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少年のひったくり事件
少年のひったくり事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aくん(16歳)は、東京都町田市の路上で、仲間2名と共謀して、通行中の男性に対してひったくりを行いました。
後日、警視庁町田警察署の警察官がAくん宅を訪れ、ひったくり事件の犯人としてAくんを逮捕しました。
Aくんの両親は、すぐに対応してくれる少年事件に強い弁護士を探しています。
(フィクションです)
少年のひったくり事件
荷物を持った歩行者の背後から近づき、追い抜きざまに荷物を奪い取って逃走する行為が、一般的に「ひったくり」と呼ばれるものです。
犯人は、自転車や原動機付自転車などで被害者に近づき、荷物を奪い取ると瞬時にその場から逃げ去るため、被害者も犯人を捕まえることは容易ではありません。
また、ひったくりは単独で行われるよりも、数人が共謀して行われることが多くなっています。
少年によるひったくり事件についても、仲間と共謀して行い、共犯事件として扱われることが多くなっています。
ひったくり:窃盗か強盗か
通常、ひったくりは刑法上の「窃盗罪」に該当します。
窃盗罪は、他人の財物を、不法領得の意思をもって、窃取した場合に成立します。
窃盗罪に該当するひったくりの典型例は、被害者の隙をついて、荷物だけを取った場合です。
一方、強盗罪は、暴行または脅迫を用いて、他人の財物を強取した場合、あるいは、暴行または脅迫を用いて、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた場合に成立する罪です。
あるひったくり行為が窃盗にあたるのか、それとも強盗にあたるのかは、当該ひったくりの状況が、相手の反抗を抑圧するに足りる暴行に至っているか否かによります。
先に述べた窃盗となる例のように、被害者の隙をついて、被害者が持っていた荷物を追い抜きざまに奪う行為は、被害者と一定の接触はありますが、被害者の抵抗を抑圧する程度の暴行を加えたとは言えないため、窃盗にとどまります。
しかし、例えば、被害者が荷物を奪われまいと抵抗したために、犯人が荷物を奪うためにさらに当該に持つを引っ張りつづけるなどの暴行を加えた場合、犯人は荷物を奪うために追加の暴行を加えているため、被害者の反抗を抑圧する程度の暴行を加えたと評価される可能性があり、窃盗ではなく強盗が成立することがあります。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金である一方、強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役であり、後者のほうが重い罪となります。
成人の刑事事件では、窃盗罪として起訴され有罪となれば、罰金から懲役刑に及ぶ広い範囲の中から刑が選択されることになります。
どのような刑が科されるかは、被害額や犯行態様、常習性などによります。
少年の場合には、少年法に基づく手続きがとられるため、犯罪の軽重がそのまま処分に反映されるわけではありません。
しかし、単なる万引き事件と比べると、共犯の有無や非行の悪質性いかんによって、ひったくり事件についての処分も大きく異なります。
また、共犯がいる事件では、捜査段階から身体拘束を受ける可能性が高く、家庭裁判所に送致された後も、観護措置がとられる傾向にあります。
弁護士の活動
原則、すべての少年事件は家庭裁判所に送られます。
家庭裁判所に事件が送られると、家庭裁判所の調査官による調査を経て、審判に付されることになります。
単純な万引き事件の場合には、家庭裁判所に送致された後、審判を開始しない決定がなされることもありますが、ひったくり事件であれば、通常は、審判が行われ処分が言い渡されることになります。
審判で審理されるのは、非行事実と要保護性の2要素です。
要保護性というのは、簡単に言えば、少年の性格や環境等に照らして、将来再び非行に陥る危険性があり、保護処分によって再犯の防止ができることをいいます。
少年の場合、非行事実だけでなく、この要保護性についても審理され、処分が決められるため、重い犯罪に当たる行為をした場合でも、審判で要保護性が解消されたと判断されれば、保護観察といった処分となることもあります。
逆に言えば、比較的軽い犯罪に当たる行為をした場合であっても、要保護性が高いと判断されると、少年院送致などの処分が決定されることもあるのです。
そのため、非行事実に争いのない場合には、弁護士は要保護性の解消に向けた活動を行います。
要保護性の解消に向けた活動としては、最も重要な環境調整が挙げられます。
少年が再び非行に陥ることなく更生できるような環境を整える活動を「環境調整」といいます。
ひったくり事件においては、被害者への対応や交友関係の改善などがポイントとなるでしょう。
ひったくり事件のように被害者がいるような事件では、被害者への謝罪及び被害弁償をすることが重要です。
少年の場合では、成人の場合のように、被害が回復されたことをもって、最終的な処分結果に直接影響することにはなりませんが、被害者対応を通じて、少年が内省を深めることができれば、要保護性の解消につながるため、被害者対応は少年事件においても重要な活動と言えるでしょう。
ひったくり事件は、少年が仲間と共謀して行うことが多く、少年の交友関係が非行の一因であることが少なくありません。
そのため、弁護士は、少年との話し合いを通じて、交友関係を改善する手助けを行います。
また、交友関係だけでなく、家庭環境や学校・職場の環境が少年に与える影響も大きいため、少年の家族や所属する学校・職場とも協力して、少年を取り巻く環境の改善に努めます。
このような活動は、少年事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
窃盗事件を起こしお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件で自首
窃盗事件での自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都江戸川区の飲食店でアルバイトをしている大学生のAさん(21歳)は、勤務先の控室で、誰かのカバンが置きっぱなしになっていることに気が付きました。
魔が差したAさんは、そのカバンに入っていた財布から現金1万円を抜き取りました。
後日、Aさんが店にやって来たときに、アルバイトのVさんの財布から現金がなくなっていたということを店長から聞かされました。
Vさんは、店長に相談し、警視庁葛西警察署に窃盗事件の被害届を出しに行こうかと話しているということです。
