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窃盗幇助犯で逮捕①

2019-05-20

窃盗幇助犯で逮捕①

神奈川県茅ケ崎市内に住むAさんは,神奈川県茅ケ崎市内にある本,CD,DVD,BLの販売,レンタル業を営むお店の店長を勤めていました。
そして,ある日,Aさんは知人Bさんから「DVD,BL観たいんだけど,お金がない」「お前の力で何とかしてくれないだろうか」と言われました。
AさんはBさんの言わんとしていることを察し,かつてBさんから金銭的に助けられた借りがあったことから,今度は自分が力になろうと思い,「分かった」「お店の鍵を持っているから,閉店後に裏口のドアの鍵を開けておく」「そこは防犯ブザーなどないから安心だよ」と言いました。
その後,Bさんは,Aさんに言われたとおり無施錠のお店の裏口から店内に侵入し,DVD3枚,BL3枚を盗って再び裏口から外に出たところ警備員に見つかり,逮捕建造物侵入罪窃盗罪)されてしまいました。
そしてAさんは,神奈川県茅ケ崎警察署建造物侵入罪窃盗罪幇助犯逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

この事例をみてまず,目に飛び込んでくるのが「幇助」という言葉ではないでしょうか?
しかし,普段,刑事事件に縁のないみなさんにとっては

幇助って何?
窃盗とかと同じように何かの罪なの?
・どういう場合に幇助犯となるの?
・重く処罰されるの?

などという疑問を抱かれることと思います。
そこで,今回は,「幇助犯の意義」やその「成立要件」,「幇助犯の刑の重さ」について解説したいと思います。

~ 幇助犯とは ~

幇助犯の「幇助」とは,実行行為以外の行為をもって正犯を援助し,その実行行為を容易にすることをいいます。
刑法62条1項には,次のように書かれてあります。

刑法62条1項
正犯を幇助した者は,従犯とする。 

* 実行行為,正犯 *
「実行行為」とは,ある犯罪に当たる行為のことをいいます。
例えば,窃盗罪を規定した刑法235条には「他人の財物を窃取した」と書かれてあります。
したがって,他人の財物を窃取すること(別の言い方をすれば盗むこと)が窃盗罪の「実行行為」ということになります。
「正犯」とは実行行為をした者をいいます。
本件ではBさんがこれに当たります。

~ 幇助犯の成立要件 ~

幇助犯が成立するためには,①幇助者(Aさん)が「正犯を幇助」して,②被幇助者(Bさん)が犯罪を実行したことが必要です。

= ①について =
幇助の方法には制限がありません。
物質的幇助(凶器,金銭の貸与,犯行現場への案内,犯罪場所の提供など)でも,精神的幇助(助言,激励など)でもよいとされています。
精神的幇助は,犯罪を決意している者に対してその決意を強めるものであり,この点で,犯罪を決意していない者に対してその決意を生じさせる教唆とは異なります。

= ②について =
たとえば,Bさんがお店の裏口手前まで来たものの,お店の中に入るのが怖くなって引き返したところ警備員に見つかったという場合,建造物侵入罪,窃盗罪の「実行行為」を行ったとは認められません。
したがって,Bさんはもちろん,Aさんにも犯罪(幇助犯)は成立しません。
他方,Bさんがお店の中に入って,DVDを盗ろうと思って棚に手を伸ばそうとしたところ警備員に見つかり逃げたという場合は,犯罪の「実行」があったと認められますから,建造物侵入・窃盗未遂罪幇助犯が成立し得ます。

~ 幇助犯の刑の重さ ~

幇助犯は,あくまで犯罪の手助けをしたにすぎません。
したがって,実際に犯罪を行った者(正犯)よりも刑は軽くなります。
刑法63条は「従犯の刑は,正犯の刑を減軽する」と規定しています。
つまり,正犯に適用されるべき法定刑を減軽した処断刑の範囲内で処罰されるという趣旨です。

この点については次回,解説いたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件,少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件でお困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
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(東京都中野区)リレーアタックで車上荒らし

2019-05-15

(東京都中野区)リレーアタックで車上荒らし

~ケース~
東京都中野区在住のAさんは仲間数人と特殊な装置を用いてスマートキータイプの乗用車の鍵を開け,中にある物を盗む車上荒らしを繰り返していた。
ある日,Aさんが車上荒らしをしていたところ,偶然通りかかった警視庁中野警察署のXによってAさんらは窃盗罪の疑いで現行犯逮捕された。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談した。
(フィクションです)

