Archive for the ‘未分類’ Category
窃盗の共犯事件
窃盗の共犯事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
福岡県若松警察署は、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、知人のBさん、Cさんと共謀し、市内の事務所に深夜侵入し、現金やパソコンなどを盗んだと疑われています。
Aさんは、「BやCが事務所に入って盗んだのであって、自分は車で待機して見張るように言われていただけだ。」と供述しています。
(フィクションです。)
共犯とは
共犯とは、広義には、2人以上が協力して犯罪を実現する場合のことをいいます。
共犯は、法律上、単独犯として規定されている犯罪を2人以上の者が協力して行う場合を任意的共犯といい、刑法などの規定上、本来的に2人以上の者の共同の行為が必要とされている場合を必要的共犯といいます。
窃盗犯は、任意的共犯であり、それは更に、共同正犯、教唆犯、幇助犯に分類されます。
共同正犯
共同正犯は、2人以上の者が、1個の犯罪を共同して実現する意思の連絡のもとに、各人が実行行為の一部を分担して犯罪を実行した場合のことです。
共同正犯は、他人と犯罪を共同実行した者は、各自がそれぞれ惹起した結果だけでなく、他の共同者が惹起した結果についても責任を問われるという点に特徴があります。
それは、2人以上の者が共同して犯罪を遂行するという合意に達し、その共同実行の意思のもとに、相互に他人の行為を利用して補充し合って犯罪を実現した場合、それぞれの関与者の行為は一体となって犯罪の遂行に結び付いたと認められるからです。
共同正犯の成立には、①共同実行の事実、及び、②共同実行の意思、が必要となります。
②共同実行の意思
共同正犯の成立に必要な主観的要素である「共同実行の意思」とは、2人以上共同して、ある構成要件に該当する事実を実現しようとして通じ合う意思のことです。
窃盗であれば、犯罪を行うに際して、他の実行者との間で、相互に他人の行為を利用し補充し合って、「他人の財物を不法領得の意思に基づいて窃取する」ということを実現させる意思を共有していなければなりません。
単に他人の行為を傍観したり認識しているだけでは、共同実行の意思があるとは認められません。
①共同実行の事実
共同実行の事実とは、2人以上の者が共同して実行行為を行うことをいいます。
「共同して」というのは、共同者全員が相互に他人の行為を利用し補充し合って犯罪を実現することを意味します。
共同実行の事実には、共同者全員が実行行為を分担しあって犯罪を実現する場合(「実行共同正犯」)と、複数人が特定の犯罪を行うため、共同実行の意思のもとに相一体となって、互いに他人の行為を利用し各自の意思を実行に移す謀議をなし、これら共謀者のうちのある者が共同の意思に基づいて実行した場合(「共謀共同正犯」)との2つの態様があります。
共謀共同正犯の場合、直接的には実行行為に及ばなかった者でも、謀議により共同正犯の責任を負うことになります。
共謀共同正犯は、2人以上の者がある犯罪の実行を共謀し、共謀者のうちある者が共謀に係る犯罪を実行したときは、現実には実行行為を行わなかった他の共謀者もまた共同正犯として処罰されるものです。
共謀共同正犯も共同正犯の1種であるため、その成立要件も基本的には共同正犯の成立要件と同じです。
ただ、共謀共同正犯の特性を鑑み、通常は、①2人以上の者が、ある犯罪の実現について共謀したこと、②その共謀者の中の一部の者がそれを実行したこと、③共謀者が正犯意思を持つこと、の3つが成立要件とされています。
①の要件については、「2人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする協議をなし」たことであると解されています。(最決昭43・3・21)
③の要件については、共謀者が、たとえ一部の者に実行させるにしても、それが自己の犯罪であると認識していること、つまり、自らが正犯であるとの意思を持つことが必要となります。
正犯意思については、動機、共謀者と実行行為者との関係、共謀者自身の関与の態様、共謀者の果たした役割の重要性、犯行前後の状況、犯罪の性質や内容等を考慮して判断されます。
以上の要件を充たす場合には、実際に実行行為を行っていなくても正犯として処罰されることになるのです。
上記事例のように、窃盗事件の見張り行為をどのように評価するかは、昔から争いがあります。
判例は、被告人が事前に共謀して見張り行為を分担するような場合には共同正犯としているものが多くあります。
ただ、共同正犯として認められるには、単に見張りをしたということだけではなく、見張り行為の役割の重要性、共犯者に与えた安心感、見張りによる窃取行為の円滑性などの効果について検討し、見張り行為が窃取行為に匹敵する犯罪的価値のある行為であると評価されることが重要となります。
事案によっては、幇助にとどまるとされることもありますので、窃盗の共同正犯が疑われている場合には、弁護士に相談し、その後の対応について適切なアドバイスをもらう必要があるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗をはじめ刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が窃盗事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
電気窃盗で逮捕
電気窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
京都府京田辺市のコンビニ店外のコンセントに炊飯器を無断でつないで米を炊くなど調理したとして、京都府田辺警察署は、Aさんを窃盗と建造物侵入の容疑で逮捕しました。
他の客からの報告を受けてAさんの行為に気付いたコンビニの店長が、警察に通報しました。
通報を受けて駆け付けた警察官がAさんに問いただしたところ、店のコンセントを無断で使って調理していたことを認めました。
(フィクションです。)
電気窃盗?