Aさんは、自分のしてしまった事を猛省しており、Vさんにも被害弁償をしたいと思っていますが、今すぐ正直に名乗り出るべきか、警察署に自首するべきか、どうしたらいいのか分からず、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
窃盗事件を起こしたら
他人のものを勝手に自分のものにする行為は犯罪です。
これは誰もが分かっていることですね。
しかし、窃盗事件では、「よし!盗んでやるぞ!」と計画的に盗みを犯すケースばかりではなく、Aさんのように、つい魔が差して人の物を盗んでしまうケースも少なくありません。
前々から盗みを企んでいた場合であっても、とっさに盗みを働こうと思い立った場合でも、他人の財物を不法領得の意思に基づいて窃取したのであれば、窃盗罪が成立することになります。
それでは、窃盗事件を起こしてしまったら、一体どうすればよいのでしょう。
Aさんの場合を考えてみましょう。
(1)被害届が提出される前
被害者であるVさんは、今のところは警察に被害届を提出していないようです。
つまり、警察は未だ窃盗事件として捜査を開始していないということです。
警察が捜査に乗り出す前の段階で、窃盗事件を解決するのであれば、被害者との示談を成立させることが重要となります。
この場合、被害者であるVさんが警察に被害届を出す前に、Aさんが正直に自分が犯人であることを打ち明け、Vさんへの謝罪および被害弁償を行います。
Vさんへの謝罪と被害弁償を行い、それを受けて、VさんがAさんに対する処罰を望まず、被害届を提出しないことを約束してもらえれば、窃盗事件は当事者間で解決したことになり、刑事事件として警察などの捜査機関に捜査されることはないでしょう。
しかしながら、被害者との示談交渉を行う場合、当事者間で行うのはリスクが伴います。
当事者間で示談交渉を行う場合、感情的になって交渉が難航する、高額な被害弁償を要求される、謝罪と被害弁償はしたけど書面にはしていない、などといった可能性があります。
ですので、法律の専門家である弁護士を介して、冷静な態度で交渉を行い、当事者両方が納得する金額で、後々問題が発生するおそれがないような合意書を作成する必要があるでしょう。
(2)被害届が提出された後
警察がVさんの被害届を受理すると、窃盗事件の捜査が開始されます。
警察は、捜査から収集した様々な証拠から犯人を割り出すでしょう。
Aさんが特定されるのも時間の問題かもしれません。
Aさんのように罪を認め、反省し、被害者への被害弁償を考えている場合であれば、被害届が出された後の段階においては、「自首」をするのも一つの方法として挙げられます。
「自首」というのは、法律上、犯人が捜査機関に対し、自発的に自己の犯罪事実を申告して、訴追を求めることをいいます。
法律上の「自首」が成立するためには、次の要件を充たす必要があります。
①捜査機関への発覚前
自首が成立するためには、捜査機関、つまり、検察官または司法警察職員が、犯罪事実や犯人を認知・特定するまでの段階に行われなければなりません。
②自己の犯罪事実の申告
自分の犯罪事実についての申告でなければならず、申告した犯罪事実の一部に虚偽がある場合、例えば、単独犯であると虚偽申告をして共犯者を隠避した場合や、刑責を軽減するために、軽い罪の犯罪事実として虚偽の申告をした場合は、自首の成立が否定されます。
③自発性
犯罪事実の申告は、自発的でなければなりません。
捜査機関の取り調べに対する自白は、自発的とは言えず、自首にはあたりません。
④自己の訴追を含む処分を求める
自己の犯罪事実の申告には、自己の訴追を含む処分を求める趣旨が明示的・黙示的に含まれている必要があります。
申告内容が、犯罪事実の一部を隠すためのものである場合や、自己の責任を否定するようなものである場合には、自首は成立しません。
自首が成立した場合の効果は、刑の任意的減軽です。
犯行態様、社会的影響、前科の有無、犯行から自首までの経過年数、反省の有無などを考慮して、減軽するか否かが決められます。
また、自首することで、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがないと判断され、逮捕・勾留といった身体拘束を伴う強制処分を受けない可能性もあります。
自首をした場合、その後は、被疑者として捜査の対象となり、取り調べを受けることになります。
しかし、刑事事件の流れやどのように取り調べに対応すべきかといったことについての知識を十分に持っていらっしゃる方は、そう多くありませんので、自首する前に、刑事事件に強い弁護士に相談し、自首した場合どのような流れになるのか、取り調べではどのような受け答えをすべきか、どういった点に注意すべきかを事前に知っていると、安心して自首することができるのではないでしょうか。
自首を検討されている場合には、事前に弁護士に相談し、自首に関するアドバイスを受けるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
窃盗事件を含め刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件で間接正犯
間接正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
小学生のB(10歳)は、実の母親と母親の交際相手であるAと福岡県春日市で一緒に生活していました。
Aは、Bに対して直接暴力を振るうことはありませんでしたが、その粗暴な言動からBはAに対して日頃から恐怖心を抱いていました。
ある日、AとBとで出かけた際に、Bは、Aから、市内のコンビニでギフトカードをポケットに入れて取ってくるよう命じられました。
Bは、Aからの命令に背くことができず、嫌々ながら言われた通りにギフトカードを万引きしました。
後日、福岡県春日警察署の警察官が自宅にやってきて、コンビニでの万引きの件でBに話が聞きたいと言われ、Bは警察署に母親と一緒に行くことになりました。
Bは、「Aに言われたからやった。Aは怖い人だから断れなかった。」と言っており、警察はAについても話を聞くことにしました。
(フィクションです)
間接正犯とは
窃盗罪というのは、他人の財物を窃取するという犯罪です。
窃盗罪の基本的構成要件に該当する行為である「他人の財物を窃取する」という行為を自ら行う者を「正犯」と呼びます。
これに対して、複数人で共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
正犯には、単独正犯と共同正犯とがあり、前者には行為者みずから手を下す直接正犯と他の人間を利用して犯罪を実行する間接正犯とがあります。
ここでは、上の事例で問題となっている「間接正犯」について説明します。
「間接正犯」というのは、他人を道具として利用することによって、犯罪を実現する場合のことをいいます。
一般に、間接正犯が認められるのは、①事情を知らない者を利用する場合、②幼児や重度の精神病者など是非弁識能力のない者を利用する場合、③他人を強制して犯罪を行わせる場合、などです。
