不当・違法な取調べへの対処

2019-12-16

不当・違法な取調べへの対処

不当・違法な取調べへの対処について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

Aさんは、東京都立川市で起きた空き巣事件の被疑者として、警視庁立川警察署に逮捕されました。
しかし、Aさんとしては、弁護士が来るまで何も話したくないと考えており、黙秘を続けています。
警察官からは「黙秘を続けていると実刑は免れない」、「余罪で再逮捕は当然ある。しばらく出られないだろうが、ちゃんと話せば釈放も視野に入れる」などと告げられ、動揺しています。
また、取調室に入ってくる警察官があえてドアを強く閉めて大きな音を出すなど、威圧的な行動もみられるようです。
Aさんはどうしたらよいのでしょうか。
(フィクションです。)

~弁護士を依頼し、取調べに対処する~

刑事事件において、取調官が自白の獲得を急ぎ、恫喝的、威圧的な取調べを行うことがあります。
不当、違法な取調べの典型例としては、
・被疑者に対する物理的な暴行
・認めれば早く出られるなどと誘惑する
・黙秘するなら一生出られない、家族も逮捕することになるなどと告げる
といったものがあります。

このような取調べは、被疑者に対して大きな負担をかけることになります。
さらには、無実の罪について自白する供述調書にサインしたり、あるいは事実と異なる供述をしてしまうことによって、大変な不利益を被る可能性もあります。
このような不当な取調べを受けた場合、どうすればよいのでしょうか。

まずは弁護士に相談し、捜査機関に対して抗議を行ってもらうことが必要です。
取調官本人や、警察署、検察官に対して違法・不当な取調べを行わないよう抗議します。
直接口頭で抗議するだけでなく、書面を郵送して抗議を行う場合もあります。
抗議を行うことによって、違法・不当な取調べを抑制できることもあります。

その他の違法・不当な取調べへの対応方法として、勾留の場所を留置場から拘置所に移すよう申し立てることが挙げられます。
留置場が警察の施設であるのに対し、拘置所は法務省の施設であるため、捜査機関からは一定の距離を置くことができます。

また、取調べを録画・録音するよう求めることも考えられます。

~自白の任意性を争う~

被疑者が自白した場合、通常、その内容を記載した調書が作成されますが、やってもいない犯罪や、事実と異なる内容について書かれた調書が証拠とされることがあってはなりません。
刑事訴訟法第319条は、「強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない」としています。

「自白の任意性に疑いがある」とされた裁判例として、

・自白をすれば起訴猶予にする旨の検察官の発言を信じた被疑者が、起訴猶予になることを期待して自白した場合(最高裁昭和41年7月1日判決)
・共犯者は自白したという虚偽の情報を与えて自白させ、その自白を示して共犯者にも自白させた場合(最高裁大法廷昭和45年11月25日判決)

などがあります。

今回のケースにおいて、苛烈な取調べに対し、やむを得ず自白をしてしまった、という場合には、刑事訴訟法第319条により、自白調書の証拠能力を争い得る場合があります。
ただし、裁判所に「自白の任意性に疑いがある」と認めてもらうことは容易ではなく、一度作成されてしまった自白調書を覆すには、とても高いハードルを越えなければなりません。
苛烈な取調べが辛くて、意に反して自白してしまったが、裁判官はわかってくれるだろう、と安易に考えることは禁物です。
まずは不当・違法な取調べを止め、適正な取調べ環境が実現されるよう努めなければなりません。
弁護士は、適正な取調べがなされるよう尽力します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族に対する不当・違法な取調べでお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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