窃盗罪と横領罪の違い
窃盗罪と横領罪の違い
大阪市中央区にあるV社において集金業務を担当するAさんは、同じ業務を担当するBさんと協力して、ある特定地域の集金業務に従事していました。
そして、Aさんは、2時間程度集金業務を終えたところでBさんから電話を受け、Bさんから「子どもが急に熱を出して、これから保育園に迎えにいくことになりました。」「今現在で10万円集金できています。」「これからAさんのところに向かい、その10万円を預けるので会社に届けてくれませんか?」「会社には了承を得ています。」と言われました。
そこで、Aさんは数分後、Bさんと合流し、集金日、集金金額等が記載され、糊付けされ封をされた封筒を受け取り、Bさんと別れました。
ところが、Aさんは、「10万円くらいなら懐に入れてもばれないだろう。」「自分が集金したお金などで穴埋めすればバレないだろう。」などと変な気を起こし、封筒の封を開け、中から1万円札10枚を抜き取りました。
Aさんは会社に帰り、上司に「Bさん封筒については盗まれてしまいました。」などと嘘をつきましたが、調査の結果、嘘だということが判明し、会社の代理人弁護士から「弁償しなければ大阪府東警察署に窃盗罪で告訴しますよ。」などと最終通告を受けてしまいました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
集金業務等に従事し、集金したお金を勝手に処分などした場合、真っ先に思い浮かぶ犯罪は横領罪(刑法252条)、あるいは業務上横領罪(刑法253条)ではないかと思います。
しかしながら、今回、Aさんは会社の代理人弁護士から「窃盗罪で告訴する。」などと言われています。
なぜ、窃盗罪なのでしょうか?窃盗罪と横領罪の違いはどの点にあるのでしょうか?
~ 窃盗罪、横領罪、業務上横領罪 ~
窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
また、横領罪は刑法252条、業務上横領罪は刑法253条に規定されています。
刑法252条1項
自己の占有する他人の者を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
刑法253条
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
~ 窃盗罪と横領罪の違い ~
両罪の一番の違いは、「財物(物)が自分の占有下にあるかどうか」です。
つまり、自分が預かっていないもの(占有下にないもの)を自分のものにした場合は窃盗罪が、自分が預かっているもの(占有下にあるもの)を自分のものにした場合は横領罪が成立します。
また、規定からもお分かりいただけると思いますが、「窃盗罪には罰金刑が定められているのに対し、横領罪は懲役刑しか定められていないこと」も大きな違いといえ、窃盗罪と横領罪を区別する実益があります。
~ なぜ窃盗罪? ~
では、なぜAさんが窃盗罪で告訴すると言われたのかといえば、「Aさんに現金10万円という『財物』に対する占有が認められないから」だと考えられます。
つまり、あくまでAさんが勝手に奪った現金10万円に対する占有は、Bさんが本件会社との間で結んだ委任契約などにも基づき発生し、Bさんにその占有が認められるものと考えられます。
そこで、Aさんが現金10万円を勝手に奪ったとしても「自己の占有する他人の物を横領した」とはいえず横領罪、あるいは業務上横領罪は成立しないのです。
~ 告訴する、被害届を提出すると言われたら? ~
刑事事件化する前に、一刻も早く相手方と示談交渉に臨みましょう。
ただし、示談交渉は示談交渉に慣れた弁護士に任せましょう。
弁護士は示談交渉に関する知識、経験を有していますから、弁護士であれば適切な形式、内容で示談を締結できる可能性が高くなります。
示談締結の際に、「捜査機関に告訴や被害届を提出しない」旨の条項を盛り込むことができれば、逮捕などの捜査を受けるおそれもなくなるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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