14歳未満の刑事未成年者を利用する場合について、判例は、画一的な判断をせず、背後者の強制の有無や程度、刑事未成年者の意思抑圧の有無や程度などを実質的に考慮して判断しています。
(a)間接正犯を成立させた事例
被告人は、12歳の養女に対し、日頃から被告人の言動に逆らう素振りを見せるたび、顔面にたばこの火を押し付けたり、ドライバーで顔をこすったりするなどの暴行を加えており、自己の意のままに従わせていました。
この養女に窃盗を命じてこれを行わせ事案について、最高裁は、被告人が自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている養女を利用して窃盗を行ったと認め、たとえ養女が是非善悪の判断能力を持っているとしても、被告人については窃盗の間接正犯が成立するとの判断を示しました。(最決昭58年9月21日)
窃盗を行った者が12歳であり刑事未成年者のため本人に対しては窃盗罪は成立しません。
刑事未成年者を利用する場合、一律で間接正犯を認めるのではなく、行為者の年齢を考慮し是非弁識能力の有無が検討されますが、当該能力が認められる場合であっても、背後者による強制があり、行為者の意思が抑圧されていると認められるのであれば、間接正犯が成立するものと判断されます。
(b)間接正犯の成立を否定した事例
被告人が生活費欲しさから強盗を計画し、12歳10か月の長男に指示命令して強盗を実行させた事案において、長男には当時是非分別能力があり、被告人の指示命令は長男の意思を抑圧するに足りる程度のものではなく、長男は自らの意思によってその実行を決意した上、臨機応変に対処して強盗を完遂し、長男が奪ってきた金品をすべて被告人が領得したなど判示の事実関係の下では、被告人につき強盗の間接正犯または教唆犯ではなく共同正犯が成立する、との判断を示したものがあります。(最決平13・10・25)
本件では、被利用者には是非弁識能力があること、意思の抑圧の程度が弱い、指示命令されたこと以外の行為も自分自身の意思で決して実行していることから、他人を道具として利用することによって犯罪を実現したものであるとは言えないとするものです。
以上を踏まえると、上の事例においても、例えBがある程度の是非善悪の判断能力を有していたとしても、Aには、A自身の言動に畏怖し意思を抑圧されている10歳の少年Bを利用して自分の犯罪行為をおこなったものとして、窃盗の間接正犯が成立すると認められる可能性があります。
このように、自分自身が直接犯罪行為を行っていない場合であっても、間接正犯として罪責を負う場合があります。
間接正犯は正犯として扱われます。
間接正犯が成立するか否かは、事案にもよりますので、一度刑事事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が窃盗事件に関与していると疑われてお困りであれば、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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まずは、お気軽にお電話ください。
侵入盗で執行猶予付き判決
侵入盗で執行猶予付き判決獲得を目指す場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、Bさんと共謀し、京都府向日市にある民家に侵入し、現金や宝石類などを盗みました。
後日、京都府向日町警察署がAさんとBさんを侵入盗事件の被疑者として逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Aさんが刑務所に入ってしまうのではないかと心配しています。
Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士に相談し、執行猶予付き判決獲得の可能性について聞いています。
(フィクションです)
侵入盗事件
住居や会社の事務所などに侵入して他人の財物を盗むといった窃盗の種類を「侵入盗」と呼びます。
万引きや置き引きも同じ「窃盗」という犯罪ですが、侵入盗の場合、窃盗に加えて、他人の住居や建造物に不正に侵入する「住居侵入」や「建造物侵入」という犯罪も成立する点で異なります。
他人の住居や建造物に不正に侵入していることから、被害者と接触するおそれがあると判断され、逮捕された後に勾留となる可能性は決して低くはありません。
また、侵入盗は、住居侵入を犯しているため、初犯であっても、態様が悪質であると判断され、多くの場合、公判請求される可能性は高いと言えます。
執行猶予とは
公判請求がなされると、公開の法廷で審理され、裁判官は被告人が有罪であるか無罪であるか、有罪であればどのような刑を科すかを決定します。
侵入盗の場合、住居侵入罪と窃盗罪の2つの罪が成立しますが、この2つの罪は牽連犯(犯罪の手段または結果である行為が他の罪名に触れること)の関係にあり、その最も重い刑により処断されることとなります。
つまり、住居侵入罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)と窃盗罪(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)とを比べると、窃盗罪の法定刑のほうが重いので、侵入盗の場合には、10年以下の懲役または50万円以下の罰金の範囲内で刑が決められます。
懲役刑が選択され、執行されれば刑務所に入ることになります。
しかし、その刑の執行が猶予されることがあります。
そのような制度を刑の「執行猶予」をいいます。
執行猶予は、判決で刑を言い渡すにあたり、一定の期間その刑の執行を猶予し、その猶予期間中罪を犯さず経過すれば、刑の言い渡しの効力を失わせる制度です。
執行猶予付きの判決であっても、有罪判決ですので、前科が付くことには変わりありません。
しかし、判決言い渡し後に刑務所に入るのと、社会に戻るとでは、その後の生活は大きく変わります。
そのため、正式裁判となり、かつ罪を認めている場合には、執行猶予を獲得することを目指します。
どのような事件でも執行猶予が付くとは限りません。
執行猶予を付けるには満たすべき要件があります。
刑の全部の執行を猶予することができるのは、
①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、または、
②前に禁固以上の刑に処せられた者であっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑の処せられたことがない者
が、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金の言い渡しがなされる場合です。
