Archive for the ‘未分類’ Category
窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪①
窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪①
京都市伏見区に住むAさんは、パチンコ等のギャンブルにお金を使っては消費者金融に借金をすることを繰り返し、借金額を合計200万円くらいまで膨らませてしまいました。
そこで、何とかこの事態を打開したいと考え、Aさんは日頃から目を付けていたVさん(85歳)方に盗みに入ることに決めました。
Aさんは、ホームセンターで侵入のための工具(マイナスドライバー、軍手等)を購入し、Vさんが不在のときを見計らってVさん方に入ろうと思い、Vさん方付近に張り込んでVさんの行動を確認していました。
そして、Aさんは、Vさんが自宅を出たと確認した後、購入した侵入工具を使うなどしてVさん方に入り、タンスの引出しを開けるなどの物色を始めました。
ところが、Aさんは、数十分経っても金目の物を見つけることができませんでした(後日、Vさんは用心のため、自宅にはお金の物を置いていなかったことが判明)。
そこで、AさんはVさん方を出ようとしたところ、ちょうどVさんを訪ねてきたVさんの息子であるWさん(60歳)と鉢合わせになりました。
Aさんは、Wさんから声をかけられ捕まられそうになったため、Wさんの顔を持ってきていたバールで1回殴打してその場から逃走しました。
しかし、Aさんは、京都府伏見警察署に住居侵入罪、事後強盗未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~窃盗罪の成立過程~
本件のAさんは住居侵入罪と事後強盗未遂罪で逮捕されていますが、本件で成立しうる犯罪としては窃盗未遂罪ではないかと思った方もいるのではないでしょうか?
そこで、この機会に窃盗未遂罪が成立する過程を細かくみていきたいと思います。
まず、本件は、大きく、
1 AさんがVさん方に盗みに入ることを決意
2 Aさんが侵入工具を購入し、Vさんの行動を確認
3 AさんがVさん方へ入り、タンスの引き出し等を物色(結果、何も窃取することはできず)
の3段階に分けられると思います。
まず、1の段階の決意だけでは犯罪となりません。
「何人も思想によりて処罰されることなし」の法諺が当てはまります。
法は行為又は結果として客観化されない「人の内面」にまで踏み込むことはできないのです。
2の段階、つまり、一定の犯罪を実行するための準備行為を「予備」といいます。
「予備」とは、犯罪行為の実行に着手する前の段階をいいますから、あらゆる犯罪について予備罪を設けてしまうと、人々の日常生活の行動を著しく制限してしまうことになりかねません。
そこで、重大な結果を引き起こす蓋然性が高い重大犯罪(殺人罪、放火罪、強盗罪等)に限って予備罪が設けられています。
3の段階、つまり、実行の着手に至ったが、何らかの事情によって結果が発生しなかった場合を「未遂」といいます。
上の「予備」との決定的な違いは「実行の着手」があったか否かです。
「実行の着手」とは、法益侵害に対する現実的危険性を有する行為、と言われていますが、何をもって「実行の着手」とするのかは事案によって個別に判断されます。
未遂罪も各罪に規定がなければ処罰されることはありません。
刑法43条前段
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
刑法44条
未遂を罰する場合は、各本条で定める。
~窃盗未遂罪~
ところで、窃盗罪については、未遂罪の処罰規定が設けられています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法243条
第235条から(略)までの罪の未遂は、罰する。
窃盗罪の「実行の着手時期」が問題となることがあります。
この点、判例(大昭9年10月19日等)は、他人の財物に対する事実上の支配を侵すにつき密接なる行為をなしたときとしていますが、密接なる行為か否かは、財物の性質・形状、窃盗行為の態様などを総合的に勘案して判断されるものと思われます。
本件のように他人の自宅に侵入して金品を窃取するいわゆる「侵入盗」の場合は、一般に、物色行為をはじめることをもって「実行の着手」ありとされています。
しかし、何をもって物色行為とするかについても、現場の状況、窃盗行為の態様等により結論が異なります。
なお、本件の場合はタンスの引き出しに手をかけた時点で物色行為あり、すなわち窃盗罪の「実行の着手」ありとされるでしょう。
こうしてAさんにはまず、窃盗未遂罪が成立する可能性が高いでしょう。
では、なぜ今回、Aさんは事後強盗未遂罪の疑いがかけられているのか、という点については次回解説したいと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
