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盗んだ物が盗品であった場合
盗んだ物が盗品であった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都町田市の路上に駐車してあったバイクが目に留まったAさんは、かねてより欲しかったこともあり、バイクに近寄ってまじまじと見ていたところ、キーが付いたままであったことから、そのまま乗って自宅まで帰りました。
ある日、警視庁青梅警察署がAさん宅を訪れ、バイクの件で任意出頭してほしいと言われました。
問題のバイクは、東京都青梅市で盗難の被害にあったそうですが、Aさんが発見したのは町田市でした。
どうやら、Aさんが盗んだバイクは盗品だったようです。
Aさんは、盗んだ物が盗品の場合にも窃盗罪が成立するのか、刑事事件に強い弁護士に相談しています。
(フィクションです)
盗んだ物が盗品であった場合は何罪が成立する?
まずは、窃盗罪がどのような場合に成立する罪であるのかについて見ていきましょう。
窃盗罪とは
窃盗罪は、①他人の財物を、②不法領得の意思をもって、③窃取した、場合に成立します。
①他人の財物
窃盗罪の客体は、他人の占有する他人の財物です。
自分の物であっても、他人の占有に属していたり、公務所の命令によって他人が看守しているものは、他人の財物とみなされます。
他人の「占有」するとは、人が財物を事実上支配し、管理する状態を意味します。
「占有」は、占有の事実および占有の意思から成り、占有者が財物を事実上支配している状態であり、かつ、財物を事実上支配する意欲や意思がある場合に、認められます。
②不法領得の意思
条文には記載されていませんが、判例は「不法領得の意思」を窃盗罪の構成要件要素としています。
窃盗罪の主観的要件として、①財物が他人の占有に属していること、および、②その占有を排除して財物を自己または第三者の占有に移すことを認識していること(=故意)に加えて、不法領得の意思も必要とされます。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思をいいます。
不法領得の意思は、一時使用や毀棄・隠匿目的の場合とを区別する上で重要な要素となります。
③窃取
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
それでは、盗んだ物が盗品であった場合、どのような罪が成立するのでしょうか。
以下、被害者が盗品を取り戻す場合と、第三者が盗品を盗む場合とに分けて説明します。
1.被害者が盗品を取り戻す場合
窃盗の被害者が、盗まれた物をすぐに取り戻す場合には、未だ問題の財物の占有が被害者にあり、犯人側に移っているとは言えないため、取り戻した財物は犯人の財物とはならず、窃盗罪は成立しません。
先述したように、占有は、占有の事実と占有の意思で構成されているため、占有の有無については、占有の事実および占有の意思を総合して判断されます。
判断の際に考慮される要素は、①財物自体の特性、②占有者の支配の意思の強弱、③距離などにより客観的、物理的な支配関係の強弱などです。
一方、財物の占有が完全に移転してしまい、犯人がその占有を平穏に獲得した後は、例え適法に取得した物でなくても、犯人の財物として扱われることになります。
過去の裁判は、物に対する事実上の支配関係が認められる限りその支配が適用と否とに拘らず窃盗罪の保護法益となるものと理解されるため、窃盗犯人から更に賍物を窃取した場合においても窃盗罪が成立するとの立場をとっています。(東京高裁判決昭和29年5月24日)
2.第三者が盗品を盗む場合
上でみたように、盗品であっても、他人(窃盗犯人)が占有する財物となるため、窃盗犯人でも被害者でもない第三者が盗品を盗む場合は、他人の占有にある財物を不法領得の意思をもって窃取したのであれば、窃盗罪が成立することになります。
このように、盗んだ物が盗品であっても窃盗罪が成立する可能性があります。
窃盗事件で被疑者・被告人となってしまったのであれば、早期に刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件を含めた刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が窃盗事件を起こし逮捕された方、窃盗事件で取調べを受けている方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
情報窃盗で刑事事件
情報窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都港区にあるV社の顧客の個人情報のデータベースをUSBに不正にコピーして、ライバル会社のX社に売却したとして、V社元社員のAさんがV社の社長に呼び出されました。
V社は、警視庁愛宕警察署に窃盗の被害届を出すと言っています。
Aさんは、自身の行為が窃盗に当たるのか不安になり、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
情報窃盗は窃盗か?