この場合、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間で刑の全部の執行を猶予することができます。
侵入盗事件で執行猶予付き判決獲得のために
裁判官は、どのような点に着目して、科すべき刑罰を決めているのでしょうか。
考慮される要素には様々なものがありますが、その大枠は犯情で占められます。
犯情というのは、犯罪行為それ自体に関わる事情のことです。
罪を犯したことは認める場合でも、犯行態様の悪質性、被害者に与えた結果の重大性、犯行動機、計画性の有無など、検察官の主張に誤りがないか、あるいはそのような主張を裏付ける証拠があるのかどうか慎重に検討する必要があります。
科すべき刑罰を決めるにあたっては、犯情に加えて、一般情状についても考慮されます。
一般情状は、被告人の生い立ち・性格・年齢、人間・職業・家族関係、被害者の状況、被害の回復状況、被害弁償の具合、被害感情、被告人の再犯可能性や更生可能性など、広範囲に及ぶ事情を含みます。
侵入盗事件のように被害者がいる事件では、被害者の被害の回復、具体的に言えば、被害弁償や示談がなされているかといった点が重視されます。
また、再び性犯罪を起こすことがないよう専門的な治療を受けていることも更生可能性の有無を判断する上でも考慮されるでしょう。
以上の要素について、被告人にできるだけ有利な形で主張し、認められれば、執行猶予となり実刑を回避することができるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
侵入盗でご家族が逮捕されてお困りの方は、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件で逮捕:被疑者の権利
窃盗事件で逮捕された場合、被疑者に保障される権利について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
兵庫県尼崎市の繁華街の路上で泥酔している男性に気が付いたAさんは、男性に、「大丈夫ですか?ここで寝たら風邪ひきますよ。」と声をかけましたが、男性は反応しませんでした。
Aさんと一緒にいたBさんは、「財布とか盗んでも気が付かないんじゃないか?」と言ってきたので、Aさんもお酒が入っており気が大きくなり、「それもそうだな。」と言って、男性の傍に置いてあったカバンから財布を抜き出してその場を立ち去ろうとしました。
ところが、偶然周囲をパトロールしていた兵庫県尼崎南警察署の警察官がAさんとBさんの行動を見ており、二人が立ち去ろうとした時に声をかけ、警察署まで連行しました。
Aさんは、お酒に酔っていたとは言え、軽率な行為だったと反省していますが、窃盗事件の被疑者となってしまった今、不安で仕方ありません。
(フィクションです)
窃盗事件で逮捕されたら
あなたが窃盗事件の犯人として逮捕されたとしましょう。
あなたは、「被疑者」として刑事手続の対象となります。
刑事手続は、罪を犯したとされる人が罪を犯したのかどうかを判断し、どのような刑罰を科すかと決めるプロセスについて定めたルールです。
捜査機関や裁判所といった国家機関が、一個人を相手にするのであり、時には個人の身体の自由を奪ったり、多大な不利益を生じさせることもあります。
しかし、我々は生まれながらにして持つ権利、基本的人権を持っており、それらは憲法でも保障されています。
そのため、刑事手続においても、対象者である一個人の基本的人権が保障されており、刑事手続は、犯人を特定し処罰するという目的を実現する一方で、対象者の人権に配慮した手続が要求されるものとなっています。
それでは、窃盗事件の犯人として逮捕された場合、被疑者としてどのような権利が保障されているのでしょうか。
今回は、①黙秘権、②弁護人依頼権、③接見交通権の3つについて説明します。
①黙秘権
被疑者の権利としてよく知られている「黙秘権」ですが、刑事訴訟法198条2項は、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と規定しています。
「自己に不利益な供述」をするよう強要されないだけでなく、「自己に不利益な供述」かどうかにかかわらず、一切の供述を強いられないことを保障するものです。
黙秘権を行使することで、犯罪事実の認定にあたっての資料とすることは許されません。
②弁護人依頼権
被疑者にとって重要な権利のひとつに、弁護人の援助を受ける権利(弁護人依頼権)があります。
被疑者・被告人は、法律の知識に詳しくないことが多く、また、身体拘束を受けている場合には自由な活動ができないため、捜査機関と対等な立場で防御活動を行うことが困難となります。
そのため、法律的能力を持つ弁護人に被疑者・被告人の補助をさせることは必要不可欠です。
被疑者・被告人はいつでも弁護人を選任することができます。
③接見交通権
逮捕・勾留により外の世界との接触が遮断された状態に置かれることは、精神状態を不安定にさせます。
取調官の誘導に乗ったり、自己に不利な供述をしてしまうおそれを高めることにもなりかねません。
そのような状況下では、被疑者を精神的に支えたり、法的なアドバイスをする者の存在は非常に重要です。
そのため、身体拘束を受けている被疑者・被告人には、その家族や弁護人らと面会したり、手紙などのやり取りをする権利が認められています。
これを「接見交通権」と呼びます。
ただし、共犯者との面会が行われるおそれがあると判断される場合には、接見交通権が制限されることがあります。
接見交通権が制限されるのは、被疑者の家族や知人などの一般人であり、弁護人との接見交通が制限されることはありません。
被疑者の弁護人との接見交通は、被疑者の基本的な権利だからです。
被疑者の権利を保障・擁護する弁護人
以上のような権利が法律上保障されているわけですが、被疑者の権利・利益を実際に擁護するために支援する者として弁護人の存在は非常に大きいと言えるでしょう。
特に、逮捕・勾留により身体の自由が制限されている被疑者にとっては、自己の主張を代弁してくれる者であり、法律知識を有する者による支援はなくてはなりません。
例えば、取り調べにおける適切な対応、身体拘束を解き釈放されるための活動や被害者との示談交渉などは、専門知識がなければ行うことは容易ではないでしょう。
被疑事実を争う場合であっても、認める場合であっても、できる限り早期に弁護人を選任し、自己の権利・利益を擁護し、適切に手続が行われるよう対応することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が窃盗事件で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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保釈で身柄解放
