である場合です。
刑の執行猶予とは、有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に再度罪を犯さないことを条件として、刑罰権を消滅させる制度です。
「執行猶予期間中に再度罪を犯さないことを条件」としているため、その条件を破ってしまえば、執行猶予が取消されてしまうのです。
刑の執行猶予が取消されるので、刑が執行される、つまり、懲役刑であれば刑務所に収監されることになります。

軽微な犯罪と言われる万引きであっても、何度も繰り返した結果、実刑となることがあるのです。
効果的な再犯防止策を早めに講じておくことが何よりも重要ですが、執行猶予中に再び罪を犯してしまった場合には、要件は通常の執行猶予と比べるとより厳しいのですが、「再度の執行猶予」という制度もありますので、刑事事件に強い弁護士に早期に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗をはじめ刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
万引きの再犯で、実刑の可能性もある場合には、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

共犯の万引き事件で逮捕

2021-07-08

共犯万引き事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
神奈川県鶴見警察署は、神奈川県横浜市鶴見区のドラッグストアで、薬や化粧品など数人で共謀して万引きしたとして、Aさんら3人を窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、他2人と共謀し、ドラッグストアで商品を万引きし、万引きした商品をネットで販売していました。
警察署は、他にも余罪があるとみて捜査をしています。
(フィクションです。

共犯の万引き

万引きは、単独で行うことが多いのですが、複数人で協力して行うケースもあります。
複数人で行う場合、商品を盗む者、周囲を監視する者と役割を分担して万引きを遂行します。
その場合、実際に商品を盗んだ者だけが窃盗の罪跡を負うではなく、犯行時に監視役であった者も窃盗の罪に問われることになります。
2人以上の行為者が、意思の連絡に基づき、共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
この共犯は、法律上、2人以上の者が共同して犯罪を実現することを予定しているものと、法律上は単独犯を予定しているが、これを2人以上の者が共同して実現するものとがあります。
後者には、2人以上の者が、共同して犯罪を実行する「共同正犯」と、他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせ、その決意に基づいて犯罪を実行させる「教唆犯」、そして、実行行為以外の行為で実行行為者の実行行為を容易にさせて犯罪を実現する「幇助犯」の3種類に分類されます。
この3種類のうち、共同正犯はについては、全ての者が正犯として処罰されます。
共同正犯が成立するには、①共同実行の意思、と、②共同実行の事実が必要となります。
①共同実行の意思とは、2人以上の者が、共同してある特定の犯罪を行おうとする意思をいい、共同正犯の成立には、この意思の連絡が必要となります。
②共同実行の事実とは、共同実行の意思の連絡に基づき、共謀者の全部または一部が犯罪の実行行為を行ったことをいいます。
しかし、②共同実行の事実を欠く場合でも、共同実行の事実がある場合と実体的に共同実行したのと変わりない関与をした場合には、共同正犯とされます。
つまり、(a)犯行実現への強い動機、関心、利害があり、(b)これに基づき、犯行を実現するのに重要な役割を果たしたときには、共同実行の事実と変わらない関与をしたものとして、共同正犯とされるのです。
これを「共謀共同正犯」といいます。
例えば、Aさんが見張り役をしており、実際に商品を万引きしたのは他の2人だったとします。
Aさん自身は窃盗の行為を行っていませんが、仲間間で万引きすることの共謀があり、万引きした商品を転売して得た利益を3人で分けていたり、見張り行為が万引きを成功させる上で欠かせないものである場合には、共謀共同正犯の成立が認められるでしょう。

共犯の万引きで逮捕されたら

単独の万引きであれば、逮捕された後に釈放となる可能性はあります。
しかし、共犯事件であれば、共犯者との接触を危惧し、罪証隠滅のおそれがあると認められる可能性が高く、逮捕後に勾留が付くことが多いと言えます。
複数の余罪がある場合には、1件目の事件についての勾留期間が満了したとしても、他の事件について逮捕・勾留となり、引き続き被疑者の身柄が拘束される可能性もあります。
そのため、事例のように共犯万引き事件で、かつ、他にも同種の事件を複数行っているのであれば、捜査段階での身体拘束は長期化することが見込まれます。
ただ、起訴後であれば、保釈により釈放される可能性はありますので、余罪についての起訴の有無を確認した上で、タイミングを見計らい保釈を請求し、認められれば釈放されることになります。