パソコンなどの電子機器から、その機器の所有者の許可を得ず、中に記録されている電子データを抜き取って持ち出す行為は、一般的に「情報窃盗」と呼ばれています。
情報を所有者の許可なく勝手に持ち出す行為は、窃盗罪に当たる可能性があります。
窃盗罪とは
刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪の構成要件は、
(1)他人の財物を
(2)不法領得の意思をもって
(3)窃取した
ことです。
(1)他人の財物
窃盗罪の客体は、「他人の占有する他人の財物」です。
①財物の概念
「財物」とは、財産的価値のあるものであり、有体物であると解されてきました。
しかし、有体物でなくとも、物理的に管理することが可能なものも「財物」に該当すると解されるようになり、電気も「財物」に含まれます。
情報窃盗において問題となるのが、「情報」が「財物」に当たるか否かという点です。
この点について、「情報」それ自体は有体物ではないため「財物」には該当しません。
ですが、情報が他の媒体(例えば、紙やUSBなど)に化体されている場合は、情報と媒体を一体とみて、「財物」に該当するものとされます。
窃盗罪を認めた判決では、機密資料のファイルを内通者を介して入手し、これを会社に持ち帰って複写したあと、返却した事案において、情報の化体された媒体の財物性は、情報の切り離された媒体の素材についてだけでなく、情報と媒体が合体したものの全体をもって判断すべきであり、その財物としての価値は、主として媒体に化体された情報の価値によるとしています。(東京地判昭59・6・28)
②占有の概念
「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態をいいます。
「占有」は、占有の事実と占有の意思で構成されます。
占有の事実というのは、占有者が財物を事実上支配している状態のことを指します。
物を客観的に支配している場合はもちろんのこと、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含みます。
そして、占有の意思とは、財物を事実上支配する意欲または意思のことです。
この意思は、包括的・抽象的な意思で足り、財物に対する事実的支配が明確であれば、睡眠中であっても占有の意思が認められます。
(2)不法領得の意思
「不法領得の意思」は、条文にはありませんが、判例上認められた要件です。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思をいいます。
(3)窃取
窃盗罪の実行行為は、「窃取」であり、「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
窃取の意義は、占有者の意思に反して財物の占有を移転させる点にあるので、他人の飼養する鳥をかごから逃がす行為は、取りに対する他人の占有を侵害してはいるものの、自己または第三者に占有を移転してはいないので、窃盗には該当せず、器物損壊となります。
財物の他人の占有を排除して、自己または第三者の占有に移したことをもって、窃盗は既遂となります。
上の事例では、Aさんが許可なくV社の顧客の個人情報のデータベースをUSBにコピーし、ライバル会社にデータベースを売りました。
顧客の個人情報データベース(=情報)をUSBという媒体に移しているため、情報と媒体であるUSBは一体として「財物」に該当します。
Aさんは、他人(V社)の占有する顧客の個人情報データベースの情報が入ったUSB(=財物)を、ライバル会社X社に売るために(=不法領得の意思)、勝手に持ち出し(=占有の移転)、X社に渡している(=占有の移転)ため、窃盗が成立するものと考えられます。
窃盗罪は財産犯であり、被害者に損害が生じているため、窃盗事件を起こしてしまった場合には、その損害を回復することが最終的な処分結果にも大きく影響することとなります。
加害者が直接被害者に被害弁償をすることは可能ですが、逮捕・勾留されている場合や、被害者が加害者との直接のやりとりを望まない場合も多いため、一般的には弁護士を介して行われます。
また、謝罪や被害弁償を行った上で、示談に応じてもらえるよう粘り強くかつ冷静に交渉していくことも求められます。
窃盗事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
会社の金を着服:窃盗と横領
会社の金を着服した場合、窃盗と横領のどちらが成立するかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
福岡県飯塚市にある会社で働くAさんは、会社のお金を着服したとして、会社から着服した分を返還するよう求められています。
会社からは、「返還に応じない場合は、福岡県飯塚警察署に被害届を提出する。」と言われています。
Aさんは、会社から返還するよう求められている金額が着服した金額より多いことが気がかりですが、警察沙汰になることは避けたいと考えています。
Aさんは、自分の行った行為がどのような犯罪に当たるのか、今後どのような流れになるのか分からず不安になったため、刑事事件専門の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
会社の金を着服した場合~窃盗or横領~
会社のお金を勝手に自分のものにした場合、どのような罪に問われるのでしょうか。
1.業務上横領罪
業務上横領罪は、刑法253条に次のように規定されています。
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
つまり、業務上横領罪は、
①業務上
②自己の占有する他人の物を
③横領したこと
で成立する罪です。
①業務上
本罪の主体は、業務上他人の物を占有する者となります。
ここでいう「業務」というのは、委託を受けて他人の物を占有・保管する事務を反復継続して行う地位のことです。
②自己の占有する他人の物
本罪の客体は、業務と関連して保管・占有する「他人の物」です。
