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下着泥棒で逮捕~事後強盗罪の可能性

2019-10-12

下着泥棒で逮捕~事後強盗罪の可能性

下着泥棒事件逮捕事後強盗罪の可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

A(大学4年生)は,以前から好意を寄せていた同級生のVが京都府京田辺市で一人暮らしの下宿生活をしていることを知った。
Aは,Vの留守中を狙ってベランダに干してあったVの下着を盗んだ。
Vから下着泥棒の被害届を受けた京都府田辺警察署の警察官は,捜査の結果,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件はフィクションです。)

~下着泥棒と窃盗罪の成否~

本件でAは,以前から好意を抱いていたVの自宅のベランダに干してあった下着を,Vの留守中に奪取しています。
窃盗罪を規定する刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪」とすると定めています。
ここにいう「他人の財物」とは,他人の(所有し)占有する財物だとされており,これを「他人」であるVの意思に反してその占有を移転させていることから,Aの行為は「窃取」に当たることになるでしょう。
上記の客観的要件に加えて,「罪を犯す意思」(刑38条本文)すなわち故意も認められるでしょう。

ここで注意が必要なのが,窃盗罪を含む領得罪(窃盗罪・強盗罪・詐欺罪・恐喝罪・横領罪)では,主観的要件として,故意の他に「不法領得の意思」が必要とされることです。
判例・実務上,不法領得の意思とは,「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用・処分する意思」をいうとされています。

本件でAがVの下着を窃取する行為は,その利用可能性を侵害し,権利者の利用を排除するものとして,権利者排除意思が認められることは明らかといえます。
では,上記定義における,後者の利用処分意思は認められるでしょうか。

不法領得の意思」における利用処分意思とは,「経済的用法に従い利用・処分する意思」を指す旨は上述のとおりです。
しかし,これに形式的に下着の窃盗行為を当てはめた場合,AがVの下着を好事家等に売る等の意思がない場合(つまり自己の性的満足のために盗んだような場合)には,不法領得の意思は認められず,窃盗罪は成立しないという結論になってしまいます。

もっとも,実務・判例においては,実質的にこの利用処分意思は「財物から何らかの効用を享受する意思」を意味すると考えられています。
そうすると,先程と異なり,Aの下着の窃盗行為は,下着それ自体から何らかの効用を得る意思があったのは明白であり,利用処分意思が認められることになります。
メディアなどを通してよく目にする下着泥棒にも,窃盗罪を成立させるためには,やや技巧的な解釈論が必要となってくるのです。

~事後強盗罪(刑238条)の成立可能性~

仮に,Aが下着を窃盗した後に,V等に見つかってしまい,その際に,財物を取り返されることを防ぐためや,逮捕を免れるため等に,暴行又は脅迫を行ってしまった場合,Aは「強盗として」処罰されることになります。

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であり,長期は10年ですが,短期は1ヵ月(刑12条1項参照)になります。
これに対し,(事後)強盗罪は「5年以上の有期懲役に処する」としており,短期が5年とその法定刑には極めて大きな差があります。
したがって,弁護士としては,状況にもよることはもちろんですが,仮に財物奪取後の暴行・脅迫があったとしても(事後)強盗罪は成立せず,窃盗と暴行(傷害)・脅迫にとどまることなどを主張することが考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗罪は,わが国においてもっともポピュラーな犯罪でありながら,横領罪や器物損壊罪,あるいは詐欺罪などとも区別が非常に微妙な犯罪です。
窃盗罪を含む財産罪の成否の判断に関しては,専門性を持った弁護士の助言が不可欠です。
ご家族が窃盗事件で逮捕されてしまったという方は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に お問い合わせください。

窃盗罪で罰金刑?

2019-10-07

窃盗罪で罰金刑?

窃盗罪の罰金刑について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

兵庫県川西市に住むAさんは、平成26年8月20日に、近所にあるスーパーで食料品10点を万引きしたとして兵庫県川西警察署に検挙されましたが、Aさんの息子さんが被害弁償するなどしたため微罪処分に終わりました。
しかし、Aさんは、平成28年8月20日に、同じスーパーで食料品1点を万引きしたとして検挙されましたが、このときもAさんの息子さんが被害弁償するなどして不起訴処分に終わりました。
ところが、Aさんは、令和元年8月20日に、同じスーパーで食料品5点を万引きをして兵庫県川西警察署窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Aさんは窃盗罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けてしまいました。
(フィクションです)

~ 窃盗罪には罰金刑が規定されている ~

窃盗罪に罰金刑が規定されてあることをご存じでしょうか?
窃盗罪が規定されてある刑法235条を見ると

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

とされています。

強盗罪、詐欺罪、背任罪、恐喝罪、横領罪には懲役刑しか規定されていないのに、窃盗罪に罰金刑が規定されているのはなぜでしょうか?

