自白事件の弁護活動

2019-08-18

自白事件の弁護活動

Aは,横浜市戸塚区の飲食物販売店において,食料品をレジに通さず,屋外に持ち去った。
店から通報を受けた神奈川県戸塚警察署の警察官は,捜査の末,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの上記行為は,防犯カメラにも終始写っており,Aも警察官の取調べに対して罪を認めている。
Aが逮捕されたと知った家族は,窃盗事件に強いと評判の刑事事件専門の弁護士に相談することにした。
(本件はフィクションです。)

~日本の犯罪における窃盗罪の位置づけ~

窃盗罪は,刑法235条によって規定され,刑罰が定められているれっきとした刑法犯罪です。
刑法は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とする旨を定めており,万引き犯なども当然この「他人の財物」を「窃取」という要件を満たす刑法犯なのです。
このような窃盗罪は,わが国の刑事司法においてどのように位置づけられる犯罪なのでしょうか。
以下,少しその位置づけについてみてみましょう。

一般論として,近年のわが国における刑事事件の認知件数は減少傾向にあり,窃盗罪もこのような傾向と軌を一にしています。
しかし,認知件数は減っているとはいえ,相も変わらず窃盗罪はわが国の犯罪認知件数の71.6%,公判請求(起訴され刑事裁判になった事件)の27.5%もの割合を占める犯罪であることに変わりはありません(平成29年における刑事事件を対象とした犯罪統計および司法統計より。いずれも刑事事件中で最多。)。
換言すれば,窃盗罪とは,いわば最も身近な刑事事件・犯罪だということもできるでしょう。
このことは本件事例を含め,いわゆる万引きなどを想起すれば,実感として理解できることと思います。

ここで本件事例の事件に戻ると,本件では,Aは警察に対して自らが行った罪を認めています。
では,いわゆるこうした自白事件の場合,弁護士はどのような弁護活動を行っていくことができるのでしょうか。

~窃盗事件(自白事件)における弁護士の弁護活動~

一般に刑事弁護士というと,謂われもない罪で捕まってしまった無辜の市民のため,無罪を勝ち取るための弁護を行う職業と思われがちです。
もちろん,刑事弁護のいわば最大の使命が冤罪撲滅であることは,論を俟ちません。
しかし,犯罪行為を自ら認めている人に刑事弁護が必要でないかというとそうではありません。

この点,憲法31条は,「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と,刑事手続の法定のみならず,その手続内容の適正を定めています。
これは判例(最大判昭和37年11月28日)上も,確立された解釈です。
しかし,このような憲法上の要請としての刑事手続は,適正に実現されなければ絵に描いた餅になってしまいます。
そして,刑罰の実現にあたっても,適正な形での実現が憲法の要請にも適うものだといえるでしょう。
したがって,被疑者・被告人が,適正な処遇・処分を受けるために活動することも,最高法規たる憲法に照らし,刑事弁護士の重要な役割なのです。
これは,責任主義(行為という意思決定に対する非難)という刑法上の原則から導かれる要請でもあります。

そこで,弁護士としては,窃盗罪で逮捕されてしまった被疑者に対して,より長い身体拘束を伴う勾留を阻止する活動や,仮に勾留されてしまったとしても不起訴が相当な事件であることを主張するなど,適正な処遇・処分を求める弁護活動を行っていくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件含む刑事事件を専門に扱っている法律事務所です。
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