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営業秘密の書かれた書類を持ち出したら
営業秘密の書かれた書類を持ち出したら
営業秘密の書かれた書類の持ち出し事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、さいたま市大宮区にある、食品Xを主力商品とする食品販売会社Bに、営業部の社員として勤務している。
食品Xは、そのレシピが公開されておらず、レシピが書かれた書類は商品開発部において管理されていた。
Aさんは、B社の競業他社に勤める友人のCさんから「食品Xのレシピの書かれた書類を持ってきてくれたら300万円を渡す」といわれた。
Aさんは、食品Xのレシピが書かれた書類を管理する業務に従事していなかったが、近いうちにB社を退職しようと考えていたことから、Cさんの要求に応じることにした。
Aさんは終業後の深夜に、食品Xのレシピが書かれた書類が保管されている商品開発部内の部屋に侵入し、同レシピを自らのカバンの中に入れて持ち去った。
その後、Aさんは、持ち去ったレシピをCさんに渡し、報酬として300万円を受け取った。
後日、B社から被害の申告を受けた埼玉県大宮警察署は、捜査の末Aさんを逮捕した。
(上記の事例はフィクションです)
今回のAさんは営業秘密の書かれた書類を持ち出し逮捕されていますが、これはいったいどういう犯罪になり得る行為なのでしょうか。
以下で検討していきましょう。
~業務上横領罪~
(業務上横領)
刑法第253条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
Aさんは、食品販売会社Bに営業部の社員にもかかわらず、B社の競業他社に勤めるCさんに対し、B社の営業秘密である食品Xのレシピを渡していることから、業務上横領罪の成立が考えられます。
業務上横領罪における「業務上」とは、社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う業務のうち他人の物を保管することを内容とするものをいいます。
具体的に業務上横領罪が成立する例としては、会社から保管を命じられていたお金を社員が使い込んだ場合などが挙げられます。
上記の事例において、Aさんは食品Xを主力商品とするB社に勤務していますが、AさんはあくまでB社の営業部の社員であり、食品Xのレシピが書かれた書類は商品開発部において管理されています。
そのため、食品XのレシピについてAさんはB社から保管を命じられる立場にある訳ではなく、Aさんは食品Xのレシピの書かれた書類を「業務上」保管していたと評価することはできません。
また、業務上横領罪における「自己の占有」については、被害者との委託信任関係に基づく事実上又は法律上の占有をいうと考えられています。
上記の通りAさんはB社から食品Xのレシピの保管を命じられる立場に無かった以上、Aさんは、同レシピをB社との委託信任関係に基づいて占有していたとはいえず、同レシピについての「自己の占有」は認められません。
したがって、Aさんの上記行為について単純横領罪(刑法252条1項、法定刑は5年以下の懲役)が成立することもないといえます。
~窃盗罪~
(窃盗)
刑法第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
上記の通り、Aさんには食品Xのレシピの書かれた書類についての占有が認められないことから、Aさんが同レシピを持ち去った行為について窃盗罪の成立が考えられます。
食品XがB社の主力商品であり、そのレシピが他社に公開されていないことを踏まえると、食品Xのレシピの書かれた書類は財産的価値を有する書類であるといえ、「他人の財物」にあたります。
窃盗罪における「窃取」とは、占有者の意思に反して、自己又は第三者に財物の占有を移転させることをいいます。
上記の事例において、食品Xのレシピの書かれた書類を占有しているのは、B社の商品開発部の社員又はB社自身ということになります。
Aさんが同レシピを持ち去った行為は、商品開発部やB社の意思に反して、同レシピの占有を自己に移す行為といえることから「窃取」にあたります。
よって、上記事例におけるAさんの行為については、窃盗罪が成立することになるといえます。
~不正競争防止法違反の罪~
「不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。次号において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成11年法律第128号)第2条第4項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の営業秘密保有者の管理を害する行為をいう。次号において同じ。)により、営業秘密を取得した者」は不正競争防止法21条1項1号違反となり、10年以下の懲役または200万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
食品XのレシピはBの主力商品でレシピも公開されていないことから「営業秘密」にあたるといえます。
AさんはCさんに報酬300万円を提示して食品Xのレシピを要求してきたCさんに渡す目的で食品Xのレシピが書かれた書類を持ち去っていますから、不正の利益を得る目的で管理侵害行為により営業秘密を取得したといえます。
よって、Aさんには不正競争防止法違反も成立することになりそうです。
