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置引きと窃盗罪

2019-08-23

置引きと窃盗罪

大学生のAさん(20歳)は、埼玉県川口市に設置してあるATM機でお金を引き出そうとしたところ、ATM機横に財布が置かれてあるのを見つけました。
Aさんはそれを手に取って中身を見ると、財布の中には1万円札1枚が入っているのを確認しました。
Aさんは、普段お金に足りないことに不満を抱いていたことから、「自分のものにしてしまえ」と思って財布の中から1万円札を抜き取りました。
その後、ATM機の上に財布を置き忘れたことに気づいたVさんが、その約5分後ATM機の元へ戻ってきました。
Vさんは、財布は無事手に戻すことができたものの、1万円札を抜き取られたことに気づいたことから警察に通報、被害届を提出しました。そうしたところ、Aさんは窃盗罪埼玉県川口警察署に逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~置引き~

置引きとは、置いてある他人の財物を持ち去る行為をいいます。
置引きは、刑法などの法令に規定されている罪名ではなく、「ひったくり」や「万引き」と同様、窃盗罪の態様として慣用的に使われている言葉の一種です。
なお、平成30年度版犯罪白書によれば、平成29年度に警察に認知された窃盗罪の事件数中、非侵入窃盗の割合は全体の53.9%(侵入窃盗は11.2%、乗り物窃盗は31.3%)で、そのうち

・万引き      16.5%
・車上・部品狙い  12.5%
・置引き       4.7%
・色情狙い      1.4%
・自動販売機狙い   1.3%

だったとのことで、窃盗事件全体の数は年々減少傾向にあり、かつ、置引きの割合自体は少ないものの、被侵入窃盗の中では「上位3番目」の数の多さということは着目すべき点ではないかと思います。

~置引きは何罪?~

置引きは窃盗罪(刑法235条)あるいは占有離脱物横領罪(刑法254条)に当たる可能性があります。
まず、規定から確認しましょう。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

窃盗罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、占有離脱物横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」と両罪は法定刑に大きな違いがありますから、窃盗罪が成立するか占有離脱物横領罪が成立するかは大きな違いで、区別する実益があります。

~窃盗罪と占有離脱物横領罪の違いは?~

窃盗罪と占有離脱物横領罪を区別する基準は、「被害者の財物に対する支配が及んでいるか否か」という点です。
及んでいる場合は窃盗罪、及んでいない場合は占有離脱物横領罪が成立します。
そして、支配が及んでいるか否かは

・財物自体の特性(貴重品か否か、大きさ、重さなど)
・占有者の支配の意思の強弱
・被害者が財物を取り戻すに行くまでの時間、距離

などの具体的事情から判断されます。

過去には(最判昭和32年11月8日)では、「バスに乗るために行列していた者が、カメラをその場に置き、行列の移動に連れて改札口近くに進んだ後、カメラを忘れたことに気づいたが、その間、時間にして約5分、距離にして約19.58メートルに過ぎなかった事例」で、「被害者に支配が及んでいる」とし、カメラを盗んだ犯人に窃盗罪を適用しています。

~被害者の支配が及んでいなくても窃盗罪?~

なお、被害者の支払が及んでいなくても別の者の支配が及んでいると認められる場合は、やはり窃盗罪が適用される可能性があります。
過去には(大判大8年4月4日)、「旅館内に旅客が置き忘れた財布」には旅館主の支配が及んでいるとして、財布を盗んだ犯人に窃盗罪を適用しています。
ただし、財物を置き忘れた場所が、一般人の立ち入りが自由な場所であって、管理者の排他的支配が完全でない場合(たとえば、電車内、電車・駅構内のトイレ内など)は、直ちにその場所の管理者の支配に移ることはないとされています。

~本件置引きは何罪?~

本件では、VさんがATM機に財布を置き忘れたことに気づき約5分後に取りに戻ったというのですから、Vさんの財布及びその中の財物(お金など)に対する支配は認められるものと思います。
したがって、Aさんには窃盗罪が適用され、処罰される可能性が高いでしょう。
窃盗罪での処分を免れたい場合は、被害者に被害弁償し、示談を成立させることが先決です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
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自白事件の弁護活動

2019-08-18

自白事件の弁護活動

Aは,横浜市戸塚区の飲食物販売店において,食料品をレジに通さず,屋外に持ち去った。
店から通報を受けた神奈川県戸塚警察署の警察官は,捜査の末,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの上記行為は,防犯カメラにも終始写っており,Aも警察官の取調べに対して罪を認めている。
Aが逮捕されたと知った家族は,窃盗事件に強いと評判の刑事事件専門の弁護士に相談することにした。
(本件はフィクションです。)