保釈について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、仲間2名と共謀し、建築現場に侵入し、資材や機材などを盗み、転売するという行為を行っていました。
Aさんは、大阪府羽曳野警察署に窃盗などの容疑で逮捕されました。
逮捕後、勾留となりましたが、仕事や家族のこともあり、保釈で釈放されないかとAさんは弁護士に相談しています。
(フィクションです)
起訴後の勾留
被疑者又は被告人を拘禁する裁判及び執行を「勾留」といいます。
この勾留には、起訴前の被疑者段階での勾留と、起訴後の被告人段階でのものとの2種類あります。
起訴前の勾留と起訴後の勾留とは、前者が、逮捕が先行すること、検察官の請求によること、保釈が認められないこと、勾留期間が原則10日、最大25日であり短いことなどの点で後者と異なります。
被疑者が起訴されると、被疑者は「被告人」という立場に変わり、被告人に対する起訴後の勾留の処分は、受訴裁判所が行いますが、第1回公判期日までは酵素の定期を受けた裁判所の裁判官で、事件の審理に関与しない裁判官が行います。
被告人の勾留は、公訴の提起があった日から2か月とされ、特に必要がある場合は1か月ごとに更新されます。
被疑者段階で検察官の請求によって勾留されていた場合、勾留期間中に同一の犯罪事実で起訴されたときには、起訴と同時に被疑者段階の勾留が自動的に起訴後の勾留に変わります。
そのため、捜査段階から逮捕・勾留されていた場合、引き続き長期の身体拘束を強いられることになります。
しかし、起訴後であれば、保釈により釈放される可能性もあります。
保釈について
保釈とは、一定額の保釈保証金の納付を条件として、被告人に対する勾留の執行を停止し、その身柄拘束を解く裁判及びその執行のことをいいます。
被疑者段階での勾留については、保釈は認められません。
保釈には、次の3種類があります。
①権利保釈
裁判所は、以下の場合を例外として、保釈の請求があったときは、原則として保釈を許さなければなりません。
(a)被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
(b)被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
(c)被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
(d)被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
(e)被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
(f)被告人の氏名又は住居が分からないとき。
②裁量保釈
裁判所は、上述した権利保釈の除外事由がある場合であっても、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができます。
③義務的保釈
裁判所は、勾留による拘禁が不当に長くなったときは、請求により又は職権で、保釈を許さなければなりません。
保釈されるまでの流れ
起訴後、いつでも保釈請求をすることができます。
保釈が請求されると、裁判所は、検察官に対して保釈の許否を決めるにあたって意見を聴きます。
裁判官は、検察官の意見を聴いたうえで、保釈の許否を決めます。
保釈が認められると、保釈保証金を納付します。
この保釈保証金を納付しなければ、例え保釈が許されたとしても、被告人が実際に釈放されることはありません。
保釈保証金の額については、犯罪の性質や情状、証拠の証明力、そして被告人の性格や資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な額として定められます。
相場は、150~200万円ですが、事件内容によってはそれ以上の額が求められます。
保釈保証金を裁判所に納付すると、被告人は釈放され通常の生活に戻ることになりますが、保釈期間中にきちんと守らなければならない事項もありますので、約束事を破ってしまわないよう注意しなければなりません。
保釈期間中きちんと約束事を守り、裁判が終わると、先に納めた保釈保証金は返還されます。
保釈保証金を被告人やその家族が準備することが困難な場合には、保釈支援協会を通じて保釈保証金の立替えを行うことも可能です。
被疑者段階での身柄解放が難しい事件であっても、起訴後の保釈が認められることはありますので、起訴後すぐに保釈で釈放されることをご希望の場合には、起訴前から弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗事件で勾留阻止
窃盗事件で勾留阻止に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府摂津市の路上を通行中の自転車の前かごに入れてあったカバンを、原付バイクで追い越し際に窃取するという事件が起きました。
防犯カメラの映像等から、県内に住むAさんが犯人として浮上しました。
大阪府摂津警察署は、Aさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、このまま身体拘束が続くことは避けたいと思い、勾留阻止に向けた活動をしてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
勾留とは
被疑者の身体拘束のための強制処分のひとつに、「勾留」という処分があります。
勾留は、逮捕後に引き続き身体拘束の必要がある場合に、被疑者の身柄を拘束する裁判及びその執行です。
刑罰の一種である「拘留」とは異なります。
勾留の要件について
誰でも彼でも勾留することはできません。
勾留は、裁判官が発行する令状(勾留状)に基づいてなされるのですが、裁判官が勾留状を発行するには、裁判官が勾留の要件を充たしていると判断する場合のみです。
勾留の要件は、①勾留の理由、及び②勾留の必要性、の2つです。
①勾留の理由
勾留の理由とは、(a)被疑者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」がある場合であり、かつ、(b)住所不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ、のいずれか少なくとも1つに該当することです。
②勾留の必要性
勾留の必要性とは、勾留の相当性ともいい、勾留の理由がある場合でも、事案の性質や被疑者の事情などを考慮した際に勾留する必要がないと考えられる場合には、勾留の必要性(相当性)を欠くとして裁判官は勾留請求を却下すべきだと理解されています。
勾留の必要性がないと考えられる場合とは、事案が軽微で起訴が相当であるとはいえない場合、健康上・経済的な問題など、勾留によって被疑者が被り得る不利益が大きい場合などがあります。
これらの要件を充たしていると考えられる場合には、裁判官は勾留の決定を下します。