万引き事件であっても、共犯事件であり、被害金額も高額となる場合には、公判請求される可能性があります。
犯行態様が悪質であり、被害額が大きいケースでは、実刑の可能性も否定できませんが、被害者への被害弁償や再犯防止措置を講じている等、被告人に有利な事情を考慮してもらえれば、執行猶予となる場合もあります。
ですので、早い段階から被害者への被害弁償、示談交渉を行うことが重要です。

ご家族が共犯万引き事件を起こし逮捕されて対応にお困りの場合には、すぐに弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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窃盗犯が自首したら

2021-07-01

窃盗犯自首をした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
東京都狛江市の会社に勤務していたAさんは、つい魔が差して、更衣室にある他の従業員のロッカーに置いてあった財布から現金を抜き取り、そのまま盗ってしましました。
被害に遭った従業員は会社側に被害を申告し、会社は窃盗事件として警視庁調布警察署に相談しました。
警察に相談したことを知ったAさんは、自分の犯行であることが発覚するのは時間の問題だと思い、調布警察署自首しようと考えています。
(フィクションです。)

自首とは

自首は、罪を犯した者が捜査機関に対して、自発的に自己の犯罪事実を申告して、訴追を求める意思表示のことです。

自首については、刑法第42条において次のように規定されています。

1 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。

法律上の自首が成立するためには、
①捜査機関に対して、
②犯罪事実が捜査機関に発覚する前に、
③自発的に自己の犯罪事実を申告し
④訴追を求める意思があること
が必要となります。

①捜査機関に対して行うこと
自首は、「捜査機関」に対して行わなければなりませんが、ここで言う「捜査機関」というのは、検察官または司法警察員です。
ただし、検察事務官や司法巡査に対して自首した場合であっても、彼らは検察官・司法警察員に自首した者の身柄を引き渡すことになっているので、実際は、検察事務官や司法巡査に対して自首を申し出ても問題はありません。

②犯罪事実が捜査機関に発覚する前に行うこと
自首は、犯罪事実が捜査機関に発覚していない場合、および、犯罪事実は発覚していても、その犯人が誰であるか発覚していない場合に行われなければなりません。
そのため、犯罪事実および犯人が誰であるかは判明しているが、単に犯人の所在だけが不明である場合は、「犯罪事実が捜査機関に発覚する前」とは言えません。

③自発的に自己の犯罪事実を申告すること
犯罪事実を自発的に申告していることが必要で、取調べや職務質問中に、犯罪事実を自白したとしても、それは自発的な申告とは言えず、自首には当たりません。

④訴追を求める意思があること
自首の成立には、罪を犯した者が、自身の処罰・処分を求めていなければなりません。
犯罪の一部を隠蔽するために申告する場合には、自首は成立しません。

窃盗事件で自首をした場合

法律上の自首が成立した場合には、刑が減軽される可能性があります。
「可能性」といったのは、刑法第42条にもあるように、「その刑を減軽することができる。」という文言から、裁判官が裁量によって刑を軽くすることができる、ためです。
どの程度刑が減軽されるのかは、刑法第68条で定められています。

第68条 法律上刑を減軽すべき1個又は2個以上の事由があるときは、次の例による。
1 死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は10年以上の懲役若しくは禁錮とする。
2 無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、7年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
3 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の2分の1を減ずる。
4 罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の2分の1を減ずる。
5 拘留を減軽するときは、その長期の2分の1を減ずる。
6 科料を減軽するときは、その多額の2分の1を減ずる。

窃盗罪で起訴され、有罪となった場合、裁判官は、窃盗罪の法定刑である「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」から、「5年以下の懲役または25万円以下の罰金」の範囲内で刑を言い渡すことができます。

刑の減軽の他に、自首をした場合には、逮捕・勾留を回避できる可能性もあります。
自ら犯罪事実を申告し、処罰を受ける覚悟でいる者について、逮捕・勾留する必要性がないと判断される場合があり、その場合には、被疑者の身柄を拘束しないで捜査が進められます。