窃盗罪は、刑法第235条に次のように規定されています。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
このように、窃盗罪とは、「他人の財物を窃取」する罪です。
■犯罪の対象■
窃盗罪の客体は、「他人の財物」です。
更に詳しく言うと、「他人の財物」とは、「他人が占有する他人所有の財物」です。
「財物」の意義については、大きく分けて2つの見解があります。
①有体性説
財物は、有体物であることを要する説。
②管理可能性説
財物とは、有体物に限らず、管理可能な限り無体物も財物とする説。
ただし、電気と同様の意味での物質性を備えたものに限る。
通説は①有体性説である、財物は有体物と解するのが一般的です。
ただし、刑法第245条では、窃盗及び強盗の罪が規定されている刑法第36条においては、電気は財物をみなすと規定されているため、財物の意義に関する見解のいかんに関わらず、電気は、窃盗罪の客体である「財物」に当たります。
窃盗罪は、「他人の財物を窃取」した場合、つまり、他人の所有する財物の占有を移転し、それを取得した場合に成立するものと理解されます。
そのため、窃盗の対象となる財物は、他人が占有するものであることが必要となります。
刑法で言う「占有」は、財物に対する「事実上の支配」を意味します。
ある財物に対する「事実上の支配」があると言えるためには、客観的要素としての①財物に対する支配という事実と、主観的要素である②支配の意思が必要となります。
①財物に対する支配の事実
財物に対する支配(占有の事実)とは、占有者が財物を事実上支配している状態をいいます。
事実上の支配しているかどうかは、財物自体の特性、占有者の支配の意思の強弱、財物と占有者との距離など客観的・物理的支配関係の強弱などの基準から判断されます。
占有の事実を認めるにあたっては、必ずしも財物を手に持っていることまで必要ではなく、自宅内にある場合や、外であっても財物と占有者との距離がそう離れておらずすぐに財物のあるところに戻ってこれるような距離間であれば、財物に対する支配が認められます。
②支配の意思
支配の意思(占有の意思)とは、財物を事実上支配する意欲・意思のことをいいます。
■行為■
窃盗罪の行為は、「窃取」することです。
「窃取」とは、占有者の意思に反して、財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
■不法領得の意思■
窃盗罪の主観的要件として、故意(他人の財物を摂取することの認識)の他に、不法領得の意思が窃盗罪の成立に必要となります。
「不法領得の意思」は、権利者を排除して他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用、処分する意思」のことで、不可罰とされる一時使用と窃盗罪、毀棄罪と窃盗罪とを区別する要素となっています。
上の事例では、Aさんは、コンビニ店の外壁に備え付けられているコンセントを無断で利用して家電器具を使い調理をしています。
電気の窃盗のように、形のない物を盗むということはイメージしにくいのですが、Aさんの行った行為については、刑法上の窃盗罪に該当するため、起訴され有罪となれば、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲内で刑が科されることになります。
しかしながら、初犯であり、被害者への被害弁償や示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性はあります。
事案によってどのような処分が見込まれるのか、どのような弁護をすべきなのかは異なりますので、窃盗事件で逮捕されてお困りの方は、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が窃盗事件で逮捕されて対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
クレプトマニアが疑われる場合
窃盗事件でクレプトマニアが疑われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
兵庫県姫路市のスーパーマーケットで食品や日用品を万引きしたとして、兵庫県姫路警察署は、市内に住むAさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんには万引きの前科・前歴があり、1年ほど前に、略式手続で略式命令(罰金刑)を受けていました。
Aさんは、事件当時1万円を所持しており、入店直後から店外で保安員に声を掛けられるまでの店内での記憶がなく、取調べでもその旨を述べています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Aさんはクレプトマニアではないかと疑っており、接見を依頼した弁護士にもその点について話しています。
(フィクションです。)
万引きが犯罪であることを認識していながら、何度も万引きを繰り返してしまうケースは少なくありません。
万引きに走る理由は、何も経済的なものに限りません。
「十分な所持金があるのに、特にそれほど必要のない物をとってしまう。」
「だめだとわかっていながら、万引きをやめることができない。」
常習的な窃盗をおおきく3つに分類すると、
①経済的利益のために金目の物や金銭を盗む職業的犯罪、
②貧困から食べ物や生活必需品を盗むもの、
③経済的余裕はあるが、些細な物を盗むもの、
となります。
経済的な理由から万引きを行うのではない③の場合には、精神障害が疑われることがあります。
精神障害としての病的な窃盗に、クレプトマニアという疾患があります。
アメリカ精神医学会が出版している精神疾患の診断基準・診断分類によれば、クレプトマニアの診断基準は、以下の5項目からなります。