「占有」とは、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態をいいます。
③横領
「横領」とは、委託物につき不法領得の意思を実現するすべての行為をいうものと理解されています。(最判昭28・12・25)
不法領得の意思の内容については、争いがありますが、判例によれば、他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物について権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思とされます。(最判昭24・3・8)
不法領得の意思を実現する行為には、法律上の処分・事実上の処分の一切が含まれます。
例えば、売却、贈与、入質、消費、着服、拐帯等です。
さて、事例について検討してみましょう。
Aさんが、会社のお金を着服していたことは事実であるようですが、Aさんが着服したお金を誰が管理していたのかは明らかではありません。
もし、Aさんがそのお金を管理する立場にあったのであれば、「業務上自己の占有する他人の物を横領」したことになり、業務上横領罪が成立することになるでしょう。
2.窃盗罪
他方、Aさんが会社のお金を管理する立場にはなく、会社の金庫から勝手にお金をとった場合には、窃盗罪に問われることになります。
窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取したこと
で成立する罪です。
①他人の財物
本罪の客体は、他人の占有する他人の財物です。
この点、「自己の占有する他人の物」を客体とする業務上横領罪と異なります。
③窃取
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
Aさんが会社の経理業務を担当している場合、Aさんは会社のお金を管理する立場にありますが、そのような立場にはない場合であれば、Aさんが会社のお金を勝手にとったということになり、他人の占有する他人の財物を自己の占有に移したため、窃盗罪が成立することになります。
会社のお金を着服した場合、着服した人がお金を管理するような立場にあったかどうかで成立する罪も異なります。
いずれにせよ、会社のお金を着服してしまった場合には、早期に被害者である会社に被害弁償を行い、示談を成立させることが事件を穏便に解決するために重要です。
会社のお金を着服したことが会社に発覚し、刑事事件として発展することを回避したい方、刑事事件となってしまったが不起訴で終了させたいとお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
ひったくり事件:窃盗と強盗
ひったくり事件が窃盗となる場合、強盗となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、深夜、兵庫県尼崎市の路上を歩いていたVさんの背後から原動機付自転車で近付き、追い抜きざまにVさんが肘にかけていたバッグを引っ張って盗ろうとしました。
しかし、Vさんがバッグ離さず路上に転倒したため、Aさんはバッグを持ったVさんを数メートルにわたって引っ張り続けた結果、Vさんはバッグを離しました。
Aさんはバッグを奪ってその場から逃走しました。
後日、兵庫県尼崎東警察署は、ひったくり事件の被疑者としてAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)
ひったくり事件
相手方の背後から近づき、相手方の不意をついて金品を奪う「ひったくり」は、手っ取り早く金品を奪う手段として、その認知件数は徐々に下がっているものの、現在も相当数発生しています。
ひったくりの多くは、「窃盗」に該当しますが、その行為は、多かれ少なかれ相手方に対する接触を伴うため、接触の程度や具体的な状況によっては、「窃盗」にとどまらず、「強盗」に該当する場合もあります。
まずは、窃盗罪について、どのような場合に成立し得るのかについて説明します。
(1)窃盗罪
窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取した
ことで成立します。
「不法領得の意思」というのは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思」のことをいいます。(大判大4・5・21)
また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。(最決昭31・7・3)
窃取の手段や方法は問いませんので、こっそりであっても、ひったくりのようにあからさまであっても構いません。
次に、強盗罪についてみていきましょう。
(2)強盗罪
強盗罪は、
(1項)①暴行または脅迫を用いて
②他人の財物を
③強取したこと
(2項)①暴行または脅迫を用いて
②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
により成立する犯罪です。
実行行為の手段である「暴行・脅迫」は、相手方の反抗を抑圧するにたりる程度に強い暴行・脅迫であることが必要となります。(最判昭24・2・8)
反抗を抑圧する程度に強い暴行・脅迫の判断基準は、社会通念上一般に相手方の反抗を抑圧するに足りる程度か否かを客観的に判断されるものと解されます。(最判昭23・11・18)
これを判断するための具体的な要素には、次のものが挙げられます。
・犯行の時刻、場所その他の周囲の状況
・凶器使用の有無、凶器の形状性質、凶器の用い方などの犯行の手段や方法
・犯人、相手方の性別、年齢、体力など
「強取」とは、暴行・脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧し、その意思によらずに財物を自己または第三者の占有に移す行為をいいます。
「強取」といえるためには、暴行・脅迫による反抗抑圧と財物奪取との間に因果関係が必要となります。
窃盗と同じく、不法領得の意思は判例上認められた要件です。
窃盗と強盗との線引き
