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連続ひったくり事件の弁護活動
連続ひったくり事件の弁護活動
今回は、連続ひったくり事件の弁護活動につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは福岡県久留米市で起きている連続ひったくり事件の犯人です。
自転車のカゴに入れられたバッグを、原付で追い抜く際に持ち去る、という手口で、10件ほどひったくり事件を起こしてきました。
ある日、いつものようにひったくり事件を起こしたところを福岡県久留米警察署の警察官に目撃されてしまい、追跡された後、窃盗の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。
Aさんの手口が、かねてから頻発している連続ひったくり事件と類似しているため、これらの事件との関連についても調べられています。(フィクションです)
~成立する犯罪は?~
まずは窃盗罪が成立する可能性があります。
ただし、バッグの提げ紐を握っている被害者から無理矢理バッグを奪った場合には、窃盗罪ではなく、強盗罪が成立する可能性もあります。
強盗の際に被害者がケガをしていれば、より重い強盗致傷罪が成立する可能性まであります。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役となります(最長20年)。
強盗致傷罪の法定刑は無期懲役または6年以上の有期懲役です。
Aさんはひったくりを繰り返していたので、複数の罪で刑事裁判にかけられる(起訴される)ことも考えられます。
その場合は窃盗罪の懲役の上限が15年となったり、強盗(致傷)罪の有期懲役の上限が30年となるなど、より重い刑を言い渡される可能性もあります。
~今後の手続はどうなるのか?~
警察署に連れて行かれて取調べを受けることになります。
当番弁護士をこのタイミングで頼むこともできます。
取調べでは、余罪の有無について尋ねられる可能性が高いと思われます。
今回のケースでは、現に連続ひったくり事件とAさんとの関連について調べられています。
さらに、Aさんの自宅の捜索がなされる可能性があります。
捜索によって差し押さえられた物件によっては(薬物や銃刀法に違反する物件など)、さらなる余罪を追及される場合もあります。
警察は取調べ後、逮捕時から48時間以内にAさんは検察へ引き渡されます(送検)。
検察では、受け取った時から24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかといった判断をします。
勾留請求がなされた場合、勾留するかどうかは裁判官が判断します。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして裁判官が勾留決定を出すと、まずは10日間勾留され、身体拘束が続きます。
やむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間勾留が延長されます。
1つの窃盗事件の捜査が終わっても、別の件で再び逮捕・勾留されてしまう可能性も考えられます。
したがって連続ひったくり事件との関連が強く疑われる場合、身体拘束の期間が長引くことが予想されます。
~弁護士による身柄解放活動~
勾留・勾留延長され、さらに、再逮捕される事態になると、数か月間、警察署の留置場などで生活しなくてはならなくなります。
勾留中の生活はAさんにとって当然負担ですし、その間会社や学校に行くことはできませんから、社会復帰後の生活にも悪影響が及びます。
Aさんからの依頼を受けた弁護士は、準抗告や勾留取消請求などの制度を駆使し、Aさんが早く釈放されるよう力を尽くします。
~被害者との示談交渉~
被害者が判明すれば、弁護士がAさんと被害者の間に立ち、示談交渉を試みることができます。
今回のケースの被害者は通常、Aさんの知り合いではないでしょうから、警察や検察経由で被害者の連絡先を教えてもらい、示談交渉を行います。
被害者と示談がまとまれば、判決で有利な事情として考慮されます。
このような示談の方法や、釈放に向けた活動、取調べの受け方など、わからないことが多いでしょうから、ぜひ弁護士にご相談いただき、事件解決を目指していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が連続ひったくり事件を起こしてしまい、お困りの方は、ぜひご相談ください。
自転車の一時使用で窃盗罪?
自転車の一時使用で窃盗罪?