①個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
②窃盗に及ぶ直前の緊張の高まり。
③窃盗に及ぶときの快感・満足・解放感。
④その盗みは、怒りや報復を表現するためのものではなく、妄想・幻覚への反応でもない。
⑤その盗みは、素行症、躁病エピソード、反社会性パーソナリティ障害ではうまく説明されない。
クレプトマニアは、単独で診断される場合もありますが、拒食症や過食症の摂食障害を併発している場合も少なくありません。
また、摂食障害を併存している場合、解離性障害も併存していることが多いようです。
万引きの再犯事件において、弁護士は、まず、繰り返す万引き行為の原因や背景事情を究明しなければなりません。
それは、万引きを繰り返してしまうことの原因を明らかにしなければ、有効な再犯防止措置を講じることができないからです。
有効な再犯防止措置を講じることができなければ、有効な情状立証をすることが難しくなってしまいます。
クレプトマニアである場合には、刑罰だけでは再犯を防止することは難しく、専門的な治療が必要となります。
そのため、クレプトマニアが疑われるケースでは、専門家につなげ、クレプトマニアその他の精神障害にり患しているのかどうかを診断してもらい、専門的な治療を受けるようにすることが重要です。
また、逮捕・勾留により被疑者・被告人の身柄が拘束されている場合には、治療を受けるために、弁護士は、できる限り早期に釈放となるよう身柄解放活動を行います。
有効な再犯防止措置を講じるには、被疑者・被告人の家族の協力が必要不可欠です。
弁護士は、家族や専門機関と連携し、再犯防止に向けた環境を整える支援をします。
クレプトマニアが疑われる場合、弁護士は、有効な再犯防止策が講じられていることを、客観的な証拠に基づいて示すことで、寛大な処分となるよう弁護する役割を担います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が万引き事件で逮捕されてお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件で釈放を目指す
窃盗事件で釈放を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府西堺警察署は、大阪府堺市で起きた窃盗事件の被疑者としてAさんを逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、事件についてあまり詳しく分からず不安で仕方ありません。
Aさんの妻は、刑事事件専門弁護士に相談し、早期の釈放を目指す活動について説明を受けています。
(フィクションです。)
窃盗事件といっても、万引きや置き引きなど、比較的被害額が軽微なものから、侵入盗のように被害額が大きく、ある一定の技術や慣れを必要とする犯罪に係る事情がより悪質とされるものまであります。
一般的に、侵入盗は、万引きや置き引きよりも犯情が悪質であり、被害額も多いことから量刑も重くなる傾向にあります。
窃盗事件の身体拘束については、万引きや置き引きなど、窃盗の中でも比較的軽微な類型の場合、前科・前歴がなければ逮捕されないケースは多くなっています。
前科・前歴がある場合でも、定職に就いている、住む場所があるなど身上が安定しているケースでは、勾留請求が却下されることが少なくありません。
一方、侵入盗など、窃盗の中でも重いとされる類型の場合、初犯であっても勾留される可能性は高くなります。
ここで、逮捕後の流れについてみていきましょう。
1.逮捕~72時間
逮捕による身体拘束の時間は、原則として、警察で48時間、検察で24時間となっており、最大で72時間です。
警察は、逮捕後48時間以内に、被疑者を釈放する、もしくは、関係書類や証拠物とともに検察に送致します。
被疑者の身柄を受け取った検察官は、24時間以内に、被疑者を釈放するか、あるいは、裁判官に勾留の請求を行います。
この段階で釈放を目指す活動は、担当検察官に勾留請求をしないよう働きかけることです。
具体的には、弁護士は、担当検察官と面談したり、意見書を提出するなどの方法で、勾留の要件を満たしていないことを客観的な証拠に基づいて説得的に主張します。
2.勾留請求~勾留決定
検察官への働きかけにもかかわらず、担当検察官が勾留請求をした場合、請求を受けて裁判官が被疑者を勾留するか否かを判断します。
裁判官は、事件に関する一見記録と被疑者との面談の内容に基づいて、勾留の要件を満たしているかどうかを検討します。
そこで、弁護士は、裁判官が決定を出してしまう前に、面談や意見書の提出の方法により、当該被疑者について勾留の要件を満たしていないことを客観的な証拠に基づいて主張し、裁判官に勾留決定をしないよう働きかけます。
勾留の要件は、①被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること、②住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれ、にいずれかの要件があること、③被疑者を勾留する必要性、相当性があること、④先行する逮捕手続が適法であること、です。
勾留となる場合、多くは「罪証隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」があると判断されることが多いため、証拠品が既に押収されていること、被害者や被害現場には近づかないことを約束していること、被疑者の家族等による監督が期待できること、仕事や学校があることなどを示し、それらのおそれがないことを証明していきます。
また、勾留によって被疑者が被る不利益、具体的には懲戒解雇や退学などの処分を受ける可能性が高いことは、勾留の必要性・相当性を害することになるとの主張も行います。
勾留されれば、原則として検察官が勾留請求をした日から10日間、勾留の延長が認められれば最大で20日間被疑者の身柄が拘束されることになります。