~リレーアタック~

Aさんの行った車上荒らしの手法は「リレーアタック」と呼ばれるものです。
リレーアタックは,電波を感知して開錠するスマートキーと呼ばれる機能を悪用した窃盗の手口です。
リレーアタックを用いた窃盗では,自宅などに保管してある鍵から出ている電波を特殊な装置でキャッチし,電波を増幅して車の鍵を開けます。
従来,車上荒らしの多くは窓ガラスを割って鍵を開けるといった物理的な方法で開錠する手口でしたが,スマートキーの場合,電波さえあれば開錠できてしまうため窓ガラスを割る必要などはありません。
それどころか,電波さえあればエンジンをかけて車ごと盗んでしまうことも可能です。
リレーアタックへの対策としては,電波そのものが出ないようにする必要がありますので,微弱電波を切る,自宅ではアルミホイルに包んで保管する等があります。
また,カーショップ等ではリレーアタック対策グッズも販売されていますのでそちらを購入するという対策もあります。

~逮捕後の流れ~

窃盗事件等の刑事事件で被疑者として逮捕されてしまうと,原則,48時間以内に事件が検察官に送致されます。
送致を受けた検察官は送致を受けてから24時間以内に逮捕された被疑者の勾留を請求するかどうかを決定します。
勾留請求が認められてしまうと原則10日間,延長されるとさらに10日間の最長20日間勾留されることになります。
長期間の身柄拘束は被疑者やご家族の方などにとって大きな負担となりますので,弁護士は身柄解放に向けた活動をします。
具体的には,勾留前であれば検察官に勾留の必要がないという意見書を提出し,勾留されてしまった場合には勾留に対する準抗告を申し立てます。
勾留後,起訴されてしまい被告人として引き続き勾留されてしまうような場合には保釈請求をします。
勾留請求がされなかった場合,勾留に対する準抗告や保釈請求が認められた場合には,釈放となり身柄解放されることになります。

~Aさん成立する罪~

車上荒らしにはまず窃盗罪が成立し,法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金となります(刑法235条)。
窓ガラスを割って鍵を開けた場合や,工具などで鍵を壊した場合には器物損壊罪(刑法261条)も成立します。
ただし,今回のケースのAさんはリレーアタックを用いており,物理的な破壊はしてないので窃盗罪のみが成立するといえるでしょう。

窃盗事件の場合,初犯であれば事例にもよりますが,罰金刑や執行猶予付きの判決となることも多いです。
また,被害者の方と示談が成立している場合には起訴猶予の不起訴処分となる場合もあります。
しかし,窃盗の件数が多く,被害者の方との示談も成立していないというような場合には実刑判決となってしまう場合もあります。
そのため,車上荒らしに限らず,窃盗事件の場合には弁護士は被害者の方と示談交渉をすることが非常に重要になってきます。
示談が成立した場合に「加害者を許す,処罰を望まない」という宥恕条項を示談書に盛り込むことができれば検察官の起訴猶予とするかどうかの判断や,刑事裁判での裁判官による量刑判断に有利に働きます。
ただ,車上荒らしの場合は被害者の方の怒りが強く,宥恕条項を示談書に盛り込んでもらうことが難しい場合もあります。
そのようなケースでも,少なくとも被害弁償のみでもすることによって有利に働く場合があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所窃盗事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
車上荒らしをして逮捕されてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
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執行猶予期間経過した後の万引き 

2019-05-10

執行猶予期間経過した後の万引き  

東京都渋谷区に住むAさんは,平成27年7月1日に,窃盗罪(万引き)で「懲役1年 3年間の執行猶予」の判決の言い渡しを受けました。
そして,3年間,何の犯罪を犯すこともなく執行猶予期間を経過したところ,平成30年10月1日に,東京都渋谷区のスーパーで万引きしたとして,警視庁代々木警察署窃盗罪の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
その後,Aさんは窃盗罪で起訴され,平成31年4月16日に判決の言い渡し期日が迫っています。
Aさんと両親は「Aさんが再度,執行猶予付き判決を受けることができるかどうか」が不安になり,刑事事件に強い弁護士に尋ねてみることにしました。
(フィクションです)

~ はじめに ~

はじめに,Aさんらの疑問に答えるためには,Aさんの執行猶予の期間が経過しているかどうか,執行猶予の効力が切れているのかどうかを確認する必要があります。
なぜなら,執行猶予の期間が経過しているかどうか,効力が切れているかどうかで,適用される条文,要件が異なってくるからです。
そこで,まず,Aさんの執行猶予期間が経過しているのかどうか,詳しく確認することとします。

~ Aさんの執行猶予期間は経過しているのか? ~

そもそも,執行猶予期間はいつからはじまるのか(起算日はいつからなのか)ご存知でしょうか?
これは,実刑の場合も言えることですが,刑の起算日は「裁判の確定の日」からはじまります。
この点,Aさんは,平成27年7月1日に判決(刑の言い渡しの裁判)を受けたとのことですから,上訴などしなければ,「平成27年7月15日(の午前0時)(上訴期間(14日)が経過した日の翌日)」が確定日となります。

それでは,Aさんの執行猶予期間は経過しているのでしょうか?
執行猶予期間の満了日はいつでしょうか?
この点,起算日は平成27年7月15日ですから,執行猶予期間の満了日は「平成30年7月14日(応当日の前日が満了日)」で,「平成30年7月15日(午前0時)」をもって執行猶予期間が経過した,執行猶予の効力が消滅したということになります。