会社の秘密のレシピを売って報酬を得るという点で、不正の利益を得る目的で営業秘密を取得した面が強いこと、罰金額が大きいうえに懲役刑とともに科される可能性があり刑罰が重いことから、Aさんは不正競争防止法違反により処罰されるでしょう。
このように、営業秘密の書かれた書類を持ち出す行為には、業務上横領罪や窃盗罪、さらには不正競争防止法違反が成立する可能性があり、会社との示談交渉のためにも出来る限り早期に弁護士を選任することが重要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士が初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
まずはご予約からフリーダイヤル0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
コンビニを渡り歩いて常習累犯窃盗罪
コンビニを渡り歩いて常習累犯窃盗罪
コンビニを渡り歩いての常習累犯窃盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
住所不定・無職のAさんはお金に困っており、コンビニの面接を受け採用されるや、コンビニの売上金を盗んで逃走するという生活を繰り返し、16都府県、29店舗のコンビニ店から合計1000万円以上の売り上げ金を盗みました。
そして、Aさんはこれまでと同じように、今度は神奈川県川崎市内のコンビニに面接に行ったところ、「犯人とよく似た人物が面接に来ている」との通報を受けた神奈川県中原警察署の警察官により職務質問にあい、その後常習累犯窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~ 常習累犯窃盗罪とは ~
常習累犯窃盗罪は窃盗罪を繰り返し、さらに窃盗既遂罪あるいは窃盗未遂罪を犯した場合に問われ得る犯罪です。
「盗犯等ノ防止及処分二関スル法律(以下、法律)」の3条に規定されています。
~ 常習累犯窃盗罪の要件 ~
法律3条の規定は以下のとおりです(ひらがな部分は実際はカタカナです)。
常習として前条に掲げたる刑法各条の罪又はその未遂の罪を犯したる者にしてその行為前10年内にこれらの罪又はこれらの罪と他の罪との併合罪に付き3回以上6月の懲役以上の刑の執行を受け又はその執行の免除を得たるものに対し刑を科すべきときは前条の例に依る
この規定を分解すると、
1 前条に掲げたる刑法各条の罪(刑法235条(窃盗)、236条(強盗)、238条(事後強盗)、239条(昏睡強盗))の罪又はこれらの未遂の罪を犯したこと
2 1記載の犯罪を常習として犯したこと
3 1記載の犯罪又はそれらの犯罪と他の犯罪との併合罪につき、懲役6月以上の刑の執行を受け又はその執行の免除を得たことがあること
4 3が、行為前の10年以内に3回以上あること
となります。
常習累犯窃盗罪の法定刑は3年以上の有期懲役です。
~ 「常習」とは ~
常習累犯窃盗罪では、常習性の認定がポイントとなります。
この点、上記2の「常習として」とは、反復して特定の行為を行う習癖をいいます。
常習性の有無について、裁判所は、行為者の前科・前歴はもちろん、性格、素行、犯行の動機、手口、態様、回数などを総合的に検討し、機会があれば,抑制力を働かせることなく安易に反復して窃盗を行ってしまう習癖があるといえるかどうかを基準に常習性を認定しているものと思われます。
したがって、「常習性」の認定は前科のみで判断されるわけではありません。
過去の窃盗前科の犯行態様が、ドライバーを使って古いアパートの錠を外して侵入し現金を盗んだ、という人が、本件で、スーパーマーケットの缶詰2個を万引きしたという事案で、裁判所(東京高裁:平成5年11月30日)は、「動機・態様を著しく異にしており、本件が窃盗の習癖の発現としてなされたものであるとは認められない」として常習性を否定しています。
~ 執行猶予の可能性も? ~
常習累犯窃盗罪の法定刑は3年以上の有期懲役ですから、執行猶予付き判決を受けることは極めて厳しいといえます(執行猶予付き判決を受ける要件の一つとして「3年以下の懲役又は禁錮」の言い渡しを受けることが必要です)。
また、事例のように被害額が1000万円を超える場合はなおされら厳しいといっても過言ではないでしょう。
しかし、被害額が少ない事案であっても常習累犯窃盗罪として起訴される場合があり、そうした場合は、執行猶予付き判決を獲得できる可能性も十分残されているといっていいでしょう。
法律上の減軽事由(刑法66条等)に当たる事情がある場合は、法定刑が減軽され、執行猶予付きの判決を獲得できるハードルを低めることはできます。
お困りの方は弁護士までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
常習累犯窃盗事件などの刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。
万引きで前科が付くの?
万引きで前科が付くの?
東京都板橋区に住む主婦Aさん(36歳)は、近所にある大型ショッピングモールの化粧品売り場で、化粧品3点を万引きしたとして保安員に現行犯逮捕され、その後身柄を警視庁志村警察署の警察官に引き渡されました。
その後、Aさんは万引きの前歴2回を有していたことなどから窃盗罪で略式起訴され、前科1犯がつきました。
(フィクションです)
~ 万引き ~
万引きは窃盗罪(刑法235条)に当たる立派な犯罪です。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
そして、窃盗罪で起訴され裁判で有罪とされれば、懲役刑、罰金刑を科されます。
では、「前科」はどのような経緯で付くのでしょうか?