3.勾留決定後
勾留が決定した場合であっても、今度は準抗告の申立てを行うことにより釈放を目指します。
先に述べた勾留阻止に向けた検察官や裁判官への働きかけは、弁護人からのお願いという形となりますが、準抗告は、勾留という裁判に対する不服申立という法的な手続です。
裁判所に対して裁判官によってなされた勾留の裁判を取消し、検察官による勾留請求を却下するよう申し立てます。
勾留を決定した裁判官とは別の3人の裁判官がこの申立を検討し、最初の裁判が正しいかどうかを判断するのです。
ここで、準抗告の申立てが認められれば、被疑者の勾留は取り消され釈放されることとなります。
4.起訴後
捜査段階での釈放が困難な場合には、起訴後に保釈で釈放されることを目指します。
起訴後であれば、裁判に必要な証拠が既に押収されているため、保釈が許可される可能性が捜査段階よりも高くなります。
そのため、起訴が見込まれる場合には、起訴前から保釈請求の準備を行い、起訴後、直ちに保釈請求ができるようにしておく必要があります。
以上、窃盗事件で釈放を目指す活動について説明しましたが、逮捕・勾留により被疑者・被告人が被る不利益は大きく、できる限り早期の釈放を目指すことが重要です。
そのような釈放に向けた活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が窃盗事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件で正式裁判
窃盗事件で正式裁判となった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府豊中市に住むAさんは、市内のスーパーマーケットで商品を万引きしたとして窃盗の容疑で大阪府豊中南警察署に逮捕されました。
Aさんの夫が身元引受人となり、当日の夜、Aさんは釈放されました。
Aさんは、これまで何回も万引きで捕まっており、直近では1年前に略式命令で罰金50万円に処されました。
その後、大阪地方裁判所から起訴状と弁護人選任についての連絡書が自宅に届いたため、Aさんは裁判で弁護してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)
窃盗事件で正式裁判に
原則、すべての刑事事件は検察官に送られ、検察官がその事件についての処分を行います。
万引き事件は、比較的軽微な犯罪ですので、初犯、かつ、被害額が小さい場合には、事件を警察段階で処理することがあります。
これを「微罪処分」といいます。
そうでない場合には、事件を検察官に送り、検察官は、捜査を遂げた結果、起訴する、もしくは起訴しない旨の決定を行います。
検察官による起訴には、略式命令請求、即決裁判請求、そして公判請求とがあります。
万引き事件の場合、2回目に検挙されたのであれば、被害額や被害の回復の有無にもよりますが、起訴猶予で不起訴として処理されることが多いです。
しかし、当然のことながら、何度も犯行を重ねるにつれて、処分もより厳しいものとなります。
3~4回目の検挙となれば、不起訴ではなく、起訴される可能性が高いのですが、この場合、検察官は略式命令請求をすることが多いでしょう。
検察官が略式命令請求をすると、簡易裁判所は公判手続を経ることなく、100万円以下の罰金または科料を科す裁判手続をとります。
この手続を「略式手続」といいます。
上の事例のAさんのように、直近で1年前に略式命令で罰金50万円に処されているケースでは、今回の事件も同様に略式手続で処理される可能性は低いと言えます。
つまり、今回の万引き事件については、検察官が公判請求をし、正式裁判が開かれることになるでしょう。
正式裁判となると、公開の法廷で、被告人が罪を犯したかどうか、罪を犯した場合はその刑罰をどのようなものにするかについて審理されます。
公判では、被告人が罪を犯したかどうかについて、罪を犯した場合の刑罰については、検察官と弁護人が提出する証拠に基づいて裁判官が判断します。
公訴事実を争わない事件であっても、犯行態様や動機などの犯情(犯罪にかかわる事情)に関する事実について争うことも多く、事実の認定が証拠に基づいて行われる以上、証拠収集は弁護人にとって重要な作業となります。
また、そもそも事実を争わない事件であっても、被告人に有利な情状事実は、判決において考慮される材料となるため、弁護人がきちんと立証する必要があります。
この場合には、適切な量刑を得るために、弁護人は、被告人が罪を犯すに至った背景、再犯可能性を低下させるための具体的な対策を、具体的な証拠を用いて立証していくことが期待されます。
罪を認める場合であっても、適切な量刑を得るためには、しっかりと公判に向けた準備を行うことが重要です。
万引き事件を起こし、公判請求され正式裁判を受けることになり対応にお困りの方は、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
常習特殊窃盗で逮捕
常習特殊窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
千葉県市川市の民家に夜間侵入し、金品を窃取したとして、千葉県市川警察署は県内に住むAさんを常習特殊窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、窃盗の前科が複数あり、いずれも夜間に民家に侵入して金品を窃取するというもとでした。
今回の犯行は、刑期を終えて出所後間もなくして行われました。
(フィクションです。)
常習特殊窃盗とは
なかなか聞きなれない罪名ですが、「常習特殊窃盗」は「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」(以下、「盗犯法」といいます。)の第2条に次のように定められています。