窃盗事件などの刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。
無人のゲームセンターで窃盗事件
無人のゲームセンターで窃盗事件
~ケース~
神戸市須磨区在住の大学生のAさん(20歳)は最寄りの無人のゲームセンターV店に通っていた。
ある日,Aさんはインターネットでゲームセンターに設置されている筐体の一部などが高額で取引されているのを発見した。
そこで,AさんはV店が無人であることに目を付け,友人ら数人とともに店舗内から大型筐体を分解し持ち出した。
その後,Aさんはインターネットオークションにて筐体を部品ごとに販売した。
V店は,筐体がなくなったことに気が付き,兵庫県須磨警察署に相談し,兵庫県須磨警察署は捜査を開始した。
そして後日,Aさんらは店内に設置されていた防犯カメラの映像を基に窃盗罪の疑いで兵庫県須磨警察署に逮捕された。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)
~無人のゲームセンターで窃盗…何罪?~
今回のケースでは,筐体を盗んだAさんらにまず窃盗罪が成立することに疑いはないでしょう。
窃盗罪は刑法235条に定められており,罰則は10年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。
加えて,今回は筐体を盗むためにゲームセンターV店に立ち入っています。
今回のケースのように,最初から何らかの犯罪を行う目的で店舗などに立ち入った場合には,建造物侵入罪が成立する可能性が高いです。
その建造物の管理者の意思に反して建造物に入ることで建造物侵入罪が成立すると考えられており,窃盗目的の者を入れることはゲームセンターの管理者の意思に反すると考えられるためです。
建造物侵入罪は刑法130条に定められており,罰則は3年以下の懲役または10万円以下の罰金となっています。
刑事事件を起こしてしまった場合,一つの罪ではなくいくつかの罪を犯してしまうことは珍しくありません。
今回のような,どこかの店舗や家に侵入して物を盗むといった窃盗事件では,Aさんらのように窃盗罪だけでなく建造物侵入罪も成立するケースが多く見られます。
このような,複数の犯罪をした場合に,ある犯罪をするための手段として他の犯罪が行われている場合,これを牽連犯と呼び,刑法では最も重い刑で処断すると定められています(刑法54条)。
今回の例でいえば,窃盗罪(ゲームセンターから筐体を盗む)を犯すための手段として建造物侵入罪(窃盗目的でゲームセンターに侵入する)を犯しているため,牽連犯として処断されます。
牽連犯ではその最も重い刑により処断されますから,窃盗罪と建造物侵入罪のうち,より重い窃盗罪の10年以下の懲役または50万円以下の罰金で処断されることになるでしょう。
なお,牽連犯の他の例としては,偽造文書によって詐欺をはたらいた場合,詐欺罪(刑法246条)と偽造文書行使罪(刑法159条)が牽連犯となる例が挙げられます。
~窃盗事件を起こしてしまったら~
窃盗罪の罰則は上述の通り,10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
ただし,2件以上の窃盗事件を起こしていた場合,それらの併合罪となりますので計算上15年以下の懲役となるか,50万円×件数の罰金となります。
1件のみの窃盗事件の場合,前科がなければ起訴されたとしても罰金刑となる可能性が高いですが,複数件起こしている場合には初犯であっても罰金とならずに執行猶予付きの懲役刑であったり,執行猶予の付かない実刑判決が下される可能性もあります。
窃盗罪の場合,初犯で被害弁償をしている場合には検察官は起訴猶予の不起訴とする場合が多くあります。
逆に,被害弁償や示談ができていない場合には,示談等ができている場合に比べて起訴されてしまう可能性が上がってしまうことになります。
今回のケースで,Aさんらはゲームセンターの筐体を盗み出しているのであり,筐体の種類にもよりますが被害額は比較的高額であると考えられます。
したがってAさんが不起訴処分を目指すのであれば,V店と示談を成立させることが必要不可欠といえるでしょう。
被害者が店舗の場合,個人でも弁償を申し出ることで示談に応じて頂ける場合も稀にあります。
しかし,加害者本人からの被害弁償などの申入れは拒絶されることも多いため,まずは専門家である弁護士に相談・依頼するのがベストでしょう。
弁護士が入ることで示談交渉をしてくれるという被害者や被害店舗の方も多くいらっしゃいます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗事件を起こしてしまった場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談・警察署等での初回接見サービスのご予約を24時間受け付けています。
ひったくりは窃盗罪?強盗罪?
ひったくりは窃盗罪?強盗罪?