~日本の犯罪における窃盗罪の位置づけ~

窃盗罪は,刑法235条によって規定され,刑罰が定められているれっきとした刑法犯罪です。
刑法は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とする旨を定めており,万引き犯なども当然この「他人の財物」を「窃取」という要件を満たす刑法犯なのです。
このような窃盗罪は,わが国の刑事司法においてどのように位置づけられる犯罪なのでしょうか。
以下,少しその位置づけについてみてみましょう。

一般論として,近年のわが国における刑事事件の認知件数は減少傾向にあり,窃盗罪もこのような傾向と軌を一にしています。
しかし,認知件数は減っているとはいえ,相も変わらず窃盗罪はわが国の犯罪認知件数の71.6%,公判請求(起訴され刑事裁判になった事件)の27.5%もの割合を占める犯罪であることに変わりはありません(平成29年における刑事事件を対象とした犯罪統計および司法統計より。いずれも刑事事件中で最多。)。
換言すれば,窃盗罪とは,いわば最も身近な刑事事件・犯罪だということもできるでしょう。
このことは本件事例を含め,いわゆる万引きなどを想起すれば,実感として理解できることと思います。

ここで本件事例の事件に戻ると,本件では,Aは警察に対して自らが行った罪を認めています。
では,いわゆるこうした自白事件の場合,弁護士はどのような弁護活動を行っていくことができるのでしょうか。

~窃盗事件(自白事件)における弁護士の弁護活動~

一般に刑事弁護士というと,謂われもない罪で捕まってしまった無辜の市民のため,無罪を勝ち取るための弁護を行う職業と思われがちです。
もちろん,刑事弁護のいわば最大の使命が冤罪撲滅であることは,論を俟ちません。
しかし,犯罪行為を自ら認めている人に刑事弁護が必要でないかというとそうではありません。

この点,憲法31条は,「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と,刑事手続の法定のみならず,その手続内容の適正を定めています。
これは判例(最大判昭和37年11月28日)上も,確立された解釈です。
しかし,このような憲法上の要請としての刑事手続は,適正に実現されなければ絵に描いた餅になってしまいます。
そして,刑罰の実現にあたっても,適正な形での実現が憲法の要請にも適うものだといえるでしょう。
したがって,被疑者・被告人が,適正な処遇・処分を受けるために活動することも,最高法規たる憲法に照らし,刑事弁護士の重要な役割なのです。
これは,責任主義(行為という意思決定に対する非難)という刑法上の原則から導かれる要請でもあります。

そこで,弁護士としては,窃盗罪で逮捕されてしまった被疑者に対して,より長い身体拘束を伴う勾留を阻止する活動や,仮に勾留されてしまったとしても不起訴が相当な事件であることを主張するなど,適正な処遇・処分を求める弁護活動を行っていくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件含む刑事事件を専門に扱っている法律事務所です。
窃盗事件自白事件についてお悩みの方は,まずは弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までお問い合わせください。

住居侵入罪、窃盗罪で牽連犯

2019-08-13

住居侵入罪、窃盗罪で牽連犯

東京都青梅市に住むAさんは、自らの借金に困り、近所のVさんの家に空き巣に入ることを計画しました。
Aさんは、Vさんが一人暮らしで、Vさんの勝手口ドアが、よく無施錠の状態で空いていること普段から確認していたのです。
そして、ある日、Aさんは、Vさんが外出したのを見計らってVさんの自宅に、無施錠の勝手口から入り、仏壇に置かれていた現金5万円の入った封筒を盗んで再び勝手口から出ました。
しかし、後日、現場に印象されていた足跡痕などからAさんの犯行だということが判明し、Aさんは、警視庁青梅警察署住居侵入罪窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Aさんは、刑事裁判で、住居侵入罪窃盗罪とは牽連犯の関係にあるとして重い窃盗罪で処断されることになりました。
(フィクションです。)

~ 住居侵入罪とは ~

住居侵入罪は刑法130条前段に規定されています。

刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、(略)た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

ここで「侵入」とは、住居管理権者の意思に反する立ち入りをいい、本件での住居管理者は本件住居に一人暮らしのVさんです。
そして、Aさんが、窃盗目的で住居に立ち入る行為について、Vさんが承諾するはずがありませんから、Aさんの立ち入り行為は「侵入」に当たり、Aさんには住居侵入罪が成立する可能性が高いでしょう。