* 前科は残る *
ただし,前科は有罪の裁判を受ければ記録されるものですから,執行猶予期間が経過したとしても前科は消えません。

~ 執行猶予期間が経過した場合の効力 ~

執行猶予期間が経過した場合,刑の言渡しは効力を失います(刑法27条)。
すなわち,執行猶予を受けるためのハードルは,執行猶予中に罪(万引き)を犯した,裁判中であるという方に比べて低くなります。

刑法の規定に従っていれば,Aさんは,執行猶予を受けられる者について定めている刑法25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に当たりますから,執行猶予を得られる可能性は残ることになります。
しかし,必ず,執行猶予付き判決を受けられるかといえばそうではありません。
なぜなら,前科を有していることは事実ですし,Aさんは執行猶予期間が経過してからほどなくして万引きをしています。
この事実を重く見られれば,実刑の可能性も十分あり得るでしょう。
あとは,その悪い情状を打ち消すだけの有利な情状を裁判でどこまでアピールできるかが鍵となってきます。

また,執行猶予期間が経過した場合の効力としては,欠格事由から外れ,免許等を得られることも挙げられます。
たとえば,医師であれば,「罰金以上の刑に処せられた者」には免許が与えられないことがありますが,執行猶予期間が経過した後は,もはや「罰金以上の刑に処せられた者」とはいえませんから,免許を得る資格を有することになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪など刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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福岡県直方市の常習累犯窃盗事件で執行猶予

2019-05-05

福岡県直方市の常習累犯窃盗事件で執行猶予

~ケース~
福岡県直方市在住のAさんは,万引き癖があり,過去10年間に万引きで執行猶予の付かない懲役判決を3回受けている。
Aさんはしばらく万引きをせずに真面目に生活していたが,ある日ふとしたはずみでコンビニで菓子パン1個を万引きしたことからまた万引きを繰り返すようになってしまった。
ある日,万引きに気づいた店員の通報によってかけつけた福岡県直方警察署の警察官に逮捕され,Aさんは常習累犯窃盗罪として起訴された。
(フィクションです)

~常習累犯窃盗罪~

累犯とは非常におおまかにいうと,再犯することです。
刑法上では,
・懲役の執行が終わった日
・懲役の執行が免除された日
これらの日の翌日から,5年以内にさらに罪を犯して有期懲役に処せられた者を再犯といいます。
そして再犯の刑は,その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とすると定められています。
万引き,すなわち窃盗罪の罰則は10年以下の懲役または50万円以下の罰金ですので,窃盗罪の再犯の場合は最大20年以下の懲役となります。

ところで,Aさんが起訴された常習累犯窃盗罪とはどのような罪なのでしょうか。
常習累犯窃盗罪は,盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律という法律に定められています。
この法律では,窃盗罪および強盗罪で過去10年間で3回以上6ヶ月以上の懲役を受けまたは執行の免除を受けた者が常習として窃盗等をした場合,3年以上の有期懲役に処すと定められています。
これがいわゆる常習累犯窃盗罪です。
有期懲役は最大で20年ですので,窃盗罪の再犯と最大刑自体は変わりません。
しかし,懲役の最低が3年以上という点が窃盗罪と異なり,窃盗罪よりも重くなっている部分であると言えます。
Aさんの場合,過去10年間に3回,窃盗事件での服役経験があるようですから,窃盗罪で「過去10年間で3回以上6ヶ月以上の懲役を受け」たという常習累犯窃盗罪の要件を満たしたのでしょう。
そして何度も万引きを繰り返してしまったことから窃盗の常習性も認められ,常習累犯窃盗罪での起訴に至ったのだと考えられます。

日本において,刑の執行猶予は基本的に3年以下の懲役でないと付けることはできません。
ですから,常習累犯窃盗罪のように,刑罰の下限が3年以上となっている犯罪では,執行猶予を付けることが非常に難しいです。
しかし,常習累犯窃盗罪でも酌量軽減は可能ですので,酌量軽減があれば刑罰の最短が1年6カ月以上の懲役となり,執行猶予を付けることが可能になります。
そして,執行猶予は前刑の執行を終わった日又は前刑の執行の免除を得た日から5年を過ぎていれば付けることもできます。

今回のAさんのケースでは,被害弁償などがされており反省の念が顕著であったり,専門機関での再犯防止の取り組みが行われていたりといった具体的な事情を示すことで,情状酌量による刑罰の減軽を獲得し,執行猶予を目指していくことが考えられます。
しかし,先ほど触れたように,常習累犯窃盗罪で執行猶予を獲得することは非常に難しいことですから,執行猶予を目指すのであれば適切な弁護活動が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では刑事事件に強い弁護士による初回接見サービス・無料法律相談のお問い合わせを24時間受け付けております。
まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
福岡県直方警察署での初回接見費用:41,400円)