~ 窃盗罪に罰金刑が規定された背景 ~

実は、以前は、窃盗罪に罰金刑は規定されていませんでした。
ところが、平成18年に施行された改正刑法により、窃盗罪に罰金刑が新設されたのです。

その背景は「万引き事件の増加」です。
平成18年までの万引きの認知件数を見ると、平成一桁代では10万件を切る、あるいは10万件代で推移していたものの、平成10年代に入ると、

平成13年 12万6110件
平成14年 14万0002件
平成15年 14万6308件
平成16年 15万8020件
平成17年 15万3972件
平成18年 14万7113件

と増加していることが分かります。
一言で万引きといっても被害額が少額な比較的軽微な事案から重大な事案なものまで様々で、懲役刑しか規定されていなかった時代には、「懲役刑にまでは処する必要がない」と思われる比較的軽微事案では、刑事処分を決める検察官は不起訴処分とせざるを得ませんでした。
そこで、このような事案についても刑事処罰(罰金刑)を科して万引きの抑制につなげよう、という意図で罰金刑が新設されたのです。 
ちなみに、平成18年以降は万引きの認知件数は徐々に下がりはじめ、平成29年は10万8009件でした。

(認知件数は「平成30年度版 犯罪白書」を参照)

~ 窃盗罪に罰金刑が科される場合とは? ~

窃盗罪で罰金刑が科される典型的なケースは、初犯、つまり前科がない場合です。
確かに、Aさんは平成26年と平成28年に万引きしていますが、そのいずれの場合でも刑事処罰(懲役刑、罰金刑)は受けていません。
ちなみに、微罪処分は警察が被疑者に対し厳重注意、訓戒するにとどまり、事件を検察庁へ送致しない処分、不起訴処分は起訴しない処分のことをいいます。

いずれの場合でも前科として記録されず、あくまで前歴が残るだけです。
このように、過去に何回かの前歴を有し、今回はじめて刑事処罰を科す必要がある判断された場合は罰金刑を科される可能性が高いでしょう。

~ 窃盗罪の罰金は誰でも納付できる? ~

お金がないからこそ万引きしたのに、さらに刑罰で罰金刑を科すのは酷なのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、最近は、万引きする動機は様々で、単に「お金がないから」という単純なものではなくなってきています。
また、仮に、お金がない場合でも、実際に納付するのはご本人でなければなりませんが、罰金の原資となるお金は本人以外のお金でもよいわけです。
つまり、お金がなく納付できない、という場合はご家族等の援助を受けて納付することもできます。
この点が懲役刑と大きく異なる点です(懲役刑は、本人以外の人が代わりに刑の執行を受けるということはできません)。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。

キャンピングカーに侵入盗で窃盗罪・住居侵入罪?

2019-09-27

キャンピングカーに侵入盗で窃盗罪・住居侵入罪?

Aは,東京都中野区の路上に駐車されていた大き目の多目的レジャー車(いわゆるキャンピングカー)の運転席に財布が置いてあることに気づいた。
上記車が施錠されていなかったことから,Aは人目を忍びそのまま車の中に入り,運転席から車の所有者であるVの財布を持ち去った。
Vから被害届を受けて捜査を進めた警視庁野方警察署の警察官は、Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~窃盗罪と住居侵入罪~

刑法235条は,「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とすると規定しています。
住居侵入罪(130条)を伴う,窃盗犯は実務上,侵入盗と呼ばれ,窃盗の類型の中でも代表的なものの一つです。
今回のAさんはキャンピングカーに入って財布を盗んでいるようですが,この侵入盗にはならないのでしょうか。
以下で検討していきましょう。

まず本件では,Aが車から財布を持ち去った行為について,被害者に占有があったかどうかが成立する犯罪との関係で問題となります。
窃盗罪における「窃取」とは,占有者の意思に反して,目的物を自己の占有に移すことをいいます。
そして,ここにいう「占有」とは,物に対する事実上の支配をいい,事実上の支配が認められるためには,被害者であるVに財布に対する占有の事実と意思があることが必要となります。
例えば,Aが財布を窃取した時点で,Vがその場から遠く離れてしまっていた場合,もはや占有の事実も意思も認められず,遺失物横領罪(占有離脱物横領罪:254条)が成立するにとどまることも考えられるでしょう。

もっとも,本件では,施錠を忘れていたとはいえ,財布は被害者の車の中にあることから,たとえその被害者が遠く離れてしまっていたとしても,その占有は一般に認められるものと考えられます。
なぜならば,仮に車に財布を置き忘れていたとしても,車の中に他人が入り込むことは通常想定されておらず,車の内部は車の所有者の占有が強く及んでいる空間であると考えられるからです。
このことからも,Aには窃盗罪が成立し得るものと考えられるでしょう。
したがって,Aは遺失物横領罪ではなく窃盗罪によって逮捕されているのです。

