(事例紹介)小学校への侵入窃盗事件~器物損壊罪・建造物損壊罪
(事例紹介)小学校への侵入窃盗事件~器物損壊罪・建造物損壊罪
~事例~
24日朝、大阪・松原市にある小学校の校舎の窓ガラスが割られて何者かが侵入したとみられる跡が見つかり、市の教育委員会は警察に被害届を提出しました。
教育委員会によりますと、教室にあった児童のリコーダー19本がなくなっていたということです。松原市教育委員会によりますと、24日午前7時半すぎ、松原市立恵我小学校の教室の窓ガラスが割られているのを、登校してきた児童がみつけました。
教員が確認したところ、ほかにも、校舎1階の窓ガラスなど、あわせて4枚が割られていて、ガラスが割られた場所からは、何者かが侵入したとみられる跡が見つかりました。
さらに調べたところ、3階と4階の教室にあった児童のリコーダーあわせて19本がなくなっていたということです。
(略)
(※2022年10月24日20:42NHK NEWS WEB配信記事より引用)
~侵入窃盗事件で成立し得る犯罪①~
今回取り上げた事例では、何者かが小学校へ侵入しリコーダーを盗んだという侵入窃盗事件が報道されています。
この報道の時点では、犯人はまだ見つかっておらず、警察署に被害届が出された段階のようです。
今回は、2回に分けて、こうした侵入窃盗事件で何罪が成立し得るのかということに注目していきます。
まず、報道によると、小学校は窓ガラスが割られており、そこから何者かが侵入したようだとされています。
窓ガラスを割る行為については、刑法の建造物損壊罪(刑法第260条)や器物損壊罪(刑法第261条)の成立が考えられます。
刑法第260条(建造物等損壊罪等)
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
刑法第261条(器物損壊罪)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
建造物損壊罪も器物損壊罪も、対象となるものを「損壊」したことによって成立する犯罪です。
その「損壊」した対象のものが、他人の「建造物」なのか「物」なのかによって、成立する犯罪が変わるというイメージでしょう。
今回の事例の窓ガラスは、一般には「建造物」ではなく「物」と考えられることが多いと思われますが、たとえ窓ガラスであっても、場合によっては「建造物」と捉えられ、建造物損壊罪が成立する可能性もあります。
過去には、玄関のドアが、建造物の外壁と接合して、外界との遮断や防犯等の重要な役割を担っていることから「建造物」にあたり、建造物損壊罪が成立すると判断された事例もあります(最決平19.3.20)。
報道からは、壊された窓ガラスがどのようなものであり、小学校の建物のうちどのような役割を担っているのかは分かりませんが、可能性だけで言えば、器物損壊罪の成立も建造物損壊罪の成立も考えられるということになるでしょう。
侵入窃盗事件では、その手口によって成立する犯罪が多くなることも考えられます。
建物に侵入する際に何かを壊して侵入したというケースでは、こうした器物損壊罪や建造物侵入罪が成立する可能性もあるのです。
特に、建造物損壊罪は「5年以下の懲役」という大変重い刑罰が定められていることから、早期に弁護活動を開始し、執行猶予の獲得や刑罰の減軽を求める準備に取り掛かることが重要でしょう。
刑事事件を多く取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件全般を広く取り扱っています。
侵入窃盗事件を含めた刑事事件にお困りの際は、お気軽にご相談下さい。
次回の記事では、侵入窃盗事件で成立し得る他の犯罪について取り上げます。