~ 前科が付くまでの流れ ~
逮捕されてから「前科」が付くまでの流れは以下のとおりです。
逮捕 → 捜査 → 起訴(正式,略式) → 裁判(正式,略式) → 「有罪」 → 確定 → 前科
つまり、前科は、刑事裁判を受け、その刑事裁判で有罪とされ、被告人側、検察側の双方が不服申し立てができなくなった(つまり「確定」した)後付きます。
不服申し立てができなくなったとは、不服申し立て期間が経過した「自然確定」の場合と、不服申し立ての権利を放棄する「上訴放棄」及びいったんした不服申し立てを取り下げる「上訴取り下げ」があります。
~ 前科について ~
前科は検察庁の犯歴係(検察事務官が担当)が把握しており、決められた人にしか公開されません(一般人は知ることができません)。
前科は検察庁のシステムに記録され、取り消すことはできません。
そのため、いつでも検察事務官が作成する「前科調書」という書類に前科の記録を記載することができます。
ですから、仮に、あなたが今後犯罪を犯した場合は前科調書が発行され、捜査を担当する警察官、検察官はもちろん、裁判を担当する裁判官もその前科調書を見て、あなたが過去に窃盗前科を有していることを把握することができます。
~ 前科を回避するには? ~
上記の経過を右の方からたどりますと、まず裁判で「無罪」判決を獲得することが考えられます。
しかし、有罪率が高い日本の刑事裁判ではこのことを目指すのはあまり現実的ではないかもしれません(もっとも、冤罪事件の場合は無罪判決獲得を目指す必要があります)。
次に、考えられるのは、検察官の起訴を回避することでしょう。
検察官の起訴を回避する、すなわち、不起訴処分を獲得することができればそもそも刑事裁判を受ける必要はなく、裁判で有罪の判決を受けるおそれもないからです。
そして、不起訴処分を獲得するには、まずは被害者に精神誠意謝罪し、被害弁償、示談に向けた話し合いを進めていく必要があります。
被害者に被害弁償するなどして示談を成立させることができればあなたにとって有利な情状として考慮され、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなると考えられるからです。
~ 被害弁償、示談は弁護士に依頼を ~
もちろん事件の当事者間でも被害弁償、示談交渉をすることはできます。
しかし、事件当事者というだけあって、感情のもつれなどから被害弁償、示談交渉がなかなかうまく進まない場合もあります。
そんなときは弁護士が力になれます。
示談交渉に関する経験、知識が豊富な弁護士であれば、適切な内容・形式での示談締結を目指して活動を行います。
逮捕の後、勾留された場合、私選の弁護士を選任していない限り国選の弁護士が選任されます。
国選の弁護士も私選同様、示談交渉に当たってくれるでしょう。
しかし、特に、当初から在宅事件の場合、逮捕から勾留までに釈放された場合は注意が必要です。
その場合は国選の弁護人は選任されませんから、ご自身で示談交渉を行っていただく必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、万引きなどの窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
ご家族が窃盗罪などの刑事事件で逮捕され、前科が付くのを回避したいとお考えの方、その他でお困りの方は、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
土日・祝日を問わず、専門のスタッフが24時間、無料法律相談、初回接見サービスのご予約を承っております。
福岡県田川市の万引きで逮捕
福岡県田川市の万引きで逮捕
福岡県田川市の万引き事件とその逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、福岡県田川市内のスーパーにおいて、生活用品を繰り返し万引きしていました。
Aさんには過去にも同じく万引きで警察に連れて行かれた経歴があります。
スーパーも、頻繁に万引きをされて困っていたので、福岡県田川警察署に被害届を出しました。
ある日、Aさんがいつものようにスーパーで万引きをし、玄関を出たところ、警備員に声をかけられ、事務室に連れて行かれました。
まもなく駆け付けた警察官により、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
~万引きをするとどのような罪が成立するか?~
店舗において万引きをすると、通常、窃盗罪が成立します。
窃盗罪は、他人の占有する財物を窃取する犯罪であり、法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
~万引きをしたAさんはどうなるか?~
Aさんには過去に、万引きで警察に連れて行かれた経験があります。
被害額が僅少な窃盗事件においては、被疑者が捕まっても、「微罪処分」になり、検察に事件を送致せず、事件を終了させる場合があります。
Aさんも、前回は微罪処分を受けたことにより、本格的な刑事事件の手続きに乗らずに済んだのかもしれません。
しかし、今回の万引き事件においては、Aさんは窃盗罪の疑いで逮捕されてしまいました。
Aさんはどうなってしまうのでしょうか。
~逮捕後の刑事手続~
逮捕されると、警察署に引致され、弁解を録取された後、取調べを受けることになります。
取調べを受けたあと、釈放されることもありますが、留置の必要があると認められると、留置場に入らなければならず、帰宅することができません。
この場合警察は、逮捕時から48時間以内にAさんを検察に「送致」しなければなりません。