では次に,本件では,Aは「住居」に侵入したといえるのでしょうか。
一旦,刑法の規定を離れて常識的に考えてみると,「住居」としてまずイメージするのはいわゆる一軒家やマンションの一室といった,「建造物」であるかと思います。
その上で,刑法130条前段の規定を見てみると,「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し」た者を処罰する旨を定めています。
ここでは,「住居」と「建造物」は書き分けわれており,必ずしも「住居」=「建造物」であるとは考えられていないことが分かります。
この点,130条前段が定める「住居」とは,人が起臥寝食などの日常生活に使用する場所をいいます。
したがって,Vが多目的レジャー車(キャンピングカー等)に住んでいたという実態がある場合には,車といえども「住居」に当たる可能性があります。
したがって,状況によっては,Aには逮捕された窃盗罪以外にも住居侵入罪が成立する可能性があります。

なお,住居侵入罪窃盗罪は,「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるとき」として,「その最も重い刑により処断」(本件であれば,235条により,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)されることになります(牽連犯(刑法54条1項後段))。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗事件含む刑事事件専門の法律事務所です。
侵入盗等の窃盗事件は弊所でも多数扱っている事件の一つであり,刑事事件専門の弁護士の経験に裏打ちされた弁護活動を行うことが可能です。
窃盗事件侵入盗等)で逮捕された方のご家族は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に今すぐにお電話下さい。

キャッシュカードすり替え窃盗事件

2019-09-22

キャッシュカードすり替え窃盗事件

福岡県北九州市在住の一人暮らしの高齢者Vさんに対し、銀行職員を名乗る男から電話があり、「あなたの預金口座が犯罪に利用されているおそれがあります。職員がご自宅に伺いますのでキャッシュカードを確認させてください。」と告げられた。
その後、Vさん宅に銀行職員を名乗るAという男が訪れ、AはVさんに対し、「ご自宅でキャッシュカードを厳重に保管してもらう必要があります。暗証番号を書いたメモと一緒にこの封筒に入れておいてください。」と言って用意していた封筒を手渡した。
VさんはAの言葉を信用し、受け取った封筒にVさん名義の口座のキャッシュカードと暗証番号を書いたメモを入れた。
その後、AはVさんが目を離した隙に、Aがあらかじめ用意していたダミーの封筒とVさんのキャッシュカード入りの封筒をすり替え、Vさんのキャッシュカード等が入った封筒をそのまま持ち去った。

その後、Vからの相談を受けた福岡県八幡西警察署は捜査を開始し、Aは逮捕されることとなった。
(上記の事例はフィクションです)

~特殊詐欺の手口~

上記事例のように、銀行の職員や警察官を装って、キャッシュカードが犯罪に利用されているとうそをいい、隙を見て別のカードにすり替えるという手口の事件が多発しています。
このようなキャッシュカードをすり替えて騙し取るという手口は、オレオレ詐欺などの特殊詐欺の一環として行われることが多く、特殊詐欺グループによる組織的な犯罪であることが多いです。
そのため、特殊詐欺グループと関わりを持ってしまった未成年の少年などが加害者となるケースも多いです

~キャッシュカードすり替えで成立する犯罪~

刑法235条(窃盗罪) 
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法246条(詐欺罪)
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪が成立するためには、人を欺く行為があったといえる必要があり、人を欺く行為は、これによって被害者が錯誤に陥り、財物の交付に至らせるような性質のものでなければなりません。

上記の事例のAは、銀行職員を装い預金口座が犯罪に利用されているおそれがあるという嘘をついています。
Vさんが一人暮らしの高齢者であることを踏まえると、Aの行為はVが錯誤に陥る程度の嘘をつく行為であるとはいえます。

もっとも、Aによる嘘をつく行為は、あくまでVさんにキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを封筒に入れさせるためのものであり、その封筒の交付をVさんから受けるためのものではありません。
そのため、Aの行為は財物の交付に向けられているとはいえず、詐欺罪における欺く行為にはあたりません。

他方、窃盗罪における「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことをいいます。

上記事例では、Vさんは自宅で保管するために自分のキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを封筒に入れています。
そのため、封筒をすり替えてVさんのキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを持ち去ったAの行為は、Vさんの意思に反して、Vさんの占有を侵害しキャッシュカード等の占有を自己に移す行為といえ、「窃取」にあたります。

このように、上記のような手口は特殊詐欺の一環として行われていますが、詐欺罪ではなく、窃盗罪が成立する可能性が高いといえます。
実際の同種事案においても、窃盗罪で逮捕されているケースが多いです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では24時間、無料相談及び初回接見サービスのご依頼を受け付けております。
キャッシュカードすり替え事件でお困りの方、その他窃盗罪に絡んだ刑事事件にお悩みの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。

窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪②

2019-09-17

窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪②

京都市伏見区に住むAさんは、パチンコ等のギャンブルにお金を使っては消費者金融に借金をすることを繰り返し、借金額を合計200万円くらいまで膨らませてしまいました。
そこで、何とかこの事態を打開したいと考え、Aさんは日頃から目を付けていたVさん(85歳)方に盗みに入ることに決めました。
Aさんは、ホームセンターで侵入のための工具(マイナスドライバー、軍手等)を購入し、Vさんが不在のときを見計らってVさん方に入ろうと思い、Vさん方付近に張り込んでVさんの行動を確認していました。
そして、Aさんは、Vさんが自宅を出たと確認した後、購入した侵入工具を使うなどしてVさん方に入り、タンスの引出しを開けるなどの物色を始めました。
ところが、Aさんは、数十分経っても金目の物を見つけることができませんでした(後日、Vさんは用心のため、自宅にはお金の物を置いていなかったことが判明)。
そこで、AさんはVさん方を出ようとしたところ、ちょうどVさんを訪ねてきたVさんの息子であるWさん(60歳)と鉢合わせになりました。
Aさんは、Wさんから声をかけられ捕まられそうになったため、Wさんの顔を持ってきていたバールで1回殴打してその場から逃走しました。
しかし、Aさんは、京都府伏見警察署住居侵入罪事後強盗未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

前回の「窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪①」では、窃盗罪の成立過程やAさんに窃盗未遂罪が成立し得ることをご説明いたしました。
今回は、なぜ、Aさんが事後強盗未遂罪に問われているのかご説明いたします。

~事後強盗罪とは?~

事後強盗罪とは、窃盗犯人が、財物の取返しを防いだり、逮捕を免れるなどするため、相手方に暴行、脅迫を加えた場合に成立し得る犯罪で、刑法238条に規定されています。

刑法238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

本来の強盗罪(刑法236条)とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫→財物奪取(強取)という流れが本来の姿です。
しかし、窃盗の場面では、窃盗犯人が財物を取り返しにきたり、窃盗犯人を逮捕しようとする被害者等に暴行を加えるという場面はしばしばあるところです。
しかも、暴行・脅迫行為は事後的に行われているものの、それを手段として財物を奪ったという点では本来の強盗罪と変わりはありません。

そこで、事後強盗罪も強盗罪の一種としています。
事後強盗罪の「事後」とは、窃盗の後に暴行、脅迫が行われたという意味に過ぎず、本質は本来の強盗罪と同じです。

~誰が事後強盗罪に問われるのか?~

刑法238条は「窃盗が」としています。
この「窃盗」とは、窃盗の実行に着手した者、つまり、窃盗未遂犯も含まれます。
窃盗罪の実行に着手していない者は事後強盗罪に問われることはありません。
したがって、窃盗の目的で他人の家に侵入したところ、まだ物色行為を開始する前に家人に気づかれたため、その家人に暴行を加え傷害を負わせたという場合は、事後強盗罪ではなく傷害罪(と住居侵入罪)が成立するにとどまります。

~事後強盗罪の暴行・脅迫の相手方は誰?~

事後強盗罪の暴行・脅迫の相手方は、必ずしも窃盗の被害者本人(本件ではVさん)に加えられる必要がありません。
追跡してくる目撃者(Wさん)や逮捕しようとする警察官に対してなされたものであってもよいとされています。
なお、事後強盗罪は強盗罪の一種ですから、暴行・脅迫は「窃盗の機会」になされたと認められる時点で加えられることが必要です。

~事後強盗罪の既遂、未遂の判断は?~

事後強盗罪の既遂時期に関しては、窃盗の既遂・未遂を問わず、犯人が所定の目的で暴行・脅迫を加えた時点で既遂に達すると解する見解もありますが、通説・判例は、本罪は財産犯であることから、「先行行為である窃盗の既遂、未遂」で、事後強盗罪の既遂、未遂を判断しています。

以上から、本件のAさんは、窃盗未遂犯人であることから事後強盗未遂罪(強盗未遂罪)に問われているわけです。

~相手方に怪我を負わせたり、死亡させた場合は?~

強盗の機会に相手方に怪我を負わせたり、死亡させた場合は強盗致傷罪6年以上の懲役)、強盗致死罪死刑又は無期懲役)に問われます。
そして、両罪は、窃盗の既遂、未遂に関係なく成立するとされています。
本件のAさんも、仮に、Wさんに怪我を負わせていれば、強盗致傷罪に問われていたかもしれません。

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窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪①

2019-09-12

窃盗未遂罪から事後強盗未遂罪①

京都市伏見区に住むAさんは、パチンコ等のギャンブルにお金を使っては消費者金融に借金をすることを繰り返し、借金額を合計200万円くらいまで膨らませてしまいました。
そこで、何とかこの事態を打開したいと考え、Aさんは日頃から目を付けていたVさん(85歳)方に盗みに入ることに決めました。
Aさんは、ホームセンターで侵入のための工具(マイナスドライバー、軍手等)を購入し、Vさんが不在のときを見計らってVさん方に入ろうと思い、Vさん方付近に張り込んでVさんの行動を確認していました。
そして、Aさんは、Vさんが自宅を出たと確認した後、購入した侵入工具を使うなどしてVさん方に入り、タンスの引出しを開けるなどの物色を始めました。
ところが、Aさんは、数十分経っても金目の物を見つけることができませんでした(後日、Vさんは用心のため、自宅にはお金の物を置いていなかったことが判明)。
そこで、AさんはVさん方を出ようとしたところ、ちょうどVさんを訪ねてきたVさんの息子であるWさん(60歳)と鉢合わせになりました。
Aさんは、Wさんから声をかけられ捕まられそうになったため、Wさんの顔を持ってきていたバールで1回殴打してその場から逃走しました。
しかし、Aさんは、京都府伏見警察署住居侵入罪事後強盗未遂罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~窃盗罪の成立過程~