間違って持ち帰った他人の財布のお金を使い逮捕

2019-04-30

間違って持ち帰った他人の財布のお金を使い逮捕

Aさんは、ある日、仕事帰りに京都市左京区にあるスナックに寄りました。
仕事のストレスもあり飲みすぎたAさんは、ふらふらになりながら家に帰ろうとしましたが、間違って色形が似ていた他のお客Vさんのコートを着て帰ってしまいました。
翌朝そのことに気付いたAさんがしまったと思いつつ、ポケットを調べると財布がありました。
「はじめて行ったスナックだから、自分はどこの誰だか知られていない。このままもらってしまえ」と魔が差したAさんは、財布の中の現金を使った上、クレジットカードも使って買い物してしまいました。
その後、Vさんが出した被害届をもとに捜査をしていた京都府下鴨警察署は、Aさんがクレジットカードを使った店の防犯カメラを分析するなどし、Aさんを割り出すことに成功し、Aさんは京都府下鴨警察署逮捕されました。
(フィクションです。)

Aさんは、誤って持って帰ったVさんのコートから出てきた財布の中身を使ってしまったことから逮捕されてしまったようです。
それでは、Aさんにはどういった犯罪が成立するのでしょうか。

~窃盗罪は成立する?~

他人の物を持ち帰ったのだから、まずは窃盗罪が成立するのではないかと気になるかもしれません。
結論から言うと、AさんがVさんのコートを持ち帰ったこと自体については、窃盗罪は成立しないと考えられます。

刑法38条1項には、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」と規定されています。
つまり、故意に(わざと)犯罪をした場合に罰するのが原則であり、特別の規定があれば過失(間違ってやった)場合にも罰するということになります。

本件では、AさんはわざとVさんのコートを持ち帰ったわけではなく、過失で他人の物を持ち帰ったにすぎません。
過失窃盗罪という規定はないため、窃盗罪は成立しないと考えられるのです。

~占有離脱物横領罪が成立する?~

上記の考え方により窃盗罪は成立しないとしても、Aさんはコートや財布を返さずに現金やクレジットカードを使ってしまいました。
これらの行為には占有離脱物横領罪が成立すると考えられます。
条文を見てみましょう。

刑法254条「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

AさんはVのコートや財布を自宅に持ち帰ってしまっており、これらはVさんの占有下から離れてしまっているので、「占有を離れた他人の物」になります。
また「横領」とは、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思(不法領得の意思)をもって、物を自己の事実上の支配下に置くことをいいます。
コートや財布を返さずに手元に置き続け、現金やクレジットカードを使用する行為は、本来は所有者であるAさんにしかできないことなので、不法領得の意思をもってこれらの物をVの事実上の支配下に置いている行為であり、「横領」にあたります。
したがって本件では占有離脱物横領罪が成立すると考えられるのです。

~詐欺罪も成立する?~

さらにAさんがクレジットカードを使って買い物をした行為は、お店に対する詐欺罪が成立する可能性が出てきます。

刑法246条1項「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。」

クレジットカードは規約上、本人しか利用できないものなので、他人のクレジットカードを自分のものであると装って使ったAさんの行為は、店員さんという「人を欺いて」、商品という「財物を交付させた」ことになります。
したがって詐欺罪が成立すると考えられるのです。

~弁護士に相談を~

Aさんとしてはほんの出来心だったかもしれません。
しかし窃盗罪こそ成立しないとしても、占有離脱物横領罪の他、詐欺罪という重い罪まで成立し、結果として逮捕されてしまいました。

しっかり反省しなければなりませんが、同じ有罪になるにしても、勾留され身柄拘束が続くのか、保釈が認められるのか、執行猶予が付くのか、といったところは、仕事や家族との関係などに大きく影響してくるので気になるところでしょう。
また、取調べにどう応じたらよいかといった点もわからないことが多く不安でしょう。

こうした状況に陥ってしまい、再スタートに向けてベストを尽くしたいとお悩みの際には、刑事事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にぜひご相談ください。
逮捕された方向けの初回接見サービスをご用意してお待ちしております。
京都府下鴨警察署までの初回接見費用:35,000円)

万引きと最初の執行猶予

2019-04-25

万引きと最初の執行猶予

神戸市長田区に住むAさんは,数年前から万引きを繰り返すようになり,これまでに,2回,警察の微罪処分を受けていました。
そして,ある日,Aさんはスーパーで万引きしたところを保安員に目撃され逮捕されてしまいました。
Aさんの逮捕の通知を受けた母親は,何としてでも実刑だけは避けたいと思い,執行猶予付き判決の獲得を目指して弁護士に刑事弁護を依頼することにしました。
(フィクションです)

~ 執行猶予とは ~

刑の執行猶予とは,有罪判決をして刑を言い渡すに当たって,情状により,その執行を一定期間猶予し,その期間を無事経過したときは刑の言渡しを失効させる制度のことをいいます。
刑の執行猶予には,大きく分けて「刑の全部の執行猶予の制度」と,「刑の一部の執行猶予の制度」の2種類があり,前者はさらに,「最初の執行猶予の制度」と「再度の執行猶予の制度」の2種類に分けられます。
このコラムでは,「刑の全部の執行猶予の制度」のうち,「最初の執行猶予の制度」についてご説明いたします。