「送致」を受けた検察官は、身柄を受け取ったときから24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するか、あるいは起訴するかを決めなければなりません。
勾留請求をされ、裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
やむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間勾留が延長されます。
検察官は、勾留の満期日までに、Aさんを起訴するか、不起訴にするか、あるいは処分を保留して釈放するかを決めます。
~勾留を防ぐ活動を弁護士に依頼~
上記の通り、一旦勾留されると身体拘束が長引きます。
勾留請求をされる前に釈放されれば、早期に帰宅することができます。
弁護士は、検察官に対し、Aさんに逃亡・罪証隠滅のおそれがないなど、勾留の要件を満たさないことを訴え、勾留請求をしないように働きかけることができます。
また、勾留決定を出す裁判官に対しても、勾留決定をしないように交渉する活動を行うことができます。
上記の活動にも関わらず勾留されてしまった場合には、準抗告などの不服申し立て制度を活用し、勾留の取消などを求めて活動することになるでしょう。
~示談交渉を弁護士に依頼~
スーパーと示談が成立すれば、逃亡・罪証隠滅のおそれがないと判断され、早期に釈放される可能性が高まります。
ただし、Aさんが留置場や拘置所の中にいる場合は自分で示談交渉することはできませんので、弁護士に示談交渉を依頼する必要があります。
また、釈放され、在宅で事件が進行している場合であっても、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。
Aさんがスーパーと直接交渉すると、不当に高額な損害賠償請求を受ける、法律的に意味のない内容の示談を成立させてしまう、そもそも担当者が面会してくれないなどの問題が生じることがあります。
Aさんとスーパーの間に弁護士を立たせることにより、妥当な金額による、法律的に意味のある示談の成立に向けた示談交渉を行うことができます。
また、スーパーの担当者がAさんとは会ってくれない場合であっても、代理人であれば会う、という方針をとる可能性もあります。
まずは、接見にやってきた弁護士に、身柄解放活動、示談交渉、取調べの対応方法についてアドバイスを受けましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、万引き(窃盗)事件についてもご相談いただけます。
ご家族が万引き(窃盗)事件を起こし、逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
兵庫県川西市の冤罪事件で誤認逮捕
兵庫県川西市の冤罪事件で誤認逮捕
兵庫県川西市の冤罪事件と誤認逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
兵庫県川西市に住むAさんは,近所のスーパーで窃盗行為を行ったとして兵庫県川西警察署に逮捕されました。
身に覚えのないことで逮捕されてしまったAさんは,当初は無実を主張していました。
しかし,長時間に及ぶ取調べや取調べにあたった警察官の高圧的な態度に疲弊したAさんは罪を認めてしまいました。
後日,犯人を名乗る人物が出頭し,捜査の過程でAさんが無実であったことが分かりました。
(フィクションです)
【冤罪事件と誤認逮捕】
窃盗事件などの刑事事件では,監視カメラに写っていた人物とよく似ていたり,捜査の過程で聞き込みに応じた人からの証言にたまたま合致していたなどといった理由で,さも犯罪者であるかのような扱いを受けてしまう場合があります。
そういった方の中には逮捕や起訴されたり,そのまま有罪判決を受けてしまう方もいます。
こうした冤罪の原因の1つとしては,Aさんのように長時間に及ぶ取調べや半ば脅しのような警察官の言動によって自白を強要されたりすることがまま挙げられます。
自白のみによって有罪となることはありませんが,捜査機関や裁判所は自白を有力な証拠としてみているため,冤罪にも関わらず自白してしまうことは被疑者自身にとって不利に扱われることになってしまいます。
ですが,一度してしまった自白を後になって争うことは非常に困難です。
取調べに弁護士が立ち会うことは認められておらず,また裁判の場では自白が違法な取調べによってなされたものであるということを証明する事実や証拠がほとんどないからです。
そこで,虚偽の自白をしないためにも,早期の段階から弁護士をつけてしっかりと取調べに対応していくことが必要です。
被疑者の方には「弁護人選任権」「接見交通権」「黙秘権」「署名押印拒絶権」「調書の増減変更申立権」等、様々な権利が保障されています。
これらの権利の具体的な内容や行使の方法を弁護士からアドバイスを受けることは,冤罪防止のためには非常に重要であるといえます。
【冤罪事件における弁護士の役割】
身に覚えのない冤罪であることで被疑者となってしまった場合でも,原則として取調べを受けることになります。
全ての取調べがそうであるとは言えませんが,中には昼夜を問わず長時間にわたる取調べや,テーブルなどの物を叩きつけたり威圧したり脅迫じみた言葉を混ぜながら行われる取調べもあるようです。
このような取調べはすべて違法または不当な取調べです。
以上のような取調べが行われた場合,絶対に虚偽の自白はせず,すぐに弁護士を呼んでください。
弁護士は適切なアドバイスとともに捜査側や裁判所に対して適切な対処をいたします。