本件のAさんは住居侵入罪事後強盗未遂罪で逮捕されていますが、本件で成立しうる犯罪としては窃盗未遂罪ではないかと思った方もいるのではないでしょうか?
そこで、この機会に窃盗未遂罪が成立する過程を細かくみていきたいと思います。
まず、本件は、大きく、

1 AさんがVさん方に盗みに入ることを決意
2 Aさんが侵入工具を購入し、Vさんの行動を確認
3 AさんがVさん方へ入り、タンスの引き出し等を物色(結果、何も窃取することはできず)

の3段階に分けられると思います。

まず、1の段階の決意だけでは犯罪となりません。
「何人も思想によりて処罰されることなし」の法諺が当てはまります。
法は行為又は結果として客観化されない「人の内面」にまで踏み込むことはできないのです。

2の段階、つまり、一定の犯罪を実行するための準備行為を「予備」といいます。
「予備」とは、犯罪行為の実行に着手する前の段階をいいますから、あらゆる犯罪について予備罪を設けてしまうと、人々の日常生活の行動を著しく制限してしまうことになりかねません。
そこで、重大な結果を引き起こす蓋然性が高い重大犯罪(殺人罪、放火罪、強盗罪等)に限って予備罪が設けられています。

3の段階、つまり、実行の着手に至ったが、何らかの事情によって結果が発生しなかった場合を「未遂」といいます。
上の「予備」との決定的な違いは「実行の着手」があったか否かです。
「実行の着手」とは、法益侵害に対する現実的危険性を有する行為、と言われていますが、何をもって「実行の着手」とするのかは事案によって個別に判断されます。
未遂罪も各罪に規定がなければ処罰されることはありません。

刑法43条前段
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。

刑法44条
未遂を罰する場合は、各本条で定める。

~窃盗未遂罪~

ところで、窃盗罪については、未遂罪の処罰規定が設けられています。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法243条
第235条から(略)までの罪の未遂は、罰する。

窃盗罪の「実行の着手時期」が問題となることがあります。
この点、判例(大昭9年10月19日等)は、他人の財物に対する事実上の支配を侵すにつき密接なる行為をなしたときとしていますが、密接なる行為か否かは、財物の性質・形状、窃盗行為の態様などを総合的に勘案して判断されるものと思われます。
本件のように他人の自宅に侵入して金品を窃取するいわゆる「侵入盗」の場合は、一般に、物色行為をはじめることをもって「実行の着手」ありとされています。
しかし、何をもって物色行為とするかについても、現場の状況、窃盗行為の態様等により結論が異なります。
なお、本件の場合はタンスの引き出しに手をかけた時点で物色行為あり、すなわち窃盗罪の「実行の着手」ありとされるでしょう。

こうしてAさんにはまず、窃盗未遂罪が成立する可能性が高いでしょう。
では、なぜ今回、Aさんは事後強盗未遂罪の疑いがかけられているのか、という点については次回解説したいと思います。

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無人のゲームセンターで窃盗事件

2019-09-07

無人のゲームセンターで窃盗事件

~ケース~
神戸市須磨区在住の大学生のAさん(20歳)は最寄りの無人のゲームセンターV店に通っていた。
ある日,Aさんはインターネットでゲームセンターに設置されている筐体の一部などが高額で取引されているのを発見した。
そこで,AさんはV店が無人であることに目を付け,友人ら数人とともに店舗内から大型筐体を分解し持ち出した。
その後,Aさんはインターネットオークションにて筐体を部品ごとに販売した。
V店は,筐体がなくなったことに気が付き,兵庫県須磨警察署に相談し,兵庫県須磨警察署は捜査を開始した。
そして後日,Aさんらは店内に設置されていた防犯カメラの映像を基に窃盗罪の疑いで兵庫県須磨警察署に逮捕された。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)

~無人のゲームセンターで窃盗…何罪?~

今回のケースでは,筐体を盗んだAさんらにまず窃盗罪が成立することに疑いはないでしょう。
窃盗罪は刑法235条に定められており,罰則は10年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

加えて,今回は筐体を盗むためにゲームセンターV店に立ち入っています。
今回のケースのように,最初から何らかの犯罪を行う目的で店舗などに立ち入った場合には,建造物侵入罪が成立する可能性が高いです。
その建造物の管理者の意思に反して建造物に入ることで建造物侵入罪が成立すると考えられており,窃盗目的の者を入れることはゲームセンターの管理者の意思に反すると考えられるためです。
建造物侵入罪は刑法130条に定められており,罰則は3年以下の懲役または10万円以下の罰金となっています。