自首が成立するか否か、自首が成立する場合にはどのような処分となるのか、自首した後の流れなど、自首する前に一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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窃盗と事後強盗

2021-06-24

窃盗事後強盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは、東京都杉並区のスーパーマーケットで買い物をしていました。
所持金は1万円以上あったものの、段々とお金を払うことが惜しくなったAさんは、未精算の商品数点をマイバッグに入れ、精算済みのように装って、かごに入れた商品については通常通りセルフレジで精算しました。
スーパーマーケットを出ようとしたところで店員に声をかけられたAさんは、頭が真っ白になり、店員の身体を力いっぱい押してしまいました。
すると、店員は倒れ、倒れた際に怪我をしてしまいました。
Aさんは、通報を受けた駆け付けた警視庁荻窪警察署の警察官に、事後強盗の容疑で逮捕されました。
Aさんは、調べに対して、「万引きが見つかって慌てた。相手に怪我を負わせるつもりはなかった。」と話しています。
(フィクションです。)

万引きを行った場合、通常は、窃盗罪が適用されます。
しかし、万引きが店員などに見つかり、逃げようとして店員などを殴ったり押したりすると、窃盗ではなく事後強盗の罪に問われる可能性があります。

事後強盗とは

刑法第238条は、

窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

と規定しています。
つまり、本条は、窃盗犯人が、ある条件のもとで暴行・脅迫を行う行為を強盗とするとしています。

■主体■

事後強盗の主体は、「窃盗」です。
ここでいう「窃盗」は、窃盗犯人のことです。
窃盗犯人ですので、詐欺罪や強盗罪といった罪の犯人はこれに含まれません。
また、窃盗罪の実行に着手した者であればよく、窃盗自体の既遂・未遂は問いません。

■行為■

事後強盗罪の実行行為は、「暴行・脅迫」です。
事後強盗罪は強盗として論じられるものであるため、暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度で、財物の取返しや逮捕の行為を抑圧するに足りる程度のものであることが必要となります。
暴行・脅迫は、窃盗の被害者に対して行われたものである必要はなく、身柄を確保しようとした第三者に対するものでも構いません。

また、問題となる暴行・脅迫は、窃盗の機会に行われていなければなりません。
換言すると、窃盗と暴行・脅迫との間に、状況的なつながりが求められます。
窃盗の機会に行われた暴行・脅迫であるかどうかの判断は、窃盗と暴行・脅迫との間の時間的・場所的近接性、関連性を考慮して行われます。
場所的接近性については、暴行・脅迫のなされた場所が、窃盗の犯行現場又はこれに接着した場所であること、時間的接近性に関しては、暴行・脅迫をした時点が少なくとも窃盗に着手した以後であって、遅くとも窃盗の犯行終了後間もないことが考慮される要素となります。
関連性については、時間的、場所的に離れている場合でも、被害者に追跡され続けている場合のように、暴行・脅迫したことと、窃盗の事実との間に関連があることが考慮されます。

■目的■

事後強盗罪の成立には、暴行・脅迫が「財物を得てこれを取り返されることを防ぐ」、「逮捕を免れる」、あるいは、「罪跡を隠滅する」ために行われることが必要となります。
被害者が実際に財物を取り戻す行為や逮捕する行為をしていない場合でも構いません。

Aさんは、万引きが発覚して慌てて相手を押し倒したのですが、逮捕を免れるために咄嗟に暴行を加えたと認められる可能性があります。

事後強盗は、強盗として論じられるため、その法定刑も強盗罪と同様の5年以上の有期懲役です。
また、相手方に怪我を負わせた場合には、強盗致傷となる可能性があり、その場合の法定刑は無期又は6年以上の懲役と、刑が加重されます。