例えば,抗議文の提出,身体拘束解放活動に向けて活動,検察官に取調べの全過程の録音・録画を申入れたりします(録音・録画により違法・不当な取調べが抑止されることにつながります)。
そして,違法な手段で得られた自白は証拠として採用することができません。
仮に虚偽の自白をしてしまっても,このような取調べによって得られた自白は任意にされた自白ではないため証拠として採用されない可能性があります。
違法な取調べによって得られた自白調書は任意性に疑いがある証拠として,自白調書排除への判断につながります。
ただし,冒頭でも触れたように,違法・不当な取調べであったと裁判所に認められるハードルは非常に高いです。
したがって,できるだけ早期の段階から弁護士のアドバイスを受け不利な調書を作成されないようにする必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件を専門に扱う弁護士が直接無料相談や初回接見サービスを行っております。
冤罪で被疑者となってしまった方,誤認逮捕をされてしまってお困りの方は,早急に,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談下さい。
下着泥棒で逮捕~事後強盗罪の可能性
下着泥棒で逮捕~事後強盗罪の可能性
下着泥棒事件の逮捕と事後強盗罪の可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
A(大学4年生)は,以前から好意を寄せていた同級生のVが京都府京田辺市で一人暮らしの下宿生活をしていることを知った。
Aは,Vの留守中を狙ってベランダに干してあったVの下着を盗んだ。
Vから下着泥棒の被害届を受けた京都府田辺警察署の警察官は,捜査の結果,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件はフィクションです。)
~下着泥棒と窃盗罪の成否~
本件でAは,以前から好意を抱いていたVの自宅のベランダに干してあった下着を,Vの留守中に奪取しています。
窃盗罪を規定する刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪」とすると定めています。
ここにいう「他人の財物」とは,他人の(所有し)占有する財物だとされており,これを「他人」であるVの意思に反してその占有を移転させていることから,Aの行為は「窃取」に当たることになるでしょう。
上記の客観的要件に加えて,「罪を犯す意思」(刑38条本文)すなわち故意も認められるでしょう。
ここで注意が必要なのが,窃盗罪を含む領得罪(窃盗罪・強盗罪・詐欺罪・恐喝罪・横領罪)では,主観的要件として,故意の他に「不法領得の意思」が必要とされることです。
判例・実務上,不法領得の意思とは,「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用・処分する意思」をいうとされています。
本件でAがVの下着を窃取する行為は,その利用可能性を侵害し,権利者の利用を排除するものとして,権利者排除意思が認められることは明らかといえます。
では,上記定義における,後者の利用処分意思は認められるでしょうか。
「不法領得の意思」における利用処分意思とは,「経済的用法に従い利用・処分する意思」を指す旨は上述のとおりです。
しかし,これに形式的に下着の窃盗行為を当てはめた場合,AがVの下着を好事家等に売る等の意思がない場合(つまり自己の性的満足のために盗んだような場合)には,不法領得の意思は認められず,窃盗罪は成立しないという結論になってしまいます。
もっとも,実務・判例においては,実質的にこの利用処分意思は「財物から何らかの効用を享受する意思」を意味すると考えられています。
そうすると,先程と異なり,Aの下着の窃盗行為は,下着それ自体から何らかの効用を得る意思があったのは明白であり,利用処分意思が認められることになります。
メディアなどを通してよく目にする下着泥棒にも,窃盗罪を成立させるためには,やや技巧的な解釈論が必要となってくるのです。
~事後強盗罪(刑238条)の成立可能性~
仮に,Aが下着を窃盗した後に,V等に見つかってしまい,その際に,財物を取り返されることを防ぐためや,逮捕を免れるため等に,暴行又は脅迫を行ってしまった場合,Aは「強盗として」処罰されることになります。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり,長期は10年ですが,短期は1ヵ月(刑12条1項参照)になります。
これに対し,(事後)強盗罪は「5年以上の有期懲役に処する」としており,短期が5年とその法定刑には極めて大きな差があります。
したがって,弁護士としては,状況にもよることはもちろんですが,仮に財物奪取後の暴行・脅迫があったとしても(事後)強盗罪は成立せず,窃盗と暴行(傷害)・脅迫にとどまることなどを主張することが考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪は,わが国においてもっともポピュラーな犯罪でありながら,横領罪や器物損壊罪,あるいは詐欺罪などとも区別が非常に微妙な犯罪です。
窃盗罪を含む財産罪の成否の判断に関しては,専門性を持った弁護士の助言が不可欠です。
ご家族が窃盗事件で逮捕されてしまったという方は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に お問い合わせください。
窃盗罪で罰金刑?
窃盗罪で罰金刑?