大阪府池田市に住むAさんは、窃盗の意思で夜間人通りのない場所を通行中の女性Vさんに原付バイクで背後から接近し、そのハンドバッグをひったくろうとしましたが、Vさんが奪われまいとして離さなかったため、バッグの下げひもをつかんだまま原付バイクを進行させ、Vさんをバッグもろとも引きずって転倒させるなどしました。
Aさんは路上にバックが落ちていたことからこれを拾って現場から逃走しました。
このひったくりによってVさんは加療2か月間を要する大けがを負いました。
ところが、その後、AさんはVさんから被害届を受けた大阪府池田警察署によって強盗致傷罪で逮捕されてしまいました。
Aさんとしては「ひったくり=窃盗罪」と考えていたことから、強盗致傷罪で逮捕されたことに驚きを隠せないでいます。
(フィクションです。)
~ひったくりは窃盗罪?強盗罪?~
ひったくりは、物を持ち歩いている歩行者や、前カゴに荷物を入れている自転車に近づき、すれ違ったり追い抜いたりする瞬間にその物を奪って(ひったくって)逃げる行為をいいます。
「万引き」「すり」「置引き」などと同様、窃盗の手段、態様を表す言葉です。
ひったくりは主に窃盗罪(刑法235条)あるいは強盗罪(刑法236条)に当たる可能性があります。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
窃盗罪は、他人の占有する財物(本件の場合Vさんのバック)を、不法領得の意思(権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法にしたがってこれを利用し処分する意思)をもって、窃取した場合に成立します。
「窃取」とは、暴行・脅迫によることなく、占有者(Vさん)の意思に反してその占有を排除し、目的物(バック)を自己(Aさん)又は第三者の占有に移すことをいうとされています。
したがって、まず、ひったくり行為は窃盗罪に当たる可能性が高いといえます。
~強盗罪とは?窃盗罪との区別は?~
強盗罪は、暴行・脅迫を財物奪取の直接的な手段として用いて他人の財物を強取した場合に成立する罪です。
強盗罪における「暴行」とは「反抗を抑圧するに足りる程度の暴行」、つまり、単なる不法な有形力の行使ではなく、それを超える程度の強度な暴行であることが必要とされています。
そして、財物奪取の手段として「この暴行・脅迫を用いるか否か」が窃盗罪とを区別するポイントとなります。
しかしながら、ひったくりの場合、それが強盗罪における暴行が否か簡単に見極めることが難しい場合もあります。
一番単純な例としては、被害者の何らの抵抗も受けることなくバックをひったくったという場合です。
この場合は、強盗罪の暴行・脅迫がありませんから窃盗罪が成立することは明らかです。
次に、バックをひったくろうとバックに手をかけたところ、被害者がこれを掴んで離さなかったため、バックを無理矢理引っ張って奪いとったという場合はどうでしょうか?
この場合、バックを無理矢理引っ張るという行為は強盗罪の暴行というよりかは窃盗手段の一態様と考えられますから、やはり窃盗罪が成立するものと思われます。
要は、強盗罪の暴行か否かは「被害者の生命・身体に及ぼす危険性が高いものかどうか」が一番重要なポイントとなりそうです。
事例では、原付バイクからVさんを引きずって転倒させるなどして、被害者の身体・生命に重大な危険をもたらす可能性がある暴行が執拗に行われています。
このような場合は強盗罪が成立する可能性が高いでしょう。
~強盗致死傷罪の可能性も?~
強盗によって被害者に怪我をさせたり、被害者を死亡させた場合は強盗致死傷罪が成立する可能性があります。
怪我をさせた場合の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」、死亡させた場合は「死刑又は無期懲役」です。
被害者によほどの落ち度がない限り適用される可能性が高いですから注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。
嫌がらせ目的で同僚の手帳を隠匿し取調べ
嫌がらせ目的で同僚の手帳を隠匿し取調べ
大阪府池田市にある会社に勤める会社員のAさんは、かねてから同僚のVさんとの折り合いが悪く、何らかの嫌がらせをしてやろうと企図していました。
ある日、Vさんのデスクの上に、Vさんのスケジュールが記載された手帳を見つけたので、これを紛失したら困るだろうと思い、Aさんは自分のデスクにVさんの手帳を隠匿することにしました。
Vさんはすぐに手帳がなくなったことに気付き慌てましたが、上司に相談し、防犯カメラを確認したところ、上記のAさんの行為が写っていました。
Vさんが大阪府池田警察署に被害届を出したところ、Aさんは警察に呼び出され、出頭することになりました。
(フィクションです)
~手帳を嫌がらせで隠匿…何罪?~
今回のAさんは嫌がらせ目的でVさんの手帳を隠しています。
一見、Vさんの手帳を机上より持ち出していることから「窃盗罪」が成立するのではないか、と思われますが、ケースの事件について窃盗罪が成立する可能性はかなり低いと思われます。
それはなぜなのか、以下で検討していきます。
(不法領得の意思)
判例・通説によると、窃盗罪が成立するためには、①他人の占有する財物を窃取した事実、②①についての故意に加えて、③「不法領得の意思」が存在していたことが必要です。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいいます。
(他人の財物を「隠匿」する場合)
Aさんは嫌がらせでVの手帳を持ち出したのですから、不法領得の意思の「利用・処分意思」が欠けるように思われます。
「利用・処分意思」がないことを理由として窃盗罪の成立が否定された裁判例として、以下のような事例があります。