ひったくり事件において、窃盗が成立するか、強盗が成立するかは、ひったくりの状況が、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行に至っているか否かがポイントです。
ひったくり事件は、大きく分けると、
①相手方の隙をついて、追い抜きざまやすれ違いざまに、持っているバッグなどを引っ張って奪うケース、と
②相手方が金品を奪われないように抵抗したため、金品を奪うためにさらにバッグなどを引っ張り続けるなどの暴行を加えるケース
とがあります。
①のようなケースでは、相手方に対し一定の接触はありますが、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行を加えたとは言えず、窃盗にとどまります。
他方、②では、金品を奪うために更なる暴行を加えていることから、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行を加えたと評価されることがあります。
上の事例でも、Aさんは、抵抗してバッグを離さずにいたため転倒し、抵抗できずにいた状態のVさんをバッグもろとも数メートルにわたって引っ張り続け、最終的にVさんにバッグを離させ、バッグを奪いました。
そのため、Aさんは、Vさんの反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて、Vさんの反抗を抑圧してバッグを奪っていると評価され、窃盗ではなく強盗罪に問われる可能性があります。
窃盗罪と強盗罪は、その法定刑も大きく異なりますので、いづれの罪が成立するかによって最終的な処分も違ってくるでしょう。
いずれにせよ、ひったくり事件では、被害に遭った方がいらっしゃいますので、被害者への被害弁償や示談の有無が最終的な処分にも影響することになります。
そのため、刑事事件に精通する被害者との示談に豊富な経験を持つ弁護士に被害者との示談交渉を含めた弁護活動を依頼するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗・強盗を含めた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族がひったくり事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
窃盗の幇助犯
窃盗の幇助犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、リクルーター役として特殊詐欺に加担したとして、京都府山科警察署に窃盗幇助の容疑で逮捕されました。
Aさんは、先輩から「荷物を受け取るだけで稼げるバイトがあるけど、やらないか?」と言われましたが、バイトが忙しかったこともあり断ったところ、「誰か紹介して。」と言われたため、知人のBを先輩に紹介しました。
後日、Bが特殊詐欺の受け子をしたとして逮捕され、Bの供述からAの特殊詐欺への関与が疑われることとなりました。
逮捕の連絡を受けたAの家族は、警察に面会を求めましたが、しばらくは会えないと言われ困っています。
(フィクションです)
幇助犯とは
複数人が共同して犯罪を実現する場合を「共犯」といいます。
共犯は、必要的共犯と任意的共犯とに分類されます。
前者は、刑法各則の規定またはその他の刑罰法規上、複数人の共同の犯行が予定されている犯罪をいいます。
一方、後者は、法律上単独犯が予定されている犯罪を複数人が共同して行う場合を指します。更に、任意的共犯は、共同正犯、教唆犯、幇助犯の3つに分類されます。
今回は、幇助犯について説明することにしましょう。
幇助犯
幇助犯については、刑法第62条において規定されています。
第62条 正犯を幇助した者は、従犯とする。
幇助犯とは、「正犯を幇助した者」をいいます。
幇助犯が成立するためには、
(1)幇助者が正犯を幇助して、
(2)被幇助者が犯罪を実行したこと
が必要となります。
(1)正犯を幇助すること
幇助行為は、実行行為以外の行為によって正犯を補助し、その実行行為を容易にする行為をいいます。
窃盗の場合、実行行為は「窃取」となりますので、窃取以外の行為によって正犯を補助し、その実行行為を容易にする行為が「幇助行為」に当たります。
幇助の方法や手段は、物理的であると精神的であるとを問いません。
また、幇助行為は、幇助の意思に基づいて行われなければ、幇助犯は成立しません。
例えば、店側がナイフを客に販売したところ、その客が販売したナイフを用いて傷害行為を行った場合において、店側は客である正犯に実行行為(傷害行為)を容易にする道具を提供しているわけですが、そもそも店側はその者が犯罪に用いるなどと知らず、実行行為を容易にするつもりでナイフを販売したわけではありませんから、このような場合においては幇助犯は成立しません。
(2)被幇助者の実行行為
幇助者が正犯を手助けする意図で手助けしたとしても、正犯が実行しない場合は幇助犯は成立しません。
このように、幇助行為は行われたが、正犯が実行の着手に至らなかった場合を「幇助の未遂」といい、この場合は不可罰となります。
他方、被幇助者(=正犯)が実行行為に出たものの、その犯罪が未遂に終わった場合を「未遂犯の幇助」といい、この場合は処罰の対象となります。
幇助犯の成立要件として、幇助行為と正犯の実行行為または正犯結果との間に因果関係が必要となります。
そして、実行行為を物理的または心理的に促進または容易にしたと言えば足りるとされます。
幇助犯(=従犯)の刑は、正犯の刑を減軽することが刑法第63条で規定されています。
刑の減軽の方法は、刑法第68条に定められています。
①死刑を減軽する場合
無期の懲役もしくは禁錮、または10年以上の懲役もしくは禁錮とする。
②無期の懲役・禁錮を減軽する場合
7年以上の有期の懲役または禁錮とする。
③有期の懲役・禁錮を減軽する場合
その長期および短期の2分の1を減ずる。
④罰金を減軽する場合
その多額および寡額の2分の1を減ずる。
⑤拘留を減軽する場合
その長期の2分の1を減ずる。
⑥科料を減軽する場合