~ 窃盗罪 ~

窃盗罪は刑法235条に規定されています。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

ここで「他人の財物」とは、他人の占有する他人の物のことをいいます。
「占有」とは、簡単にいうとその物(本件でいえば現金5万円入りの封筒(以下、本件封筒といいます))に対する支配のことをいいます。
この「占有」というためには、現実にその物を把持・監視している必要はありません。
本件封筒は仏壇に置かれていましたが、仏壇はVさんが管理する建物内にありますからVさんの支配力は当然及び、Vさんに「占有」が認められます。
「窃取」とは、暴行・脅迫によることなく、占有者(本件の場合Vさん)の意思に反してその占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
なお、自己の占有に移した時点で窃盗罪の「既遂」となります。
本件では、Aさんが封筒を手にした時点で既遂となるでしょう。

~ 牽連犯とは ~

Aさんは、住居侵入罪窃盗罪に当たる行為をしているのですから、本来であれば2個の罪が成立し併合罪の処理をされ、本来の法定刑より重く処罰されるはずです(併合罪処理の場合、窃盗罪の「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を基準」とし、「15年以下の懲役又は75万円以下の罰金」の範囲で科刑される)。
しかし、刑法54条1項では、本来数罪の罪を、刑を科する際には1個の罪として扱うとしています。
これを科刑上一罪といいます。

刑法54条1項
1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

前半の「1個の行為が2個以上の罪名に触れ」る場合を観念的競合、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる」場合を牽連犯と呼びます。
住居侵入罪窃盗罪の場合、前者が手段、後者が結果に当たりますから牽連犯です。

科刑上一罪の処理は、最も重い刑、つまり窃盗罪の法定刑(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の範囲内で科刑されます。

このように、法律上は数罪であっても、社会的事実としてみれば1個の行為と評価できる場合は刑を科す上でも1個の行為と評価し、刑の公平性を担保しているのです。

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窃盗未遂罪の成否

2019-08-08

窃盗未遂罪の成否

~ケース~
Aさんは、東京都文京区郊外にあるスーパーマーケットに侵入し、店内の商品を盗もうと計画していた。
Aさんは、スーパーマーケットが閉店した後に、入口の鍵を破壊した上で同店に侵入した。
侵入後、Aさんは店内に人がいないかを確かめた上で、高価な商品がないかを探し回っていたところ、高級な米が陳列されているのを発見した。
Aさんは、この高級米を盗もうと思い、米売り場コーナーに向かおうとしたところ、住民の通報を受けて駆け付けた警視庁富坂警察官に発見され、その場で現行犯逮捕されてしまった。
(上記事例はフィクションです)

~窃盗未遂罪~

(窃盗罪)刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(未遂罪)刑法243条 第235条…(中略)…の罪の未遂は、罰する。

窃盗罪は上記のように未遂処罰規定があることから、仮に窃盗が成功しなかった場合であっても、窃盗未遂罪として処罰されることがあります。
窃盗未遂罪が成立する場合、刑が任意的に減軽されることになります(刑法43条本文)。

窃盗未遂罪が成立するためには、「実行の着手」が認められる必要があります。
では、窃盗罪における実行の着手はどの時点においてみとめられるのでしょうか。

実行の着手については、一般的に、他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で認められると考えられています。
このような具体的危険が発生する行為であるかどうかについては、盗む対象となる財物の形状、窃盗行為の態様、犯行の日時・場所といった様々な事情を総合的に考慮して判断されます。

通常の住居等への侵入窃盗の事案において、判例は、侵入した時点では窃盗罪における実行の着手があったとは認められず、遅くとも物色行為のあった時点では着手が認められると判断しています。
他方で、土蔵や金庫室などの財物を保管するだけの場所への侵入窃盗の事案においては、侵入行為に着手があった時点で窃盗罪における実行の着手を認めています。

上記の事例のAさんの行為は、①スーパーマーケットの入口の鍵を壊した上で、②同店に侵入し、③商品を探し回り、④高級米を盗むために米売り場コーナーに向かうというように分解することが出来ます。

閉店後のスーパーマーケットは無人であることが通常であり、侵入してしまえば何者にも邪魔されないと思われます。

他方、スーパーマーケット自体は人の出入りが予定されており、閉店後のスーパーマーケットであっても様々な商品が陳列されている以上、侵入時点では特定の財物の占有を侵害する具体的危険は生じないとも考えられます。
そのように考えた場合、物色行為や盗む対象となる財物に近づいた時点で実行の着手が認められることから、上記の事例における④の時点で実行の着手が認められることになると考えられます。

判例においても、電気店に侵入後現金のある煙草売場へ行きかけた段階で実行の着手を認めたものがあることから、上記の事例でも少なくとも④の段階では実行の着手が認められると考えられます。