刑事事件を起こしてしまった場合,一つの罪ではなくいくつかの罪を犯してしまうことは珍しくありません。
今回のような,どこかの店舗や家に侵入して物を盗むといった窃盗事件では,Aさんらのように窃盗罪だけでなく建造物侵入罪も成立するケースが多く見られます。
このような,複数の犯罪をした場合に,ある犯罪をするための手段として他の犯罪が行われている場合,これを牽連犯と呼び,刑法では最も重い刑で処断すると定められています(刑法54条)。
今回の例でいえば,窃盗罪(ゲームセンターから筐体を盗む)を犯すための手段として建造物侵入罪(窃盗目的でゲームセンターに侵入する)を犯しているため,牽連犯として処断されます。
牽連犯ではその最も重い刑により処断されますから,窃盗罪と建造物侵入罪のうち,より重い窃盗罪10年以下の懲役または50万円以下の罰金で処断されることになるでしょう。

なお,牽連犯の他の例としては,偽造文書によって詐欺をはたらいた場合,詐欺罪(刑法246条)と偽造文書行使罪(刑法159条)が牽連犯となる例が挙げられます。

~窃盗事件を起こしてしまったら~

窃盗罪の罰則は上述の通り,10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
ただし,2件以上の窃盗事件を起こしていた場合,それらの併合罪となりますので計算上15年以下の懲役となるか,50万円×件数の罰金となります。
1件のみの窃盗事件の場合,前科がなければ起訴されたとしても罰金刑となる可能性が高いですが,複数件起こしている場合には初犯であっても罰金とならずに執行猶予付きの懲役刑であったり,執行猶予の付かない実刑判決が下される可能性もあります。

窃盗罪の場合,初犯で被害弁償をしている場合には検察官は起訴猶予の不起訴とする場合が多くあります。
逆に,被害弁償や示談ができていない場合には,示談等ができている場合に比べて起訴されてしまう可能性が上がってしまうことになります。

今回のケースで,Aさんらはゲームセンターの筐体を盗み出しているのであり,筐体の種類にもよりますが被害額は比較的高額であると考えられます。
したがってAさんが不起訴処分を目指すのであれば,V店と示談を成立させることが必要不可欠といえるでしょう。
被害者が店舗の場合,個人でも弁償を申し出ることで示談に応じて頂ける場合も稀にあります。
しかし,加害者本人からの被害弁償などの申入れは拒絶されることも多いため,まずは専門家である弁護士に相談・依頼するのがベストでしょう。
弁護士が入ることで示談交渉をしてくれるという被害者や被害店舗の方も多くいらっしゃいます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
窃盗事件を起こしてしまった場合には0120-631-881までお気軽にご相談ください。
事務所での無料法律相談・警察署等での初回接見サービスのご予約を24時間受け付けています。

ひったくりは窃盗罪?強盗罪?

2019-09-02

ひったくりは窃盗罪?強盗罪?

大阪府池田市に住むAさんは、窃盗の意思で夜間人通りのない場所を通行中の女性Vさんに原付バイクで背後から接近し、そのハンドバッグをひったくろうとしましたが、Vさんが奪われまいとして離さなかったため、バッグの下げひもをつかんだまま原付バイクを進行させ、Vさんをバッグもろとも引きずって転倒させるなどしました。
Aさんは路上にバックが落ちていたことからこれを拾って現場から逃走しました。
このひったくりによってVさんは加療2か月間を要する大けがを負いました。
ところが、その後、AさんはVさんから被害届を受けた大阪府池田警察署によって強盗致傷罪で逮捕されてしまいました。
Aさんとしては「ひったくり窃盗罪」と考えていたことから、強盗致傷罪で逮捕されたことに驚きを隠せないでいます。
(フィクションです。)

~ひったくりは窃盗罪?強盗罪?~

ひったくりは、物を持ち歩いている歩行者や、前カゴに荷物を入れている自転車に近づき、すれ違ったり追い抜いたりする瞬間にその物を奪って(ひったくって)逃げる行為をいいます。
「万引き」「すり」「置引き」などと同様、窃盗の手段、態様を表す言葉です。

ひったくりは主に窃盗罪(刑法235条)あるいは強盗罪(刑法236条)に当たる可能性があります。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

窃盗罪は、他人の占有する財物(本件の場合Vさんのバック)を、不法領得の意思(権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法にしたがってこれを利用し処分する意思)をもって、窃取した場合に成立します。
「窃取」とは、暴行・脅迫によることなく、占有者(Vさん)の意思に反してその占有を排除し、目的物(バック)を自己(Aさん)又は第三者の占有に移すことをいうとされています。
したがって、まず、ひったくり行為は窃盗罪に当たる可能性が高いといえます。

~強盗罪とは?窃盗罪との区別は?~

強盗罪は、暴行・脅迫を財物奪取の直接的な手段として用いて他人の財物を強取した場合に成立する罪です。
強盗罪における「暴行」とは「反抗を抑圧するに足りる程度の暴行」、つまり、単なる不法な有形力の行使ではなく、それを超える程度の強度な暴行であることが必要とされています。
そして、財物奪取の手段として「この暴行・脅迫を用いるか否か」が窃盗罪とを区別するポイントとなります。