その多額の2分の1を減ずる。
ただし、拘留または科料にのみ処すべき罪の幇助犯(=従犯)は、特別の規定がなければ処罰されません。
特殊詐欺事件では、単独で実行行為を遂行することはほとんどなく、かけ子、受け子、出し子と呼ばれる役割を組織内外に振り分けて実行行為を行います。
実行行為を行う者(かけ子、受け子、出し子)を組織に紹介する役割(リクルーター)を担った場合、動機、主犯格との関係性、役割の重要性などが考慮され、共同正犯ではなく幇助犯であると判断される可能性があります。
しかしながら、特殊詐欺といった組織犯罪に加担していたと疑われていることから、逮捕後に勾留に付される可能性は高いです。
また、弁護士以外との接見を禁止する接見禁止が勾留と同時に付されることが多いですので、被疑者とご家族の面会が叶わない場合があります。
そのような時には、刑事事件に強い弁護士に相談・依頼し、ご家族との接見を認めてもらえるよう接見禁止一部解除に向けて動いてもらいましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が窃盗の幇助犯で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
万引き事件:窃盗と事後強盗
万引き事件で窃盗又は事後強盗となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
兵庫県姫路市にあるスーパーマーケットで商品5点を万引きしたAさんは、店外へ出ようとした際に警備員に呼び止められました。
慌てたAさんは、警備員の制止を振り切り、逃亡を図りました。
その際に、Aさんを警備員を押し倒しており、警備員は腕などに軽傷を負っています。
結局、Aさんは兵庫県飾磨警察署に逮捕されてしまいました。
逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、警察から事後強盗という言葉を聞き驚いています。
このまま刑務所に入れられてしまうのではないかと不安に駆られたAさんの母親は、すぐに対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
万引きは、通常、窃盗で処理されます。
しかし、店の人や警備員等に見つかった際に突き飛ばすなどの行為をすると、事後強盗に問われることがあります。
1.窃盗罪
窃盗罪は、①他人の財物を、②不法領得の意思で、③窃取する罪です。
①他人の財物
窃盗罪の客体は、他人の占有する他人の財物です。
自分の財物といえども、他人の占有に属し、または公務所の命令によって他人が看守しているものは他人の財物とみなされます。
「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態のことをいいます。
スーパーマーケットで販売されている商品は、店長が管理していますので、他人の財物にあたります。
②不法領得の意思
窃盗罪の主観的要件として、故意の他に、不法領得の意思があります。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことをいいます。
万引きは、通常、店の商品を自分の物にして処分しようと思って商品を盗むので、不法領得の意思も認められることが多いです。
③窃取
窃取とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
占有を取得したときに既遂(実行行為が完了した)となります。
占有を取得したか否かの判断は、財物の性質、形状、財物に対するそれまでの占有状況、窃取行為の態様等を考慮して行われます。
スーパーマーケットでの万引きの場合、商品がポケットやカバンに入る大きさのものが多いことや、それらを店外に持ちだすことは容易であることなどから、ポケットやカバンに商品を入れた時点で占有を取得したと言えるでしょう。
判例でも、商品を万引きしようと商品である靴下を懐中に納めたときは、店外に出なくても既遂となると窃盗の成立を認めています。(大判大12・4・9)
このように、通常の万引きであれば、窃盗罪が成立する可能性があります。
2.事後強盗罪
事後強盗罪は、①窃盗が、②財物を得てこれを取り返されるのを防ぎ、逮捕を免れ、または罪責を隠滅するために、③暴行または脅迫をする罪です。
①窃盗
窃盗は、窃盗犯人のことです。
②目的
「財物を得てこれを取り返させることを防ぐ目的」とは、他人の占有を侵奪して事実上自己の占有下にある財物を被害者側に取り返されるのを阻止しようとする意図をいいます。
「逮捕を免れる目的」は、窃盗未遂または既遂の行為者が被害者などから取り押さえされて身柄を拘束されるのを阻止しようとする意図のことです。
「罪責を隠滅する目的」とは、窃盗犯人が後日窃盗犯人として捜査官に検挙され、処罰されることとなると認められる罪責を無にしようとする意図のことをいいます。
Aさんは、呼び止められた警備員の制止を振り切って逃亡を図っており、上の目的のいずれかを有していたと考えられるでしょう。
③暴行・脅迫
暴行・脅迫は、相手方に対する有形力の不法な行使、害悪の告知であり、その程度は、相手方の反抗を抑圧するにたりるものであることを要します。
また、暴行・脅迫は、窃盗の現場ないし窃盗の機会になされていることが必要です。
通常の万引きであれば、窃盗罪に問われ、有罪となれば、その法定刑(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)の範囲内で刑罰が科されることになりますが、事後強盗で有罪となれば、5年以上の有期懲役が科されることになります。
事後強盗罪に該当するかは、暴行・脅迫の程度にもよりますので、早期に弁護士に相談し、適切に対応することが求められるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
窃盗事件でお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
盗品を積極的に使う目的がない場合も窃盗?