自転車を一時的に借りて窃盗罪で取調べを受けた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ケース~
Aさんは、京都市中京区内の道路上に無施錠で駐輪してあったV所有の自転車に乗り、目的地で用事を済ませた後、元の場所に5分ほどで戻ってきました。
するとVが待ち構えており、「お前が俺のチャリ盗ったのか。待っていたんだ。それじゃあ、警察行こうか」と告げ、通報されてしまいました。
Aさんは駆け付けた京都府中京警察署の警察官から任意同行を求められ、警察署に行くことになりました。
取調べでは、「自分の物にするつもりはなく、一時的に借りたつもりだった。現に乗ったのは5分間ほどだし、元の場所に返そうともした」と強く訴えました。
Aさんは帰宅を許されましたが、また出頭しなければなりません。
今後はどうなるのでしょうか。(フィクションです)
~窃盗罪が成立するには~
窃盗罪が成立するには、他人の財物をひそかに持ち去るだけでなく、その際に不法領得の意思を有していることが必要です。
判例によると、不法領得の意思とは、①権利者を排除して、他人の物を自己の所有物とし、②その経済的用法に従い、利用若しくは処分する意思をいいます(大審院大正4年5月21日判決、最高裁昭和26年7月13日判決)。
簡単に言うと、①は、ちょっと借りるくらいなら持ち主が使えなくなるわけではないから(権利者を排除まではしていないから)、犯罪とまで言わなくてもいいという話です。
②は、物を勝手に使ったのではなく壊した場合には、その物本来の使い方(経済的用法)をしておらず、窃盗罪ではなく器物損壊罪を問題とすべきということです。
今回のケースの場合、Aさんは自転車で移動するという自転車本来の使い方をしているので、②は認められます。
問題は①です。
Vの自転車を元の場所に返しているので、Vの自転車を持ち出した時点においても、返還するつもりだったのでしょう。
また、乗っていた時間も5分間と短く、もともと駐輪していた場所からそれほど遠くへ行くつもりがなかったものと思われます。
したがって①の意思がないと判断される可能性があります。
①の意思がなければ、窃盗罪は成立しないのです。
なお、①に意思が認められるか否かは、物の値段や保管方法などによっても変わってくるので、すぐに返すつもりであれば①が絶対に認められないというわけではないので注意が必要です。
たとえば高価なものであればそもそも勝手に使うことは容認されず、一瞬使った時点で①が認められる可能性があります。
~犯罪が成立しないことを捜査機関やVに訴える~
【捜査機関に対して】
窃盗罪が成立しないと判断されれば、今後捜査されることもなくなりますし、罪に問われることもありません。
弁護士を通じて、Aさんに不法領得の意思がなかった旨を主張し、捜査機関が納得すれば、事件は解決します。
事件化してしまった場合であっても、弁護士に依頼しておけば、検察官などに対して、説得的に不法領得の意思がなかった旨を主張する手助けをしてもらえます。
この主張が認められれば、嫌疑不十分または嫌疑なしとして不起訴処分となる可能性があります。
または、検察官が犯罪自体は成立するとしても、被害が軽微であるとして、起訴猶予として不起訴処分にする可能性があります。
検察官が不起訴処分を行えば、裁判にかけられず、前科も付かずに刑事手続きが終了します。
上記の活動が功を奏せず、起訴されてしまった場合においても、予め弁護士を選任しておくことにより、無罪判決の獲得に向けた弁護活動を行ってもらえます。
【被害者Vに対して】
弁護士からVに対し、窃盗罪が成立しないことを説明し、納得してもらうことも必要です。
納得してもらわなければ、何らかの嫌がらせを受けるなど、新たなトラブルの種にもなりかねません。
窃盗罪が成立しないという主張をしていても、Vに迷惑をかけたという理由で、相当な金銭を支払い示談をすることも考えられます。
示談は、不起訴処分となる可能性を上げる効果もあります。
この場合においても、弁護士を窓口として交渉することにより、Aさんの負担を減らすことができますし、不当に不利な、または意味の無い示談を成立させてしまうリスクを回避することができます。
いずれにしても、不法領得の意思の有無について争う場合は、法律の専門家である弁護士の力添えが役に立ちます。
ぜひ、弁護士と相談することをご検討ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
窃盗の疑いをかけられたが、不法領得の意思を争い無罪を主張したいといった場合には、ぜひご相談ください。
窃盗罪で逮捕・被害者は誰?
窃盗罪で逮捕・被害者は誰?
窃盗罪で逮捕されてしまった事案に関する占有の所在について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
【事例】
Vは兵庫県西宮市内のホテルに宿泊していたが,チェックアウト直前に共用トイレの個室に財布を置き忘れたまま,ホテルを出た。
同ホテルに宿泊していたAは,たまたま同トイレを使った際に財布が置き忘れてあることに気が付き,周りに誰もいなかったことから財布を自らのポケットに入れ,その後ホテルをチェックアウトした。
Aは,翌日になり財布を無くしたことに気が付き,ホテルに連絡したが財布は見つからなかった。
ホテルからの通報を受け,捜査を行った兵庫県西宮警察署の警察官は,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,刑事事件に詳しい弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~窃盗罪とその被害者1(所有者Vとの関係)~
まず,本件では財布の所有者であるVを被害者とする窃盗罪が成立するかが問題となります。
Vは財布の所有者なのだから、当然Vを被害者とする窃盗罪が成立しそうですが、実はそうとは限らないのです。
刑法は235条は「他人の財物を窃取した」場合に窃盗罪とすることを定めています。
したがって,本件ではAがVの財布を「窃取」したといえるかがポイントになります。
この「窃取」とは,被害者の占有する物を,被害者の意思に反して加害者または第三者に移転させることをいうと解されています。
つまり,「窃取」行為の被害者とは,物の「占有」が認められる者のことをいうのです。
では本件では,Vの所有する財布を,Vが占有しているといえるのでしょうか。
占有とは,物に対する事実的支配のことをいい,この事実的支配は,占有の事実と占有の意思から判断されるというのが判例・実務の確立した見解です。