窃盗罪の罰金刑について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
兵庫県川西市に住むAさんは、平成26年8月20日に、近所にあるスーパーで食料品10点を万引きしたとして兵庫県川西警察署に検挙されましたが、Aさんの息子さんが被害弁償するなどしたため微罪処分に終わりました。
しかし、Aさんは、平成28年8月20日に、同じスーパーで食料品1点を万引きしたとして検挙されましたが、このときもAさんの息子さんが被害弁償するなどして不起訴処分に終わりました。
ところが、Aさんは、令和元年8月20日に、同じスーパーで食料品5点を万引きをして兵庫県川西警察署に窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Aさんは窃盗罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けてしまいました。
(フィクションです)
~ 窃盗罪には罰金刑が規定されている ~
窃盗罪に罰金刑が規定されてあることをご存じでしょうか?
窃盗罪が規定されてある刑法235条を見ると
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
とされています。
強盗罪、詐欺罪、背任罪、恐喝罪、横領罪には懲役刑しか規定されていないのに、窃盗罪に罰金刑が規定されているのはなぜでしょうか?
~ 窃盗罪に罰金刑が規定された背景 ~
実は、以前は、窃盗罪に罰金刑は規定されていませんでした。
ところが、平成18年に施行された改正刑法により、窃盗罪に罰金刑が新設されたのです。
その背景は「万引き事件の増加」です。
平成18年までの万引きの認知件数を見ると、平成一桁代では10万件を切る、あるいは10万件代で推移していたものの、平成10年代に入ると、
平成13年 12万6110件
平成14年 14万0002件
平成15年 14万6308件
平成16年 15万8020件
平成17年 15万3972件
平成18年 14万7113件
と増加していることが分かります。
一言で万引きといっても被害額が少額な比較的軽微な事案から重大な事案なものまで様々で、懲役刑しか規定されていなかった時代には、「懲役刑にまでは処する必要がない」と思われる比較的軽微事案では、刑事処分を決める検察官は不起訴処分とせざるを得ませんでした。
そこで、このような事案についても刑事処罰(罰金刑)を科して万引きの抑制につなげよう、という意図で罰金刑が新設されたのです。
ちなみに、平成18年以降は万引きの認知件数は徐々に下がりはじめ、平成29年は10万8009件でした。
(認知件数は「平成30年度版 犯罪白書」を参照)
~ 窃盗罪に罰金刑が科される場合とは? ~
窃盗罪で罰金刑が科される典型的なケースは、初犯、つまり前科がない場合です。
確かに、Aさんは平成26年と平成28年に万引きしていますが、そのいずれの場合でも刑事処罰(懲役刑、罰金刑)は受けていません。
ちなみに、微罪処分は警察が被疑者に対し厳重注意、訓戒するにとどまり、事件を検察庁へ送致しない処分、不起訴処分は起訴しない処分のことをいいます。
いずれの場合でも前科として記録されず、あくまで前歴が残るだけです。
このように、過去に何回かの前歴を有し、今回はじめて刑事処罰を科す必要がある判断された場合は罰金刑を科される可能性が高いでしょう。
~ 窃盗罪の罰金は誰でも納付できる? ~
お金がないからこそ万引きしたのに、さらに刑罰で罰金刑を科すのは酷なのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、最近は、万引きする動機は様々で、単に「お金がないから」という単純なものではなくなってきています。
また、仮に、お金がない場合でも、実際に納付するのはご本人でなければなりませんが、罰金の原資となるお金は本人以外のお金でもよいわけです。
つまり、お金がなく納付できない、という場合はご家族等の援助を受けて納付することもできます。
この点が懲役刑と大きく異なる点です(懲役刑は、本人以外の人が代わりに刑の執行を受けるということはできません)。
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刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
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キャンピングカーに侵入盗で窃盗罪・住居侵入罪?
キャンピングカーに侵入盗で窃盗罪・住居侵入罪?