盗品を積極的に使う目的がない場合に窃盗が成立し得るのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、かつて交際していた女性Vさんに対する嫌がらせの目的で、Vさんの自転車を駐輪場から持ち去り、Aさんの住むマンションの駐輪場にその自転車を置いていました。
Vさんは、マンションの管理人に自転車が見当たらないことを相談したところ、駐輪場付近の防犯カメラの映像を見せてもらうことになりました。
すると、防犯カメラの映像には、Aさんと思われる男性が自転車を持ち去っている様子が映っていました。
Vさんは、大阪府羽曳野警察署に相談しました。
Aさんは、大阪府羽曳野警察署から自転車の件で話が聞きたいと言われていますが、出頭する前に刑事事件に強い弁護士に事件について相談することにしました。
(フィクションです。)
他人の物を勝手に持ち去る行為は、窃盗の「窃取」に該当する他に、持ち去って物を使用できなくさせていることから、事実上、その物の効用を害しており、器物損壊の「損壊」にも該当することになります。
まずは、窃盗罪が成立する場合について説明します。
窃盗罪について
窃盗罪は、他人の財物を窃取する罪です。(刑法第235条)
◇犯行の対象◇
窃盗罪の客体は、「他人の財物」です。
「他人の財物」とは、「他人が占有する財物」のことをいいます。
窃盗における「占有」は、人が実力的に物を支配する関係と理解されており、物を客観的に支配している場合はもちろん、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含みます。
◇行為◇
窃盗罪の実行行為である「窃取」は、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことです。
◇不法領得の意思◇
不法領得の意思は、条文にはありませんが、判例上認められた要件です。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことをいいます。
◇故意◇
窃盗罪の故意(=犯意)は、他人の財物を窃取すること、つまり、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことについての認識・認容です。
先述した不法領得の意思とは別の要件となります。
それでは、上の事例について、Aさんの行った行為が「窃盗」の構成要件を満たしているのかについて考えてみましょう。
Aさんは、Vさんの自転車を駐輪場から勝手に持ち去り、自宅マンションの駐輪場に放置していました。
Vさんの意思に反して、自転車の占有を侵害し、自己の占有に移しているので、Aさんの行為は「窃取」に当たるものと考えられます。
しかし、その目的は、Vさんへの嫌がらせであり、Aさんは盗んだ自転車を使用するつもりも、実際に使用してもいませんでした。
この場合にも、窃盗罪は成立するのでしょうか。
窃盗罪が成立するポイントとしては、行為時に、不法領得の意思があるか否かです。
先述しましたが、他人の主有する者を勝手に持ち去る行為は、窃盗の「窃取」に該当するほか、持ち去って物を使用できなくさせている点で、事実上、効用を害しているため、器物損壊の「損壊」にも該当することになります。
窃盗か器物損壊か、いづれの罪が成立し得るのかという問題が生じますが、それを判断するポイントが不法領得の意思なのです。
不法領得の意思は、「権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思」です。
窃盗も器物損壊も、権利者を排除する点で同じです。
違いは、持ち去った物を経済的用法に従って利用し、又は処分する意思があるか否か、という点です。
経済的用法に従って利用・処分する意思は、経済的に利益を受ける意思はもちろんのこと、その物の用途にかなった使用をする意思や、財物から生じる何らかの効用を受ける意思で足ります。
この点、Aさんは自転車を持ち去った時に、それを使用するつもりはなく、あくまでもVさんへの嫌がらせのためであり、実際に持ち去った自転車を使用しておらず、ずっと自宅マンションの駐輪場に置きっぱなしにしていたのであれば、Aさんは、持ち去った自転車を経済的用法に従って利用・処分する意思がなく、何らの効用を受けておらず、不法領得の意思を欠いており、窃盗は成立しないことになります。
ただし、Vさんの自転車を持ち去ったことにより、Vさんは自分の自転車を使用することが出来なかったため、本来の効用を害しており、器物損壊が成立する可能性があるでしょう。
窃盗ではなく器物損壊が成立する場合、器物損壊罪は親告罪ですので、告訴がなければ公訴を提起することができません。
そのため、被害者との示談を成立させることにより、起訴を免れることができます。
被害者との示談交渉は、刑事事件に強い示談交渉に豊富な経験を有する弁護士に任せましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗や器物損壊を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで今すぐお電話ください。
窃盗事件と再度の執行猶予
窃盗事件と再度の執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府大阪市城東区のコンビニで万引きしたとして、Aさんは大阪府城東警察署に逮捕されました。
Aさんは、2年前にも万引きで逮捕されており、懲役1年執行猶予3年の判決が言い渡されていました。
執行猶予期間中の再犯のため、Aさんの家族は今度こそは実刑判決が言い渡されるのではないかと心配しています。
Aさんは、神経性過食症や窃盗症の疑いがあり、Aさんの家族は治療にも専念させてやりたいと思い、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
執行猶予について
「執行猶予」とは、裁判で有罪が言い渡された場合、一定の要件のもとに様々な情状を考慮し、その刑の執行を一定期間猶予し、その猶予期間中何事もなく無事に経過すれば、刑の言渡しの効力を失わせるという制度のことです。
