神奈川県横須賀市の事後強盗事件

2019-04-10

神奈川県横須賀市の事後強盗事件

~ケース~
神奈川県横須賀市在住のAさんは市内の複合ショッピングセンターにある店舗の一つであるV内において日用品数点を万引きした。
店舗から外に出ようとしたところ警備員であるXに発見され,Aさんは逃走した。
AさんはXの追跡を振り切り,XはAさんを見失った。
その後,Aさんが引続きショッピングセンター内にいたところAさんはXに発見された。
その際,AさんはXから逃げるために所持していたポケットナイフを取り出しXに向かって振りかざした。
Xが怯んだ隙にAさんは再度逃走した。
後日,Aさんは防犯カメラの映像などから神奈川県田浦警察署事後強盗罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)

~事後強盗罪~

AさんはV店において万引きをしているので窃盗罪(刑法230条)が成立するでしょう。
そして刑法238条で「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」と規定されています。
この規定は窃盗犯人が,一定の目的をもって暴行・脅迫を加える行為を,強盗罪として取り扱う規定です。
一定の目的をもっての暴行・脅迫とは,財物が取り返されることを防ぐ目的,あるいは逮捕を免れ,罪跡を隠滅する目的のいずれかをもって行われる必要があります。
そのため,たとえば万引きを発見した警備員に対して,腹を立てて暴行を加えっという場合には,事後強盗罪のいう暴行にはあたりません(東京地判平8・3・7)。

事後強盗罪が成立する場合は,「強盗として論ずる」と規定されていますので,あらゆる点で強盗罪として扱われます。
そのため,暴行によって相手が怪我をしてしまった場合には強盗致死罪(240条)や強盗強制性交等罪(241条)の成立が成立することもあります。
暴行・脅迫が,窃盗現場からどの程度時間的・場所的に離れていても事後強盗罪に当たるかについては,一般に窃盗の犯行の機会の継続中であることが必要とされます。

また,事後強盗罪は強盗罪として論ぜられますので,手段としての暴行・脅迫は相手の反抗を抑圧する程度のものであることが必要です。
ただ,強盗罪の法定刑は5年以上の懲役であり,窃盗罪に比べて重くなっていますので,裁判所は事後強盗罪の適用について慎重となるケースも考えられます。
過去の事件を見てみると,窃盗犯人が,逮捕しようとした店員を転倒させ3週間の傷害を負わせた場合(浦和地判平2・12・12),窃盗犯人が追跡してきた2名に対し顔面を殴り,3週間・1週間の傷害を負わせた場合(大阪高判平7・6・6)などは事後強盗ではなく,窃盗罪と傷害罪の併合罪とされました。
事後強盗罪の目的に適する程度の暴行・脅迫といえるためには,事実上,通常の強盗罪以上の暴行・脅迫が要求されることが多いとも考えられるでしょう。
もちろん,事件ごとの細かな事情が判断を左右したり,弁護士による主張が功を奏したりして成立する犯罪が異なったりすることも多いですから,まずは見通しだけでも専門家の弁護士に聞いてみることをおすすめします。

~Aさんの場合~

では,今回のケースでAさんには事後強盗罪が成立するのでしょうか。
AさんはXの追跡を一度振り切っています。
そして,後からAさんはXに再度発見され,逮捕を免れるためにポケットナイフでXを脅しています。
事後強盗罪が成立するためには暴行・脅迫が窃盗の機会の継続中におこなわれる必要があります。
今回のAさんがXをポケットナイフで脅したことは窃盗の機会の継続中であったといえるのでしょうか。

この点については,事後強盗罪として起訴されてしまうのか,窃盗罪と暴力行為等処罰に関する法律違反(持凶器脅迫)の併合罪として起訴されるのかは検察官の判断によって変わります。
そのため,弁護士はAさんによるXへの脅迫が窃盗の機会の継続中ではなかったことなどを主張し,事後強盗罪とならないように主張していきます。

また,窃盗罪で前科がないような場合には,被害弁償など示談を成立させることによって不起訴となる可能性もあります。
事後強盗罪で起訴されてしまった場合には刑事裁判となりますが,今回のようなケースでは弁護士事後強盗罪とはならないことを主張していきます。
ただし,万引きなどの窃盗の際に暴行などを加えてしまった場合に窃盗罪と何らかの罪の併合罪となるか事後強盗罪となるかは事案によって異なります。
その為,法律の専門家である弁護士のアドバイスを聞くのがベストです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
万引きなどの窃盗罪をしてしまい,その際に暴行などを加えてしまった場合には早めに刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士にご相談下さい。
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