この占有の有無は,加害者たるAが財布をポケットに入れた時点において判断されることになります。
では,Vに財布の占有が認められるのか検討してみましょう。
Vは,Aが財布を自らのものとしようとしてポケットに入れた時点でホテルを出ており,占有の事実はもはやかなり弱くなっていると考えられます。
また,Vは意識的に財布をホテルのトイレで保管しようなどと考えていたわけはなく、完全にトイレに置き忘れてしまったのですから,財布に対する占有の意思も弱いものであったといえます。
したがって,Aが財布をポケットに入れた時点で,Vの財布に対する占有は認められず,Aの行為は「窃取」には該当しないことになりそうです。
~窃盗罪とその被害者2(ホテルとの関係)~
もっとも,Aの行為が窃盗罪に問われないのかというと,これにもまた別の検討が必要になることに注意が必要です。
それは上記のように財布にVの占有が認められないとしても,ホテル(の管理人)の占有が認められる可能性があるからです。
もしも,Vからホテル側に占有が移転していたと評価できるならば,Aの行為はホテル側の占有を侵害したものとして,刑法235条にいう「窃取」行為に当たる可能性があるといえます。
ホテル側の占有が認められるか否かに関しては,ホテル内のトイレをホテルがほぼ単独で支配しているといえるか(=排他的支配が及んでいるか)が重要です。
仮に,当該ホテルが大ホテルであり,客室・利用客も多く,共用トイレを使用する利用客等が多い場合には,不特定多数人が出入りできる場所としてホテルの排他的支配は及ばず,そのトイレの中にある財布もホテル側の占有が認められない可能性もあります。
しかし,ホテルでは一般に客室内のトイレを使う者が多いと考えられますし,またホテルの利用客や従業員以外の者が共用トイレを使うとは考えにくいことから,ホテルの排他的支配が及んでいると評価することも十分に可能であると考えられます。
したがって,Aの行為は,Vではなくホテル(の管理人)の占有を侵害するものとして窃盗罪が成立するものと考えられます。
~弁護士にご相談を~
このように,窃盗罪が成立するか否かは微妙なケースも多く,事件を解決するにあたっては専門性を有する弁護士の知識・経験が不可欠といえます。
ぜひ、刑事事件に詳しい弁護士にご相談いただければと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
釈放や軽い処分・判決に向けた弁護活動をしっかり行ってまいります。
窃盗事件で逮捕された方のご家族は,年中無休・24時間通話可能のフリーダイヤル0120-631-881まで,まずはお気軽にお電話ください。
10年前の万引き前科と執行猶予
10年前の万引き前科と執行猶予
万引きの前科がある人が、再び万引きで逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
大阪府貝塚市に住むAさんは、同市内のスーパーで商品数点を万引きしたとして大阪府貝塚警察署に窃盗罪で逮捕されました。
Aさんは罪を認めていますが、実は10年前にも同じ万引きで逮捕されて罰金刑となったた前科を有しており、実刑判決だけは避けたいと考えています。
Aさんは接見に来た弁護士に執行猶予を獲得できるか尋ねました。
(フィクションです。)
~ 執行猶予とは ~
執行猶予とは刑の執行を猶予されることです。
刑の執行を猶予されただけですから,無実・無罪となった,許されたということではありません。
執行猶予は,あくまであなたが有罪であることを前提に,社会内での更生を期待して刑の執行を一時的に猶予しているにすぎないのです。
執行猶予にしてもらえる条件は刑法に書かれていますので見てみましょう。
刑法25条
次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 (略)
では、Aさんが執行猶予を獲得できるのか具体的にみていきます。
まず、Aさんは10年前に同じ万引きで逮捕されていますが、「禁錮以上の刑」すなわち懲役刑や禁錮刑にはなっていません。
したがって、Aさんは「一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に当たります。
なお、「禁錮」とは、懲役に近いものですが、刑務所の中で刑務作業をするかしないかは自由とされている刑罰のことです。
次に、Aさんは今回の万引きについての刑事裁判で、「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡し」を受けることが必要です。
この範囲内での判決を受けるためには、裁判で有利な「情状」を主張していくことが必要となります。
反省態度を示すのはもちろん、被害店舗に弁償して示談を締結したり、万引きをやめられないクレプトマニアの状態なのであれば専門の病院で治療を受け始めるなどの対応が重要です。
その結果、「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金」の範囲に収まったのであれば、執行猶予を付けることが可能となります。
もちろん、法律上は執行猶予を付けることが可能であっても、必ずしも執行猶予が付くとは限りません。
特に、犯罪を繰り返すと、だんだんと重い判決になっていくので、執行猶予が付く可能性が下がってきます。
Aさんがもし前回すでに執行猶予となっていれば、今回こそ実刑判決になる可能性も上がります。
しかし前回が罰金刑(懲役刑の執行猶予よりも軽いとされている)に収まっているのであれば、今回は執行猶予にとどまる可能性が十分考えられます。
余罪の有無や被害金額、示談が締結できたかなどにもよりますが、前科が10年も前のものであることを考えると、今回も罰金刑で済む可能性もあります。
~ 執行猶予の取消しに注意 ~
執行猶予付き判決を受けたとしても注意点があります。
上記のとおり、執行猶予は刑の執行を一時的に猶予したにすぎません。
よって,何らかの事由により執行猶予が取消された場合は刑に服しなければなりません。
刑法は、26条で①必要的取消し(必ず取消される)事由を,26条の2で②裁量的取消し(取り消される場合がある)事由を定めています。
①の例を挙げると,執行猶予期間中にさらに罪を犯し,その罪につき禁錮以上の実刑に処せられた場合(刑法26条1号)です。
この場合,新たに実刑に処せられた刑(例えば,懲役1年)と執行猶予が付いた刑(例えば,懲役8月)とを併せて服役(懲役1年8月)しなければならなくなります!