なお、仮に実行の着手が認められないとしても、上記の事例のような侵入窃盗の場合、建物への侵入時点で建造物侵入罪が成立することになるため、処罰されないというわけではありません。

このように、窃盗未遂罪が成立するかどうかは問題となっている事例によって異なり、その判断は難しいものになるといえます。
そのため、窃盗罪で逮捕された場合には、できる限り早い段階で弁護士に相談し、適切な弁護活動を行う必要があるといえます。
また、仮に窃盗未遂罪にとどまる事案であっても、窃盗未遂罪における刑の減軽は任意的になされるに過ぎないため、示談等をしたうえで、弁護士が裁判官に対し刑の減軽を認めてもらうよう働きかけることも必要となってきます。

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ATMの置き忘れ現金を盗み取調べ

2019-08-03

ATMの置き忘れ現金を盗み取調べ

~ケース~
Aさんは、福岡市南区にある銀行のATMに預金をおろしに行った際、前でATMを操作していた客が、去り際に現金の入った封筒を忘れていくのを見ました。
Aさんは自身の預金を引き下ろしたあと、前の客の封筒も一緒にカバンに入れてしまいました。
封筒には20万円が在中していました。
後日、福岡県南警察署からAさんに電話があり、「お尋ねしたいことがある」とのことです。
Aさんは、きっと置き忘れられていた現金の件だと思い、取調べに行く前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

~Aさんに成立する犯罪は?~

Aさんに成立する犯罪としては、①窃盗罪、又は、②占有離脱物横領罪が考えられます。

窃盗罪は、他人の財物を窃取する犯罪であり、法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(刑法第235条)。
占有離脱物横領罪とは、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領する犯罪であり、法定刑は1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料となっています(刑法第254条)。

窃盗罪が成立するには、財物が「他人の占有」下にあり、その占有を移転し、取得することが必要です。
「占有」とは、財物に対する事実的支配を意味します。
他人が携行しているバッグ、他人が住居において保管している物については、当然に「占有」が認められるでしょう。

しかし、今回のケースの現金入り封筒は、Aさんの前の客が置き忘れたものであり、このような物に対しても他人の占有が及んでいるということができるのかどうかが問題となります。
もし、占有が肯定できない場合は、窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪が適用されることになります。

~置き忘れた物の占有に関連する判例の検討~

(占有を肯定した例)
・バス待ちの行列に並んでいた被害者が、近くの台にカメラを置き忘れたまま、行列の移動とともに移動したところ、カメラを置き忘れたことに気付き、引き返したところ、すでにカメラが持ち去られていた事例において、行列が動き始めてから被害者が引き返すまでの時間が約5分、行列から引き返し地点までの距離が約20メートルであった場合(最高裁昭和32年11月8日判決)

・公園のベンチで傍らにポシェットを置いて友人と話していた被害者が、ベンチ上にポシェットを置き忘れてその場を離れ、ベンチから約27メートル進んだ時点において、被告人が当該ポシェットを持ち去り、その後、被害者がベンチを離れて2分、約200メートル進んだ時点でポシェットの忘れ物に気付き、公園まで走って戻ったが既にポシェットが持ち去られていた場合(最高裁平成16年8月25日決定)

(占有が否定された例)
・大規模スーパーマーケットの6階のベンチに札入れを置き忘れたまま、地下1階に移動して約10分後に置き忘れたことに気付き引き返した場合(東京高等裁判所平成3年4月1日判決)

~今回のケースの場合はどうなるか?~

今回のケースにはあえて記載していないのですが、もしAさんの前の客が、ATMから立ち去ってすぐにAさんが持ち去れば、未だ被害者の「占有」が認められる可能性があるといえるでしょう。
反対に、Aさんの前の客が置き忘れてATMを離れ、何分も経過してから、Aさんが持っていったという場合には、前の利用客の「占有」が否定される可能性が高まるでしょう。
なお、前の利用客の「占有」が否定されたとしても、置き忘れられた現金がそのATMの管理者やそのATMのある場所の管理者の「占有」のもとにあると認められる場合もあるため、注意が必要です。

~Aさんは出頭前、どうするべきか?~

弁護士と相談した上で、取調べに臨むことができればベターです。
取調べではプロの捜査官相手に対応をしていかなければなりませんから、何らの助言もないまま取調べに臨むのはなかなか難しいことと思われます。
Aさんが認識した通りに供述できればよいと思いますが、法律の専門家から黙秘権などの権利などについて説明を受けて取調べに臨むことにより、心理的なプレッシャーを軽減させることができるでしょう。