~ 最初の執行猶予の制度 ~

最初の執行猶予(付き判決)を受けるための要件は,刑法25条1項に規定されています。

刑法25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その刑の全部の執行を猶予することができる

1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

つまり,最初の執行猶予(付き判決)を受けるには,
1 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
2 上記1号,あるいは2号に該当すること
3 (執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること
が必要ということになります。

~ 上記1について ~

まず,上記1からすると,執行猶予を獲得する可能性があるかどうか,その可能性はどの程度のものかどうか知るには,犯した罪について定められている刑(法定刑)を確認する必要があります。

この点,窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですから,「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること」の要件を満たす可能性はあります(同じ窃盗罪でも「懲役4年」の刑を言渡しを受ければ執行猶予付き判決を受けることはできません)。

~ 上記2について ~

= 1号について =
「前に」とは,執行猶予判決を言い渡される前にという意味です。
「禁錮以上の刑に処せられた」とは,禁錮以上の刑を言い渡した判決確定したことをいうのであって,その確定判決の執行を受けたことを意味しませんから,刑の執行を猶予された場合も含まれます。
つまり,刑法25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」とは,
・なんら前科のない人
・前科があっても罰金刑(実刑,執行猶予付きを含む)以下の前科を有する人
を意味することになります。
なお,裁判を受けたものの無罪判決を獲得し,その裁判が確定した人も「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に含まれることはいうまでもありません。
Aさんの場合,過去に微罪処分を受けたということですが,微罪処分を受けたとしても「前科」にはなりませんから,Aさんは刑法25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に当たります。

= 2号について =

禁錮以上の刑に処せられ,刑務所に服役した方(実刑となった方)であっても2号により執行猶予を獲得できる場合があります。
2号の「執行を終わった」とは,刑務所の服役期間が満了したという意味で,「執行を終わった日」とはその翌日を意味すると解されています。
そして,その「執行を終わった日」から5年間,禁錮以上の刑に処せられたことがない者は2号に当たり,執行猶予を獲得できる場合があるのです。

~ 上記3について ~

情状は,犯罪そのものに関する情状(犯情)とその他の一般情状に区別されます。
犯情とは,犯行動機・態様,被害結果などの要素があり,万引きが終わった後ではいかんともしがたい事実です。
他方,一般情状については,万引き後でも,いくらでも有利に動かすことができます。
事実を認めるのであれば,まずはスーパー側に謝罪することが必要でしょう。

そして,反省を深め,被害者が被った被害に思いをいたし,被害弁償を進め,可能であれば示談を締結する必要があります。
それが,裁判では,有利な情状として考慮され得るからです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件での執行猶予付き判決の獲得をご検討中の方は,フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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兵庫県永田警察署までの初回接見費用:3万5,200円)

クレプトマニアと窃盗罪(大阪市此花区)

2019-04-20

クレプトマニアと窃盗罪(大阪市此花区)

A子さんは,大阪市此花区にあるスーパーマーケットで食料品等30点(販売価格8000円相当)を万引きしたところを保安員に見つかり逮捕されてしまいました。
その後,Aさんの身柄は大阪府此花警察署に引き渡されましたが,その日のうちに釈放されました。
実は,A子さんは,同じ万引きの窃盗前科を1犯,窃盗前歴を3回有しています。
A子さんとその夫は,今後のことが不安になって刑事事件に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
相談を受けた弁護士は,A子さんがクレプトマニアではないかと疑いはじめました。
(フィクションです)

~ 万引きは窃盗罪 ~

万引きは刑法の窃盗罪に当たります。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

万引きであっても初犯であるなど要件を満たせば微罪処分で刑事手続が終了する場合もあります。
しかし,2度目,3度目と万引きを繰り返した場合は,もはや微罪処分で終わることはないでしょう。
始めは罰金刑で済むこともあるかもしれませんが,それでも万引きを繰り返す場合は懲役刑を科され,最悪の場合,実刑となることもあります。
運よく執行猶予が付いた場合でも,その執行猶予期間中に再度万引き等の犯罪を犯せば,言渡された刑と執行を猶予された刑とを併せて服役しなければならなくなる場合もあります。

* 微罪処分 *
微罪処分とは,警察が事件を検察庁を送致せず,被疑者への厳重注意,訓戒等で終了させる手続きのことをいいます。
微罪処分とするか否かは,予め定められた基準に基づいて警察が判断します。
微罪処分となれば,起訴,不起訴などの刑事処分を受けることはありません。
また,刑罰を科せられることもありませんから前科が付くこともありません(ただし,前歴は付きます)。