②の例を挙げると,執行猶予期間中に罪を犯し,罰金に処せられた場合(刑法26条の2第1号),保護観察の遵守事項を遵守せず,情状が重いとき(刑法26条の2第2号)などがあります。
執行猶予というと,とかくメリットの方を強調されがちですが,執行猶予はあくまで社会内更生を図るための制度であり,取消されることがあるということも頭に入れておくべきでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、万引きをはじめとする窃盗罪などの刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
実刑判決とならないか不安といった方は,まずは0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談,初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
大阪府茨木市で車上荒らし
大阪府茨木市で車上荒らし
大阪府茨木市で起きた車上荒らし事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事件】
Aさんは仲間であるBさんとともに大阪府茨木市のショッピングモールの駐車場に行き,駐車してあった自動車に置かれていたバッグを盗みました。
被害者が被害届を出したことから大阪府茨木警察署が窃盗事件として捜査を始めました。
(フィクションです)
【車上荒らし】
車上荒らしや車上狙いは,自動車等の車両内から現金や物品を盗むことをいいます。
車両内から現金や物品を盗む行為は窃盗罪に問われます。
刑法第235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
この窃盗罪の条文の中にある「窃取」とは,他人が占有する財物を、占有者の意思に反して自己の占有下に移す行為などをいいます。
特に、持ち主が近くにいない時に財物を持って逃げた場合に、「他人が占有する財物」に当てはまるのかが問題となることがあります。
すなわち、他人の占有下にあった財物を盗んだとして窃盗罪になるのか、他人の占有下にない落とし物を持ち去ったにすぎないとしてより軽い遺失物横領罪にとどまるのか、という点が問題となることがあります。
どのような場合に占有があると認められるかは一概には言えませんが,過去の裁判例では,海中に落した物(最決昭和32・1・24・刑集11巻1号270頁)やバス待合所に一時的に置き忘れたカメラ(最判昭和32・11・8刑集11巻12号3061頁)などで所有者が意識していたり置いた場所をすぐに思い出して取りに戻ったりした場合にはその占有が認められています。
逆に,広大な湖沼に逃げ出した鯉(最決昭和56・2・20刑集35巻1号15頁)や大規模スーパー内の6階で置き忘れたが被害者が思い出して10分後に取りに戻った財布(東京高判平成3・4・1判時1400号128頁)について,その占有を否定した裁判例があります。
以上の裁判例を見ると,裁判所はその物が意識して置いてあるように見えることを重視して占有の有無を認定しているといえ,具体的には以下のようなものを基準としているのではないかと考えられます。
①場所
自宅や自己の管理する場所内か,一般に人がその物を意識して置く場所かなど
②物自体の特性
忘れやすい物か,高価な物か,大きいか等
今回のAさんらが盗んだバッグは自動車内にありました。
事件の概要からは明らかではありませんが,たとえ近くに持ち主はいないとしても車両内は車両の持ち主や使用者が管理する場所であり,そこに置かれている物にはその物の所有者や使用者の占有が及んでいると考えられています。
したがって,車両内の物を盗んだAさんは窃盗罪に問われることになる可能性が高いです。
ちなみに,窃盗罪は未遂も処罰されます(刑法第243条)ので,車両内の物を盗む目的で車の窓ガラスを破壊したりドアの鍵を開けようとするなど,車上荒らし行為を始めた時点で窃盗未遂罪が成立する可能性があります。
気になる窃盗罪の量刑(判決の重さ)については,主に計画性や被害額、前科の有無、被害者に謝罪賠償して示談が締結できたか、などが考慮材料となります。
【弁護の方針】
窃盗罪の被疑者が逮捕されていたり勾留中の場合は,まずは早期釈放を目指すことになるでしょう。
逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断されると身体拘束が長期化しますので、これらのおそれがないことを検察官や裁判官に主張していくことになります。
車上荒らし事件では,被害者との示談も重要です。
示談を成立させることにより,その内容によって不起訴処分や執行猶予を得られる可能性を高めることができます。
当事者間で直接行おうとしても難航する場合が多いですが,法律の専門家である弁護士が間に入ることにより円滑に交渉を進められる可能性が高まります。
刑事事件ではスピードが命です。
対応が後手に回れば回るほど不利益な結果を招くことになり,身体拘束期間が長期化したり必要以上に重い処分を受ける可能性すらあります。
また,逮捕されると捜査機関からの連日の取調べで心身ともに疲弊してしまい,事実とは異なることが記載された調書にサインしてしまうことすら少なくありません。
さらに,現在の状況をご家族の方に伝えることもままならず,今後の見通しが全く立たず社会復帰が必要以上に遅れる可能性もあります。
車上荒らしなどで窃盗罪の被疑者となってしまった方や,警察署から呼び出され取調べを受けることになってしまった方などは,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
以前逮捕された事実で任意出頭、再逮捕?