しかしながら、ひったくりの場合、それが強盗罪における暴行が否か簡単に見極めることが難しい場合もあります。
一番単純な例としては、被害者の何らの抵抗も受けることなくバックをひったくったという場合です。
この場合は、強盗罪の暴行・脅迫がありませんから窃盗罪が成立することは明らかです。

次に、バックをひったくろうとバックに手をかけたところ、被害者がこれを掴んで離さなかったため、バックを無理矢理引っ張って奪いとったという場合はどうでしょうか?
この場合、バックを無理矢理引っ張るという行為は強盗罪の暴行というよりかは窃盗手段の一態様と考えられますから、やはり窃盗罪が成立するものと思われます。

要は、強盗罪の暴行か否かは「被害者の生命・身体に及ぼす危険性が高いものかどうか」が一番重要なポイントとなりそうです。

事例では、原付バイクからVさんを引きずって転倒させるなどして、被害者の身体・生命に重大な危険をもたらす可能性がある暴行が執拗に行われています。
このような場合は強盗罪が成立する可能性が高いでしょう。

~強盗致死傷罪の可能性も?~

強盗によって被害者に怪我をさせたり、被害者を死亡させた場合は強盗致死傷罪が成立する可能性があります。
怪我をさせた場合の法定刑は「無期又は6年以上の懲役」、死亡させた場合は「死刑又は無期懲役」です。
被害者によほどの落ち度がない限り適用される可能性が高いですから注意が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが24時間体制で、初回接見サービス、無料法律相談の予約を受け付けております。

嫌がらせ目的で同僚の手帳を隠匿し取調べ

2019-08-28

嫌がらせ目的で同僚の手帳を隠匿し取調べ

大阪府池田市にある会社に勤める会社員のAさんは、かねてから同僚のVさんとの折り合いが悪く、何らかの嫌がらせをしてやろうと企図していました。
ある日、Vさんのデスクの上に、Vさんのスケジュールが記載された手帳を見つけたので、これを紛失したら困るだろうと思い、Aさんは自分のデスクにVさんの手帳を隠匿することにしました。
Vさんはすぐに手帳がなくなったことに気付き慌てましたが、上司に相談し、防犯カメラを確認したところ、上記のAさんの行為が写っていました。
Vさんが大阪府池田警察署に被害届を出したところ、Aさんは警察に呼び出され、出頭することになりました。
(フィクションです)

~手帳を嫌がらせで隠匿…何罪?~

今回のAさんは嫌がらせ目的でVさんの手帳を隠しています。
一見、Vさんの手帳を机上より持ち出していることから「窃盗罪」が成立するのではないか、と思われますが、ケースの事件について窃盗罪が成立する可能性はかなり低いと思われます。
それはなぜなのか、以下で検討していきます。

(不法領得の意思)
判例・通説によると、窃盗罪が成立するためには、①他人の占有する財物を窃取した事実、②①についての故意に加えて、③「不法領得の意思」が存在していたことが必要です。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思をいいます。

(他人の財物を「隠匿」する場合)
Aさんは嫌がらせでVの手帳を持ち出したのですから、不法領得の意思の「利用・処分意思」が欠けるように思われます。
「利用・処分意思」がないことを理由として窃盗罪の成立が否定された裁判例として、以下のような事例があります。

・教員が、校長に恨みを持って同人に責任を負わせるために、教育勅語謄本等を教室の天井裏に隠した場合(大審院大正4年5月21日判決)
・政府所有米の米俵の数が足りないつじつまを合わせるために、倉庫にある他の米俵から少しずつ米を抜き取って新たに米俵を作り、同倉庫に積んでおいた場合(最高裁昭和28年4月7日判決)

以上の裁判例に照らすと、AさんがVの手帳を隠匿した行為はVさんへの嫌がらせであって、Vさんのスケジュールを密かに知るなどの他の動機・目的があったわけではない以上、「利用・処分意思」が欠けると評価される可能性が高いでしょう。

~窃盗罪以外に成立しうる犯罪はあるか?~

今回のAさんのケースにおいて、窃盗罪以外の他の犯罪類型で成立する可能性が否定できないものとして、「器物損壊罪」、「私文書毀棄罪」があります。

(器物損壊罪)
器物損壊罪は、他人の物を損壊し、又は傷害する犯罪です。
「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為をいいます。
AさんがVさんの手帳を自身のデスクに隠匿することにより、スケジュールの備忘録としての効用を失わせたと判断された場合、器物損壊罪の成立が認められる可能性があります。
器物損壊罪につき、有罪が確定すると、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処せられます。

もっとも、器物損壊罪は被害者による告訴がなければ起訴することができないので、告訴がなされない場合、事件は必ず不起訴処分という形で終了します。
このような「親告罪」の弁護活動においては、被害者に告訴状を出さないよう交渉することが極めて重要です。