~示談交渉について相談~

警察がATMにおける現金持ち去りの件でAさんを呼び出したとするならば、すでに被害届などの提出を受けて捜査した結果、Aさんが被疑者とした浮上した、ということが考えられます。
弁護士を通じて被害者と示談をすることにより、事件の有利な解決(逮捕されずに済む、逮捕された場合釈放される可能性が高まる、不起訴処分を獲得できる可能性が高まるなど)を目指すことが考えられます。
示談交渉のメリット、具体的に示談交渉はどのようにして行うか、という点について、助言を受けましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、ケースのような窃盗事件の解決実績も豊富です。
窃盗事件を起こしお困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

盗品保管罪で逮捕

2019-07-29

盗品保管罪で逮捕

~ケース~
京都府京田辺市に住んでいるAさんは、友人Bから「ちょっと預かっていてくれ」と高級ブランドバッグの保管を依頼され、そのバッグを自宅で保管することにした。
Aさんは、そのままバッグの保管を続けていたところ、別の友人から、BがAさんに預けたバッグは、実はBが百貨店から盗んだものであることを聞いた。
しかし、Aさんはバッグの保管をBから頼まれた以上このまま保管していようと思い、バッグが盗品であることを知りながら保管を継続した。
だがその後、Aさんは、盗品保管罪の容疑で京都府田辺警察署逮捕されてしまった。
(上記の事例はフィクションです)

~盗品関与罪について~

他人の物を盗んだ場合には、窃盗罪が成立することになります。
もっとも、窃盗によって取得した財物については、盗品である以上現金化が難しく、窃盗犯人は事件の発覚を恐れて他人に盗んだ物の保管や運搬を依頼したり、売却等の処分や売却のあっせん等を依頼することがあります。
このような行為については、窃盗犯人を助けることになり、窃盗そのものを助長しかねない性質を有すること及び被害者への財物の返還が困難になることから、刑法上、犯罪として処罰する旨の規定がなされています。

上記のような行為を処罰する犯罪のことを盗品関与罪といいます。
盗品関与罪については、盗品を譲り受ける行為や、盗品を運搬、保管、処分のあっせんといった行為を行った場合に成立することになります。
仮に、上記事例においてAさんに盗品保管罪が成立する場合、Aさんは「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。
なお、盗品の有償譲受けや運搬、有償処分あっせんを行った場合であっても、法定刑は10年以下の懲役及び50万円以下の罰金となっています。

~盗品保管罪について~

盗品保管罪については、一般的には、盗品であることを知りながら保管をする行為について成立します。
盗品であることを知らずに盗品を保管した場合については、盗品であることの認識がないといえることから、盗品保管罪の故意がないといえ、盗品保管罪は成立しません。

では、上記の事例におけるAさんのように、預かった時点では盗品であることを知らなかったが、保管中に盗品であることを知り、その後も保管を継続したという場合に、盗品保管罪が成立するのでしょうか。

判例(最決昭50・6・12刑集29・6・365)は、上記のような場合であっても、盗品保管罪は成立すると判断しています。
盗品保管罪については、盗品の保管という継続した行為を処罰する継続犯であり、一旦保管を開始してそれが終了するまでは保管行為が継続しているといえます。
そのため、保管の途中で盗品であることを知った場合であっても盗品保管罪が成立することになります。
このように、上記事例のAさんの行為についても、盗品保管罪が成立することになります。

盗品保管罪などの盗品関与罪については、普段犯罪とは縁のないような人であっても、巻き込まれてしまうおそれのある犯罪といえます。
犯罪になるとは思わずに盗品を一時的に預かってしまった場合や、盗品であることを知らずに預かってしまったという場合には、盗品だとは知らなかったしその後も知ることはなかったことをしっかりと主張するため、弁護士によって適切に弁護活動を行い、警察や裁判官を説得する必要があります。
そのため、盗品保管罪などの容疑で逮捕されてしまった場合には、刑事事件を専門とする弁護士に相談することを強くお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、盗品に関する罪の事件も多数取り扱っています。
そのため、盗品関与罪でお困りの方は、ぜひ弊所の弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士初回接見サービス無料法律相談を行っています。
0120-631-881にて24時間受け付けておりますので、お気軽にお電話ください。