以前逮捕された事実で任意出頭、再逮捕?
一度逮捕され、その後釈放されたものの、同じ事件について警察に任意出頭を求められ、再逮捕されないか心配というケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
埼玉県川口市に住むAさんは、盗み目的でVさん宅へ無施錠の玄関から立ち入ったという住居侵入罪と窃盗未遂罪の疑いで埼玉県川口警察署の警察官に逮捕され、16日間勾留されました。
しかしその後、Aさんは刑事処分保留のまま釈放されました。
Aさんは、ほっとして通常の生活を取り戻しつつあったところ、突然、埼玉県川口警察署から出頭して欲しいとの連絡を受けました。
通常の日常生活を取り戻しつつあったAさんは驚き、
「このまま出頭すれば再逮捕されるかもしれない。」
と不安になりました。
そこで、Aさんは、以前逮捕された際に弁護してくれた弁護士の法律事務所に無料相談を申し込みました。
(フィクションです。)
~ 住居侵入罪 ~
まず、住居侵入罪について簡単に解説します。
住居侵入罪は刑法130条前段に規定されています。
刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
「住居」とは、人の日常生活に使用されている場所のことをいいます。
また、そうした場所に付属する場所(たとえば、敷地、庭など)も「住居」とされます。
「建造物」とは、学校や商業施設、駅舎など、人が出入りできる建物のうち「住居」を除いたものをいいます。
住居に侵入した場合が住居侵入罪、建造物に侵入した場合が建造物侵入罪です。
つまり、両罪は、同じ条文の中に規定されていることが分かります。
住居侵入罪と建造物侵入罪に共通する「侵入」とは、住居や建造物を管理している人(管理者)の意思に反する立ち入り、をいいます。
つまり、「侵入」に当たるかどうかは、管理者が当該立ち入りに関してどう考えるかにもよります。
したがって、たとえ、かつて同居していた人が家族から家への立ち入りを禁止されていたにもかかわらず立ち入った場合は住居侵入罪に問われる可能性もあります。
盗み目的で住居に入るという犯行もよくあることから、住居侵入罪は窃盗罪とセットになることが多くあります。
Aさんも、住居侵入罪と窃盗未遂罪で逮捕されていたようです。
~ 任意出頭と再逮捕 ~
刑事事件の手続の流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
窃盗事件の流れ
事件の捜査は、被疑者を逮捕して行う場合(身柄事件)と、逮捕しないで行う場合(在宅事件)があります。
逮捕されていない事件、あるいは逮捕後に処分や判決前に釈放された事件では、取調べ等のために捜査機関(警察、検察)から出頭を求められることがあります。
これは任意出頭と呼ばれるもので、刑事訴訟法198条1項を根拠とします。
刑事訴訟法198条1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
この規定によると、逮捕・勾留されて身柄拘束が続いている場合でなければ、出頭を拒むことができます。
もちろん、実際にそうしていただいてもかまいません。
しかし、出頭を拒否された捜査機関側としては「何かやましいことがあるから出頭を拒否するだろう」と考えるでしょう。
したがって、出頭を拒否した方に対する嫌疑は増す一方です。
また、出頭拒否を繰り返すと逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、再逮捕されるおそれもあります。
本来であれば、何もやましいことがないからこそ出頭を拒否するのであって、上記のような印象を抱くのは納得のいかないところです。
しかし、現実問題、再逮捕されることも稀にあります。
出頭すべきか、あるいは出頭した場合に取調べでどのように受け答えすべきかといった点など、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
無料法律相談、初回接見サービスを24時間受け付けております。
高齢者の万引きで前科回避
高齢者の万引きで前科回避
高齢者が万引きで逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
神奈川県伊勢原市に住む高齢女性Aさん(70歳)は、普段よく買い物をするスーパーで、食料品3点を万引きしたとして保安員に現行犯逮捕され、身柄を神奈川県伊勢原警察署の警察官に引き渡されました。
その後Aさんは釈放されましたが、万引きの前歴2回を有していたことなどから窃盗罪で略式起訴され、裁判所から罰金20万円の略式命令を言い渡されました。
そして正式裁判の申立期間が過ぎ、Aさんには前科1犯がつきました。
(フィクションです)
~ 万引きは立派な犯罪 ~
近年は特に、高齢者(65歳以上の男女)の犯罪が増加傾向にあり、中でも窃盗罪(万引き)の比率が多くしめています。
また、一般的に、男性に比べ女性による犯罪は少ないですが、万引きに限っては女性高齢者の数も多いことが特徴です。
その背景としては様々なものが考えられますが、高齢者の孤独も一つではないかと指摘されています。つまり、孤独感を紛らわすため万引きをするというのです。
しかし、万引きは窃盗罪(刑法235条)に当たる立派な犯罪ですから、どんな理由であれ許されるものではありません。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