勾留までの流れ
警察に逮捕されると、被疑者となった方は、警察署で取調べを受けます。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、若しくは証拠や関係書類と共に被疑者の身柄を検察庁に送致します。
検察庁に送致された場合、被疑者は検察官からの取調べを受けます。
検察官は、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放するか、若しくは当該被疑者についての勾留を請求します。
勾留請求をされると、被疑者は裁判所に移動し、今度は裁判官と面談します。
裁判官は、送られてきた証拠や被疑者との面談を踏まえて、勾留の要件を充たしているか否かを判断します。
勾留の要件を充たしていないと判断した場合には、裁判官は検察官の勾留請求を却下し、被疑者を釈放します。
他方、勾留の要件を充たしていると判断した場合、裁判官は検察官の勾留請求を認め、勾留の裁判を行います。
勾留が決まると、検察官が勾留請求をした日から原則10日間被疑者の身柄は拘束されます。
更に、検察官が終局処分の判断にもっと時間が必要であり被疑者の身柄を拘束すべきだと考える場合には、裁判官に対して勾留延長の請求を行い、裁判官が認める場合には、最長10日の勾留延長となります。
勾留阻止に向けた活動
勾留となれば、比較的長期の身体拘束を強いられることになります。
それにより被疑者やその家族が被り得る不利益は小さくありません。
場合によっては、退学や懲戒解雇となる可能性もあります。
そのような不利益を避けるためにも、早期に身柄解放活動に着手することが重要です。
弁護士は、勾留の要件に該当しないことを客観的な証拠に基づいて主張し、検察官に勾留請求をしないよう、裁判官に勾留請求を却下するよう働きかけます。
例えば、勾留の理由について、犯罪を立証する客観的証拠は既に捜査機関に押収されているため罪証隠滅のおそれがないことや、定職や養うべき家族がいるため逃亡のおそれがないことを主張します。
また、勾留の必要性については、勾留されることにより懲戒解雇や退学になる可能性があること、そして懲戒解雇・退学によって生じる不利益が大きいことを主張します。
上で述べたように、身柄事件の場合には、手続に時間制限が設けられています。
逮捕から勾留が決まるまでの時間は、長くとも3日です。
逮捕の連絡を受けてから、あっという間に勾留となってしまったというご家族の方も少なくありません。
勾留阻止を目指すのであれば、出来る限り早い段階から弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
窃盗と遺失物等横領
窃盗と遺失物等横領の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
千葉県富津市のX銀行に立ち寄ったAさんは、ATMで現金を下ろすため列に並んで待っていました。
Aさんは、目の前のATMが空いたため、そのATMで現金引き出しの操作を始めたところ、銀行の封筒が操作画面の横に置いてあるのに気が付きました。
現金を引き出した後、その封筒を手に取り、そのまま銀行を後にしました。
後日、千葉県富津警察署がAさん宅を訪れ、X銀行のATMで現金を持ち去った件で話が聞きたいと言われたため、Aさんは非常に驚きました。
幸い、Aさんは逮捕されることはありませんでしたが、警察から後数回取調べで出頭するようにと言われており、不安になったAさんは刑事事件に強い弁護士による法律相談を予約することにしました。
(フィクションです)
椅子や机に置き忘れられた他人の財布や携帯電話、ATMに置きっぱなしになっている現金入りの封筒など、誰かの忘れ物を勝手に自分のものにしてしまう行為は、犯罪に当たる可能性があります。
この場合に成立し得る犯罪とは、窃盗罪もしくは遺失物等横領罪です。
1.窃盗罪
窃盗罪とは、他人の財物を窃取した場合に成立する罪です。
◇犯行の対象◇
窃盗罪の犯行の対象(客体)は、他人の財物、つまり、他人の占有する財物です。
財物には、有体物でなくても、電気のような物理的に管理可能なものも含まれます。
窃盗罪における占有とは、人が物を実力的に支配する関係のことを意味し、物を握持することが典型的な例ですが、物に対する「事実上の支配」があれば、窃盗罪における占有が認められます。
「事実上の支配」とは、物を客観的に支配している場合だけでなく、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態をも含みます。
「物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態」については、支配の事実や占有の意思の観点からその有無が判断されます。
◇行為◇
窃盗罪の行為は、窃取であり、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことです。
◇結果◇
窃取の結果、当該財物の他人の占有を排除して、自己または第三者の占有に移したことが必要となります。
◇不法領得の意思◇
条文にはありませんが、判例上認められた要件に「不法領得の意思」があります。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従って利用・処分する意思のことであり、「権利者を排除する意思」および「他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思」2つの要件を満たすことが必要です。
◇故意◇
窃盗罪の故意は、他人の財物を窃取することの認識・認容をいいます。
つまり、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己または第三者の占有に移すことについての認識・認容です。
これは、不法領得の意思とは別の要件です。
2.遺失物等横領罪
遺失物等横領罪とは、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した場合に成立する罪です。
◇犯行の対象◇
遺失物等横領罪の犯行の対象は、遺失物・漂流物などの他人の占有を離れた他人の財物です。
遺失物とは、占有者の意思に基づかずに占有を離れ、いまだ誰の占有にも属していないものをいいます。
漂流物とは、占有者の意思に基づかずに占有を離れ、いまだ誰の占有にも属しないもので、水面・水中に存在するものをいいます。
◇行為◇
遺失物等横領罪の行為は、横領です。
横領とは、不法領得の意思をもって、占有を離れた他人のものを自己の事実上の支配内におくことをいいます。
◇結果◇
遺失物等横領罪の結果は、窃盗と同じく、占有の取得です。
◇不法領得の意思◇
遺失物等横領罪についても、不法領得の意思があることが求められます。