第二条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス
一 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
盗犯法は、昭和5年に施行された古い法律で、盗犯に対する正当防衛の特例や兇器を携帯した常習窃盗犯の刑期の下限について定めた法律です。
盗犯法第2条は、「常習として」、「条文の1号ないし4号のいずれかの方法により、窃盗罪、強盗罪、事後強盗罪、昏酔強盗罪や、それらの未遂罪を犯した者」に対し、窃盗罪の規定を適用すべきときは、最下限の刑が3年以上の有期懲役とされ、強盗罪、事後強盗罪、昏睡強盗罪のいずれかを適用すべきときは、7年以上の有期懲役刑とされる、という内容になっています。
つまり、盗犯法第2条に該当する常習特殊窃盗罪を犯した場合には、3年以上20年以下の懲役刑に、同上に該当する常習特殊強盗罪を犯した場合には、7年以上20年以下の懲役刑に処さられることになり、通常の窃盗罪・強盗罪よりも重い刑罰が科されることになります。
ここでいう「常習として」というのは、過去の裁判では、「機会があれば抑制力を働かせることなく安易に窃盗を反復する習癖をいう」と解されます。(東京地裁判決、平成20年5月22日、東京高裁判決、平成10年10月12日)
これに当たるかどうかは、行為者の前科・前歴、素行、犯行動機、犯行手口、犯行態様、犯行回数、犯行間隔等を総合的に判断して検討されます。
この点、盗犯法第2条における常習性は、同条の1号~4号の手口・態様を用いることを要求しているので、万引きや置き引き等の単純窃盗の常習性がある者が、1号~4号の方法で窃盗・強盗を1回だけ犯した場合は、盗犯法第2条における常習性は認められません。
盗犯法第2条の各号の手口・態様は、
①兇器の携帯
②複数での犯行
③門戸等を破壊等しての侵入
④夜間での犯行
です。
上の事例を考えると、Aさんの行為が④に該当すると言えるかどうかを検討することになります。
④は、「夜間人の住居又は人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入して犯したとき」と規定されています。
ここでいう「夜間」とは、判例によれば、その日没から日の出までの間の時間帯であるとされます。(最高裁決定、昭和28年12月18日)
同判例では、「夜間人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入して犯したるとき、とあって、夜間は所定の場所に侵入して盗罪を犯すという包括的一事実に掛かり、侵入することと盗むこととが共に夜間に行われた場合は勿論、そのいずれか一方が夜間に行われた場合でも、同号の夜間侵入窃盗に当たるものと解するを相当とする」としており、侵入・窃盗のいずれか一方の行為が夜間のうちに行われれば足りると理解されています。
「人の住居又は人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入」する行為については、刑法の住居侵入等で規定されている行為と同様、日常生活に使用するために人が占拠する場所を「人の住居」といいます。
「人の看守する」とは、人が事実上、管理・支配していることをいい、その対象となる「邸宅」とは、人の住居の用に供せられる家屋に附属し、主として住居者の利用に供されるために区画された場所をいいます。
そして、「建造物」とは、住居、邸宅以外の建造物と、これに附属する囲繞地といい、「艦船」は、軍艦その他の船舶のことをいいます。
そのような場所に、管理権者の意思に反して立ち入った場合には「侵入」したと言えます。
Aさんは、夜間の侵入盗の前科が複数あり、刑務所を出てから間もなくして同種の手口で犯行に及んでいることから、常習性として行われたと認定されると考えられます。
常習特殊窃盗は、刑法の窃盗よりもその刑罰は重く、常習特殊窃盗が成立するか否かで最終的な結果も大きく異なります。
常習特殊窃盗の被疑者・被告人となった場合には、早期に弁護士に相談し、適切な対応をするのが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗をはじめとした刑事事件専門の法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件で執行猶予
執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
埼玉県上尾警察署は、埼玉県上尾市の事務所に侵入し、現金や電気製品などを盗んだとして、県内に住むAさんを建造物侵入と窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは他にも何件か同様の手口で侵入盗を行っており、刑務所に入ることになるのではないかと、AさんもAさんの家族も不安で仕方ありません。
(フィクションです。)
Aさんは、事務所に侵入して保管されていた現金や電気製品など転売できそうな物を持ち去りました。
捜査機関に事件が発覚すれば、捜査が開始されます。
捜査機関は、犯人と思われる者(「被疑者」と呼びます。)を特定・発見し、必要があればその身柄を確保した上で、証拠の収集・保全します。
捜査を遂げた結果、検察官は当該被疑者について起訴するか否かを判断します。
検察官が起訴した場合には、裁判官が犯人と思われる者(起訴後は、「被告人」と呼びます。)が起訴状に書かれている罪を犯したことに間違いがないかどうかを判断します。
裁判官が、被告人の有罪とする場合には、科すべき刑を言い渡します。
刑には、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収とがあります。
生命の剥奪を内容とする刑罰を死刑といい、拘禁によって犯罪者の自由の剥奪を内容とする刑罰が懲役、禁錮、拘留で、一定額の金銭の徴収を内容とする刑罰が罰金及び科料です。
