キャンピングカーに侵入盗で窃盗罪・住居侵入罪?
キャンピングカーに侵入盗で窃盗罪・住居侵入罪?
Aは,東京都中野区の路上に駐車されていた大き目の多目的レジャー車(いわゆるキャンピングカー)の運転席に財布が置いてあることに気づいた。
上記車が施錠されていなかったことから,Aは人目を忍びそのまま車の中に入り,運転席から車の所有者であるVの財布を持ち去った。
Vから被害届を受けて捜査を進めた警視庁野方警察署の警察官は、Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~窃盗罪と住居侵入罪~
刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とすると規定しています。
住居侵入罪(130条)を伴う,窃盗犯は実務上,侵入盗と呼ばれ,窃盗の類型の中でも代表的なものの一つです。
今回のAさんはキャンピングカーに入って財布を盗んでいるようですが,この侵入盗にはならないのでしょうか。
以下で検討していきましょう。
まず本件では,Aが車から財布を持ち去った行為について,被害者に占有があったかどうかが成立する犯罪との関係で問題となります。
窃盗罪における「窃取」とは,占有者の意思に反して,目的物を自己の占有に移すことをいいます。
そして,ここにいう「占有」とは,物に対する事実上の支配をいい,事実上の支配が認められるためには,被害者であるVに財布に対する占有の事実と意思があることが必要となります。
例えば,Aが財布を窃取した時点で,Vがその場から遠く離れてしまっていた場合,もはや占有の事実も意思も認められず,遺失物横領罪(占有離脱物横領罪:254条)が成立するにとどまることも考えられるでしょう。
もっとも,本件では,施錠を忘れていたとはいえ,財布は被害者の車の中にあることから,たとえその被害者が遠く離れてしまっていたとしても,その占有は一般に認められるものと考えられます。
なぜならば,仮に車に財布を置き忘れていたとしても,車の中に他人が入り込むことは通常想定されておらず,車の内部は車の所有者の占有が強く及んでいる空間であると考えられるからです。
このことからも,Aには窃盗罪が成立し得るものと考えられるでしょう。
したがって,Aは遺失物横領罪ではなく窃盗罪によって逮捕されているのです。
では次に,本件では,Aは「住居」に侵入したといえるのでしょうか。
一旦,刑法の規定を離れて常識的に考えてみると,「住居」としてまずイメージするのはいわゆる一軒家やマンションの一室といった,「建造物」であるかと思います。
その上で,刑法130条前段の規定を見てみると,「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し」た者を処罰する旨を定めています。
ここでは,「住居」と「建造物」は書き分けわれており,必ずしも「住居」=「建造物」であるとは考えられていないことが分かります。
この点,130条前段が定める「住居」とは,人が起臥寝食などの日常生活に使用する場所をいいます。
したがって,Vが多目的レジャー車(キャンピングカー等)に住んでいたという実態がある場合には,車といえども「住居」に当たる可能性があります。
したがって,状況によっては,Aには逮捕された窃盗罪以外にも住居侵入罪が成立する可能性があります。
なお,住居侵入罪と窃盗罪は,「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるとき」として,「その最も重い刑により処断」(本件であれば,235条により,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)されることになります(牽連犯(刑法54条1項後段))。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件含む刑事事件専門の法律事務所です。
侵入盗等の窃盗事件は弊所でも多数扱っている事件の一つであり,刑事事件専門の弁護士の経験に裏打ちされた弁護活動を行うことが可能です。
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