自動精算機のお釣りを盗んで逮捕

2019-07-24

自動精算機のお釣りを盗んで逮捕

Aさんが兵庫県伊丹市のコインパーキングに車を止めて数時間後、出発しようと精算機の前に来たところ、お釣りの取り忘れがあることに気付きました。
「今出て行った車の人が忘れたんだな。ラッキー!」と思ったAさんは忘れられたお釣りを持ち帰りました。
その後、お釣りの取り忘れに気付いた持ち主がコインパーキングに戻ってきましたが、すでにお釣りはない状態でした。
持ち主は兵庫県伊丹警察署に通報し、警察官が防犯カメラを調べた結果、Aさんの犯行が発覚。
Aさんは兵庫県伊丹警察署の警察官によって逮捕されました。
(フィクションです)

~お釣りの持ち去りは犯罪です~

自動精算機や自動券売機、自動販売機などに忘れられたお釣りを持ち去った場合、窃盗罪が成立することになるでしょう。

刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

金額によっては逮捕され、実名で報道されている事案も実際にありますので注意が必要です。

~遺失物横領罪では?~

落とし物などを持ち去った場合に、窃盗罪より刑罰が軽い遺失物横領罪が成立することがあるので、今回も遺失物横領罪が成立するにすぎないのでは、と思う方もいらっしゃるかもしれません。

第254条(遺失物等横領)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

窃盗罪と遺失物横領罪の違いは、他人の占有があるか否かです。
より分かりやすく言えば、他人の支配下にある物を盗った場合が窃盗罪、支配下にない物を盗った場合が遺失物横領罪となります。
例えば、他人の家の中にある物は、たとえ家の人が外出中でも他人の支配下にあるので、窃盗罪が問題となります。
一方、道に落ちているお金を取った場合、持ち主がすでに遠くに行ってしまっていれば、一般的にそのお金は誰の支配下にもないので、遺失物横領罪の成否が問題となります。

しかし、道に落ちているお金とは異なり、自動精算機などのお釣りは、本来お釣りを受け取るべきだった人あるいは自動精算機の所有者の占有のいずれかが認められる可能性が高いです。
たとえ誰でも勝手に持ち去れる状態だったとしても、お金が自動精算機から完全に離れたわけではないことから、道に落ちているお金とは違うわけです。
切符の自動券売機やジュースの自動販売機などでも同じことが言えます。

~刑事手続の流れ~

逮捕されたAさんは、まずは最大で3日間の身体拘束がなされます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大で20日間の身体拘束がされます。
その後、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り、身体拘束が続きます。
そして裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。

ただし、お釣りの窃盗であれば金額が莫大というわけではないでしょう。
前科の有無にもよりますが、すみやかに被害者に弁償して反省態度を示すなどすれば、早期に釈放され、検察官が不起訴処分とし、刑事裁判が開かれず、前科も付かずに事件が終結する可能性もあります。
弁護士としても、早期釈放を実現させ、不起訴処分などの軽い処分を目指して弁護活動をしていくことになるでしょう。

しかし、逮捕されるとご本人やご家族は、どんな罪が成立するのか、刑事手続はどのように進んでいくのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか等々、不安点が多いと思います。
そうした時こそ、弁護士の力を頼ってください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、既に釈放されている場合は、事務所での法律相談を初回無料で受けていただけます。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。

刑事事件の経験が豊富な弁護士が対応いたしますので、窃盗罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご相談ください。

窃盗罪と横領罪の違い

2019-07-19

窃盗罪と横領罪の違い

大阪市中央区にあるV社において集金業務を担当するAさんは、同じ業務を担当するBさんと協力して、ある特定地域の集金業務に従事していました。
そして、Aさんは、2時間程度集金業務を終えたところでBさんから電話を受け、Bさんから「子どもが急に熱を出して、これから保育園に迎えにいくことになりました。」「今現在で10万円集金できています。」「これからAさんのところに向かい、その10万円を預けるので会社に届けてくれませんか?」「会社には了承を得ています。」と言われました。
そこで、Aさんは数分後、Bさんと合流し、集金日、集金金額等が記載され、糊付けされ封をされた封筒を受け取り、Bさんと別れました。
ところが、Aさんは、「10万円くらいなら懐に入れてもばれないだろう。」「自分が集金したお金などで穴埋めすればバレないだろう。」などと変な気を起こし、封筒の封を開け、中から1万円札10枚を抜き取りました。
Aさんは会社に帰り、上司に「Bさん封筒については盗まれてしまいました。」などと嘘をつきましたが、調査の結果、嘘だということが判明し、会社の代理人弁護士から「弁償しなければ大阪府東警察署窃盗罪で告訴しますよ。」などと最終通告を受けてしまいました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

集金業務等に従事し、集金したお金を勝手に処分などした場合、真っ先に思い浮かぶ犯罪は横領罪(刑法252条)、あるいは業務上横領罪(刑法253条)ではないかと思います。
しかしながら、今回、Aさんは会社の代理人弁護士から「窃盗罪で告訴する。」などと言われています。
なぜ、窃盗罪なのでしょうか?窃盗罪横領罪の違いはどの点にあるのでしょうか?