・教員が、校長に恨みを持って同人に責任を負わせるために、教育勅語謄本等を教室の天井裏に隠した場合(大審院大正4年5月21日判決)
・政府所有米の米俵の数が足りないつじつまを合わせるために、倉庫にある他の米俵から少しずつ米を抜き取って新たに米俵を作り、同倉庫に積んでおいた場合(最高裁昭和28年4月7日判決)
以上の裁判例に照らすと、AさんがVの手帳を隠匿した行為はVさんへの嫌がらせであって、Vさんのスケジュールを密かに知るなどの他の動機・目的があったわけではない以上、「利用・処分意思」が欠けると評価される可能性が高いでしょう。
~窃盗罪以外に成立しうる犯罪はあるか?~
今回のAさんのケースにおいて、窃盗罪以外の他の犯罪類型で成立する可能性が否定できないものとして、「器物損壊罪」、「私文書毀棄罪」があります。
(器物損壊罪)
器物損壊罪は、他人の物を損壊し、又は傷害する犯罪です。
「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為をいいます。
AさんがVさんの手帳を自身のデスクに隠匿することにより、スケジュールの備忘録としての効用を失わせたと判断された場合、器物損壊罪の成立が認められる可能性があります。
器物損壊罪につき、有罪が確定すると、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられます。
もっとも、器物損壊罪は被害者による告訴がなければ起訴することができないので、告訴がなされない場合、事件は必ず不起訴処分という形で終了します。
このような「親告罪」の弁護活動においては、被害者に告訴状を出さないよう交渉することが極めて重要です。
(私用文書等毀棄罪)
権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄する犯罪であり、法定刑は5年以下の懲役となっております。
スケジュールが記載されているにすぎない手帳は「権利又は義務に関する他人の文書」に該当しないと思われますが、Vさんの手帳の中に、取引先の領収書などが入っていて、Aさんがこれを認識し、あえて隠匿したような場合には、私用文書等毀棄罪の成否が検討されることになるでしょう。
なお、本罪も「親告罪」なので、告訴されなければ、起訴されることはありません。
~取調べに先立ち、弁護士と相談~
Aさんの供述は、「不法領得の意思」の認定に関して重要な証拠となります。
もし、「Vさんよりも有利に仕事をするためにVさんのスケジュールを確認する必要があった」などと供述すると、「不法領得の意思」が認められ、器物損壊罪、私用文書等毀棄罪よりも重い窃盗事件の被疑者として扱われる可能性が高まります。
どのように供述すれば、Aさんにとって不利にならずにすむか、という点について、弁護士のアドバイスを受けましょう。
ケースのような事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
置引きと窃盗罪
置引きと窃盗罪
大学生のAさん(20歳)は、埼玉県川口市に設置してあるATM機でお金を引き出そうとしたところ、ATM機横に財布が置かれてあるのを見つけました。
Aさんはそれを手に取って中身を見ると、財布の中には1万円札1枚が入っているのを確認しました。
Aさんは、普段お金に足りないことに不満を抱いていたことから、「自分のものにしてしまえ」と思って財布の中から1万円札を抜き取りました。
その後、ATM機の上に財布を置き忘れたことに気づいたVさんが、その約5分後ATM機の元へ戻ってきました。
Vさんは、財布は無事手に戻すことができたものの、1万円札を抜き取られたことに気づいたことから警察に通報、被害届を提出しました。そうしたところ、Aさんは窃盗罪で埼玉県川口警察署に逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~置引き~
置引きとは、置いてある他人の財物を持ち去る行為をいいます。
置引きは、刑法などの法令に規定されている罪名ではなく、「ひったくり」や「万引き」と同様、窃盗罪の態様として慣用的に使われている言葉の一種です。
なお、平成30年度版犯罪白書によれば、平成29年度に警察に認知された窃盗罪の事件数中、非侵入窃盗の割合は全体の53.9%(侵入窃盗は11.2%、乗り物窃盗は31.3%)で、そのうち
・万引き 16.5%
・車上・部品狙い 12.5%
・置引き 4.7%
・色情狙い 1.4%
・自動販売機狙い 1.3%
だったとのことで、窃盗事件全体の数は年々減少傾向にあり、かつ、置引きの割合自体は少ないものの、被侵入窃盗の中では「上位3番目」の数の多さということは着目すべき点ではないかと思います。
~置引きは何罪?~
置引きは窃盗罪(刑法235条)あるいは占有離脱物横領罪(刑法254条)に当たる可能性があります。
まず、規定から確認しましょう。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
窃盗罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、占有離脱物横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」と両罪は法定刑に大きな違いがありますから、窃盗罪が成立するか占有離脱物横領罪が成立するかは大きな違いで、区別する実益があります。
~窃盗罪と占有離脱物横領罪の違いは?~
窃盗罪と占有離脱物横領罪を区別する基準は、「被害者の財物に対する支配が及んでいるか否か」という点です。
及んでいる場合は窃盗罪、及んでいない場合は占有離脱物横領罪が成立します。