* 前科・前歴 *
「前科」は刑事裁判を受け,有罪と認定され,その裁判で言い渡された刑が確定した場合につきます。
他方,「前歴」は,裁判まではいかなくても,何らかの犯罪で被疑者として取り扱われた場合に警察官が記録として残すものです。
例えば,不起訴処分(起訴猶予)を受けた場合,裁判を受ける必要はありませんから「前科」が付くことはありませんが,被疑者として扱われたことは事実ですから「前歴」としては残ります。
「前科」「前歴」は似ているようですが,「前歴」は,過去に「〇〇が〇〇の罪で被疑者として扱われた」という事実を証明するにすぎません。

~ クレプトマニアと窃盗罪 ~

クレプトマニアは窃盗癖とも呼ばれています。
窃盗(万引き)衝動に伴う精神的な緊張感およびその状態からの解放感に依存し,繰り返し窃盗行為に及んでしまうという精神疾患の一種です。
アメリカの精神医学会の「DMS-5」という診断基準では,以下の5項目を基準にクレプトマニアか否かを判断しているようです。

・個人的に用いるのでもなく,またはその金銭的価値のためでもなく,物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
・窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。
・窃盗を犯すときの快感,満足,または解放感。
・盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく,妄想または幻覚に反応したものでもない。
・盗みは,行為障害,躁病エピソード,または反社会性人格障害ではうまく説明されない。
(※上記は5項目は1つの目安ではあり,絶対的なものではありません。)

クレプトマニアは精神疾患の一種です。
精神疾患の一種であることから,クレプトマニア=責任無能力=無罪(窃盗罪に問われない)と誤解されている方も中にはおられますが,それは早計です。
いくらクレプトマニアであっても,物事の善し悪しを判断できる能力,かつ,この能力に従って行動できる能力がある(=責任能力がある)とされれば,窃盗罪に問われ得ることになりますから注意が必要です。

~ クレプトマニアの弁護活動 ~

しかしながら,クレプトマニアの方を窃盗罪に問い,刑罰を科すだけでは根本的な解決にはならないと考えられます。
確かに,刑務所内でも更生に受けたプログラムが組まれていますが,やはり刑務所内で行われることですので「治療」というよりかはむしろ「矯正・教育」の要素が強いかと思います。
したがって,クレプトマニアの方の弁護活動では,刑務所ではなく,「社会内更生の必要性・相当性」を検察官や裁判官に主張していく必要があります。

「社会内更生の必要性」を強調するためには,専門の治療機関を受診し,その後も継続して治療を受ける必要性を主張する必要があります。「社会内更生の相当性」を強調するためには,本人の意欲はもちろんのこと,周囲の適切なサポートがあり,本人が継続して治療機関を受診し続けていける環境が整っていることを主張する必要があるでしょう。

過去の裁判例では,クレプトマニアの方の事案で,検察官の求刑よりも軽い刑で終わったという事案が多数あります。
「自分はクレプトマニアだから」「前科,前歴を多数持っているから刑務所行きだ」などといって諦めず,まずは専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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窃盗罪と親族相盗例

2019-04-15

窃盗罪と親族相盗例

さいたま市浦和区に住むAさん(20歳)は,近所に住む叔父Vさんの家に遊びに行った際,小遣い銭欲しさにVの財布の中から1万円札1枚を抜き取りました。
その直後に1万円札がなくなったことに気づいたVさんは,泥棒に入られたと勘違いし,埼玉県浦和警察署に110番通報し,被害届を提出しました。
事の重大さに気づいたA君は,その後両親に相談し,A君と両親は今後の対応について,弁護士のもとへ相談に行くことにしました。
(フィクションです。)

~ 窃盗罪 ~

AさんがVさんの財布の中から1万円札を抜き取る行為は窃盗罪に当たります。
窃盗罪の条文は以下のようになっています。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

~ 親族相盗例 ~

親族相盗例とは,親族間に関する犯罪の特例のことをいいます。
これは,「法は家庭に入らず」という思想に基づいています。
すなわち,親族間の内部的なことは,それが犯罪であっても,国家が積極的に介入することを差し控え,親族間相互の規律に委ねる方が親族間の秩序維持のためにも望ましいことであり,刑事政策上も妥当であるという考え方によるものです。

= 窃盗罪・不動産侵奪罪の親族相盗例に関する規定 =
窃盗罪(刑法235条)・不動産侵奪罪(刑法235条の2)の親族相盗例については刑法244条に規定されています。

刑法244条
1項 配偶者,直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪,第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は,その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は,告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前2項の規定は,親族でない共犯については,適用しない。

親族相盗例は,窃盗罪・不動産侵奪罪のみならず,詐欺罪,背任罪,恐喝罪,横領罪の各罪について準用されていますが,強盗罪には適用されていません。

強盗罪は,他の罪に比べ非常に悪質な罪であるため,親族間の規律に委ねるのは相当でないからです。

= 刑を免除される親族 =
この親族相盗例によって刑を免除される親族は,「配偶者」「直系血族」「同居の親族」です。
「配偶者」とは,いうまでもなく婚姻関係にある相手方のことをいいます。
「配偶者」には内縁関係にある者は含まれないと解されています。
「直系血族」とは,祖父母-父母-子-孫といった縦の関係の血族をいいます。
ですから,兄弟,姉妹といった横の関係は含まれません。
しかし,養親と養子といった直系の法定血族は「直系血族」に含まれます。
そして,「同居の親族」とは,同一住居内で日常生活を共同にしている親族のことをいいます。 