◇故意◇
遺失物等横領罪の故意は、占有を離れた他人の物を横領することの認識・認容です。
窃盗と遺失物等横領罪の違い
窃盗と遺失物等横領を区別するポイントは、客体が「他人の占有する財物」であるか、それとも「他人の占有を離れた他人の財物」であるか、です。
例えば、事例に関して言えば、AさんがATMに置いてあった封筒に入った現金を持ち去ったときに、その現金が「他人の占有する財物」と言えるのか、もしくは「他人の占有を離れた他人の財物」と言えるのかどうかが問題となります。
先述しましたが、他人の「占有」には、物に対する「事実上の支配」も含まれます。
「事実上の支配」には、持ち主が物を客観的に支配している状態だけではなく、持ち主が物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含まれます。
持ち主が物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態に該当するか否かは、持ち主の物に対する「支配の事実」や「占有の意思」の観点から判断されます。
支配の事実については、持ち主が財物を置き忘れてから気が付くまでの時間的・場所的接近性といった要素が考慮されます。
また、占有の意思に関しては、持ち主が物を占有していた場所についてどの程度認識していたかといったことが検討されます。
置き忘れた現金の持ち主が、すぐに気が付き、銀行に戻ってきた場合などは、現金に対して持ち主の占有が認められるでしょう。
しかしながら、銀行内のATMの場合、ATMは当該銀行の管理下にあるため、置き忘れた現金についても銀行の占有が及ぶものと考えられます。
そのため、ATMに置き忘れられた現金は、銀行の占有する財物となり、この場合も窃盗が成立するものと考えられます。
状況により窃盗が成立する場合や、遺失物等横領罪が成立する場合とがありますので、一度刑事事件に詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。
Aさんのように、身体拘束されずに捜査が進められる場合には、捜査段階では国選弁護人を付けることはできません。
逮捕されていないからといって事を甘く見ていると、いつの間にか起訴されてしまった!なんてことも十分にあり得ます。
逮捕されていない場合でも、早期に被害者との示談を成立させたり、取調べにしっかりと対応することは、最終的な処分にも大きく影響するため重要です。
窃盗事件で被疑者として取調べを受けてお困り方は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に一度ご相談ください。
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窃盗の在宅事件
窃盗の在宅事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
埼玉県北本市にあるパチンコ店に来ていたAさんは、店内に財布が落ちていることに気付き、その財布を手に取り店を出ました。
Aさんが財布の中身を確認したところ、現金5万円が入っており、Aさんは現金5万円を抜き取った上で、財布を帰宅途中に捨てました。
数日後、埼玉県鴻巣警察署から連絡があり、「パチンコ店で財布を拾われましたよね。その件で話が聞きたいので、一度署まで来てください。」と言われ、Aさんは警察署に出頭することになりました。
しかし、逮捕されるのではないかと徐々に不安になってきたAさんは、出頭前に刑事事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
在宅事件
被害者からの被害届の提出、警察官による職務質問、犯人の自首などをきっかけにして、警察をはじめとする捜査機関が、犯罪があると考えるときに、捜査を開始します。
捜査機関は、犯人と思われる者(以下、「被疑者」といいます。)を特定・発見して、必要な場合には当該被疑者の身柄を確保します。
被疑者の身柄を確保する必要がない場合には、捜査機関は、被疑者の身柄を拘束しないまま捜査を進めます。
被疑者の身柄を拘束しないまま捜査が進められる事件を「在宅事件」と呼びます。
以下、どのような場合に在宅事件となり得るのかについてみていきましょう。
1.逮捕されないケース
被疑者を特定・発見したものの、逮捕することなく在宅事件として捜査が進められることがあります。
「逮捕」とは、被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける強制処分をいいます。
強制処分であるため、なんでもかんでも逮捕できるわけではありません。
逮捕には、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3種類があります。
ここでは、通常逮捕の要件について説明します。
◇逮捕の要件◇
通常逮捕は、裁判官があらかじめ発付した逮捕令状に基づいて行われます。
通常逮捕の要件は、①逮捕の理由、および②逮捕の必要性です。
①逮捕の理由
逮捕の理由とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」のことです。
②逮捕の必要性
被疑者の年齢・境遇、犯罪の軽重・態様などを考慮した上で、被疑者が逃亡するおそれがある、罪証隠滅をするおそれがあると認められる場合には、逮捕の必要性があると判断されます。
これらの要件を満たさないときには、逮捕されないことになります。
少額の万引きや自転車盗などといった軽微な窃盗事件では、逮捕されないことが多いでしょう。
2.逮捕後釈放されるケース
逮捕されてしまったが、勾留されずに釈放されることがあります。
「勾留」とは、逮捕後なお引き続き比較的長期間の身体拘束の必要があるときに、被疑者の身柄を拘束する裁判およびその執行のことをいいます。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者を釈放するか、それとも証拠や関係書類と一緒に検察に送致するかを決めます。
検察に送致した場合、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、検察は被疑者を釈放するか、あるいは裁判官に対して勾留請求を行います。
検察が勾留請求をした場合、裁判官は当該被疑者を勾留するか否かを判断し、勾留の決定がなされれば検察が勾留請求した日から原則10日間(延長が認められれば最大で20日間)の身体拘束を受けることになります。
一方、裁判官が検察の勾留請求を却下した場合には、被疑者は釈放されることとなります。
勾留については、勾留の要件を満たしているか否かを検討した上で判断されます。
◇勾留の要件◇
被疑者を勾留するためには、①勾留の理由、および②勾留の必要性がなければなりません。
①勾留の理由