そして、支配が及んでいるか否かは
・財物自体の特性(貴重品か否か、大きさ、重さなど)
・占有者の支配の意思の強弱
・被害者が財物を取り戻すに行くまでの時間、距離
などの具体的事情から判断されます。
過去には(最判昭和32年11月8日)では、「バスに乗るために行列していた者が、カメラをその場に置き、行列の移動に連れて改札口近くに進んだ後、カメラを忘れたことに気づいたが、その間、時間にして約5分、距離にして約19.58メートルに過ぎなかった事例」で、「被害者に支配が及んでいる」とし、カメラを盗んだ犯人に窃盗罪を適用しています。
~被害者の支配が及んでいなくても窃盗罪?~
なお、被害者の支払が及んでいなくても別の者の支配が及んでいると認められる場合は、やはり窃盗罪が適用される可能性があります。
過去には(大判大8年4月4日)、「旅館内に旅客が置き忘れた財布」には旅館主の支配が及んでいるとして、財布を盗んだ犯人に窃盗罪を適用しています。
ただし、財物を置き忘れた場所が、一般人の立ち入りが自由な場所であって、管理者の排他的支配が完全でない場合(たとえば、電車内、電車・駅構内のトイレ内など)は、直ちにその場所の管理者の支配に移ることはないとされています。
~本件置引きは何罪?~
本件では、VさんがATM機に財布を置き忘れたことに気づき約5分後に取りに戻ったというのですから、Vさんの財布及びその中の財物(お金など)に対する支配は認められるものと思います。
したがって、Aさんには窃盗罪が適用され、処罰される可能性が高いでしょう。
窃盗罪での処分を免れたい場合は、被害者に被害弁償し、示談を成立させることが先決です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。
自白事件の弁護活動
自白事件の弁護活動
Aは,横浜市戸塚区の飲食物販売店において,食料品をレジに通さず,屋外に持ち去った。
店から通報を受けた神奈川県戸塚警察署の警察官は,捜査の末,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの上記行為は,防犯カメラにも終始写っており,Aも警察官の取調べに対して罪を認めている。
Aが逮捕されたと知った家族は,窃盗事件に強いと評判の刑事事件専門の弁護士に相談することにした。
(本件はフィクションです。)
~日本の犯罪における窃盗罪の位置づけ~
窃盗罪は,刑法235条によって規定され,刑罰が定められているれっきとした刑法犯罪です。
刑法は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とする旨を定めており,万引き犯なども当然この「他人の財物」を「窃取」という要件を満たす刑法犯なのです。
このような窃盗罪は,わが国の刑事司法においてどのように位置づけられる犯罪なのでしょうか。
以下,少しその位置づけについてみてみましょう。
一般論として,近年のわが国における刑事事件の認知件数は減少傾向にあり,窃盗罪もこのような傾向と軌を一にしています。
しかし,認知件数は減っているとはいえ,相も変わらず窃盗罪はわが国の犯罪認知件数の71.6%,公判請求(起訴され刑事裁判になった事件)の27.5%もの割合を占める犯罪であることに変わりはありません(平成29年における刑事事件を対象とした犯罪統計および司法統計より。いずれも刑事事件中で最多。)。
換言すれば,窃盗罪とは,いわば最も身近な刑事事件・犯罪だということもできるでしょう。
このことは本件事例を含め,いわゆる万引きなどを想起すれば,実感として理解できることと思います。
ここで本件事例の事件に戻ると,本件では,Aは警察に対して自らが行った罪を認めています。
では,いわゆるこうした自白事件の場合,弁護士はどのような弁護活動を行っていくことができるのでしょうか。
~窃盗事件(自白事件)における弁護士の弁護活動~
一般に刑事弁護士というと,謂われもない罪で捕まってしまった無辜の市民のため,無罪を勝ち取るための弁護を行う職業と思われがちです。
もちろん,刑事弁護のいわば最大の使命が冤罪撲滅であることは,論を俟ちません。
しかし,犯罪行為を自ら認めている人に刑事弁護が必要でないかというとそうではありません。
この点,憲法31条は,「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と,刑事手続の法定のみならず,その手続内容の適正を定めています。
これは判例(最大判昭和37年11月28日)上も,確立された解釈です。
しかし,このような憲法上の要請としての刑事手続は,適正に実現されなければ絵に描いた餅になってしまいます。
そして,刑罰の実現にあたっても,適正な形での実現が憲法の要請にも適うものだといえるでしょう。
したがって,被疑者・被告人が,適正な処遇・処分を受けるために活動することも,最高法規たる憲法に照らし,刑事弁護士の重要な役割なのです。
これは,責任主義(行為という意思決定に対する非難)という刑法上の原則から導かれる要請でもあります。
そこで,弁護士としては,窃盗罪で逮捕されてしまった被疑者に対して,より長い身体拘束を伴う勾留を阻止する活動や,仮に勾留されてしまったとしても不起訴が相当な事件であることを主張するなど,適正な処遇・処分を求める弁護活動を行っていくことになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件含む刑事事件を専門に扱っている法律事務所です。
窃盗事件・自白事件についてお悩みの方は,まずは弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。
住居侵入罪、窃盗罪で牽連犯
住居侵入罪、窃盗罪で牽連犯