~ 窃盗罪、横領罪、業務上横領罪 ~

窃盗罪は刑法235条に規定されています。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

また、横領罪は刑法252条、業務上横領罪は刑法253条に規定されています。

刑法252条1項
自己の占有する他人の者を横領した者は、5年以下の懲役に処する。

刑法253条 
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。

~ 窃盗罪と横領罪の違い ~

両罪の一番の違いは、「財物(物)が自分の占有下にあるかどうか」です。
つまり、自分が預かっていないもの(占有下にないもの)を自分のものにした場合は窃盗罪が、自分が預かっているもの(占有下にあるもの)を自分のものにした場合は横領罪が成立します。

また、規定からもお分かりいただけると思いますが、「窃盗罪には罰金刑が定められているのに対し、横領罪は懲役刑しか定められていないこと」も大きな違いといえ、窃盗罪横領罪を区別する実益があります。

~ なぜ窃盗罪? ~

では、なぜAさんが窃盗罪で告訴すると言われたのかといえば、「Aさんに現金10万円という『財物』に対する占有が認められないから」だと考えられます。
つまり、あくまでAさんが勝手に奪った現金10万円に対する占有は、Bさんが本件会社との間で結んだ委任契約などにも基づき発生し、Bさんにその占有が認められるものと考えられます。
そこで、Aさんが現金10万円を勝手に奪ったとしても「自己の占有する他人の物を横領した」とはいえず横領罪、あるいは業務上横領罪は成立しないのです。

~ 告訴する、被害届を提出すると言われたら? ~

刑事事件化する前に、一刻も早く相手方と示談交渉に臨みましょう。
ただし、示談交渉は示談交渉に慣れた弁護士に任せましょう。
弁護士は示談交渉に関する知識、経験を有していますから、弁護士であれば適切な形式、内容で示談を締結できる可能性が高くなります。
示談締結の際に、「捜査機関に告訴や被害届を提出しない」旨の条項を盛り込むことができれば、逮捕などの捜査を受けるおそれもなくなるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。
24時間、無料法律相談、初回接見サービスの受け付けを行っております。

車から楽器を盗み逮捕

2019-07-14

車から楽器を盗み逮捕

埼玉県入間市に住むAさん。
深夜、繁華街の駐車場に停めてあった自動車の窓ガラスを割り、中にあった楽器などを盗んで逃走。
楽器などは後日リサイクルショップで売り、現金化しました。
楽器の持ち主がツイッターで、車上荒らしに遭ったこと及び楽器の特徴を画像付きでツイートし、拡散されていたこともあって、リサイクルショップから売れる前に楽器が盗品であることが判明。
リサイクルショップや被害のあった駐車場付近の防犯カメラ映像も分析され、Aさんの犯行と発覚。
Aさんは埼玉県狭山警察署の警察官によって逮捕されました。
(フィクションです)

~成立する犯罪~

車上荒らしの遭い、車内に置いていた高級品などが盗まれるということが度々起こっています。
Aさんが自動車から楽器等を盗んだ行為には窃盗罪が、また自動車の窓を割った行為につき器物損壊罪が成立することになるでしょう。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法261条
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

さらに、リサイクルショップに対し、盗品だということを隠して楽器を売り、現金を受け取った行為には、詐欺罪が成立します。
盗品だと知っていれば、リサイクルショップ側は買い取りしなかったと思われるからです。

刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

これらの罪を同時に刑事裁判にかけられた場合、併合罪(刑法45条以下)という処理がされ、最大で15年以下の懲役及び80万円以下の罰金となる可能性があります。

~今後の刑事手続きの流れと弁護活動~

逮捕されたAさんは、はじめに最大3日間の身体拘束がなされます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。
その後、検察官が刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り、身体拘束が続く可能性があります。

これらの手続に関し、弁護士はたとえば以下のような弁護活動を行います。
まず、検察官が勾留請求しなければ、または裁判官が勾留を許可しなければ、最初の3日間で釈放されます。
そこで検察官や裁判官に対し、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことや、身体拘束が続くことによる本人や家族などの不利益を具体的事情に基づいて主張し、勾留を防ぎます。