万引きであっても、その後の態様により事後強盗や強盗致傷となることもあります。
強盗致傷罪は、法定刑も重く、裁判員裁判対象事件ですから、事案を十分に分析し、場合によっては、窃盗罪と傷害罪とに認定落ちする形で事実認定するよう、検察官に働きかける必要が出てくることもあります。
また、窃盗も強盗も財産犯ですので、何よりも被害者に対して被害弁償をし、示談をする必要があります。
犯行の際に、被害者に対して暴行・脅迫を行っていることから、被害者感情が強く、示談交渉がスムーズに進まないことが予想されますが、弁護士は、被害者の気持ちに寄り添いながら粘り強い示談交渉を行うことが期待されます。

事後強盗罪は重い罪ですが、できる限り寛大な処分となるよう早期に弁護士に相談し、弁護を依頼されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が万引き事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

窃盗の共犯事件

2021-06-17

窃盗共犯事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
福岡県若松警察署は、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、知人のBさん、Cさんと共謀し、市内の事務所に深夜侵入し、現金やパソコンなどを盗んだと疑われています。
Aさんは、「BやCが事務所に入って盗んだのであって、自分は車で待機して見張るように言われていただけだ。」と供述しています。
(フィクションです。)

共犯とは

共犯とは、広義には、2人以上が協力して犯罪を実現する場合のことをいいます。
共犯は、法律上、単独犯として規定されている犯罪を2人以上の者が協力して行う場合を任意的共犯といい、刑法などの規定上、本来的に2人以上の者の共同の行為が必要とされている場合を必要的共犯といいます。
窃盗犯は、任意的共犯であり、それは更に、共同正犯、教唆犯、幇助犯に分類されます。

共同正犯

共同正犯は、2人以上の者が、1個の犯罪を共同して実現する意思の連絡のもとに、各人が実行行為の一部を分担して犯罪を実行した場合のことです。
共同正犯は、他人と犯罪を共同実行した者は、各自がそれぞれ惹起した結果だけでなく、他の共同者が惹起した結果についても責任を問われるという点に特徴があります。
それは、2人以上の者が共同して犯罪を遂行するという合意に達し、その共同実行の意思のもとに、相互に他人の行為を利用して補充し合って犯罪を実現した場合、それぞれの関与者の行為は一体となって犯罪の遂行に結び付いたと認められるからです。
共同正犯の成立には、①共同実行の事実、及び、②共同実行の意思、が必要となります。

②共同実行の意思
共同正犯の成立に必要な主観的要素である「共同実行の意思」とは、2人以上共同して、ある構成要件に該当する事実を実現しようとして通じ合う意思のことです。
窃盗であれば、犯罪を行うに際して、他の実行者との間で、相互に他人の行為を利用し補充し合って、「他人の財物を不法領得の意思に基づいて窃取する」ということを実現させる意思を共有していなければなりません。
単に他人の行為を傍観したり認識しているだけでは、共同実行の意思があるとは認められません。

①共同実行の事実
共同実行の事実とは、2人以上の者が共同して実行行為を行うことをいいます。
「共同して」というのは、共同者全員が相互に他人の行為を利用し補充し合って犯罪を実現することを意味します。
共同実行の事実には、共同者全員が実行行為を分担しあって犯罪を実現する場合(「実行共同正犯」)と、複数人が特定の犯罪を行うため、共同実行の意思のもとに相一体となって、互いに他人の行為を利用し各自の意思を実行に移す謀議をなし、これら共謀者のうちのある者が共同の意思に基づいて実行した場合(「共謀共同正犯」)との2つの態様があります。
共謀共同正犯の場合、直接的には実行行為に及ばなかった者でも、謀議により共同正犯の責任を負うことになります。

共謀共同正犯は、2人以上の者がある犯罪の実行を共謀し、共謀者のうちある者が共謀に係る犯罪を実行したときは、現実には実行行為を行わなかった他の共謀者もまた共同正犯として処罰されるものです。
共謀共同正犯も共同正犯の1種であるため、その成立要件も基本的には共同正犯の成立要件と同じです。
ただ、共謀共同正犯の特性を鑑み、通常は、①2人以上の者が、ある犯罪の実現について共謀したこと、②その共謀者の中の一部の者がそれを実行したこと、③共謀者が正犯意思を持つこと、の3つが成立要件とされています。
①の要件については、「2人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする協議をなし」たことであると解されています。(最決昭43・3・21)
③の要件については、共謀者が、たとえ一部の者に実行させるにしても、それが自己の犯罪であると認識していること、つまり、自らが正犯であるとの意思を持つことが必要となります。
正犯意思については、動機、共謀者と実行行為者との関係、共謀者自身の関与の態様、共謀者の果たした役割の重要性、犯行前後の状況、犯罪の性質や内容等を考慮して判断されます。
以上の要件を充たす場合には、実際に実行行為を行っていなくても正犯として処罰されることになるのです。