Aは,東京都中野区の路上に駐車されていた大き目の多目的レジャー車(いわゆるキャンピングカー)の運転席に財布が置いてあることに気づいた。
上記車が施錠されていなかったことから,Aは人目を忍びそのまま車の中に入り,運転席から車の所有者であるVの財布を持ち去った。
Vから被害届を受けて捜査を進めた警視庁野方警察署の警察官は、Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)
~窃盗罪と住居侵入罪~
刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とすると規定しています。
住居侵入罪(130条)を伴う,窃盗犯は実務上,侵入盗と呼ばれ,窃盗の類型の中でも代表的なものの一つです。
今回のAさんはキャンピングカーに入って財布を盗んでいるようですが,この侵入盗にはならないのでしょうか。
以下で検討していきましょう。
まず本件では,Aが車から財布を持ち去った行為について,被害者に占有があったかどうかが成立する犯罪との関係で問題となります。
窃盗罪における「窃取」とは,占有者の意思に反して,目的物を自己の占有に移すことをいいます。
そして,ここにいう「占有」とは,物に対する事実上の支配をいい,事実上の支配が認められるためには,被害者であるVに財布に対する占有の事実と意思があることが必要となります。
例えば,Aが財布を窃取した時点で,Vがその場から遠く離れてしまっていた場合,もはや占有の事実も意思も認められず,遺失物横領罪(占有離脱物横領罪:254条)が成立するにとどまることも考えられるでしょう。
もっとも,本件では,施錠を忘れていたとはいえ,財布は被害者の車の中にあることから,たとえその被害者が遠く離れてしまっていたとしても,その占有は一般に認められるものと考えられます。
なぜならば,仮に車に財布を置き忘れていたとしても,車の中に他人が入り込むことは通常想定されておらず,車の内部は車の所有者の占有が強く及んでいる空間であると考えられるからです。
このことからも,Aには窃盗罪が成立し得るものと考えられるでしょう。
したがって,Aは遺失物横領罪ではなく窃盗罪によって逮捕されているのです。
では次に,本件では,Aは「住居」に侵入したといえるのでしょうか。
一旦,刑法の規定を離れて常識的に考えてみると,「住居」としてまずイメージするのはいわゆる一軒家やマンションの一室といった,「建造物」であるかと思います。
その上で,刑法130条前段の規定を見てみると,「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し」た者を処罰する旨を定めています。
ここでは,「住居」と「建造物」は書き分けわれており,必ずしも「住居」=「建造物」であるとは考えられていないことが分かります。
この点,130条前段が定める「住居」とは,人が起臥寝食などの日常生活に使用する場所をいいます。
したがって,Vが多目的レジャー車(キャンピングカー等)に住んでいたという実態がある場合には,車といえども「住居」に当たる可能性があります。
したがって,状況によっては,Aには逮捕された窃盗罪以外にも住居侵入罪が成立する可能性があります。
なお,住居侵入罪と窃盗罪は,「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるとき」として,「その最も重い刑により処断」(本件であれば,235条により,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)されることになります(牽連犯(刑法54条1項後段))。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件含む刑事事件専門の法律事務所です。
侵入盗等の窃盗事件は弊所でも多数扱っている事件の一つであり,刑事事件専門の弁護士の経験に裏打ちされた弁護活動を行うことが可能です。
窃盗事件(侵入盗等)で逮捕された方のご家族は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に今すぐにお電話下さい。
キャッシュカードすり替え窃盗事件
キャッシュカードすり替え窃盗事件
福岡県北九州市在住の一人暮らしの高齢者Vさんに対し、銀行職員を名乗る男から電話があり、「あなたの預金口座が犯罪に利用されているおそれがあります。職員がご自宅に伺いますのでキャッシュカードを確認させてください。」と告げられた。
その後、Vさん宅に銀行職員を名乗るAという男が訪れ、AはVさんに対し、「ご自宅でキャッシュカードを厳重に保管してもらう必要があります。暗証番号を書いたメモと一緒にこの封筒に入れておいてください。」と言って用意していた封筒を手渡した。
VさんはAの言葉を信用し、受け取った封筒にVさん名義の口座のキャッシュカードと暗証番号を書いたメモを入れた。
その後、AはVさんが目を離した隙に、Aがあらかじめ用意していたダミーの封筒とVさんのキャッシュカード入りの封筒をすり替え、Vさんのキャッシュカード等が入った封筒をそのまま持ち去った。
その後、Vからの相談を受けた福岡県八幡西警察署は捜査を開始し、Aは逮捕されることとなった。
(上記の事例はフィクションです)
~特殊詐欺の手口~
上記事例のように、銀行の職員や警察官を装って、キャッシュカードが犯罪に利用されているとうそをいい、隙を見て別のカードにすり替えるという手口の事件が多発しています。
このようなキャッシュカードをすり替えて騙し取るという手口は、オレオレ詐欺などの特殊詐欺の一環として行われることが多く、特殊詐欺グループによる組織的な犯罪であることが多いです。
そのため、特殊詐欺グループと関わりを持ってしまった未成年の少年などが加害者となるケースも多いです
~キャッシュカードすり替えで成立する犯罪~
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法246条(詐欺罪)
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪が成立するためには、人を欺く行為があったといえる必要があり、人を欺く行為は、これによって被害者が錯誤に陥り、財物の交付に至らせるような性質のものでなければなりません。
上記の事例のAは、銀行職員を装い預金口座が犯罪に利用されているおそれがあるという嘘をついています。
Vさんが一人暮らしの高齢者であることを踏まえると、Aの行為はVが錯誤に陥る程度の嘘をつく行為であるとはいえます。