勾留の理由は、被疑者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があり、かつ、住所不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれの少なくとも1つに該当することです。
②勾留の必要性
勾留の理由がある場合であっても、被疑者を勾留することにより得られる利益と、これによる被る被疑者の不利益を比較衡量した結果、被疑者を勾留することが必要であることが、勾留の必要性と呼ばれる要件です。
以上の要件を満たさない場合には、勾留に付されることなく釈放されることとなります。
現行犯逮捕された万引き事件、置き引きやスリなどは、この段階で釈放される可能性はあります。
他方、侵入盗や万引きであっても常習性が疑われる場合などは勾留に付される可能性は高いでしょう。
釈放され在宅事件で捜査を進めるためには、早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に取り掛かるのがよいでしょう。
また、釈放された場合でも、在宅事件として捜査が進められるのであって事件が終了したわけではありませんので、被害者への被害弁償や再犯防止措置を講ずるなど不起訴処分に向けた取組みは重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとした刑事事件を専門とする法律事務所です。
窃盗事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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情報屋への情報提供で窃盗罪
情報屋への情報提供を行うことで窃盗罪に問われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
神奈川県逗子警察署は、神奈川県逗子市にある民家に侵入し、現金や貴金属類などを盗み取ったとして、住居侵入および窃盗の疑いで、3人の男を逮捕しました。
3人の供述から、犯行前に情報屋であるXから、多額の現金が置いてある家の情報の提供を受けたことが分かり、逗子警察署はXも逮捕しました。
Xは、容疑を認めており、今回の事件についての情報はYから提供された旨を述べており、逗子警察署は、Yについて窃盗の容疑で逮捕しました。
(フィクションです)
他人の物を勝手にとる行為は「窃盗」という犯罪です。
実際に、他人の物を窃取した人だけが「窃盗」の罪に問われるというわけではありません。
何らかの形で協力して犯罪を成し遂げた場合には、実際に窃盗行為を行ってはいない協力者が「共犯」として「窃盗」の罪責を負う可能性があります。
「共犯」というのは、複数人が協力して犯罪を実現する場合のことをいいます。
刑法は、この「共犯」を「共同正犯」、「教唆犯」、「幇助犯」の3つに分類して規定しています。
共同正犯
2人以上の者が共同して犯罪を実行した場合を「共同正犯」と呼び、この場合、共同して犯罪を実行した者(共同正犯者)も、自ら犯罪を行う「正犯」として扱われます。
「共同正犯」が成立するためには、2人以上の者の間に、①共同実行の意思、及び②共同実行の事実が存在していることが必要となります。
①共同実行の意思
「共同実行の意思」というのは、各行為者が相互に他人の行為を利用し補充し合って構成要件を実現する意思のことをいいます。
この意思は、行為者相互間に存在していなければなりません。
②共同実行の事実
「共同実行の事実」とは、2人以上の行為者が共同してある犯罪を実行することをいいます。
ここでいう「共同して」とは、共同者全員が他人の行為を利用し補充し合って犯罪を実行することを意味します。
この点、各人がそれぞれ基本的構成要件に該当する行為を実現することが求められるのか、あるいは、2人以上の者が一定の犯罪について共謀し、そのうちのある者が実行に出た場合、直接実行行為を行わなかった共謀者も共同正犯となるのかが問題となります。
これについて、「共謀共同正犯」という考え方があります。
「共謀共同正犯」というのは、2人以上の者がある犯罪の実行を共謀し、共謀者のうちある者が共謀にかかる犯罪を実行した場合に、共謀に参加したすべての物について共同正犯としての罪責が認められる共犯形態のことです。
判例上、共謀共同正犯の成立要件は、①共謀の存在、②共謀に基づいて、共謀者の全部又は一部の者が実行行為を行ったこと、③共謀者が正犯意思を有すること、です。
①共謀
「共謀」とは、謀議行為自体ではなく、共謀者の「実行行為時における犯罪の共同遂行の意思」です。
共謀形成の過程は、数人が順番に連絡し合う形であってもよいと解されます。
また、共謀は明示的に行われる必要はなく、暗黙で行われても足りるとされます。
②共謀に基づいて
共謀共同正犯が成立するためには、全部又は一部の者による実行が「共謀に基づく」ものでなければなりません。
③正犯意思
共謀共同正犯は、正犯として扱われるため、共謀者はそれぞれ正犯意思が必要であるとされます。
ここでいう正犯意思とは、他人の犯行の認識をいうのではなく、共同犯行の認識のことです。
正犯意思の認定をする際には、①共謀者と実行行為者との関係、②犯行の動機、③共謀者と実行行為者間との意思疎通行為の経過・態様・積極性、④実行行為以外の行為に加担している場合は、その内容、⑤犯行前後の行為(分け前分与や実行行為者からの事後報告など)、⑥犯罪の性質・内容などが考慮されます。
さて、Yについて考えてみたとき、共同正犯に当たるのでしょうか。
Yは、ターゲットとなる被害者の情報を情報屋であるXに提供しており、実際に被害者の家に侵入し窃盗を行ったのは他の3人ですので、Yさんは窃盗(及び住居侵入)を直接実行していません。
そうであれば、Yについて共謀共同正犯については成立するのでしょうか。
その点を検討する際には、上述の成立要件の有無を検討することになります。
Yは、Xらとの間に犯罪の共同遂行の意思があったのか否か、Yは正犯意思を有していたか否か、が問題となりますが、YはXらの仲間であり、Yに担う役割は犯罪実現のためには欠かせない、しっかり盗品の分け前をもらった(又はもらう約束をしていた)という場合であれば、Yについて共謀共同正犯が成立する可能性があると考えられるでしょう。
共謀共同正犯が成立する場合には、正犯として処罰されることになります。
共謀共同正犯が成立を争う場合には、刑事事件に強い弁護士に相談し弁護を依頼されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
ご自身またはご家族が刑事事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
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