上記事例のように、窃盗事件の見張り行為をどのように評価するかは、昔から争いがあります。
判例は、被告人が事前に共謀して見張り行為を分担するような場合には共同正犯としているものが多くあります。
ただ、共同正犯として認められるには、単に見張りをしたということだけではなく、見張り行為の役割の重要性、共犯者に与えた安心感、見張りによる窃取行為の円滑性などの効果について検討し、見張り行為が窃取行為に匹敵する犯罪的価値のある行為であると評価されることが重要となります。

事案によっては、幇助にとどまるとされることもありますので、窃盗の共同正犯が疑われている場合には、弁護士に相談し、その後の対応について適切なアドバイスをもらう必要があるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗をはじめ刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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電気窃盗で逮捕

2021-06-10

電気窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
京都府京田辺市のコンビニ店外のコンセントに炊飯器を無断でつないで米を炊くなど調理したとして、京都府田辺警察署は、Aさんを窃盗と建造物侵入の容疑で逮捕しました。
他の客からの報告を受けてAさんの行為に気付いたコンビニの店長が、警察に通報しました。
通報を受けて駆け付けた警察官がAさんに問いただしたところ、店のコンセントを無断で使って調理していたことを認めました。
(フィクションです。)

電気窃盗?

窃盗罪は、刑法第235条に次のように規定されています。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

このように、窃盗罪とは、「他人の財物を窃取」する罪です。

■犯罪の対象■

窃盗罪の客体は、「他人の財物」です。
更に詳しく言うと、「他人の財物」とは、「他人が占有する他人所有の財物」です。

「財物」の意義については、大きく分けて2つの見解があります。
①有体性説
財物は、有体物であることを要する説。
②管理可能性説
財物とは、有体物に限らず、管理可能な限り無体物も財物とする説。
ただし、電気と同様の意味での物質性を備えたものに限る。

通説は①有体性説である、財物は有体物と解するのが一般的です。

ただし、刑法第245条では、窃盗及び強盗の罪が規定されている刑法第36条においては、電気は財物をみなすと規定されているため、財物の意義に関する見解のいかんに関わらず、電気は、窃盗罪の客体である「財物」に当たります。

窃盗罪は、「他人の財物を窃取」した場合、つまり、他人の所有する財物の占有を移転し、それを取得した場合に成立するものと理解されます。
そのため、窃盗の対象となる財物は、他人が占有するものであることが必要となります。
刑法で言う「占有」は、財物に対する「事実上の支配」を意味します。
ある財物に対する「事実上の支配」があると言えるためには、客観的要素としての①財物に対する支配という事実と、主観的要素である②支配の意思が必要となります。

①財物に対する支配の事実
財物に対する支配(占有の事実)とは、占有者が財物を事実上支配している状態をいいます。
事実上の支配しているかどうかは、財物自体の特性、占有者の支配の意思の強弱、財物と占有者との距離など客観的・物理的支配関係の強弱などの基準から判断されます。
占有の事実を認めるにあたっては、必ずしも財物を手に持っていることまで必要ではなく、自宅内にある場合や、外であっても財物と占有者との距離がそう離れておらずすぐに財物のあるところに戻ってこれるような距離間であれば、財物に対する支配が認められます。

②支配の意思
支配の意思(占有の意思)とは、財物を事実上支配する意欲・意思のことをいいます。

■行為■

窃盗罪の行為は、「窃取」することです。
「窃取」とは、占有者の意思に反して、財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。