もっとも、Aによる嘘をつく行為は、あくまでVさんにキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを封筒に入れさせるためのものであり、その封筒の交付をVさんから受けるためのものではありません。
そのため、Aの行為は財物の交付に向けられているとはいえず、詐欺罪における欺く行為にはあたりません。
他方、窃盗罪における「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
上記事例では、Vさんは自宅で保管するために自分のキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを封筒に入れています。
そのため、封筒をすり替えてVさんのキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを持ち去ったAの行為は、Vさんの意思に反して、Vさんの占有を侵害しキャッシュカード等の占有を自己に移す行為といえ、「窃取」にあたります。
このように、上記のような手口は特殊詐欺の一環として行われていますが、詐欺罪ではなく、窃盗罪が成立する可能性が高いといえます。
実際の同種事案においても、窃盗罪で逮捕されているケースが多いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では24時間、無料相談及び初回接見サービスのご依頼を受け付けております。
キャッシュカードすり替え事件でお困りの方、その他窃盗罪に絡んだ刑事事件にお悩みの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪②
窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪②
京都市伏見区に住むAさんは、パチンコ等のギャンブルにお金を使っては消費者金融に借金をすることを繰り返し、借金額を合計200万円くらいまで膨らませてしまいました。
そこで、何とかこの事態を打開したいと考え、Aさんは日頃から目を付けていたVさん(85歳)方に盗みに入ることに決めました。
Aさんは、ホームセンターで侵入のための工具(マイナスドライバー、軍手等)を購入し、Vさんが不在のときを見計らってVさん方に入ろうと思い、Vさん方付近に張り込んでVさんの行動を確認していました。
そして、Aさんは、Vさんが自宅を出たと確認した後、購入した侵入工具を使うなどしてVさん方に入り、タンスの引出しを開けるなどの物色を始めました。
ところが、Aさんは、数十分経っても金目の物を見つけることができませんでした(後日、Vさんは用心のため、自宅にはお金の物を置いていなかったことが判明)。
そこで、AさんはVさん方を出ようとしたところ、ちょうどVさんを訪ねてきたVさんの息子であるWさん(60歳)と鉢合わせになりました。
Aさんは、Wさんから声をかけられ捕まられそうになったため、Wさんの顔を持ってきていたバールで1回殴打してその場から逃走しました。
しかし、Aさんは、京都府伏見警察署に住居侵入罪、事後強盗未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
前回の「窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪①」では、窃盗罪の成立過程やAさんに窃盗未遂罪が成立し得ることをご説明いたしました。
今回は、なぜ、Aさんが事後強盗未遂罪に問われているのかご説明いたします。
~事後強盗罪とは?~
事後強盗罪とは、窃盗犯人が、財物の取返しを防いだり、逮捕を免れるなどするため、相手方に暴行、脅迫を加えた場合に成立し得る犯罪で、刑法238条に規定されています。
刑法238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
本来の強盗罪(刑法236条)とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫→財物奪取(強取)という流れが本来の姿です。
しかし、窃盗の場面では、窃盗犯人が財物を取り返しにきたり、窃盗犯人を逮捕しようとする被害者等に暴行を加えるという場面はしばしばあるところです。
しかも、暴行・脅迫行為は事後的に行われているものの、それを手段として財物を奪ったという点では本来の強盗罪と変わりはありません。
そこで、事後強盗罪も強盗罪の一種としています。
事後強盗罪の「事後」とは、窃盗の後に暴行、脅迫が行われたという意味に過ぎず、本質は本来の強盗罪と同じです。
~誰が事後強盗罪に問われるのか?~
刑法238条は「窃盗が」としています。
この「窃盗」とは、窃盗の実行に着手した者、つまり、窃盗未遂犯も含まれます。
窃盗罪の実行に着手していない者は事後強盗罪に問われることはありません。
したがって、窃盗の目的で他人の家に侵入したところ、まだ物色行為を開始する前に家人に気づかれたため、その家人に暴行を加え傷害を負わせたという場合は、事後強盗罪ではなく傷害罪(と住居侵入罪)が成立するにとどまります。
~事後強盗罪の暴行・脅迫の相手方は誰?~
事後強盗罪の暴行・脅迫の相手方は、必ずしも窃盗の被害者本人(本件ではVさん)に加えられる必要がありません。
追跡してくる目撃者(Wさん)や逮捕しようとする警察官に対してなされたものであってもよいとされています。
なお、事後強盗罪は強盗罪の一種ですから、暴行・脅迫は「窃盗の機会」になされたと認められる時点で加えられることが必要です。
~事後強盗罪の既遂、未遂の判断は?~
事後強盗罪の既遂時期に関しては、窃盗の既遂・未遂を問わず、犯人が所定の目的で暴行・脅迫を加えた時点で既遂に達すると解する見解もありますが、通説・判例は、本罪は財産犯であることから、「先行行為である窃盗の既遂、未遂」で、事後強盗罪の既遂、未遂を判断しています。
以上から、本件のAさんは、窃盗未遂犯人であることから事後強盗未遂罪(強盗未遂罪)に問われているわけです。
~相手方に怪我を負わせたり、死亡させた場合は?~
強盗の機会に相手方に怪我を負わせたり、死亡させた場合は強盗致傷罪(6年以上の懲役)、強盗致死罪(死刑又は無期懲役)に問われます。
そして、両罪は、窃盗の既遂、未遂に関係なく成立するとされています。
本件のAさんも、仮に、Wさんに怪我を負わせていれば、強盗致傷罪に問われていたかもしれません。
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