東京都青梅市に住むAさんは、自らの借金に困り、近所のVさんの家に空き巣に入ることを計画しました。
Aさんは、Vさんが一人暮らしで、Vさんの勝手口ドアが、よく無施錠の状態で空いていること普段から確認していたのです。
そして、ある日、Aさんは、Vさんが外出したのを見計らってVさんの自宅に、無施錠の勝手口から入り、仏壇に置かれていた現金5万円の入った封筒を盗んで再び勝手口から出ました。
しかし、後日、現場に印象されていた足跡痕などからAさんの犯行だということが判明し、Aさんは、警視庁青梅警察署に住居侵入罪、窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Aさんは、刑事裁判で、住居侵入罪と窃盗罪とは牽連犯の関係にあるとして重い窃盗罪で処断されることになりました。
(フィクションです。)
~ 住居侵入罪とは ~
住居侵入罪は刑法130条前段に規定されています。
刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、(略)た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
ここで「侵入」とは、住居管理権者の意思に反する立ち入りをいい、本件での住居管理者は本件住居に一人暮らしのVさんです。
そして、Aさんが、窃盗目的で住居に立ち入る行為について、Vさんが承諾するはずがありませんから、Aさんの立ち入り行為は「侵入」に当たり、Aさんには住居侵入罪が成立する可能性が高いでしょう。
~ 窃盗罪 ~
窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
ここで「他人の財物」とは、他人の占有する他人の物のことをいいます。
「占有」とは、簡単にいうとその物(本件でいえば現金5万円入りの封筒(以下、本件封筒といいます))に対する支配のことをいいます。
この「占有」というためには、現実にその物を把持・監視している必要はありません。
本件封筒は仏壇に置かれていましたが、仏壇はVさんが管理する建物内にありますからVさんの支配力は当然及び、Vさんに「占有」が認められます。
「窃取」とは、暴行・脅迫によることなく、占有者(本件の場合Vさん)の意思に反してその占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
なお、自己の占有に移した時点で窃盗罪の「既遂」となります。
本件では、Aさんが封筒を手にした時点で既遂となるでしょう。
~ 牽連犯とは ~
Aさんは、住居侵入罪、窃盗罪に当たる行為をしているのですから、本来であれば2個の罪が成立し併合罪の処理をされ、本来の法定刑より重く処罰されるはずです(併合罪処理の場合、窃盗罪の「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を基準」とし、「15年以下の懲役又は75万円以下の罰金」の範囲で科刑される)。
しかし、刑法54条1項では、本来数罪の罪を、刑を科する際には1個の罪として扱うとしています。
これを科刑上一罪といいます。
刑法54条1項
1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
前半の「1個の行為が2個以上の罪名に触れ」る場合を観念的競合、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる」場合を牽連犯と呼びます。
住居侵入罪、窃盗罪の場合、前者が手段、後者が結果に当たりますから牽連犯です。
科刑上一罪の処理は、最も重い刑、つまり窃盗罪の法定刑(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の範囲内で科刑されます。
このように、法律上は数罪であっても、社会的事実としてみれば1個の行為と評価できる場合は刑を科す上でも1個の行為と評価し、刑の公平性を担保しているのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。
窃盗未遂罪の成否
窃盗未遂罪の成否
~ケース~
Aさんは、東京都文京区郊外にあるスーパーマーケットに侵入し、店内の商品を盗もうと計画していた。
Aさんは、スーパーマーケットが閉店した後に、入口の鍵を破壊した上で同店に侵入した。
侵入後、Aさんは店内に人がいないかを確かめた上で、高価な商品がないかを探し回っていたところ、高級な米が陳列されているのを発見した。
Aさんは、この高級米を盗もうと思い、米売り場コーナーに向かおうとしたところ、住民の通報を受けて駆け付けた警視庁富坂警察官に発見され、その場で現行犯逮捕されてしまった。
(上記事例はフィクションです)
~窃盗未遂罪~
(窃盗罪)刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(未遂罪)刑法243条 第235条…(中略)…の罪の未遂は、罰する。
窃盗罪は上記のように未遂処罰規定があることから、仮に窃盗が成功しなかった場合であっても、窃盗未遂罪として処罰されることがあります。
窃盗未遂罪が成立する場合、刑が任意的に減軽されることになります(刑法43条本文)。
窃盗未遂罪が成立するためには、「実行の着手」が認められる必要があります。
では、窃盗罪における実行の着手はどの時点においてみとめられるのでしょうか。
実行の着手については、一般的に、他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で認められると考えられています。
このような具体的危険が発生する行為であるかどうかについては、盗む対象となる財物の形状、窃盗行為の態様、犯行の日時・場所といった様々な事情を総合的に考慮して判断されます。