■不法領得の意思■

窃盗罪の主観的要件として、故意(他人の財物を摂取することの認識)の他に、不法領得の意思が窃盗罪の成立に必要となります。
「不法領得の意思」は、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用、処分する意思」のことで、不可罰とされる一時使用と窃盗罪、毀棄罪と窃盗罪とを区別する要素となっています。

上の事例では、Aさんは、コンビニ店の外壁に備え付けられているコンセントを無断で利用して家電器具を使い調理をしています。
電気窃盗のように、形のない物を盗むということはイメージしにくいのですが、Aさんの行った行為については、刑法上の窃盗罪に該当するため、起訴され有罪となれば、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲内で刑が科されることになります。

しかしながら、初犯であり、被害者への被害弁償や示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性はあります。
事案によってどのような処分が見込まれるのか、どのような弁護をすべきなのかは異なりますので、窃盗事件で逮捕されてお困りの方は、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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クレプトマニアが疑われる場合

2021-06-03

窃盗事件でクレプトマニアが疑われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
兵庫県姫路市のスーパーマーケットで食品や日用品を万引きしたとして、兵庫県姫路警察署は、市内に住むAさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんには万引きの前科・前歴があり、1年ほど前に、略式手続で略式命令(罰金刑)を受けていました。
Aさんは、事件当時1万円を所持しており、入店直後から店外で保安員に声を掛けられるまでの店内での記憶がなく、取調べでもその旨を述べています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Aさんはクレプトマニアではないかと疑っており、接見を依頼した弁護士にもその点について話しています。
(フィクションです。)

万引きが犯罪であることを認識していながら、何度も万引きを繰り返してしまうケースは少なくありません。
万引きに走る理由は、何も経済的なものに限りません。
「十分な所持金があるのに、特にそれほど必要のない物をとってしまう。」
「だめだとわかっていながら、万引きをやめることができない。」
常習的な窃盗をおおきく3つに分類すると、
①経済的利益のために金目の物や金銭を盗む職業的犯罪、
②貧困から食べ物や生活必需品を盗むもの、
③経済的余裕はあるが、些細な物を盗むもの、
となります。
経済的な理由から万引きを行うのではない③の場合には、精神障害が疑われることがあります。

精神障害としての病的な窃盗に、クレプトマニアという疾患があります。

アメリカ精神医学会が出版している精神疾患の診断基準・診断分類によれば、クレプトマニアの診断基準は、以下の5項目からなります。
①個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
②窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり。
③窃盗に及ぶときの快感・満足・解放感。
④その盗みは、怒りや報復を表現するためのものではなく、妄想・幻覚への反応でもない。
⑤その盗みは、素行症、躁病エピソード、反社会性パーソナリティ障害ではうまく説明されない。

クレプトマニアは、単独で診断される場合もありますが、拒食症や過食症の摂食障害を併発している場合も少なくありません。
また、摂食障害を併存している場合、解離性障害も併存していることが多いようです。

万引きの再犯事件において、弁護士は、まず、繰り返す万引き行為の原因や背景事情を究明しなければなりません。
それは、万引きを繰り返してしまうことの原因を明らかにしなければ、有効な再犯防止措置を講じることができないからです。
有効な再犯防止措置を講じることができなければ、有効な情状立証をすることが難しくなってしまいます。
クレプトマニアである場合には、刑罰だけでは再犯を防止することは難しく、専門的な治療が必要となります。
そのため、クレプトマニアが疑われるケースでは、専門家につなげ、クレプトマニアその他の精神障害にり患しているのかどうかを診断してもらい、専門的な治療を受けるようにすることが重要です。
また、逮捕・勾留により被疑者・被告人の身柄が拘束されている場合には、治療を受けるために、弁護士は、できる限り早期に釈放となるよう身柄解放活動を行います。
有効な再犯防止措置を講じるには、被疑者・被告人の家族の協力が必要不可欠です。
弁護士は、家族や専門機関と連携し、再犯防止に向けた環境を整える支援をします。

クレプトマニアが疑われる場合、弁護士は、有効な再犯防止策が講じられていることを、客観的な証拠に基づいて示すことで、寛大な処分となるよう弁護する役割を担います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が万引き事件で逮捕されてお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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