没収は、犯罪に関係のある特定の物の所有権を所有者から剥奪して国庫に帰属させる刑罰です。
Aさんは、建造物侵入と窃盗の罪に問われています。
建造物侵入罪に当たる行為は、窃盗を実現するため、窃盗の手段として行われているため、建造物侵入罪と窃盗罪の関係は、牽連犯となります。
そのため、Aさんは、2つの罪のうち最も重い刑を定めている罪の法定刑によって処断されます。
建造物侵入罪の法定刑は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
一方、窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であり、建造物侵入罪の法定刑よりも重いため、こちらの法定刑によって処断することになります。
裁判官がAさんについて有罪とすれば、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲内でAさんに科すべき刑を決めることになります。
つまり、懲役か罰金かいずれかの刑が科されることになります。
罰金は決められた金額を納めることで刑に服したことになります。
しかし、罰金を完納することができない場合は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置されることがあります。
懲役刑は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせるものです。
決められた期間、刑務所に入ることで刑に服します。
有罪判決を受けたら必ず刑務所に入らなければならないのかと不安に思われる方も少なくないのですが、懲役刑(又は禁錮刑)が言い渡された場合であっても、刑の全部の執行猶予が付された場合は、直ちに刑務所に入るということにはなりません。
執行猶予とは
刑の執行猶予とは、刑を言い渡すにあたって、犯情により一定の期間その執行を猶予し、猶予期間を無事に経過したときは、刑罰権の消滅を認める制度のことです。
刑の執行猶予には、刑の全部執行猶予と刑の一部執行猶予の2種類がありますが、ここでは前者について説明します。
刑の全部の執行が猶予されると、懲役刑が言い渡されたとしても直ぐに刑務所に入ることはありません。
猶予期間中何事もなく過ごすことができれば、判決で言い渡された刑の効力はなくなります。
そのため、執行猶予が付くかつかないかで、その後の生活が大きく変わってくることになります。
刑の全部の執行猶予となるためには、以下のような要件があります。
【初犯の場合】
①(a)前に禁錮以上の刑の処されたことがないこと、又は、(b)前に禁固以上の刑に処されたことがあっても、その執行を終わらせた日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがないこと。
②3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合であること。
③執行猶予を相当とするに足りる情状があること。
【再度の場合】
①前に禁固以上の刑に処され、その執行の猶予中であること。
②1年以下の懲役又は禁錮の言渡しをする場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。
以上の条件を満たしていることが刑の全部の執行猶予の前提となります。
窃盗事件では、初犯であれば、被害額や犯行態様の悪質性、被害弁償の有無などが考慮されて執行猶予となる可能性があります。
窃盗事件を起こし、実刑となるのではとお悩みであれば、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件:資源ごみの持ち去り
資源ごみの持ち去り行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、神奈川県相模原市内に設置されている資源ごみ回収ボックスから古新聞紙などを勝手に持ち去り、業者に販売する行為を繰り返していました。
知らない人間が資源ごみ回収ボックスから持ち去っているのを見かけた地域の住民が、自治会に相談し、自治会は神奈川県相模原南警察署に通報しました。
後日、Aさんがいつものように資源ごみ回収ボックスから資源ごみを持ち去ろうとしていたところ、神奈川県相模原南警察署の警察官に声を掛けられました。
Aさんは資源ごみの持ち去り行為が犯罪に当たるのか、今後どのように対応すべきか不安でなりません。
(フィクションです。)
資源ごみの持ち去りと窃盗罪
資源ごみが業者による買取の対象となることがあるため、資源ごみの集積所からの資源ごみを勝手に持ち去るという行為が行われています。
資源ごみの持ち去りは、自治体にとっても経済的損失となるため、条例で資源ごみの持ち去りを禁止しているところもあります。
それでは、そのような資源ごみの持ち去り行為が、窃盗罪となる可能性はあるのでしょうか。
窃盗罪について
窃盗罪の構成要件は、次のとおりです。
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取したこと
①他人の財物
「他人の財物」とは、他人の占有する他人の財物のことです。
「財物」は、有体物を指しますが、管理可能な限り無体物も財物にあたると解されています。
また、窃盗罪は、個人の財産権を保護するために設けられている以上、窃盗罪の客体となる「財物」には財産的価値がなければなりません。
通常、財産的価値があるものは、金銭的経済的価値があると言えますが、金銭的経済的価値のない思い出の品のような場合、つまり、主観的感情的価値でも社会通念上刑法的保護に値するものであれば財物となります。
しかしながら、メモ用紙1枚、ちり紙13枚といった金銭的経済的価値が極めて軽微な物は刑法的保護に値せず、財物には当たりません。