ここでいう「親族」については民法725条の規定によります。
民法725条の規定によれば「親族」とは
1 六親等内の血族
2 配偶者
3 三親等内の姻族
をいうとされています。
ですから,「同居の親族」とは,同居している六親等内の血族又は三親等内の姻族のこといいます。

= 告訴が必要な親族 =
刑法244条2項によれば,「配偶者,直系血族又は同居の親族以外の親族」については,告訴がなければ公訴を提起する(起訴する)ことができないとされています。
このように,公訴の提起に告訴を必要する犯罪を親告罪といいます。

~ 本件の検討 ~

では,本件のVさん(叔父)は,いずれの親族に当たるのかみていきましょう。
まず,Aさんの「配偶者」でないことは明らかです。
また,直系血族とは,先ほどご説明したとおり,祖父母-父母-子(A君)-孫といった縦の関係をいいますから,VさんはAさんの「直系血族」ではありません。
また,Vさんは叔父ですから,Aさんからみれば「三親等の血族(親族)」には当たりますが,Aさんとは別居しているようですから,「同居の親族」にも当たりません。
以上から,Vさん(叔父)は,刑法244条2項の「配偶者,直系血族又は同居の親族以外の親族」に当たることになります。

よって,結論としては,Aさんの窃盗罪は免除されないが,告訴がなければ起訴はされないということになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪などの親族相盗例が適用される事件をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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神奈川県横須賀市の事後強盗事件

2019-04-10

神奈川県横須賀市の事後強盗事件

~ケース~
神奈川県横須賀市在住のAさんは市内の複合ショッピングセンターにある店舗の一つであるV内において日用品数点を万引きした。
店舗から外に出ようとしたところ警備員であるXに発見され,Aさんは逃走した。
AさんはXの追跡を振り切り,XはAさんを見失った。
その後,Aさんが引続きショッピングセンター内にいたところAさんはXに発見された。
その際,AさんはXから逃げるために所持していたポケットナイフを取り出しXに向かって振りかざした。
Xが怯んだ隙にAさんは再度逃走した。
後日,Aさんは防犯カメラの映像などから神奈川県田浦警察署事後強盗罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)

~事後強盗罪~

AさんはV店において万引きをしているので窃盗罪(刑法230条)が成立するでしょう。
そして刑法238条で「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。」と規定されています。
この規定は窃盗犯人が,一定の目的をもって暴行・脅迫を加える行為を,強盗罪として取り扱う規定です。
一定の目的をもっての暴行・脅迫とは,財物が取り返されることを防ぐ目的,あるいは逮捕を免れ,罪跡を隠滅する目的のいずれかをもって行われる必要があります。
そのため,たとえば万引きを発見した警備員に対して,腹を立てて暴行を加えっという場合には,事後強盗罪のいう暴行にはあたりません(東京地判平8・3・7)。

事後強盗罪が成立する場合は,「強盗として論ずる」と規定されていますので,あらゆる点で強盗罪として扱われます。
そのため,暴行によって相手が怪我をしてしまった場合には強盗致死罪(240条)や強盗強制性交等罪(241条)の成立が成立することもあります。
暴行・脅迫が,窃盗現場からどの程度時間的・場所的に離れていても事後強盗罪に当たるかについては,一般に窃盗の犯行の機会の継続中であることが必要とされます。

また,事後強盗罪は強盗罪として論ぜられますので,手段としての暴行・脅迫は相手の反抗を抑圧する程度のものであることが必要です。
ただ,強盗罪の法定刑は5年以上の懲役であり,窃盗罪に比べて重くなっていますので,裁判所は事後強盗罪の適用について慎重となるケースも考えられます。
過去の事件を見てみると,窃盗犯人が,逮捕しようとした店員を転倒させ3週間の傷害を負わせた場合(浦和地判平2・12・12),窃盗犯人が追跡してきた2名に対し顔面を殴り,3週間・1週間の傷害を負わせた場合(大阪高判平7・6・6)などは事後強盗ではなく,窃盗罪と傷害罪の併合罪とされました。
事後強盗罪の目的に適する程度の暴行・脅迫といえるためには,事実上,通常の強盗罪以上の暴行・脅迫が要求されることが多いとも考えられるでしょう。
もちろん,事件ごとの細かな事情が判断を左右したり,弁護士による主張が功を奏したりして成立する犯罪が異なったりすることも多いですから,まずは見通しだけでも専門家の弁護士に聞いてみることをおすすめします。