通常の住居等への侵入窃盗の事案において、判例は、侵入した時点では窃盗罪における実行の着手があったとは認められず、遅くとも物色行為のあった時点では着手が認められると判断しています。
他方で、土蔵や金庫室などの財物を保管するだけの場所への侵入窃盗の事案においては、侵入行為に着手があった時点で窃盗罪における実行の着手を認めています。
上記の事例のAさんの行為は、①スーパーマーケットの入口の鍵を壊した上で、②同店に侵入し、③商品を探し回り、④高級米を盗むために米売り場コーナーに向かうというように分解することが出来ます。
閉店後のスーパーマーケットは無人であることが通常であり、侵入してしまえば何者にも邪魔されないと思われます。
他方、スーパーマーケット自体は人の出入りが予定されており、閉店後のスーパーマーケットであっても様々な商品が陳列されている以上、侵入時点では特定の財物の占有を侵害する具体的危険は生じないとも考えられます。
そのように考えた場合、物色行為や盗む対象となる財物に近づいた時点で実行の着手が認められることから、上記の事例における④の時点で実行の着手が認められることになると考えられます。
判例においても、電気店に侵入後現金のある煙草売場へ行きかけた段階で実行の着手を認めたものがあることから、上記の事例でも少なくとも④の段階では実行の着手が認められると考えられます。
なお、仮に実行の着手が認められないとしても、上記の事例のような侵入窃盗の場合、建物への侵入時点で建造物侵入罪が成立することになるため、処罰されないというわけではありません。
このように、窃盗未遂罪が成立するかどうかは問題となっている事例によって異なり、その判断は難しいものになるといえます。
そのため、窃盗罪で逮捕された場合には、できる限り早い段階で弁護士に相談し、適切な弁護活動を行う必要があるといえます。
また、仮に窃盗未遂罪にとどまる事案であっても、窃盗未遂罪における刑の減軽は任意的になされるに過ぎないため、示談等をしたうえで、弁護士が裁判官に対し刑の減軽を認めてもらうよう働きかけることも必要となってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では24時間、無料相談及び初回接見サービスのご依頼を受け付けております。
0120-631-881までお気軽にお電話ください。
ATMの置き忘れ現金を盗み取調べ
ATMの置き忘れ現金を盗み取調べ
~ケース~
Aさんは、福岡市南区にある銀行のATMに預金をおろしに行った際、前でATMを操作していた客が、去り際に現金の入った封筒を忘れていくのを見ました。
Aさんは自身の預金を引き下ろしたあと、前の客の封筒も一緒にカバンに入れてしまいました。
封筒には20万円が在中していました。
後日、福岡県南警察署からAさんに電話があり、「お尋ねしたいことがある」とのことです。
Aさんは、きっと置き忘れられていた現金の件だと思い、取調べに行く前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
~Aさんに成立する犯罪は?~
Aさんに成立する犯罪としては、①窃盗罪、又は、②占有離脱物横領罪が考えられます。
窃盗罪は、他人の財物を窃取する犯罪であり、法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法第235条)。
占有離脱物横領罪とは、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領する犯罪であり、法定刑は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料となっています(刑法第254条)。
窃盗罪が成立するには、財物が「他人の占有」下にあり、その占有を移転し、取得することが必要です。
「占有」とは、財物に対する事実的支配を意味します。
他人が携行しているバッグ、他人が住居において保管している物については、当然に「占有」が認められるでしょう。
しかし、今回のケースの現金入り封筒は、Aさんの前の客が置き忘れたものであり、このような物に対しても他人の占有が及んでいるということができるのかどうかが問題となります。
もし、占有が肯定できない場合は、窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪が適用されることになります。
~置き忘れた物の占有に関連する判例の検討~
(占有を肯定した例)
・バス待ちの行列に並んでいた被害者が、近くの台にカメラを置き忘れたまま、行列の移動とともに移動したところ、カメラを置き忘れたことに気付き、引き返したところ、すでにカメラが持ち去られていた事例において、行列が動き始めてから被害者が引き返すまでの時間が約5分、行列から引き返し地点までの距離が約20メートルであった場合(最高裁昭和32年11月8日判決)
・公園のベンチで傍らにポシェットを置いて友人と話していた被害者が、ベンチ上にポシェットを置き忘れてその場を離れ、ベンチから約27メートル進んだ時点において、被告人が当該ポシェットを持ち去り、その後、被害者がベンチを離れて2分、約200メートル進んだ時点でポシェットの忘れ物に気付き、公園まで走って戻ったが既にポシェットが持ち去られていた場合(最高裁平成16年8月25日決定)
(占有が否定された例)
・大規模スーパーマーケットの6階のベンチに札入れを置き忘れたまま、地下1階に移動して約10分後に置き忘れたことに気付き引き返した場合(東京高等裁判所平成3年4月1日判決)
~今回のケースの場合はどうなるか?~