ここで資源ごみが「財物」に当たるのか否かについて考えてみると、資源ごみは回収業者が買い取りの対象となるものが多く、一定の金銭的経済的価値があると言えるため、ごみと雖も「財物」に当たると判断される可能性はあるでしょう。
次に、「占有」の概念についてですが、「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態をいいます。
この「占有」は、「占有の事実」と「占有の意思」で構成される概念です。
「占有の事実」とは、占有者が財物を事実上支配している状態のことをいいます。
物を客観的に支配している場合だけではなく、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も「占有の事実」に含まれます。
また、「占有の意思」とは、財物を事実上支配する意欲または意思のことです。
集積場に出されている資源ごみについての「占有」について考えてみましょう。
通常、資源ごみを出した人は、当該ごみを「手放す」「捨てる」といった意思のもと集積場に出しているわけですから、ごみを出した人が資源ごみを「占有」しているとは言えません。
それでは、集積場に出されている資源ごみは誰のものでもない(=無主物)なのでしょうか。
資源ごみが自治体の収入源となっていることもあり、自治体によっては条例で集積場に出されている資源ごみの持ち去りを禁止しています。
さらに、その条例で明確に集積場に出された資源ごみの所有権が自治体にあると定めている場合もあります。
そのような場合、集積場に出された資源ごみは自治体が所有していることになり、当該資源ごみは「他人の財物」に該当することになります。
持ち去った資源ごみが「他人の財物」に当たる場合、かつ、権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用・処分する意思(=不法領得の意思)に基づいて、占有者の石に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に写した(=窃取)場合には、窃盗罪の構成要件に該当することになります。
ただし、自治体の条例で資源ごみの持ち去りが禁止されており、違反について罰則が科されている場合には、条例違反で検挙される可能性もあります。
事案によっては成立する犯罪が異なりますので、刑事事件で検挙されてお困りであれば、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご連絡ください。
窃盗の前科・前歴
窃盗の前科・前歴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都羽村市のコンビニで商品を万引きしたとして、警視庁福生警察署は、会社員のAさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは翌朝釈放されましたが、実は、万引きと遺失物等横領の前歴があり、今回の事件で前科が付いてしまうのではないかと心配しています。
何とか前科を回避したいAさんは、刑事事件専門弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)
前科とは
世間では、刑に服して刑務所から出所した人を「前科者」と呼んでいることが多いようですが、一般的には、「前科」という用語は、前に刑に処せられた事実のことを意味し、刑に服したかどうかということではなく、有罪の刑事裁判を受け、その裁判が確定したかどうかで、前科があるのかないのかが分かれることになります。
「前に刑に処せられた」とは、全ての有罪の確定判決をいいます。
その刑は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料である場合だけでなく、刑の免除、刑の執行免除が言い渡された場合も含みます。
ただし、裁判所で言い渡されたものであっても、過料等の行政罰や没収、追徴などのいわゆる追加刑は前科ではありません。
前科には、検察庁が保管するものと市区町村が保管するものとの2種類があります。
検察庁は、検察運営の適正及び裁判の適正に資することを目的として、「電子計算機又は犯歴表頭への前科の登録」を行っています。
検察庁の前科の具体的な利用方法は、
①検察官の起訴、不起訴の処分及び求刑等の情状資料
②裁判所の量刑資料
③執行猶予を付するための条件該当の有無の判断資料
④執行猶予取消事由の有無の判断資料
⑤常習犯の常習性の有無の判断資料
などとしての活用があります。
もうひとつは、従来から実施されている身分証明事務及び公職選挙法4章で規定する選挙人名簿調製事務に資することを目的として、前科を有する者の戸籍事務を管掌する市区町村で行っている「犯罪人名簿への前科の登録」です。
市区町村における犯罪人名簿の整理保管の目的は、専ら身分証明事務と選挙人名簿調製事務に資するためであるので、犯罪人名簿が身分証明事務・選挙人名簿調製事務のために必要でなくなったときは、これを整理保管しておく必要がなく、人権擁護の観点からもいつまでも保管しておくことは好ましくないため名簿を抹消することとしています。
例えば、
①刑法34条の2の規定により、名簿に登録されている犯歴の刑の言渡しの効力が失われたとき
②刑法27条の規定により、名簿に登録されている犯歴(執行猶予に付されている刑)の刑の言渡しの効力が失われたとき
③恩赦法2条の規定による大赦または4条の規定による特赦により、名簿に登録されている者の犯歴の有罪の言渡しの効力が失われたとき
④恩赦法9条の規定におる復権により、名簿に登録されている者が犯歴の存在により喪失し又は停止されていた資格の全部を回復したとき
などがあります。
前歴とは
前科の他に、「前歴」という用語を耳にされたことがある方も少なくないのではないでしょうか。