そして、窃盗罪で起訴され裁判で有罪とされれば、懲役刑、罰金刑を科されます。
~ 前科が付くまでの流れ ~
逮捕されてから「前科」が付くまでの流れを詳しく見ると、以下のとおりになります。
逮捕 → 捜査 → 起訴(正式,略式) → 裁判(正式,略式) → 有罪 → 確定 → 前科
正式裁判(通常の裁判)を受けた場合は、その裁判で有罪とされ、被告人側、検察側の双方が控訴や上告の期間が過ぎて不服申し立てができなくなった(つまり「確定」した)後付きます。
一方、略式裁判とは、公開の裁判を開かず、簡易な手続で罰金刑にするものをいいます。
比較的軽い罪で、本人が罪を認め、前科・前歴がない(少ない)場合に用いられます。
略式命令を言い渡された後(正式に略式命令謄本の交付を受けた後)、やはり正式裁判をしてほしいという不服申し立て期間(14日間)が経過した後に前科が付きます。
~ 前科が付いたらどんな不利益を受ける? ~
前科がつくと、その内容によっては一定の職業に就けなくなるなどの不利益が生じます。
ただ、高齢者にとってこの点を気にする必要はあまりないかもしれません。
しかし、一番注意しなければならないのは、再び、万引きなどの罪を犯した場合、不利な証拠として使われるおそれがある、ということです。
特に万引きは、依存症的な状態となり、繰り返すおそれもある犯罪であるため注意が必要です。
不利な証拠として使われると、裁判官に悪い印象を与えてしまうことは間違いなく、規範意識(ルールを守ろうとする意識)が乏しい、常習性が認められるなどとして前回よりも厳しい判決となるおそれが十二分にあります。
~ 前科をを回避するには? ~
現実的なのは
検察官の起訴を回避すること
ではないでしょうか?
検察官は、被疑者が本当に犯罪をした判断した場合であっても、軽い事件などでは被疑者を起訴せずに、刑事手続を終わらせる判断をすることができます。
検察官の起訴を回避する、すなわち、不起訴処分を獲得することができれば、そもそも刑事裁判を受ける必要はなく、裁判で有罪の判決を受けるおそれもないからです。
そして、不起訴処分を獲得するには、まずは被害者に誠心誠意謝罪し、被害弁償、示談に向けた話し合いを進めていく必要があります。
そして、被害者に被害弁償するなどして示談を成立させることができれば、あなたにとって有利な事情として考慮され、不起訴処分を獲得できる可能性が高くなるでしょう。
~ 被害弁償・示談は弁護士に依頼を ~
もちろん事件の当事者間でも被害弁償、示談交渉をすることはできる場合もあります。
しかし、事件当事者というだけあって、感情のもつれなどから被害弁償、示談交渉がなかなかうまく進まない場合もございます。
そんなときは弁護士が力になれます。
示談交渉に関する経験、知識が豊富な弁護士であれば、適切な内容・形式で示談を成立させることができる可能性が上がります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、万引きなどの窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
ご家族が窃盗罪などの刑事事件で逮捕され、前科が付くのを回避したいとお考えの方、その他でお困りの方は、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
土日・祝日も含め、専門のスタッフが24時間、無料法律相談、初回接見のご予約を承っております。
忍び込み事件で逮捕
忍び込み事件で逮捕
今回は、忍び込み事件の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
東京都府中市に住むAさんは、生活費の足しにするために、Vさんの居住する一戸建て住宅に侵入し、引き出しを開けるなどして金目の物を物色しました。
しかし何も見つからなかったので、そのまま外に出たところ、通報を受けて駆け付けた東京都府中警察署の警察官から職務質問を受けました。
窃盗目的でVさん宅に侵入したことを認めると、Aさんは住居侵入の疑いで現行犯逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~住居侵入罪~
他人の家への忍び込みをしたAさんには、住居侵入罪と窃盗未遂罪が成立する可能性が高いでしょう。
まず住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居に侵入する犯罪です。
「住居」とは、人の起臥寝食、すなわち日常の生活に使用される場所をいいます。
Aさんが立ち入った一戸建て住宅には、Vさんが居住しており、Vさんの日常生活に用いられていると認定することができると思われるので、「住居」に該当するでしょう。
「侵入」とは、管理権者の意思に反する立入りを意味します。
管理権者であるVさんは、Aさんが窃盗目的で自宅に立ち入ることを容認していないと思われるので、Aさんの立入り行為は、Vの意思に反する立入りと評価することができるでしょう。
したがって、Aさんは正当な理由がないのに、Vの意思に反して同人の自宅に侵入したということができるので、住居侵入罪が成立する可能性は極めて高いと思われます。
~窃盗未遂罪~
続いて、今回のAさんは何も盗まずに外に出ているので、窃盗未遂罪が成立するか否かが問題となります。
未遂犯は、犯罪の実行に着手し、これを遂げなかった場合に初めて成立します。