(私用文書等毀棄罪)
権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄する犯罪であり、法定刑は5年以下の懲役となっております。
スケジュールが記載されているにすぎない手帳は「権利又は義務に関する他人の文書」に該当しないと思われますが、Vさんの手帳の中に、取引先の領収書などが入っていて、Aさんがこれを認識し、あえて隠匿したような場合には、私用文書等毀棄罪の成否が検討されることになるでしょう。
なお、本罪も「親告罪」なので、告訴されなければ、起訴されることはありません。

~取調べに先立ち、弁護士と相談~

Aさんの供述は、「不法領得の意思」の認定に関して重要な証拠となります。
もし、「Vさんよりも有利に仕事をするためにVさんのスケジュールを確認する必要があった」などと供述すると、「不法領得の意思」が認められ、器物損壊罪、私用文書等毀棄罪よりも重い窃盗事件の被疑者として扱われる可能性が高まります。
どのように供述すれば、Aさんにとって不利にならずにすむか、という点について、弁護士のアドバイスを受けましょう。

ケースのような事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

置引きと窃盗罪

2019-08-23

置引きと窃盗罪

大学生のAさん(20歳)は、埼玉県川口市に設置してあるATM機でお金を引き出そうとしたところ、ATM機横に財布が置かれてあるのを見つけました。
Aさんはそれを手に取って中身を見ると、財布の中には1万円札1枚が入っているのを確認しました。
Aさんは、普段お金に足りないことに不満を抱いていたことから、「自分のものにしてしまえ」と思って財布の中から1万円札を抜き取りました。
その後、ATM機の上に財布を置き忘れたことに気づいたVさんが、その約5分後ATM機の元へ戻ってきました。
Vさんは、財布は無事手に戻すことができたものの、1万円札を抜き取られたことに気づいたことから警察に通報、被害届を提出しました。そうしたところ、Aさんは窃盗罪埼玉県川口警察署に逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

~置引き~

置引きとは、置いてある他人の財物を持ち去る行為をいいます。
置引きは、刑法などの法令に規定されている罪名ではなく、「ひったくり」や「万引き」と同様、窃盗罪の態様として慣用的に使われている言葉の一種です。
なお、平成30年度版犯罪白書によれば、平成29年度に警察に認知された窃盗罪の事件数中、非侵入窃盗の割合は全体の53.9%(侵入窃盗は11.2%、乗り物窃盗は31.3%)で、そのうち

・万引き      16.5%
・車上・部品狙い  12.5%
・置引き       4.7%
・色情狙い      1.4%
・自動販売機狙い   1.3%

だったとのことで、窃盗事件全体の数は年々減少傾向にあり、かつ、置引きの割合自体は少ないものの、被侵入窃盗の中では「上位3番目」の数の多さということは着目すべき点ではないかと思います。

~置引きは何罪?~

置引きは窃盗罪(刑法235条)あるいは占有離脱物横領罪(刑法254条)に当たる可能性があります。
まず、規定から確認しましょう。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法254条
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

窃盗罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」、占有離脱物横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料」と両罪は法定刑に大きな違いがありますから、窃盗罪が成立するか占有離脱物横領罪が成立するかは大きな違いで、区別する実益があります。

~窃盗罪と占有離脱物横領罪の違いは?~

窃盗罪と占有離脱物横領罪を区別する基準は、「被害者の財物に対する支配が及んでいるか否か」という点です。
及んでいる場合は窃盗罪、及んでいない場合は占有離脱物横領罪が成立します。
そして、支配が及んでいるか否かは

・財物自体の特性(貴重品か否か、大きさ、重さなど)
・占有者の支配の意思の強弱
・被害者が財物を取り戻すに行くまでの時間、距離

などの具体的事情から判断されます。

過去には(最判昭和32年11月8日)では、「バスに乗るために行列していた者が、カメラをその場に置き、行列の移動に連れて改札口近くに進んだ後、カメラを忘れたことに気づいたが、その間、時間にして約5分、距離にして約19.58メートルに過ぎなかった事例」で、「被害者に支配が及んでいる」とし、カメラを盗んだ犯人に窃盗罪を適用しています。

~被害者の支配が及んでいなくても窃盗罪?~

なお、被害者の支払が及んでいなくても別の者の支配が及んでいると認められる場合は、やはり窃盗罪が適用される可能性があります。
過去には(大判大8年4月4日)、「旅館内に旅客が置き忘れた財布」には旅館主の支配が及んでいるとして、財布を盗んだ犯人に窃盗罪を適用しています。
ただし、財物を置き忘れた場所が、一般人の立ち入りが自由な場所であって、管理者の排他的支配が完全でない場合(たとえば、電車内、電車・駅構内のトイレ内など)は、直ちにその場所の管理者の支配に移ることはないとされています。

~本件置引きは何罪?~

本件では、VさんがATM機に財布を置き忘れたことに気づき約5分後に取りに戻ったというのですから、Vさんの財布及びその中の財物(お金など)に対する支配は認められるものと思います。
したがって、Aさんには窃盗罪が適用され、処罰される可能性が高いでしょう。
窃盗罪での処分を免れたい場合は、被害者に被害弁償し、示談を成立させることが先決です。

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