有罪となっても、実際に刑罰を受けることはないため、執行猶予が付いているのと付いていないのとでは、裁判後の生活は全く異なります。
執行猶予には、全部執行猶予と一部執行猶予とがありますが、今回は前者について説明します。
◇執行猶予の要件◇
執行猶予については、刑法第25条に規定されています。
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
執行猶予の要件は、
(1)①前に禁固以上の刑に処せられたことがない者、あるいは、
②前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処させらことがない者、であり、
(2)3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合で、
(3)執行猶予を相当とするにたりる情状があること
です。
(1)の「前に禁固以上の刑に処せられた」とは、これまでに死刑・懲役・禁錮の刑に処する確定判決を受けたことを意味します。
罰金・拘留・科料の前科が何回あっても関係ありません。
(2)の要件について、拘留・科料を言い渡す場合には、その執行を猶予することはできません。
そして、(3)の情状に関しては、犯行方法や犯行態様が悪質ではないこと、犯罪の結果が軽微であること、動機に酌むべき事情があること、被告人に反省が見られること、被害者への被害弁償が済んでいること又は被害者の許しを得ていること、などが量刑の際に考慮される要素です。
万引き事件の場合、初犯であれば微罪処分となることが多いですが、2回目は起訴猶予、3回目は罰金刑と、再犯を重ねるたびに、当然その処分も重くなります。
ですので、万引き事件で正式裁判となるということは、それ以前に同種の前科前歴があるというケースが大半だと言えるでしょう。
犯行態様や被害額にもよりますが、概ね、万引き事件で始めて正式裁判となった場合、執行猶予付き判決が言い渡されることが予想されます。
この場合、判決言い渡し後、すぐに刑務所に入ることはなく、普段の生活に戻ることができます。
しかし、残念ながら、再び万引きで捕まってしまうケースが少なくありません。
それも執行猶予期間中の犯行であることも多く、その場合、実刑の可能性も高くなります。
再度の執行猶予とは
執行猶予期間中に何らかの罪を犯してしまった場合でも、裁判で再び執行猶予付き判決が言い渡される可能性はあります。
これを「再度の執行猶予」といいます。
再度の執行猶予の要件は、次の通りです。
①前に禁固以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること。
②1年以下の懲役または禁錮の言渡しをする場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。
②の要件について、初度の場合と異なり、罰金の言渡しを受けたときは執行を猶予することはできません。
更に、「1年以下」の懲役・禁錮の言渡しに限定されており、なかなか厳しい要件となっています。
また、③の要件については、情状が「特に酌量すべき」ものとなっています。
犯行態様が悪質ではなく、被害も軽く、被告人の再犯防止に向けた努力が顕著であるなどといったこと等が考慮されます。
これについても、そう安易に満たすことができる要件ではありません。
しかし、万引き事件においては、精神障害が犯行の要因だと認められる場合、被告人の更生のためには刑罰よりも治療が優先されるべきとして、再度の執行猶予が言い渡された事例も少なくありません。
万引きを繰り返す方には、窃盗症や摂食障害を患っているケースもあり、そのような精神障害が万引きの再犯に大きく影響していることもあります。
精神障害が疑われる場合には、専門医の診察を受け、適切な治療を受けることが再発防止のために必要となります。
裁判でも、診断書や治療経過報告書などといった資料と共に、本人が再発防止に向けて真摯に治療に取り組んでいることを主張していくことになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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窃盗と建造物侵入罪
埼玉県熊谷市の窃盗と建造物侵入事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。
~事例~
埼玉県熊谷市に住むAさんは、盗み目的で知人Vさん宅を訪れ、鍵のかかっていなかった玄関から土足のままVさん宅にあがり、机の上に置いてあった現金5万円入りの財布1個を盗みました。後日、Aさん宅に埼玉県熊谷警察署の警察官が訪れ、Aさんは任意同行を求められ応じた結果、建造物侵入、窃盗罪で逮捕されてしまいました。心配したAさんの父親は弁護士にAさんとの初回接見を依頼することにしました。
(フィクションです)
~建造物侵入、窃盗~
本件では建造物侵入、窃盗罪が成立します。
建造物侵入罪は刑法130条前段に規定されています。
刑法130条
正当な理由がないのに,人の住居若しくは人の看守する邸宅,建造物若しくは艦船に侵入し,(略)た者は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物侵入罪での「侵入」とは住居者の意思に反する立入りを言います。
本件VさんはAさんの知人ではありますが、盗み目的での立入りは、Vさんの意思に反する立入りと言えますので、AさんのVさん宅への立入りは建造物侵入罪の「侵入」にあたります。
次に、窃盗罪は刑法235条に規定されています。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
AさんがVさんの財布一個を盗る行為は窃取にあたるでしょう。
なお、建造物侵入罪、窃盗罪が成立する場合、それぞれの刑が個別に科されるわけではありません。本件では窃盗罪と建造物侵入罪が目的、手段の関係にありますから、Aさんは一つの罪を犯したのと同様に扱われます。ただ、一つといっても窃盗を犯したことにかわりありませんから、この場合、窃盗罪を基準に刑を科されます。
