盗品の無断借用で窃盗事件

2019-03-31

盗品の無断借用で窃盗事件

A(20歳)はVと同じ東京都墨田区の寮に住む大学生で,Vの隣室に住んでいました。
AはVが友人Bから盗んできた一眼レフカメラを持っているのを知り,これを借りて旅行に出掛けようと考えました。
ある日,AはVの留守を狙い,無断でVの部屋に入って一眼レフカメラを持ち出し二泊三日の旅行に出掛けました。
旅行から帰ってきたAは一眼レフカメラをVの部屋に戻しておきましたが、後々、これが何か犯罪になるのではないかと不安に思い、弁護士に相談してみることにしました。
(フィクションです。)

(1)Aに成立が考えられる罪名

上記の事例において,Aには住居侵入罪(刑法130条前段),窃盗罪(刑法235条)の成立が考えられます。

(2)住居侵入罪

住居侵入罪は,「正当な理由がないのに,人の住居…に侵入し」た場合に成立します。
ここにいう「住居」とは,人の起臥寝食に使用される場所を指し,アパートの一部屋であっても当然住居に当たります。
そして,「侵入」とは,居住者の意思に反する立ち入りを言います。
Vの部屋は寮ですが,各部屋が区切られており,Vが起臥侵食に使用する場所と言えるため,「住居」にあたります。
そして,AはVの部屋に入っており,これはVの意思に反する立ち入りと考えられるため,「侵入し」たといえます。
したがって,Aに住居侵入罪が成立すると考えられます。

(3)窃盗罪

窃盗罪は,「他人の財物を」,不法領得の意思を持って,「窃取した」場合に成立します。
もっとも,刑法235条には不法領得の意思という文言は存在しません。
しかし,窃盗罪の行為態様は,外形的には窃盗罪よりも法定刑が軽い毀棄・隠匿罪と区別することは困難であるため,これらの犯罪と窃盗罪を区別するため,判例上,窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要であるとされています。

そして,不法領得の意思の内容は,権利者を排除して,他人の物を自己の所有物としてふるまう意思(権利者排除意思)と,その物の経済的用法に従って利用処分する意思(利用処分意思)とされています。
また,「窃取」とは,占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し,目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。

(4)盗品も「他人の財物」にあたるか

上の事例では,Aが持ち出した一眼レフカメラはVが友人Bから盗んできたものであり,盗品です。
このような盗品も「他人の財物」に当たり,窃盗罪を構成するのでしょうか。

確かに,窃盗罪のような財産罪の保護法益が究極的には所有権にあることは否定できませんが,現代社会は財産関係が複雑化しており,誰がその物の所有者であるかを特定することは一般的に困難です。
そのため,占有それ自体をまず保護すべきであると考えて,盗品も「他人の財物」にあたると考えられます

(5)一時的に借用したに過ぎない場合,不法領得の意思があるか

上の事例でAは旅行に持っていくために一眼レフカメラをVの部屋から持ち出していますが,このように一時的に財物を持ち出したに過ぎない場合にも窃盗罪が成立するのでしょうか。
この点については,上記の不法領得の意思の有無によって判断すべきと考えられます。
Aは近場で短時間カメラを使用したわけではなく,二泊三日の旅行に持ち出していることから少なくとも3日間自己の支配に置いています。
そのため,権利者であるVの使用可能性を排除しているといえるため,権利者排除意思が認められます。

また,Aは一眼レフカメラを旅行先で写真撮影に使用しており,カメラ自体や備品もある程度損耗しているといえ、物の経済的用法に従い利用処分が認められることから,利用処分意思が認めらます。
よって,不法領得の意思が認められるため,Aには窃盗罪が成立すると思われます。

(6)刑事事件に強い弁護士に相談

刑事事件は事案に応じた迅速かつ適切な対応が大事です。
早い段階で刑事事件に強い弁護士をつけることで,示談交渉等により前科が付かない場合もあり得ます。
窃盗行為をして取調べを受けたという方や,ご家族が逮捕されたという方は,ぜひ刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に強い弁護士初回法律相談を無料で承っております。
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