~Aさんの場合~

では,今回のケースでAさんには事後強盗罪が成立するのでしょうか。
AさんはXの追跡を一度振り切っています。
そして,後からAさんはXに再度発見され,逮捕を免れるためにポケットナイフでXを脅しています。
事後強盗罪が成立するためには暴行・脅迫が窃盗の機会の継続中におこなわれる必要があります。
今回のAさんがXをポケットナイフで脅したことは窃盗の機会の継続中であったといえるのでしょうか。

この点については,事後強盗罪として起訴されてしまうのか,窃盗罪と暴力行為等処罰に関する法律違反(持凶器脅迫)の併合罪として起訴されるのかは検察官の判断によって変わります。
そのため,弁護士はAさんによるXへの脅迫が窃盗の機会の継続中ではなかったことなどを主張し,事後強盗罪とならないように主張していきます。

また,窃盗罪で前科がないような場合には,被害弁償など示談を成立させることによって不起訴となる可能性もあります。
事後強盗罪で起訴されてしまった場合には刑事裁判となりますが,今回のようなケースでは弁護士事後強盗罪とはならないことを主張していきます。
ただし,万引きなどの窃盗の際に暴行などを加えてしまった場合に窃盗罪と何らかの罪の併合罪となるか事後強盗罪となるかは事案によって異なります。
その為,法律の専門家である弁護士のアドバイスを聞くのがベストです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
万引きなどの窃盗罪をしてしまい,その際に暴行などを加えてしまった場合には早めに刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士にご相談下さい。
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東京都町田市で親族相盗例を相談

2019-04-05

東京都町田市で親族相盗例を相談

~ケース~
東京都町田市在住のAさんは親戚であるVさん宅に侵入し,駐車場に停めてあったVさんの自家用車の中から,Vさんが保管していたX株式会社所有の現金10万円を盗んだ。
Vさん宅に設置してあった防犯カメラによりAさんの犯行であることが判明しAさんは警視庁町田警察署窃盗罪の疑いで逮捕された。
AさんとVさんは6親等の血族という親戚関係で,Vさんは親戚であるという理由からAさんを告訴しなかった。
しかし,Aさんは窃盗罪の前科があったため,Aさんは窃盗罪で起訴されてしまった。
ここでAさんは、「親戚の間では窃盗罪にならない」と聞いたことがあったため、家族の依頼で訪れた弁護士にそのことを詳しく相談してみることにした。
(実際の判例を基にしたフィクションです)

~親族相盗例~

窃盗罪は刑法235条に「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
AさんがVさんの自家用車から現金10万円を盗んだ行為が窃盗罪に当たることは争いがないでしょう。
しかし刑法244条は以下のように規定しています

1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

これは,親族間の一定の犯罪については,国家が刑罰権の行使を差し控え,親族間の自律に委ねる方が望ましいという政策的な考慮に基づいて,犯人の処罰について特例を設けたもので,窃盗に関しては親族相盗例と呼ばれています。
今回のケースで,AさんとVさんは親族の関係ですのでAさんによる告訴がなければ2項より検察官は告訴を提起することはできません。
しかしAさんは窃盗罪として起訴されてしまっています。

これについて,最高裁判所は「窃盗犯人と財物の占有者との間のみならず,所有者との間にも親族関係が存在しなければ本条2項は適用されない」と判示しています(最決平6・7・19刑集四八・五・一九〇)。
すなわち,Aさんと占有者であるVさんの間では244条2項の適用がありますが,AさんとAさんの盗んだ現金10万円の所有者であるX株式会社の間では244条2項の適用はありません。
その為,X株式会社との関係ではAさんは告訴がなくても検察官によって公訴を提起されてしまう,つまりは起訴されてしまうことになります。

~弁護活動~

Aさんのような場合や,親族間の窃盗事件で告訴されてしまったような場合には,親族間の窃盗事件でも刑事裁判となる可能性はありますが,もちろん通常の窃盗事件でもあるように,初犯であったり態様が悪質でなかったりしたような場合には,起訴猶予ということで不起訴となることも考えられます。
ただし,検察官が事件を起訴するか起訴猶予とするかは犯行の態様や被害額,犯行後の情状などによって総合的に判断されます。
具体的には,前科の有無,加害者の反省,被害弁償の有無,被害者の方の処罰感情などが考慮されます。
親族間の場合でも,それまでの関係などから被害者の方に示談交渉に応じてもらえない場合もあります。
そのような場合でも弁護士が間に入ることで示談交渉に応じてもらえる可能性が高くなります。

今回のAさんのように起訴されてしまった後でも,被害弁償などをすることによって実刑判決を回避し,執行猶予付判決や罰金刑となる場合もあります。
前科の状況などによって最終的な処分の見通しなども変わってきますので,ご不安な方は刑事事件に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪のみならず刑事事件の弁護経験豊富な弁護士が多数所属しております。
親族間での窃盗のみならず窃盗をしてしまいお困りの方は0120-631-881までお気軽にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約を24時間受け付けております。
警視庁町田警察署までの初回接見費用:37,800円)

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