また、検察官が起訴しないという判断(不起訴処分)をすれば、刑事手続はそこで終わり、釈放される上に前科も付きません。
そこで、自動車及び楽器の所有者やリサイクルショップに賠償して示談を成立させたり、有利な事情があれば出来る限り主張して、不起訴処分にするよう検察官に要請していきます。

そして起訴された場合も、本人に有利な事情を主張し、執行猶予などの軽い判決で済むよう弁護していきます。
もちろん、被害金額や前科の有無などによっては、釈放させるのが難しい、あるいは実刑が避けられないといったケースもあることには注意が必要です。

~弁護士に相談してみる~

逮捕されるとご本人やご家族は、どんな罪が成立するのか、どのくらいの刑罰を受けることになりそうか、刑事手続はどのように進んでいくのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか、示談交渉はどう行ったらいいのか等々、不安点が多いと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合は、事務所での法律相談を初回無料で行っております。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。

窃盗罪や詐欺罪、器物損壊罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひご相談ください。

万引きを繰り返すほど重罰に

2019-07-09

万引きを繰り返すほど重罰に

神奈川県相模原市に住むAさんは、万引きの常習犯です。
食べるものに困っているわけではないのですが、どうしても万引きをやめられないAさん。
ある日、Aさんはコンビニで店員の目を盗み、自分のカバンに商品を入れ、店舗の外に出ました。
しかし、犯行の様子を見ていた他のお客が店員に伝え、店員が防犯カメラの映像を確認。
Aさんの犯行が発覚し、Aさんは神奈川県津久井警察署の警察官によって逮捕されました。
(フィクションです)

~万引きで成立する犯罪~

お金はあるのに万引きをやめられないという依存状態に陥っている方がいます。
クレプトマニア、あるいは窃盗症などと呼ばれる精神疾患の一つであることもあり、そうした場合には医療的ケアが必要でしょう。

なお、万引きをすると窃盗罪が成立します。

刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

~複数の窃盗を行っていた場合~

Aさんは万引きの常習犯なので、より重く処罰される可能性があります。
すなわち、今回の窃盗とは別の機会に行った窃盗についても証拠が揃い、同時に刑事裁判にかけられることになった場合、併合罪(刑法45条以下)と呼ばれる処理がされます。

懲役刑を科す場合、窃盗罪懲役10年以下ですので、刑法47条の規定により、1.5倍の15年以下の範囲内で懲役が科される可能性があります(3つ以上の犯行を同時に刑事裁判にかける場合も15年以下です)。
罰金刑を科す場合は、窃盗罪50万円以下ですので、刑法48条2項により「50万円×起訴された窃盗罪の数」の金額の範囲内で罰金が科される可能性があります。

~再犯加重~

Aさんに前科がある場合は、さらに重く罰せられる可能性があります。

刑法第56条第1項
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。

第57条
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする。

つまり、前科で実刑判決を受け服役し、出所日から5年以内に再犯した場合、通常の窃盗罪の2倍にあたる20年以下の範囲で懲役を科される可能性があるわけです。
なお、前科の犯罪が執行猶予判決だったのであれば、執行猶予が取り消され、前科の刑罰と今回の窃盗の刑罰の両方が科される可能性があります。

~常習累犯窃盗~

さらに、Aさんが窃盗で過去10年以内に懲役6か月以上の執行を3回以上受けていた場合、常習累犯窃盗として、3年以上20年以下の懲役となる可能性があります(盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3条参照)。

前述の再犯加重も20年以下の懲役ですが、「○年以上」といった下限の設定がないので、下限は1か月となります(刑法12条1項参照)。
これに対し常習累犯窃盗の場合、より悪質性が強いので、下限が3年となるわけです。

~刑事手続きの流れと弁護活動~

逮捕されたAさんは、まずは最大3日間の身体拘束がなされます。
そして逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。
その後、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートし、保釈が認められない限り、身体拘束が続く可能性があります。
そして刑事裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。

刑事裁判では、万引きでも前述のような重い処罰を受ける可能性は否定できません。
しかし、凶悪犯罪ともいえないので、常習性がどの程度進んでいるかといった事情にもよりますが、検察官が被疑者を裁判にかけないという判断(不起訴処分)をしたり、起訴されても罰金刑などで終わる可能性もあります。

弁護士としては、被害店舗に弁償して示談を締結したり、被疑者が反省の態度を示していること、治療に通っていること、家族の監督が望めることなど、本人に有利な事情があれば出来る限り主張し、軽い処分・判決を目指す弁護活動をしていくことになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事弁護を専門とする事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合は、事務所での法律相談を初回無料で行っております。
窃盗罪などで逮捕された、捜査を受けたという場合には、一度弊所の弁護士にご相談ください。

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