これまでの実例をみますと、建造物侵入、窃盗罪のようないわゆる「侵入盗」の刑事処分は「起訴(被疑者を裁判にかけること)」が原則で、裁判での求刑(検察官が考える量刑)は「懲役刑」を選択されることが多いようです。万引きなどとは違い、他人の家に立ち入ってまで盗みをするのは悪質性が高いと評価されるからでしょう。
~逮捕後の流れ~
逮捕後は以下の流れで手続きが進みます。
①逮捕→②警察署の留置施設へ収容→③警察官の弁解録取→④送検→⑤検察官の弁解録取→⑥勾留請求→⑦裁判官の勾留質問→⑧勾留決定
警察官に逮捕されると、警察署内にある留置施設(留置場)へ収容されます(①、②)。
その後、警察署で「弁解録取」という手続きが取られます(③)。警察官から弁解を聴かれた上で、釈放か否か判断されます。ここで釈放されない場合は、逮捕(①)から48時間以内に検察官の元に送致する手続き(送検)を取られます(④)。
検察官の元でも「弁解録取」という手続きを取られます(⑤)。検察官から弁解を聴かれた上で、釈放か否か判断されます。ここで釈放されない場合は、勾留請求されます(⑥)。勾留請求は、検察官の元に送致される手続きが取られてから24時間以内になされます。
勾留請求されると、今後は、裁判官による「勾留質問」という手続きを取られます(⑦)。裁判官から話を聴かれた上で、釈放か否か判断されます。釈放されない場合は、勾留決定が出されたと考えていいでしょう(⑧)。勾留決定が出た場合は「勾留状」という裁判官名義の令状が発布され、勾留状に基づき指定の留置場等へ収容されます。
通常、弁護士が逮捕後に接見のご依頼を受けてから逮捕された方と接見するのは、早くても③から④の段階となるのではないかと思われます(なお、弁護人以外のご家族などは⑧までは、逮捕された方と接見することができません)。したがって、この段階で弁護活動のご契約をいただければ、検察官や裁判官に対して早期釈放を促すことが可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。刑事事件・少年事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間受け付けております。
万引きで逮捕・窃盗罪の既遂時期
万引きで逮捕されてしまった事例を題材に、窃盗の既遂時期等について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事例
Aは、神奈川県川崎市内のコンビニエンスストアで、レジで会計を済ませていないにもかかわらず、スマートフォンの充電用のケーブルを自らのカバンに入れた。
Aがカバンに商品を入れた瞬間を目撃した店員は、Aを問い詰め、やがて警察を呼ぶに至った。
その後、神奈川県中原警察署の警察官は、Aを窃盗の疑いで逮捕した。
Aの家族は、窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(フィクションです)。
~窃盗の既遂時期について~
本件でAは、店の商品を無断でカバンに入れていますが、店外に出るに至っていません。
この場合、本件の窃盗は未遂罪にとどまるのでしょうか、それとも既遂に達しているのでしょうか。
刑法43条本文は、未遂にとどまるなら刑を減軽することができる旨定めていることからも、この区別は重要です。
まず、窃盗罪の処罰規定を確認すると、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」(刑法235条)と定められています。
この条文から明らかなとおり、窃盗罪が成立するためには、他人の財物を「窃取」したといえる必要があります。
この点、「窃取」とは、他人の意思に反し、他人の財物を自己(または第三者)の占有下に移転することをいいます。
そして、これにより占有を取得したといえれば窃盗は既遂に達しており、未遂にはなりません。
なお、占有を取得したか否かは、客体の大きさ、財物搬出の容易性などを総合的に考慮して判断されるものと解されています。
では、本件でAは商品の占有を取得したといえるか簡単に検討してみましょう。
まず、Aが盗もうとしたのはスマートフォン充電用のケーブルであり、小さな菓子類などと比べるとそれなりの大きさがあり、ポケットなどにしまうことは難しいかもしれません。
もっとも、カバンには容易に入れることができる程度の大きさであり、一旦カバンに入れてしまえば店外に搬出することも容易です。
したがって、いまだ店外には出ていないとしても、店内でカバンに入れた地点において本商品の占有を取得したと考えられます。
よって、Aの行為は窃盗罪の既遂に達しており、未遂減軽(刑法43条本文)の適用はないことになります。
~窃盗事件における弁護活動~
法務省が公表している「犯罪白書(令和元年版)」を見ると、平成30年(2018年)の犯罪認知件数のうち、実に7割以上が窃盗罪となっています。
つまり交通事故事件などを除くと、刑事事件として認知されている圧倒的多数が窃盗罪なのです。
したがって、必然的に弁護士による刑事弁護の基本は窃盗事件への対応ということになります。
窃盗事件において注意すべきは、本件のように比較的単純な万引き事件であっても、逮捕される可能性は十分にあることです。
そして、窃盗事件においてどのような刑事処分が見込まれるかどうかの判断にあたっては、前科前歴の有無などが重要になってきます。
弁護士としては、前科前歴の有無などを考慮しながら、どのような解決がベストなのか逮捕されてしまった本人やそのご家族に分かりやすくご説明・ご提案いたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、万引きを含む窃盗事件を多数扱っている刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗事件に対する弁護経験が豊富な弁護士が多数所属しており、窃盗事件の弁護活動なら弊所におまかせください。
窃盗事件で逮捕された方のご家族・ご知人は、24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)まで今すぐにお問い合わせいだだけます。