今回のケースにはあえて記載していないのですが、もしAさんの前の客が、ATMから立ち去ってすぐにAさんが持ち去れば、未だ被害者の「占有」が認められる可能性があるといえるでしょう。
反対に、Aさんの前の客が置き忘れてATMを離れ、何分も経過してから、Aさんが持っていったという場合には、前の利用客の「占有」が否定される可能性が高まるでしょう。
なお、前の利用客の「占有」が否定されたとしても、置き忘れられた現金がそのATMの管理者やそのATMのある場所の管理者の「占有」のもとにあると認められる場合もあるため、注意が必要です。
~Aさんは出頭前、どうするべきか?~
弁護士と相談した上で、取調べに臨むことができればベターです。
取調べではプロの捜査官相手に対応をしていかなければなりませんから、何らの助言もないまま取調べに臨むのはなかなか難しいことと思われます。
Aさんが認識した通りに供述できればよいと思いますが、法律の専門家から黙秘権などの権利などについて説明を受けて取調べに臨むことにより、心理的なプレッシャーを軽減させることができるでしょう。
~示談交渉について相談~
警察がATMにおける現金持ち去りの件でAさんを呼び出したとするならば、すでに被害届などの提出を受けて捜査した結果、Aさんが被疑者とした浮上した、ということが考えられます。
弁護士を通じて被害者と示談をすることにより、事件の有利な解決(逮捕されずに済む、逮捕された場合釈放される可能性が高まる、不起訴処分を獲得できる可能性が高まるなど)を目指すことが考えられます。
示談交渉のメリット、具体的に示談交渉はどのようにして行うか、という点について、助言を受けましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースのような窃盗事件の解決実績も豊富です。
窃盗事件を起こしお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
盗品保管罪で逮捕
盗品保管罪で逮捕
~ケース~
京都府京田辺市に住んでいるAさんは、友人Bから「ちょっと預かっていてくれ」と高級ブランドバッグの保管を依頼され、そのバッグを自宅で保管することにした。
Aさんは、そのままバッグの保管を続けていたところ、別の友人から、BがAさんに預けたバッグは、実はBが百貨店から盗んだものであることを聞いた。
しかし、Aさんはバッグの保管をBから頼まれた以上このまま保管していようと思い、バッグが盗品であることを知りながら保管を継続した。
だがその後、Aさんは、盗品保管罪の容疑で京都府田辺警察署に逮捕されてしまった。
(上記の事例はフィクションです)
~盗品関与罪について~
他人の物を盗んだ場合には、窃盗罪が成立することになります。
もっとも、窃盗によって取得した財物については、盗品である以上現金化が難しく、窃盗犯人は事件の発覚を恐れて他人に盗んだ物の保管や運搬を依頼したり、売却等の処分や売却のあっせん等を依頼することがあります。
このような行為については、窃盗犯人を助けることになり、窃盗そのものを助長しかねない性質を有すること及び被害者への財物の返還が困難になることから、刑法上、犯罪として処罰する旨の規定がなされています。
上記のような行為を処罰する犯罪のことを盗品関与罪といいます。
盗品関与罪については、盗品を譲り受ける行為や、盗品を運搬、保管、処分のあっせんといった行為を行った場合に成立することになります。
仮に、上記事例においてAさんに盗品保管罪が成立する場合、Aさんは「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。
なお、盗品の有償譲受けや運搬、有償処分あっせんを行った場合であっても、法定刑は10年以下の懲役及び50万円以下の罰金となっています。
~盗品保管罪について~
盗品保管罪については、一般的には、盗品であることを知りながら保管をする行為について成立します。
盗品であることを知らずに盗品を保管した場合については、盗品であることの認識がないといえることから、盗品保管罪の故意がないといえ、盗品保管罪は成立しません。
では、上記の事例におけるAさんのように、預かった時点では盗品であることを知らなかったが、保管中に盗品であることを知り、その後も保管を継続したという場合に、盗品保管罪が成立するのでしょうか。
判例(最決昭50・6・12刑集29・6・365)は、上記のような場合であっても、盗品保管罪は成立すると判断しています。
盗品保管罪については、盗品の保管という継続した行為を処罰する継続犯であり、一旦保管を開始してそれが終了するまでは保管行為が継続しているといえます。
そのため、保管の途中で盗品であることを知った場合であっても盗品保管罪が成立することになります。
このように、上記事例のAさんの行為についても、盗品保管罪が成立することになります。
盗品保管罪などの盗品関与罪については、普段犯罪とは縁のないような人であっても、巻き込まれてしまうおそれのある犯罪といえます。
犯罪になるとは思わずに盗品を一時的に預かってしまった場合や、盗品であることを知らずに預かってしまったという場合には、盗品だとは知らなかったしその後も知ることはなかったことをしっかりと主張するため、弁護士によって適切に弁護活動を行い、警察や裁判官を説得する必要があります。
そのため、盗品保管罪などの容疑で逮捕されてしまった場合には、刑事事件を専門とする弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、盗品に関する罪の事件も多数取り扱っています。
そのため、盗品関与罪でお困りの方は、ぜひ弊所の弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお電話ください。