これ以前の状態(予備・陰謀)は、特別にこれを処罰する規定が存在する場合(刑法第201条は殺人の予備、刑法第78条は内乱の予備、陰謀を処罰するとしています)に限り処罰されます。
窃盗罪において実行に着手したかどうかは、対象となる物の形状、行為の態様、犯行の日時場所などの諸般の事情を考慮して決められます。
Aさんは、引き出しを開けるなどして金目の物を物色しており、遅くともこの時点で実行の着手が認められる、と判断されるでしょう。
このように窃盗の実行に着手したが、結局何も盗めず、犯罪は遂げていないので、Aさんには窃盗未遂罪が成立することになるでしょう。
~想定される弁護活動~
逮捕されるとまずは最長3日間、警察署等において身体拘束されます。
その後、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断されれば、さらに最長20日間、「勾留」と呼ばれる身体拘束期間が続くことになります。
この期間は当然、外に出ることができず、会社や学校に行くことはできません。
したがって、早期に釈放されるように活動しなければなりません。
勾留されるのは、検察官が勾留請求をし、これを受けた裁判官が勾留決定を出す場合です。
弁護士は、検察官や裁判官に対し、勾留の要件を満たさないことを訴えかけ、勾留されないように活動することができます。
Aさんに住居がある、長く勤めている勤務先がある、信頼できる身元引受人がいる、取調べに対し、正直に供述している、などといった事情があれば、勾留されずに済む可能性が高まります。
他にも、Vさんと示談を成立させることができれば、Aさんにとって有利に事件を解決できる可能性が高まります。
示談が成立すると、当事者間で事件が解決したものと判断され、逮捕されている場合や、勾留されている場合であっても、釈放される可能性が高まります。
また、検察官が、最終的にAさんを不起訴(起訴猶予)処分とする可能性も高まります。
まずは、接見にやってきた弁護士からアドバイスを受け、上記の活動について尋ねてみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が住居侵入、窃盗事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非ご相談ください。
万引きで逮捕・窃盗既遂罪が成立?
万引きで逮捕・窃盗既遂罪が成立?
万引きで逮捕されてしまった場合に窃盗既遂罪が成立するかについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
【事例】
東京都葛飾区に住むAは,自宅近くの食料品店において,人目につかないように気を付けながら,商品を持参した大き目のバッグに入れていった。
Aは,レジで精算をせずに,同店出入り口方向に向かったところ,Aの様子を不審に感じた警備員に呼び止められた。
Aは,警備員室に連れていかれ,防犯カメラとバッグの中身から上記行為が発覚した。
同店からの通報を受けた東京都葛飾警察署の警察官は,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~万引き行為における窃盗罪の既遂時期~
本件Aは,V店で商品を万引きしたことによって逮捕されていますが,万引きも刑法上の窃盗罪に当たることは常識といっていいでしょう。
もっとも,Aは同店を出る前に,警備員に呼び止められ,警備員室まで連れていかれています。
Aに窃盗未遂罪が成立することに関しては,常識的感覚からしてもあまり違和感はないかと思います。
しかし,Aは店の外までは出ていないことから,窃盗既遂罪まで成立するといえるのでしょうか。
刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」としています。
本件では,窃盗罪の客体たるV店の商品が,「他人の財物」であることは明らかであるといえます。
したがってあとは,「窃取」行為が完遂されたか否かによって,窃盗罪の既遂罪が成立するか未遂罪にとどまるかが決まることになります。
ここでいう「窃取」とは,他人が占有する財物を,占有者の意思に反して自己または第三者に移転させることをいい,占有が移転したかどうかは,自己または第三者に事実的支配が移ったかどうかによって判断されることになります。
本件では,Aは,自ら用意していた大き目のバッグの中に,V店の食料品などの商品を入れています。
今回は偶然発見されましたが、通常は容易には発見できない場所に「他人の財物」たる商品を収めています。
したがって、すでに商品の事実的支配はAにあり、占有を移転させたと評価できるでしょう。
したがって,本件Aの行為は「窃取」に該当し,店外に出る前の段階でも窃盗既遂罪が成立するものと考えられます。
なお,未遂罪の成立にとどまる事案では,刑法43条本文により「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」として,「その刑を減軽することができる」ことになります(刑の任意的減軽)。
~クレプトマニア(窃盗症)について~
本件Aのような万引き犯の中には,薬物中毒者のように窃盗を繰り返してしまう、いわば依存症によって罪を犯してしまう人も存在します。
このような窃盗依存者は窃盗症、クレプトマニアなどと呼ばれることがあります。
したがって,弁護士としてはまず窃盗の前科や余罪があるか等を,被疑者から十分に聴き取ることになります。
前科や余罪の有無によって,窃盗罪のような比較的軽微な犯罪であっても,実刑判決を免れない場合もあり得ます。