前科は前に刑に処されたことがあることを意味するのに対して、前歴は、捜査機関から犯罪の捜査を受けた事実を指します。
前科も前歴も法律上明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、前科や逮捕歴、犯歴などを含めた広い概念として前歴が用いられています。
窃盗事件で、微罪処分で処理された場合でも、検察官に呼び出されたが不起訴処分となり事件が終了した場合でも、前科は付かずとも前歴が残ることになります。
前科・前歴があった場合
前科・前歴がある者が罪を犯した場合、初めて罪を犯した者(=初犯)としては扱われません。
そのため、初犯と比べると、より厳しい処分となる可能性は高くなります。
窃盗の前科・前歴がある者が、再び窃盗事件を起こした場合には、常習性が疑われますし、社会内での更生の可能性が低いと判断されてしまうでしょう。
特に前科の場合、法律で定める一定の不利益をもたらすことになります。
例えば、
①執行猶予を付し得ない事由
②執行猶予の取消事由
③再犯加重の事由
④仮釈放の取消事由
⑤常習犯の認定事由
⑥必要的保釈を消極とする事由
⑦特定の法令が定める資格制限事由
などがあります。
前科・前歴が付くことで被り得る不利益は様々ありますので、刑事事件を起こし対応にお困りの方は、すぐに弁護士に相談し、適切に対応されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご連絡ください。
窃盗と器物損壊
窃盗と器物損壊について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都足立区のスーパーで、商品10点(総額約7000円)を万引きしたとして警視庁竹の塚警察署はAさんを窃盗の疑いで逮捕しました。
Aさんは、調べに対して、「刑務所に入るために罪を犯そうと思った。一番簡単なのが万引きだったから。」と供述しているとのことです。
Aさんは、接見にやってきた弁護士にも同じことを話しており、弁護士からは窃盗ではなく器物損壊に問われる可能性について言われています。
(フィクションです。)
窃盗と器物損壊~窃盗ではなく器物損壊が成立する場合~
他人の物を盗んだ場合、通常、その盗んだ物を使用・利用することを目的としているのですが、そうではなく嫌がらせなどといった物を使用・利用するつもりではなく物を持ち去る場合には、窃盗ではなく器物損壊が成立することがあります。
窃盗罪
窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思に基づいて
③窃取
することによって成立します。
①他人の財物
他人の財物とは、「他人の占有する財物」のことです。
「占有」の概念については、人が物を実力的に支配する関係であると理解されています。
つまり、物を握時するというのが占有の典型例ですが、それ以外にも、物に対する事実上の支配があれば、窃盗における「占有」が認められます。
事実上の支配は、物を客観的に支配している場合のみならず、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態をも含みます。
この「物の支配をいつでも取り戻せる状態」に当たるか否かは、支配の事実や占有の意思の観点から判断されます。
③窃取
窃取とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
例えば、他人の飼育する鳥をかごから逃がす行為は、鳥に対する他人の占有を侵害してはいますが、自己または第三者の占有に移転してはおらず、この場合、器物損壊には該当しますが、窃盗には該当しないことになります。
②不法領得の意思
条文上の規定はありませんが、窃盗の成立には、故意の他に不法領得の意思が求められます。
不法領得の意思は、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物を同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことです。
器物損壊罪
器物損壊罪は、
①他人の物を
②損壊・傷害
することによって成立します。
①他人の物
器物損壊罪における「他人の物」は、公文書、私用文書、建造物・艦船以外の物であり、動物も含みます。
②損壊・傷害
「損壊」とは、物の効用を害することです。
物理的に破壊することにより効用を害する他、事実上や感情上、使用できなくさせて効用を害することも含まれます。
「傷害」とは、動物を殺傷することをいいます。
Aさんは、他人の所有する物(スーパーマーケットの店長が管理する商品)を勝手に持ち去っています。
Aさんの行為は、「窃盗罪」の「窃取」に該当するほか、持ち去った物を使用できなくさせている(盗まれた商品は、消費されていなくても再度商品棚に並べることが困難である場合があります)点で器物損壊の「損壊」にも該当することになります。
そこで、いづれの罪が成立するのかということが問題となりますが、この2罪を大きな違いは不法領得の意思の有無にあり、この点について検討する必要があるのです。
不法領得の意思は、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことです。
窃盗罪も器物損壊罪も、「権利者を排除する」という点では同じですが、持ち去った物を経済的用法に従って、利用・処分する意思があるか否かという点が異なります。
この点、Aさんは「刑務所に入るため」に万引きを行っており、盗んだ商品を経済的用法に従って利用・処分する意思がなかったのであるから、この場合、窃盗罪ではなく器物損壊罪に問われることになります。
事案によって成立し得る犯罪は異なります。
刑事事件の被疑者となり対応にお困りの方は、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。