しかし仮にそのような場合でも,被疑者がクレプトマニア(窃盗症)の疑いがある場合,刑罰よりも治療が必要であることを主張するなど,捜査段階の早いうちから弁護士として適切な弁護活動を行っていく準備を進めることが重要になってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件を含む刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
窃盗事件(クレプトマニア)で逮捕された方のご家族は、まずはフリーダイヤル(0120-631―881)にお電話ください。
窃盗事件に強い弁護士による,逮捕されてしまった方への接見などの弁護活動をうけたまわっております。
スリで現行犯逮捕されたら
スリで現行犯逮捕されたら
今回は、いわゆるスリを行ってしまった場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
Aさんは福岡県北九州市の繁華街において、スリを行い、他人が持っていた現金などを遊興費として使っていました。
ある日、いつものようにスリを行うため、ほろ酔いのVの背後から近づき、Vのズボンの右後ろポケットから財布を盗んだところ、繁華街をパトロールしていた福岡県小倉北警察署の警察官に見咎められ、職務質問を受けました。
Aさんの手には、そのままVの財布が握られており、窃盗の現行犯として逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~スリで成立する犯罪~
今回の様なスリの場合も、店舗で商品を盗む万引きの場合も、通常、「窃盗罪」(刑法第235条)の嫌疑をかけられることになります。
窃盗罪とは、他人の占有する財物を窃取する犯罪であり、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
今回のケースの場合、Vの財布はVのズボンの右後ろポケットに入っていたのですから、明らかにVの占有が認められるでしょう。
Aさんは、その財布を自分の物として使うために、同ポケットから抜き出し、窃取したものと考えられるので、Aさんに窃盗罪が成立する可能性は極めて高いと思われます。
~逮捕後、Aさんはどうなるか?~
警察署に連れて行かれた後、犯罪事実の要旨、弁護人選任権について説明を受けた後、弁解を録取されます。
無料で利用できる当番弁護士をこのタイミングで頼み、アドバイスを受けることもできます。
取調べでは、余罪の有無について尋ねられる可能性が高いと思われます。
供述の内容によっては、後日、Aさんの自宅に捜索がなされる可能性があります。
捜索によって差し押さえられた物件によっては(薬物や銃刀法に違反する物件など)、さらなる余罪を追及される場合もあります。
ケースの窃盗事件の捜査が終わり、釈放される場合であっても、別の件で再逮捕されてしまう可能性も考えられます。
~検察への送致~
取調べ後、身柄を拘束しておく必要が認められると、警察は逮捕時から48時間以内にAさんを検察へ送致します。
検察では、身柄を受け取った時から24時間以内、かつ、逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、Aさんを釈放するかを決定します。
~勾留の判断~
Aさんの勾留の可否は裁判官が判断します。
勾留請求を受けた裁判官が勾留決定を出すと、10日間勾留されます。
さらにやむを得ない事由があると認められると、さらに最長10日間勾留が延長されます。
~Aさんに必要な弁護活動~
身体拘束が長期化すると、当然、Aさんにとっても重い負担がかかります。
また、外に出ることはできないので、勤務先や学校にも出勤、登校することができなくなります。
そのため、早期に外に出られるよう活動していかなければなりません。
(勾留を阻止する活動)
勾留請求されずに、あるいは、勾留決定がなされずにすめば、逮捕時から2~3日で外にでることができます。
そのためには、検察官や裁判官に対し、Aさんに逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないことを訴えかけなければなりません。
①Aさんに安定した職がある、②被害者とは面識がないし、住居も十分離れている、③信頼できる身元引受人が用意できる、という場合には、よりAさんにとって有利になります。
(勾留されてしまった場合)
勾留されてしまった場合は、「準抗告」や「勾留取消請求」などの制度を通じ、釈放を目指していきます。
(Vと示談をする)
Vと示談をすることができれば、当事者間で事件が解決したものと判断され、釈放される場合があります。
また、検察官がAさんのスリ行為を立証できるだけの証拠を収集できた場合においても、前科が付かずに終わる起訴猶予処分(不起訴処分)が得られる可能性が高まります。
Aさんの余罪が多数あり、全てについて証拠が揃っている場合には、起訴猶予処分の獲得は難しくなるかもしれません。
その場合であっても、示談が成立していることは、有罪判決を受ける場合の量刑に、有利な影響を与えることが期待できます。
まずは、接見にやってきた弁護士と相談し、より早期に、より有利に事件を解決することができるよう活動していきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が窃盗事件を起こしてお困りの方は、ぜひご相談ください。